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じゃんけんの夏休み(全3話)
本編
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~第一回~
それから、いろんなことがあって、ジャンケンをして罰ゲームに——と決まった。
「じゃんけんっ、」
心の中で全員が一瞬早く、唱えた。
ぽんっ!!
のかわりに、思い思いグー! とかパー! とかいった。まず、背の低い翔太がグー、俺もグー、カンペイが、パー……あっ。
「この場合どうなるんだっけ」おずおずとカンペイが聞いた。
「えーと、どうだったっけねえ」翔太がいうが、俺は潔く、続ける。「二人同時処刑」
結果、二人が足を開いて、それを片足ずつカンペイが蹴り上げると決まった。
一秒後のことである。
悶絶するような痛みが俺の股下をくすぐった。
ウッ
俺は失神して倒れかけたが、復活した。
~第二回~
ぽんっ!
背の低い翔太が後ろにぶっ倒れるハプニングが起きた。翔太の左手は硬い拳だった。それを包み込むように俺が開いた手を。カンペイは、観念したように拳を差し出す。
うえーっ!! むぎふえぐ!!
二人の叫び声のうち、特徴的な甲高い叫び声を出したのがどちらだったか聞き損なったが、なんだか翔太の方が少しだけ柔らかい気がした。
~第三回~
翔太がルーレットを作った。これで運を決めるらしい。最低でも一回転はするというルールだ。ズルを防ぐためである。まず翔太が回した。
グーチョキパーグーチョキ、パーグー、チョキ……動かない。
次にカンペイが回す。グー、チョキ、パー、グー……そこで止まった。
あーーーーーっ!
翔太が倒れる。しかし、まだ可能性は残っている。これは単なる演技に違いない。ふっ、貶めてやる。俺はパーを出さないからな!!!!!!!
グー、チョキ、パー、グー……よし……少し動いた。今のはチョキだ。
「なーっ」俺の叫び声に、カンペイのガッツポーズ。結果、本日二度目のデジャヴを喰らわされた。少し慣れるかと思ったが、むしろ一回目より少しばかりレベルが高いのをお見舞いされたらしく、五分ばかりは痛みが消えなかった。
~最終回~
翔太が、落書き帳を三枚持ってきた。それぞれ自分の出す手を鉛筆で書いて一斉に裏返すらしい。俺が二階の俺の勉強部屋、翔太が一階の縁側、カンペイが二階のトイレと決まった。我が家にはトイレが二つあるのだ。
作戦会合がないように、母と父が目を光らせていたが、特に異常はなかった。
結果、翔太がグー、カンペイがチョキ、俺がパーだった。
そして俺たちはもう一回戻って書き直した。俺は、パーを描くことにした。これでも悩んだ方である。
カンペイは、おっ、俺と同じパーだ。少し字が汚いけど、パアと書いてある。ーって知ってるかな? あとで教えてみようっと。
翔太が発表した。なっ!! 綺麗に指二本が。下には、お手本のような字で、大きく、太く、
「チョキ」
それが地獄の閻魔様のように見えた。翔太の弱々しいが気迫ごもった足が、俺の盲点、端っこに向けて、リニアのような速さで、突進されてきた。
ぐはっ!!
それなりに痛かった。俺は痛みを堪えながらぶっ倒れた。楽しい夏だった、と、今でも俺は思い返したりする。
それから、いろんなことがあって、ジャンケンをして罰ゲームに——と決まった。
「じゃんけんっ、」
心の中で全員が一瞬早く、唱えた。
ぽんっ!!
のかわりに、思い思いグー! とかパー! とかいった。まず、背の低い翔太がグー、俺もグー、カンペイが、パー……あっ。
「この場合どうなるんだっけ」おずおずとカンペイが聞いた。
「えーと、どうだったっけねえ」翔太がいうが、俺は潔く、続ける。「二人同時処刑」
結果、二人が足を開いて、それを片足ずつカンペイが蹴り上げると決まった。
一秒後のことである。
悶絶するような痛みが俺の股下をくすぐった。
ウッ
俺は失神して倒れかけたが、復活した。
~第二回~
ぽんっ!
背の低い翔太が後ろにぶっ倒れるハプニングが起きた。翔太の左手は硬い拳だった。それを包み込むように俺が開いた手を。カンペイは、観念したように拳を差し出す。
うえーっ!! むぎふえぐ!!
二人の叫び声のうち、特徴的な甲高い叫び声を出したのがどちらだったか聞き損なったが、なんだか翔太の方が少しだけ柔らかい気がした。
~第三回~
翔太がルーレットを作った。これで運を決めるらしい。最低でも一回転はするというルールだ。ズルを防ぐためである。まず翔太が回した。
グーチョキパーグーチョキ、パーグー、チョキ……動かない。
次にカンペイが回す。グー、チョキ、パー、グー……そこで止まった。
あーーーーーっ!
翔太が倒れる。しかし、まだ可能性は残っている。これは単なる演技に違いない。ふっ、貶めてやる。俺はパーを出さないからな!!!!!!!
グー、チョキ、パー、グー……よし……少し動いた。今のはチョキだ。
「なーっ」俺の叫び声に、カンペイのガッツポーズ。結果、本日二度目のデジャヴを喰らわされた。少し慣れるかと思ったが、むしろ一回目より少しばかりレベルが高いのをお見舞いされたらしく、五分ばかりは痛みが消えなかった。
~最終回~
翔太が、落書き帳を三枚持ってきた。それぞれ自分の出す手を鉛筆で書いて一斉に裏返すらしい。俺が二階の俺の勉強部屋、翔太が一階の縁側、カンペイが二階のトイレと決まった。我が家にはトイレが二つあるのだ。
作戦会合がないように、母と父が目を光らせていたが、特に異常はなかった。
結果、翔太がグー、カンペイがチョキ、俺がパーだった。
そして俺たちはもう一回戻って書き直した。俺は、パーを描くことにした。これでも悩んだ方である。
カンペイは、おっ、俺と同じパーだ。少し字が汚いけど、パアと書いてある。ーって知ってるかな? あとで教えてみようっと。
翔太が発表した。なっ!! 綺麗に指二本が。下には、お手本のような字で、大きく、太く、
「チョキ」
それが地獄の閻魔様のように見えた。翔太の弱々しいが気迫ごもった足が、俺の盲点、端っこに向けて、リニアのような速さで、突進されてきた。
ぐはっ!!
それなりに痛かった。俺は痛みを堪えながらぶっ倒れた。楽しい夏だった、と、今でも俺は思い返したりする。
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