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しんやとセンセ
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背の低いあの少年がしんやだ。しんやはたまになやむことがあったので、今日思い切って、それをセンセに相談することにしようと思っていたが、一人うつむくだけで今日を終わらせようとしていた。
帰りの会も終わり、放課後。
センセ――若い男のセンセがしんやの名前を呼んだ。
「しの、まだいるか?」
あ、宿題の催促かなんかだ――。そうしんやは思った。「宿題なら、終わらせたはずですが」としんやはきく。
「いや、そうじゃないんだ。カイトもシズヱもいったん今日のところはおさらばだ。床尾と篠崎、いったん残ってくれ……」
「ああ、わぁったぞ! 説教だ。あ~、あたしも見物したかったなァ」
シズヱがいやみをいった! 「ところがどっこい、その説教はおまえに向けられたもので……」と小さくセンセがおどすと、ヒエ、とシズヱは帰っていった。
「あ~、待ってよぅ」
カイトはその後を追った。初めてのボーイフレンドだったからしかたない。センセは小さくため息をつくと、床尾と篠崎に、「心理貨運世良ってわかるか?」と話し始めた。「貨運世良ですかい」床尾が聞き返す。「ああ、横文字でこう書いてもいいのだが――」センセは黒板にカウンセラと書いた。「貨運世良――こっちがいいよな」
みんな、うなずいた。センセはそれを満足そうに見てから、「おまえら心があぶないぞ。こいつらに相談したら……」ときいた。
ここまで語り終えて、話し手は締めの言葉をいった。
「さて、今日学校にスクール貨運世良というんがありますんのはぁ、この、センセの努力なのであります……」
閉まり始めた舞台の中で、小さく、しんやとセンセがうつっているような気がして、観客たちは、ぱちりと目をしばたいた。
帰りの会も終わり、放課後。
センセ――若い男のセンセがしんやの名前を呼んだ。
「しの、まだいるか?」
あ、宿題の催促かなんかだ――。そうしんやは思った。「宿題なら、終わらせたはずですが」としんやはきく。
「いや、そうじゃないんだ。カイトもシズヱもいったん今日のところはおさらばだ。床尾と篠崎、いったん残ってくれ……」
「ああ、わぁったぞ! 説教だ。あ~、あたしも見物したかったなァ」
シズヱがいやみをいった! 「ところがどっこい、その説教はおまえに向けられたもので……」と小さくセンセがおどすと、ヒエ、とシズヱは帰っていった。
「あ~、待ってよぅ」
カイトはその後を追った。初めてのボーイフレンドだったからしかたない。センセは小さくため息をつくと、床尾と篠崎に、「心理貨運世良ってわかるか?」と話し始めた。「貨運世良ですかい」床尾が聞き返す。「ああ、横文字でこう書いてもいいのだが――」センセは黒板にカウンセラと書いた。「貨運世良――こっちがいいよな」
みんな、うなずいた。センセはそれを満足そうに見てから、「おまえら心があぶないぞ。こいつらに相談したら……」ときいた。
ここまで語り終えて、話し手は締めの言葉をいった。
「さて、今日学校にスクール貨運世良というんがありますんのはぁ、この、センセの努力なのであります……」
閉まり始めた舞台の中で、小さく、しんやとセンセがうつっているような気がして、観客たちは、ぱちりと目をしばたいた。
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