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テツと人とパグの鬼ごっこ
テツと人とパグの鬼ごっこ その一
しおりを挟むまた、テツと人とパグが鬼ごっこ。「かわりおにだって」テツは、仲間に話した。ハルやこりどう、J吉がうなずいた。
「なんだ。作戦会議しよーよ」
「いーねー」
1
「第一ミッション場 こちら」
というメールが、パグチームの元に届いた。【ゲームマスター】とあるが、このゲームに果たしてゲームマスターなどいただろうか。「猿井川洞窟」だった。村人の協力を得て、仕組まれた罠とは書いていない。どこにも。パグチームはそこに向かうことにした。
「猿井川? ああ、あすこよ」
近くの村で聞き込むと、村の老人が指をさしたのは山のてっぺん近くのところだった。行こうか、とパグがいった。山登りを始めたパグを見送ると、老人はニヤリと笑った。
一方そのパグチームが山を登り終えると、「猿井川洞窟 いりぐちこちら」という立て看板が彼らを出迎えた。
「にぎやかみたいじゃないか」パグがいった。そして、一歩目を踏み入れると黒い線のようなものまで踏んなような感触がした。
と、こんな声が聞こえてきた。
「フッフッ……。お前は、天国地獄ゲームに挑戦しなさい」
と、ゲームマスターらしきものの声がした。
そして、パグの前が青白く光ったかと思うと、テレビのモニターの姿があった。
天国、地獄、天国……。モニターが点滅するスピードがだんだん遅くなっていくにつれ、パグの額にジリジリと汗が浮かんでいく。天国————ああ、やった……ピロッ。地獄! だめよ、だめよ……ピランピラーン。「決定」ゲームマスターがいった。高笑いだった。
「フッフッ、ゲームに挑戦しなさい」と、ゲームマスターがいった。
「こんなところに連れ出して、一体自分なんやねんな」と、パグがきいた。
「ゲームマスターだよ」
スイッチを押すような音が、さっきからこちらに響いている。それは、パグが歩くと、鳴るようである。すると、ゲームマスターが喋る……と、ここまではわかった。
画面上に龍が現れ、竜の下にパグが立っていた。それを見ていたパグが、
「僕は、あそこにいたのかー」
と、間延びした声でいった。
「ちがうよ!」
ぴょん吉が抑える。
しかし……パグの目の前にはAとBがあって、みんなが、
「A、Aにいけ!」
というのにパグはBにいって、
「あーれー」
奈落の底に落ちていった。
そしてそこはパイプ状の穴があり龍がいた。龍がニンニク臭い息を吐きかけてくる。火の玉の焦げ臭いにおいもある。
「やだー」パグが逃げようとするが、もはやその場所もない。「お赦しー」
*
さかのぼること三十分前。村の老人はトランシーバーで、「これで、十分ですね」といった。さらにさかのぼること二十分前。テツチームが村に何かの協力を許可するよう懇願していた。さらにさらにさかのぼること十分前。テツチームは架空の洞窟『猿井川洞窟』を掘り終えて、スイッチも繋げ終えて、スイッチをだれかが踏むと、その都度録音された声が流れるようにし、龍に関しては、着ぐるみの龍をきせたロボットを、遠隔操作で動かしていた。
パグが逃げ惑う五十分前、つまりテツチームが何を要請していたかはわかったと思う。その村の老人が実は村長で、テツチームが大金をはたいて、
「おねがいします!」
というと、
「君たちには負けたよ」
村長は笑った。
2
「第一ミッションに、パグチームが先着しました」
と、人チームにメールが送られた。
「テツチームとの一騎打ちです」
「よし、やるぞー」
棒人間も、偽ミッション場へ向かうことを決意し、村へ出向いた。村では、村長がまだ立っていて、
「猿の洞窟か? あれはわしが生まれる前からあった……」
決めてあった暗号通りに、わざとトランシーバー越しのテツにも聞こえるように話した。
「『猿の洞窟』『わしが生まれる』ということは、『パグたちがいる洞窟』『人チームが来た』をさしている」
テツが初めて明かした。
「考えたね」こりどうがウィンクして笑う。
「だろ?」テツも笑った。
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