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切ない別れ

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 この話にかかるべき歌はすなわちイルカのなごり雪だと思う。田口誠也たぐちせいやは、不器用だったが、特殊なときは大胆になる。例えば今た。
 チラリと彼女、桜井ほのかを見やる。ほのかは、笑みもせず、かといって泣いてもいなかった。
 誠也は胸ポケットからセブンスターを取り出した。無人駅ではないけど駅員が叔父しかいない構内で、ほのかは何を思うのだろう——そんな今一秒が永遠の謎になるのだ。こんな綺麗事は鬱陶しいのだが事実なのだ。
 忘れ去られるまで、その出来事は生き続けるのだ。
 誠也は改めてそう思った。
 そのとき特徴的な音が鳴った。
 誠也は自販機で買った水をぶっかけてセブンスターの火を消して、小さな声で、「じゃね」といった。
「じゃね」とほのかは返した。
 誠也が動き始めた。誠也の足ら動いていなかった。少しふらついてはいたがしっかり立っていた。少し足を曲げて立っていた。
 電車が動いて、窓が動いて、すなわち誠也が動く。来年会おうね。
 ぶっきらぼうだったほのかがついに一言いった。それは、誠也に決して聞こえるはずのない言葉だった。
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