上 下
85 / 113

79話 テンネン・ムソウ

しおりを挟む
 テンネン・ムソウと名乗った死神は嬉しそうに、

「人間に会うのは生前ぶりだ。客人として案内しよう。ついてきなさい」

 そう言ってふよふよと移動するテンネンの後を追うリュウガ。信用してる訳ではないがせっかく会えた会話が成立する相手なのでとりあえずはついて行く。

(罠だったとしても仕留められるしな)

 先ほどは攻撃を防がれてしまったがの攻撃ならルイやレイといった実力者なら充分止められる攻撃である。本気とはいかずともそれに近い力を発揮すれば仕留められるだろう。そう思ったからついて行くという判断だ。そうしてテンネンについてたどり着いたのは、

「どうだ! 素晴らしい拠点だろう!」
「まぁ、いんじゃね」

 自信満々に語るテンネンに対して気のない返事をするリュウガ。

(アシンメトリーだし所々にある髑髏しゃれこうべはなんなんだよ。厨二病か!!)

 刺さる人には刺さるんだろうデザインなのかもしれないが正直リュウガには全く刺さらなかった。ちなみにリュウガとしてはシンプルなデザインが好みだ。

「どうした? 入らないのか?」
「お邪魔します」

 そう言って中に入る。中は以外とシンプルな装いであったがやはり髑髏が所々に飾ってあった。案内されるがままに骨で作られた椅子に座るのであった。

「さてと一体お主は何者だ? わざわざ冥府に来るからには何かあるのだろう?」

 質問をされたので答えるリュウガ。名前と今回の目的であるギールスの討伐について話すのであった。

「地上はそんな事になっていたのか。神との戦争か。生きていれば参加したかったものだ」
「無双流なんて名乗るくらいだし相当強かったんだな」
「それはそうよ! 刀だけにとどまらず槍、斧、三節棍、弓、徒手空拳等を極めて世界の強者を探して旅をしたのだからな」
「へ~。それで最期は冥府の門が開いて死亡したってか」
「そうなんだよ! ふざけた力だ。戦う事なく骨となって人間をやめることになるとは」

 悔しがるテンネン。

(自我が残ってるだけ相当凄い事だし生きていたら相当な実力者として名前が残ってたかもな)

 そんな評価を下す。そして、

「ギールスがどこにいるか知ってるか?」

 1番知りたい事を聞く。

「すまんが知らん。会った事がないから姿形も知らん」
「そうか」
「ただ、以前にこの世界に穴が開いてそこから骨の龍が出た事がある。もしかしたここ冥府はいくつかの層が重なっているのかもしれん」
「成程な」

 骨の龍というのは骸龍で間違いない。ギールスの創り出した龍であるのは聞いている。それが現れたのなら下にギールスがいる可能性は多いにある。

「助かる。穴を探して下層を目指すとするよ」

 そう言って立ち上がり出発しようとするが、

「おいおい待て待て」
「何だよ」
「せっかくなら手伝わせてくれよ。神殺しに」
「いいけど死ぬぞ。悪いが守りながらの戦う余裕はないぞ」
「構わん。そもそも死んでるんだからな」

 カラカラと笑うテンネンと共にリュウガは下層に繋がる穴を目指して進むのであった。目標に進んで行くリュウガに対して龍帝はというと、

「うぜぇな」

 そう言って一足先に下層に来ていた。そんな龍帝は骸龍たちを雷で吹っ飛ばす。

(ギールスの奴はどんだけ暇なんだよ。馬鹿みたいな物量で押して来やがる)

 次々と襲いかかる骸龍を難なく潰して行く龍帝。

(地上を狙うための準備か? だとしても変だな。明らかに量が馬鹿げている。地上だけでなく天界も狙っているのか?)

 色々考えながらも龍帝は骸龍の大群を薙ぎ払いながらもギールスを目指して進むのであった。そして1層では、

「前に見た穴ってのはどれくらいかかるんだ?」

 襲いかかる死神や骸兵を突破しつつリュウガはテンネンに尋ねる。

「すまんが時間の流れがわからんからどれくらいかかるかは知らん。ただ2度目の死をあっさり迎えたくはないから拠点からはからり離れているとだけ言っておく」
「そうかよ」

 正直な話、死神や骸兵はザコなのでどうとでもなるが時間だけはどうにもならない。

(これは龍帝に先を越されるな。前に戦った神よりは強いだろうからゼーリオとのシュミレーションになると思っていたが仕方ない)

 そう思いながらもしっかりと襲ってくる敵は仕留めている。案内役であるテンネンも敵を仕留めている。

(大鎌なんて使いづらい武器でよくやるな)

 かっこよさはあるのだが想像以上に使いづらい武器として鎌は有名だったりするのだ。

(色んな武器を使っていたと言ってたが器用貧乏じゃなく練度もしっかりと高いな)

 リュウガも認めるくらいにはしっかりと練度がある大鎌使いであった。それだけに、

(もう冥府の住人としてしか生きられないのはもったいないな)

 既に死んでしまっている以上はどう足掻いたところでテンネンは冥府でしか生きられないのだ。

(冥府の神であるギールスを殺したら冥府はどうなるんだ? その事を考えずに来ちまったのは失敗だったかもな。それにテンネンはどうなる?)

 色々と考えなければならない事があるのだがこればっかりはやってみなきゃ始まらないのだ。

「おそらくまだまだかかるがどうする? 休むか?」
「疲れてはないが腹は減ってるし休憩にするか」

 適当にその辺にある岩に腰掛けて事前に用意していた携帯食料を食べようと取り出したら、

「はぁ!? 腐ったんだが!! どうなってんだよ!!」

 腐って食べれる状態ではなくなっていた。

「お~凄いな。ここだと食料はこうなるんだな」
「知らなかったのかよ」
「知る訳ないだろ。俺はもう死んでるから飯を必要としないからな」
「これマジでやばいな」

 敵に殺されるとかではなく餓死の可能性が出てしまったのは非常に良くない。無理矢理ではあるがある一つの可能性に賭ける。

「地面をぶっ壊す!!」

 刀を抜いて上段の構えを取り死の気配を視る。

(冥府という死の気配が充満した環境のせいで視づらいだけで視えない訳でないから問題は何もない)

 死の気配を破壊するために刀を振り下ろす。

神喰かみぐらい

 地面に巨大な割れ目が出来上がる。余裕で人が通る事が出来るだけの割れ目だ。それを見たテンネンは、

(バケモンだな。こんなバケモンが生まれるほどに地上は時間が経ってしまっていたか)

 自分が生きていた時代には会う事が出来なかった実力者に出会えた事に感動する。

「行くぞ」
「おう!」

 こうしてリュウガとテンネンも冥府の二層に行くのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!

電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。 しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。 「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」 朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。 そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる! ――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。 そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。 二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

保健室の先生に召使にされた僕はお悩み解決を通して学校中の女子たちと仲良くなっていた

結城 刹那
恋愛
 最上 文也(もがみ ふみや)は睡眠に難を抱えていた。  高校の入学式。文也は眠気に勝てず保健室で休むことになる。  保健室に来たが誰もいなかったため、無断でベッドを使わせてもらった。寝転がっている最中、保健室の先生である四宮 悠(しのみや ゆう)がやって来た。彼女は誰もいないと分かると人知れずエロゲを始めたのだった。  文也は美女である四宮先生の秘密を知った。本来なら秘密を知って卑猥なことをする展開だが、それが仇となって彼女の召使にされることとなる。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。 戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。 で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...