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45話 龍帝vs骸龍

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「何だって龍帝が来たんだ?」
「前にも喋ったとはおもいますが彼、、龍帝は戦闘狂なので骸龍とのタイマンでしょうね」
「だったら前回骸龍が現れた時に潰し合ってくれたら最高だったんだかな」

 なんて言ったが、

「それは無理ですよ。龍帝はその当時まだ産まれていませんでしたからね。何せ産まれて100年とちょっとしか経ってませんからね」

 ウェンの発言に、

「マジで言ってんのか。龍達の中じゃ若いのにお前や龍皇より強いってバケモノかよ」
「そうですね。ハッキリ言ってそれぞれが司る能力を使わないで身体能力だけで殺し合えば覇龍すらも超えてNo. 1が龍帝です」

 龍帝の強さを聞いた、レイが口を開く。

「ならそのお強い龍帝様が骸龍を殺してくれるなら安心なのでは?」
「どうでしょうかね。骸龍の実力を完璧に把握しているわけではないのでこの殺し合いがどうなるかわたくしには分かりません」

 ですが、とウェンは続ける。

「主様はいずれぶつかる龍帝の実力を見ておくべきですね」
「冗談だろ? そんなバケモノ共の殺し合いの見学なんざしようもんなら巻き込まれた瞬間に死ぬだろ」
「そこは主様の頑張り次第ですね。幸いにも龍皇が国の南側を焼き尽くしたため見晴らしはいいので限外ギリギリまで近づいて危険だと感じたら逃げればいけるでしょう」

 なんて事を言われ文句はあったがいずれ戦うのは確定しているので見る事は大事だというウェンの意見に間違いはないので2体の龍が対峙している数Km離れた地点から見ている。正直もっと離れた場所から見たかったが離れ過ぎると2体を見る事は出来てもどんな戦いをしているかまでは見えないので仕方ない。

「巻き込まれて死んだらそん時はそん時と諦めるか(そもそも巻き込まれて死ぬなら俺が龍帝と戦うどころじゃねえしな)」

 この殺し合いはどっちが勝ってもリュウガの進化に必要な要素になるのは確定だ。
 骸龍も龍帝同様に人型になる。龍の姿の方が力はあるがデカくて雷の的になるための判断だ。骸龍の人型は骨の鎧に包まれた痩せ型の死の気配が漂う人相をしている。

お強いお強い龍帝様が何の用だ? 人間を守ろうなんてガラじゃねぇだろうに」
「強い奴と戦いたいってのと単純にお前が気にいらねぇ。殺す理由には充分だろ?」

 それだけ言って高速で殴りかかる。その威力はウェンや龍皇をも凌ぐ。それでも、

「何だぁ? 様子見か?」

 避けもせずに骨の鎧で受け止めた。そして、それだけにはとどまらずカウンターの蹴りを腹に叩き込んだ。

(硬ぇな。そこらの龍の鱗よりも)

 蹴られながらも龍帝は骸龍を守る骨の鎧について考察する。そして、その感覚は正しい。骸龍を覆う骨の鎧はそこらの龍の鱗を凌駕するレベルで硬い。それでも、

(まぁ、これぐらいじゃねぇとオレ様が挑むに値しねぇわな)

 わりと余裕そうにしている。それもそのはず、

(素のスペックだけでもウェンや龍皇より上だな。まさか雷の力を使わずに殺す気か?)

 素のスペックのみで今は骸龍と殴り合う龍帝を見ているリュウガは、

(ウェンと龍皇のおかげで目で追えるがどう考えても聞いた実力とは違うな)

 リュウガからすれば充分自分を殺せる実力を持った2体の戦いではあるが龍帝の実力は聞いていたものほどのものを感じないのだ。それは千里眼で視ているウェンそして戦っている骸龍も感じていた。

(こんなもんではないだろうがそれならそれで構わねぇんだよな。このまま殺してこいつを骸骨兵にすれば冥府の戦力は更に強化される)

 そう考えて体中に死の気配を纏う。この状態の骸龍に殴られるとその部位が死んだ状態になる。例えば、右腕が殴られれば右腕が一生動かなくなるといったものだ。これは回復魔法では治せる類のモノではなく生命を司るウェンでようやく生活に支障が出ない程度の回復しか目込めない。その状態になったのを見て龍帝は少し下がり、

(面倒だな。死の気配に含まれる魔力より多くの魔力で覆えば部位殺しは喰らわずに済むがそんな事に魔力を使うのは勿体ねぇ)

 はぁ、とため息をついて、

「久しぶりの龍との戦いを楽しみたかったんだがそっちがその気ならしょうがねぇよな」

 そう小さく呟く。龍帝を見ているリュウガは龍帝の変化に気づく、

(何だ? 龍の気配とも違う。この気配はどっちかというと2代目、、に近い)

 これには、

(ギールス様に近いものを感じるな)
(龍帝の本気は雷そのもの。雷はとも呼ばれていた。それ故に雷を司る龍帝も龍神に至る可能性を秘めている)

 対峙している骸龍と千里眼で視ていたウェンも気づく。しかし、

「それで? そんなモノで俺の死の気配を防げると思ってんのか?」

 骸龍は余裕そうである。そうなるのも無理はない。向こうがどんなに神の気配に近いとはいえあくまでも近いというだけ。本物の神達には程遠い。そんな事は神により造られた存在である骸龍は良く知っている。

「防げるに決まってんだろうが。所詮テメェも神に造られた存在ってだけで神の力を行使している訳じゃあねぇんだからよ」

 龍帝の言う通りではあるが骸龍が纏う死の気配は強力であり並みの龍でも魔力を全開にしても5分しかもたない程だ。それでも龍帝は確信している。本気の自分なら影響を受けずに戦える事を。そして、

(動くか?)

 凄まじい殺気を感じたリュウガは2体が再び動くのを予感する。ようやく見れる2体の龍の本気を死ぬ気で一瞬も見逃さないようにするが、

「はぁ!?」

 思わず声が出てしまう。それもそのはずだ。リュウガは一切の瞬きすらしてない。龍の高速戦闘も目でならできるまでにはなっていた。そのリュウガですら全く目で追う事が出来なかったのだ。気づいたら骸龍の骨の鎧は砕けて空中に吹っ飛ばされていた。

(クソが! 速すぎんだろが! 俺が動き出す前には四方から殴られて蹴り上げられるだぁ!?)

 吹っ飛ばされた骸龍ですらやられた感覚で何をされたか判断しただけで実際には目で追う事が出来ずにいた。そんな骸龍を龍帝は追撃する。雷そのものとなった龍帝の攻撃は一撃一撃が雷と同様の威力を有しており相手が龍であってもこの連撃から抜け出せなければ死ぬのを待つだけとなる。

「調子に乗んな!」

 激昂した骸龍は反撃を試みようと再び骨の鎧を形成するが何の意味もなさないままに龍帝の猛攻により破壊されボコボコにされる。その様子にリュウガは、

「凄ぇ」

 感動していた。もう目で追う事も出来ない雷の速度の猛攻を重ねる龍帝ではあるが本気を出す前の高速戦闘の時も思っていたが、

(俺の理想だ。速さで圧倒して相手を叩き潰す。それが雷速ともなれば最強といっても差し支えないつかだろ)

 練式剣術もそうだが基本的には相手を瞬殺するのが理想なのだ。それを雷速で行う龍帝はリュウガにとっての理想なのだ。

に殺されるなら本望だな)

 なんて思うほどには憧れの表情を浮かべてしまっている。そんなリュウガの羨望の眼差しなど艶知らずに2体の龍の殺し合い、、いや、龍帝の一方的な虐殺は止まらない。

(クソが! 反撃の隙がねぇ! そもそも雷そのものとはいえ死の気配を纏ってる俺をこんだけボコボコに殴って何ともねぇのかよ!)

 そうなのであるが死の気配の効力を龍帝は無視出来ている。これは龍帝の予想通りだった。やはり所詮は神により造られた龍の死の気配では雷そのものとなった龍帝に影響を及ぼす事は出来なかった。しかし、これが骸龍の本拠地である冥府ならその力も完全となり結果は変わっていた。だが今は地上での戦闘だ。一応それでも並みの龍なら殺せるだけの力を骸龍は有していたが今回は相手が悪すぎた。

「こんなもんが冥府の王の最高傑作か! 大した事ねぇなぁ! こんなもんならこのままボロ雑巾みてぇになるまで殴り続けてやるよ!」

 そんな物騒な事を言って龍帝の攻撃は苛烈さを増す。それに対して、骸龍は覚悟を決める。

 ギャオオオオォォォォ!!!!

 という咆哮と共に龍の姿になる。この姿となった骸龍は並みの龍の2回りはデカイ。そのため的になるからと人型で戦っていたのだがあの姿では嬲り殺しにされるくらいならと変化したのだ。そうする事によって死の気配のよる効力を9割まで上げられる。それでも、

「阿呆が! 的になるのが分かってて人型での勝負に乗ったってのになぁ!」

 そう言って腕を振り下ろす。ただそれだけで無数の雷が骸龍を襲う。

万雷襲雷ばんらいしょうらい

 本来は広域殲滅の技なのだが骸龍がデカいために結構な数の雷が骸龍に降り注ぐ。

「クソがぁぁぁぁ!!」

 骸龍はタダ叫ぶしか出来ない。ウェン、それに龍皇とリュウガが本気で戦っても勝てないようなバケモノですら勝てるかどうかというバケモノである骸龍がだ。これには、

を超える強さを身につけなきゃ神になる以前に殺されるのか」

 ハハッと笑う事しか出来ない。正直今のリュウガですら人間の領域を超えている。それでもアレには届くビジョンが見えない。それでも、

「アレを超えた瞬間は最高に気持ちいいだろうなぁ」

 その瞬間を想像して興奮する。

「見に行って正解だったでしょう?」

 いつの間にかウェンがいて語りかける。

「いつからいたんだ?」

 結構はしゃいでいたので普通に恥ずかしい。それに対してウェンは笑みを浮かべながら、

「主様が凄ぇと龍帝を見ながら呟いたあたりからですよ」

 と言われ。

(そこそこ前からいるな。それに気づかないってアホかよ)

 と思ったが、

「いいんですよ。それだけ集中して龍帝の戦いを見ていたという事なんですから」
「そう思ってくれるなら助かるよ」

 と言ってから、あっ! と思い出す。

「お前! ギルドの防衛はどうしたんだよ!」

 と詰め寄る。

「安心してください。ギルド、、ひいては国全体にわたくしの結界をほぼ全ての魔力を使って覆いましたからね。それにあの様子では骸龍が龍帝に勝つ事は不可能でしょうからね」
「まぁ、お前がそう言うならそうなんだろうな。それにしてもお前から聞いた実力よりも高い気がするんだがあんならもんなのか?」
「そうですね。最後に会ったのが結構昔なのですが確実に昔より強くなってますね」

 そんな会話をしている最中も雷がゴロゴロ! という音と共に降り注いでいる。

「いつまで降り注いぐんだ?」

 終わりの見えない雷撃にウェンに聞いてみる。

「10万の雷が降り注ぎます。ですが今回はかなり範囲を絞っていますよ。本来ならこの国全体に降り注ぎますからね」
「範囲を絞っても半径5kmは狂ってんだろうが」

 あまりの攻撃範囲に絶句する。

「それが龍帝の力ですよ。力も速さも技巧も全ての龍のトップとして君臨しているのです」

 と言うウェンの言葉に、ん? と疑問を持ったので、

「前に覇龍の方が強いって言ってなかったか? 今の言い方だと明らかに龍帝の方が格上に聞こえるが?」
「そうですね。覇龍は能力が反則チート級に強いですからね。結果としては覇龍の方が上になるんですよね」

 と言った話をしていたら、

「それよりも見た方が良いですよ。決着が付きますよ」

 言われてみれば既に雷は鳴り止んでいた。そこにはボロボロの骸龍が倒れ伏していた。ボロボロになってもまだ殺気は衰えずにいた。

「認めてやるよ! お前は強い! それでも、最後に立つのはこの俺だ!」

 そう言って口からアストラを覆った死の霧を放つ。この霧は地面に尾を突き刺して開かれた冥府の門から放つ技だ。今まで骸龍が纏っていたものよりも高い効力を誇る。これはまともに喰らえば龍帝すらも殺して骸骨兵に出来る代物だ。

『豪雷一閃』

 右手を手刀の形にした抜刀術の構えからの一閃は死の霧を吹き飛ばしてそのまま骸龍を両断してしまった。

(死閃の雷速版みたいなもんか?)

 と分析するも、

「まぁ、雷を纏った一撃である以上副次効果もあるだろうから完全に俺の上位互換だな」

 終始龍帝が圧倒して終わった。それでも、

「(2代目との訓練とウェンの訓練で確実に強くはなってるが足りねぇ。だが龍帝の実力を見れたのデカかったな)よし。帰ろうぜ」

 そう言ってウェンを連れてギルドに帰ろうとする。そんな2人を龍帝は鋭い視線が貫いた。

                         ~冥府~

「ふむ。骸龍が壊されたか。まぁ、また造れば良い。それに骸骨兵は回収出来たし何の問題ない」

 黒のマントに身を包んだ骨で出来た椅子に座る優男、冥府の王ギールスは怪しく笑う。そこへ、

「まだ現世への未練があるのですか?」
「そりゃそうだろう。ゴミみたいに多く存在する生き物を俺の配下にしたらお前のいる天界も俺の世界に出来るからな」

 現れた生命神フルールドリスに野望を語りかける。それに対して、

「無理ですよ。あなたはいずれ死にますからね」
「ただの傍観者が粋がるな」

 今ここで殺し合う雰囲気が出てはいたが、

「ふふっ。これは思念体ですから無駄ですよ~」

 笑ってギールスをおちょくってから冥府からフルールドリスは姿を消した。

「せいぜい天界でふんぞりかえってろ。クソガキが」

 そう言って椅子を破壊した。その様子を龍神である龍鬼は千里眼で視て、

「成程な」

 と呟きその眼を閉じるのだった。




 



 


 

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