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30話 バラしました

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「おかしいでしょ」
「おかしいですね」
「おかしい」
「おかしいわね」
「おかしいところしかないですね」

 冒険者達がおかしいと言ってるのはウェンの依頼をこなすペースの事だ。どんなに優秀な若手でも毎日1回の依頼をこなすというのは中々に骨が折れる事になのだがウェンはそれをやってのけるどころか毎日3回依頼をこなしているのでこれはありえない。

「サブマスと同じ出身って言ってましたけどワ国の人間はそんな人ばっかり何ですかね?」
「あり得るわね」

 そんな予測を立てるソウとルイにうんうんと頷くラン。それに対して、

「いや、そもそもギルマスも最初に依頼に制限をかけたのに解除したのが怪しい」
「ですよね」

 ゴウとハンザの大人組はギルドマスターであるマイが自身がウェンにかけた制限を解除したのを訝しんでいた。

 そんな様子を気にも止めずウェンは今日も依頼をこなす。

「あっという間にCランクですね。この調子なら主様と同じSランクに昇るのも時間の問題ですね」

 早いものでウェンがギルドに入ってわずか2週間でCランクに昇ってしまった。これには、

「あのギルマス、サブマス、ウェンは何者ですか?」

 ゴウが流石に突っ込む。他の冒険者達も良く聞いてくれたと言わんばかりの顔をしている。

「え? 何で急に?」

 明らかに突っ込まれて焦った表情になるマイ。

(顔に出過ぎたバカ)

 リュウガは心の中で突っ込みを入れるが、

(まぁ、流石に2週間でCランクはやりすぎたな)

 2週間でCランクまで昇ったのはレイ・カグラザカのみであり、最年少でSランクに昇ったルイですらCランクになったのは1月かかっているのだ。そんな偉業を成し遂げたウェンを冒険者達が気になるのも仕方ない。

(バラすか?)

 誤魔化す事も出来るがどうせいつかはいけない事だ。問題としては信じて貰えるのかという事だ。

(俺が頼めばウェンは正体をバラすのをOKするだろ)

 その点はマイにバラした時に分かっているので問題はない。

「ウェン、バラして良いか?」

 どの依頼を受けるか掲示板とにらめっこしているウェンに問いかける。

「主様が必要とするなら構いません」
「分かった、全員集合!」

 冒険者だけでなくヒカリ、受付嬢、料理人、錬金術師のアズサにも集合をかける。どうせバラすなら全員に言っておこうと思ったからだ。

「ウェンの事なんだが、

 リュウガは語った。ウェンの正体が龍である事。自分の一族が龍神である事。ウェン以外の龍から命を狙われている事とマイにも言ってなかった事すら全部バラした。

 そういう事だから確実に迷惑をかける。すまん」

 そう言って頭を下げるリュウガ。それに対して、

「いやいや、情報量が多いです」
「ていうか、わたしも知らない情報あったんだけど!」
「悪いな、どうせバラすならと隠してた事全部言っちまおうと思ってな」

 そう言ってはいるがその言葉には嘘がある。隠し事の1つである異世界の事やその世界で殺しを沢山行った事は隠してある。それにはマイも気づいているが、

(リュウガが喋らないならわたしからは何も言わないよ)

 と、黙認してくれてる。それよりも大事なことがあるからだ。

「サブマスター、龍と殺し合いになるからギルドの迷惑になるから辞めるなんて言わないよね」

 マイが真剣な表情でリュウガに問いかける。それに対して、

「前回も似たような事があったがあれよりもヤバい事だから辞める気ではあったな、何せ他のメンバーにも危害が加わるかもしれないからな」

 そうなのである。前回あった殺し合い、あれはバルトがリュウガにしか興味がなかったので他のメンバーに危害がなかっただけで今度はいつ龍が襲って来るか分からないので他のメンバーにも危害が及ぶ可能性があるので辞める事も視野に入れていた。

「大丈夫ですよ」
「冒険者ギルドにいる以上危険があるのは仕方ないですからね」
「死ぬのはごめんですけどね」

 皆笑って受け入れてくれた。

「結構深刻な問題だと思うんだが」

 リュウガは突っ込むが、

「「「「勝つでしょ、サブマスは」」」」

 皆信じているのだ。リュウガが勝つ事を、

「良い仲間達ですね」

 ウェンが優しく語りかける。

 ハーっと、息を吐いてから、

「勝つよ、勝って神になってやるから今の内に崇めておけよ」

 と冗談を言って笑った。




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