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幕間2 リュウガの過去〜終わりまで

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  龍牙は一族を皆殺しにした後は、日本各地のヤクザ、詐欺グループ、殺人犯を殺して回った。これらは日本を騒がせ、【英雄えいゆう】 【正義せいぎ味方みかた】 【日本最強にほんさいきょう】 などと呼ばれていた。

(やってる事はただの人殺しなんだがな)

 そんなふうに呼ばれているが彼にとってはそれが普通なのだ。何故なら彼は人殺しでしか生きる術を知らないのだ。そのため家を出ても殺しで生計を立てていた。壊滅させた犯罪組織の資金でホテルに泊まり飯や酒を飲み食いしていた。それ以外にも様々な事に金を使った。漫画やライトノベル、ゲームといったモノから遊園地、動物園、水族館といったアミューズメントパークといったモノだ。更には様々な言語を学び、資格を習得した。彼は人生を楽しみ尽くしていたのだ、綾乃の分まで。そうして8年が経過した。

(国を出るか)

 彼がそう考えた理由は単純に。日本にはもう犯罪組織と呼ばれるモノが存在しない。彼によって全滅させられてしまった。犯罪をしようとする者もいなくなり彼の資金源がなくなったのだ。
 
 国を出る、そう考えた彼はまずは中国へ渡った。渡ってから暫くは現地のマフィアや人身売買や臓器売買を行っている組織の動向を調べる事に注視した。そうする事で壊滅をスムーズに済ませようとした。何せ日本よりも圧倒的に広いのだから。そうして2で壊滅させた。
 
 その後、中東、ロシア、ヨーロッパと次々と壊滅させた。しかも、それを3でやり遂げた。そうした結果、全世界に彼の存在が知れ渡り遂にはと呼ばれた。名前こそ知られてないもののその人物は日本人だということが足跡から知られた。

(まぁ、しょうがないよな)

 これだけ派手に暴れれば裏社会だけではなく表社会に知られるのも当然だ。それでも彼は生き方を
 そんな彼が次に選んだ土地は北アメリカだ。北アメリカでも犯罪組織を壊滅させた。
 
(次は南アメリカか)
 
 次に向かう土地を決めた、丁度その頃南アメリカではある殺人鬼が話題になっていた。殺人は全てが心臓をナイフで突き刺すというものだ。被害者は、警官、主婦、軍人、政治家など様々だ。唯一の共通点は全員クスリの常習犯だという事だ。犯行は全て人混みでやってのけるのだ。その犯行に、

(こいつは、もしかしたら)

 リュウガは自分と同じに立つ奴なのではと考える。人混みでの犯行。相当の速さでやらなければ周囲の人間にばれてしまう。そんな無茶を100件以上もやっいている。

(コイツは俺のの相手になるかな)

 そんな考えが頭によぎるが戦いたい気持ちが強かった。とりあえずは1番最後の犯行があった地域に行く。もう移動したかもしれないが何も行動しないよりはマシだ。昼夜問わず探す事、1週間が経過した。別の地域を探すか、そんな事を考えた満月の夜、出会いは突然だった。

「初めまして、世界最強」

 話しかけて来たのは白髪の痩せ型の男だった。年齢は龍牙と同じ位だ。

(やっぱり俺と同じだな)

 一目で分かった。自分と同じく強さが理不尽の領域にある人間だと。バケモノ同士の殺し合いが始まろうとしていた。

 殺気が2人の周囲を覆う。一般人がその場にいたらその殺気だけでする程だ。突然2人が消える。

 ガキンッ!!

 刀とナイフがぶつかる音が響く。殺人鬼が使っているのはサバイバルナイフのようだ。凄まじい速度で斬り合う、2人共深手は避けてるが所々出血している。

(強い! それに完全に互角!)
(このままの調子でり合えば出血多量で相打ち!)

 そんな事は許さない。最強は1人しかいらないのだ。だから殺す。どんなに怪我を負ってでも殺したい。そんな2人が出した結論は同じだった。

((最高速度で心臓を吹っ飛ばす!!))

 2人は間合いを取る。互いに自分の最高速度さいこうそくどが活かせる状態に入る。

(( これで、最期だ!!))

 バケモノ2人は、最初の激突よりも更に速く突進する。どちらも同じ速度だ。このままいけば2人は死ぬ。
   
 ドッカーン!!

 凄まじい音が響く。2人が衝突する刹那に爆撃された。2人がでは無い。街そのものがだ。アメリカ政府は2人のバケモノが街にいる情報を掴み、夜寝静まった街を市民もろとも爆撃する強行手段を取ったのだ。近くを爆撃され吹っ飛ばされた龍牙は、

「あの野郎は? どうなった?」

 呟く。おそらく向こうもどこかへ吹っ飛んだようだが、今はそれどころじゃない。おそらくこの爆撃は街を更地にするまで止まらない。そう判断して街を駆け抜ける。その間にも爆撃は止まらない。辺り一面が焦土と化していくのを無視して駆け抜ける。
 
 結果として、龍牙は逃げ切った。逃げ切ったが最高速度で1時間も駆け抜けたせいで両足はボロボロ。特に利き足の右は骨折している。左もヒビが入っている。

(あの野郎と決着が着けたかった)

 爆撃から生き延びたが初めて会った自分と同じの人間そいつと決着を着けられなかった事の方が彼には心残りのようだ。
      

 
 龍牙は街のテレビであの爆撃はとあるテロ組織が行ったものと報道されているのを聞いた。

(そいつらは俺が殺したよ)

 どうやら今回の1件をアメリカ政府は隠し通すらしい。それもそのはずだ。たった2人の人間を殺すために市民に知らせず街ごと爆撃しました、なんてのは世間が許すはずがない。

(あの野郎がまた殺人を起こすのを待つか?)

 あの野郎とは、殺人鬼である。龍牙は奴も生き残っていると確信している。自分と同じの人間ならば最初の爆撃が直撃でなければ生きている。そして最初の爆撃が直撃でないのも確認出来ている。

(待つ間どうするかな?)

 考えていると、新たなニュースが流れる。

「続いてのニュースです。世界で話題の犯罪組織殺しの顔が判明しました。こちらをご覧ください」

 驚いた。テレビに目を向けると、自分の顔が映っていた。暗くて見づらいが確かに自分だ。おそらく、爆撃の際に撮ったのだろう。

(不味い!)

 気配を消して一気に人混みを駆け抜けた。

(俺が映ったってことは、あの野郎も)

 彼が消えた後、テレビではアメリカを騒がせた殺人鬼の顔も公開されていた。

(もう、街中を堂々と歩けねぇな)

 今までは、相手を全員殺してかつ誰にも目撃されなかったため、大丈夫だった。しかし、それもとうとう終わりを告げた。
 
 彼、練龍牙がこの世を去るまで3



 龍牙の顔が全世界にバレてから2ヶ月が経過した。森で獣を狩り、山菜を採ったり、川で魚を獲ったりして生き延びていた。しかし、



 そう思い始めていた。

(そもそも、世界中の犯罪組織はほぼ壊滅させたし生きる意味がねぇな)

 そうなのである。世界中の犯罪組織は龍牙によりほぼ壊滅しており、一部残ってはいるものの彼の存在に怯えて活動していないのが現状である。
 
(どこでどう死ぬかだな)

 と、自殺方法を考えていると、

 ガサガサッ!

 と、音と共に1人の女性が現れる。龍牙と同い年ぐらいだ。

「ありゃ、珍しいね? こんなところに人がいるなんて。しかも日本人? だとしたら奇遇だね~。わたしもだよ!」

 何やら興奮して話しかけくる。どうやらこの女性は龍牙の事を知らないらしい。

「俺もこんなところで日本人に会うとは思わなかったよ。なんでいる?」
「わたしこの近くの小さな村に住んでるんだ。8才から」 
「なんでだよ? 親は?」
 
 龍牙の疑問に、

「親に売られたんだよ」

 まさかの発言だった。

「姉も日本のどっかの家に売られてさ。今頃両親はわたしたちを売ったお金で暮らしてるよ」

「糞親だな。つーかお前その格好」

 リュウガは彼女の服装がボロボロになってるのに気づくそして彼女から匂うの匂い、

「(こんな森の村って事は他との交流がないから、他所から女を買ってそいつにガキ産ませてやがるな)気に入らねぇ」

 静かに怒りを表し、彼女に聞く、

「おい、お前名前は?」
綾香あやか。苗字は忘れた」
「はぁ?」

 龍牙は、まさかと思い、

「姉の名は?」

綾乃あやのだよ?」

 龍牙は遠く離れた地でまさかの自分の初恋の相手の妹に出会う。確かに良く見ると似ているが妹がいるなど知らなかった。だが今はどうでもいい。彼女の、綾乃の妹が汚されている。その事実を彼が耐えれる筈もなく。

「村の場所を教えろ」
「ここから南に2キロだよ? それが?」
「ここで待ってろ」

 そう言い残し、彼は駆け出した。村人を皆殺しにするために。



「待たせたな」

 龍牙は一仕事終えて戻ってきた。森の小さな村に銃火器なんかがある訳もなく通信手段もないため、彼にとっては簡単な殲滅戦だった。

「もしかして、殺した?」

 明らかに血の匂いがして彩香は聞く。

「あぁ、お前の話聞いてムカツいたからな」

 嘘は言ってない、ただそれだけではないのだが。

「それだけじゃないよね? 姉の名前を聞いてから顔がかなり怖かったよ?」

 どうやらバレているようだ。龍牙は全てを話した。自分は姉を買った家の人間である事、姉が初恋の相手である事、そして姉を守れなかった事も、そして今まで沢山の殺しをした事その全てを。

「姉を守れなかった事許せないなら俺を殺してくれ、妹のお前は復讐する権利がある」

 そう言い、刀を渡そうとするが、

「子供だったんだから守れないのはしょうがないよ。それに姉はそんな事して欲しくないと思うよ」

 と刀を突き返された。

「羨ましいな~、姉さんが。あなたみたいなイケメンにここまで思われてるなんて」

 自分の事のように嬉しそうだ。

(似てるな、笑ってる顔も優しさも)

 龍牙がそんな事を思っていると、

「ゲフッ、ゴホッ!」

 と綾乃が突然血は吐く。
 
「どうした?」

 突然の吐血に焦る龍牙に対して、

「大丈夫、わかってるから」

 彩香は落ち着いている。

「あんな村にいたんじゃ病気になるのも仕方ないからね。それにわたしはただの苗床だから病院にも連れてて貰ってないからね」
「ふざけんな、絶対死なせない! 医者に診てもらえばいいだろ!(普通の病院は無理だが闇医者なら)」

 必死に助ける方法を考えるが、

「ありがとう。だけどね、自分の体は自分が良く知ってる。助からない」
「そんな事言うな! 好きだった女もその妹も救えねぇなんて俺はごめんだ!」

 龍牙の顔は涙でグシャグシャだ。

「せっかくのイケメンが台無しだよ。それに会ったばかりのわたしにここまで言ってくれるなんて嬉しいよ。だからさ、お願いがあるんだ。聞いてくれる?」

 涙を拭き、
 
「言ってみろ、絶対叶えてやる!」
「姉さんと同じ場所で眠りたい」
「任せろ!」



 1ヶ月後、日本のとある森に2人は来ていた。龍牙は彩香を背負う形でいる。もう限界が近いようだ。

「ここだ」

 森を抜けると、花畑が広がっている。

「綺 ・・麗・・だね」

「見えるか? 中央にある桜の木。あそこに綾乃は眠っている」

 桜の木の根元に彩香を下ろし自分も腰掛ける。

「あり・・がとう」

 彩香は辛そうだ。

「気にすんな」

 龍牙もそんな彩香に対して震える声しか返せない。

「手・・握・・って」

 黙って手を繋ぐ。

「姉さんを・・わたしを・・大切にしてくれて・・ありが・・」

 ありが・・その言葉が続く事はなかった。龍牙は泣いた。昔綾乃を守ることが出来なかった時とは違い願いを叶えてあげる事は出来た。だから声をあげて泣く事はなかった。それでも悲しい事は悲しいのだ。 


 
 ひとしきり泣いて落ち着いた後、彩香を埋葬した。その後龍牙は海へと向かった。死ぬために。
 
「約束は果たした」

 後悔や悔いがない訳ではない。それでも綾香の願いを叶える事が出来たのだ。

「ここが俺の終着点だ」

 胸に刀を突き刺さした勢いのまま後ろへ倒れる。落ちる感覚があり、最期を迎えれることに安堵する。そして、 

 ガッシャーン!!
 
 ドサッ!

「いってえ~(何かおかしくね?)」


 周りを見る、建物だ。おかしい、自分は海に落下した筈と疑問に思う。そこへ、

「いや~、びっくりだね~。まさか空から人が降ってくるなんて、世の中何があるか分からないもんだね~」
 
 現れたのは彼が愛した女性と妹に似た顔をした手には杖を持った女性。

「わたしはマイ・クルルガ。運命うんめい宿木やどりぎギルドマスターの魔法使いだよ!」

 これが練龍牙としての人生が終わり、リュウガ・レンの人生が始まった、の日である。

 
 

 


 

 
 
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