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第8話 霊感少女、いじめをす? 後編
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「今、何て言ったんだっ? もう一度言ってみろっ!」
「……、……」
な、なんだ?
突然、怒声が教室に響いた。
見ると、新田が大伴の胸ぐらを掴んでいるじゃないか。
だけど、大伴はいつもの通り、無表情のままだ。
俺は、近藤と顔を見合わせたよ。
そして、すぐに二人で駆け寄ったんだ。
「新田君……、今日から私があなたをいじめてあげるわ。そう言ったんだけど、聞こえなかった?」
「こ、こいつ……。頭おかしいのか? おまえが俺をいじめるだと、笑わせるなっ!」
お、大伴が新田を……?
おいっ、気持ちは分かるけど、何を言ってるんだよ。
祖父ちゃん、止めてやってくれ。
大伴がおかしくなっちまった。
「笑っていられるのも今の内よ。今晩から、あなたは私の言葉の意味を知ることになる」
「うっ、うるせえっ!」
激怒した新田が、左手を振り上げた。
いかんっ!
新田に殴られたら、細くてちっこい大伴なんて、すぐにぶっ飛んじまう。
「待てよ……、……、新田」
「ゆ、結城? おまえには関係ないだろうがっ! て、手を放しやがれっ!」
「……、……」
「くっ、な、なんて握力だよ……。い、痛えよっ! は、放しやがれっ!」
俺は、殴りかかろうとした新田の手首を、思い切り握りしめてやったよ。
剣道で鍛えた俺の左手の握力は、80キロある。
りんごを握りつぶせるこの握力に、耐えられるか、新田?
「い、痛えよっ、放せっ……」
「おまえが先に大伴を放せ」
「くっ……。ほ、ほら、放しただろう?」
「……、……」
ようやく、新田は大伴の胸ぐらを掴むのを止めた。
だから、俺も新田の手を放してやった。
本当は、このまま握りつぶしてやりたいとさえ思ったけど……。
「何だよ、こいつらっ! 大伴はわけ分からねーし、結城はその大伴を庇うし……」
「……、……」
「さては……。そうか、おまえら二人、出来てるのか。最近、仲が良さそうだしな。ふんっ、霊感少女と剣道バカか。お似合いだぜっ!」
「……、……」
新田は、捨てゼリフを残して、俺達から離れて行った。
薄ら笑いを浮かべ、左手首をさすりながら……。
あとには、気持ちの昂ぶった俺と、心配そうに俺と大伴を見較べる近藤と、何事もなかったかのように平然としている大伴が、その場に立ちつくしていた。
周りに他のクラスメイトがいて、少しざわついていたみたいだけどな。
に、新田の野郎っ!
次は、こんなもんじゃ済まさねーからな。
覚えておけよ……。
今度、大伴や牧田に手を出したら、承知しねーぞっ!
俺は、剣道部の練習に出ないで、牧田と一緒に下校したよ。
まあ、牧田を送ってから、もう一度学校に戻って、途中から練習には参加したけどな。
牧田は、俺がどうしてそうしたのか、察しているようだった。
大伴が暴走したのだから、きっと新田は牧田に矛先を向けてくる。
卑怯な奴ってのは、大抵、そうしたもんだ。
俺は、放課後になっても気持ちが昂ぶったままだった。
ただ、この判断は冷静だったと思う。
そう……、俺は大伴とは違う。
第一に考えてやらなきゃいけないのは、牧田のことだ。
感情のままに暴走すりゃあ良いってもんじゃないんだよ……、大伴。
だけど……。
俺も大伴と同じ気持ちだったけどな。
新田が、心底憎らしかった。
大伴が暴走しなきゃ、多分、いつか俺が暴走していたことだろう。
でも、大伴?
おまえ、新田をいじめるって、本気だったのか?
何が、
「今晩から、あなたは私の言葉の意味を知ることになる」
だよ。
超わけ分からねーよ……、俺も。
数日は、このまま牧田を送ってやらなきゃいけないと思っていた。
……って言うか、いっそのこと、牧田が剣道部に入部すれば良いんじゃないかと思ったくらいだ。
だけど、牧田にそう言ったら、ソッコーで拒否されたけどな。
牧田って、絵を描くのが上手いらしいんだ。
だから、剣道なんてやってる暇があるのなら、家で絵を描いていたいってさ。
まあ、人それぞれ、楽しいことは違う。
おまえはおまえの好きなことをやれば良いさ……、牧田。
しかし、俺の思惑は外れたよ。
新田が、あの日以来学校に出てこないんだ。
もう、一週間になるかな。
村上先生によると、体調不良らしいけど……。
まさか、俺が握った手首が痛いからじゃないだろうな?
太い腕をしてるんだから、あれくらいじゃどうともなるわけがないはずだ。
それとも、あれを口実にずる休みしているだけか?
ようやく新田が登校してきたのは、大伴が暴走してからちょうど一週間目だった。
何か、新田の奴、青い顔をしていて、頬がげっそりこけたようだ。
それに、目の下にハッキリと分かるほどクマができているじゃないか。
確かに体調不良っぽいけど、突然、こんなことになるなんてな。
まあ、自業自得ってやつだろ。
ただ、万一、俺が手を握ったせいだとしたら、ちょっと後ろめたい。
だから、一応、新田に謝っておこうと思う。
いや、そんな必要はないかな?
悪いのは新田だし……。
そんな風に迷っていたら、新田が近寄って来るじゃないか。
とは言っても、俺に用があるわけじゃないらしい。
隣の置物……、大伴を悲壮な顔で見つめている。
「お、大伴……。おまえの仕業だな?」
「……、……」
「俺が何をしたって言うんだ? 突然、いじめるとか言い出して、こんなことをするって卑怯だろ。俺、おまえに何もしてないじゃないか」
「……、……」
に、新田?
何を言ってるんだ?
大伴は、平然としたままそれを聞き流している。
まあ、新田の体調不良の理由が、俺の握力によるものでないことだけはこれでハッキリしたけどな。
「おまえがその気なら、俺にも考えがあるぞっ! 大伴……、おまえをぶちのめすくらい、簡単なことなんだからなっ!」
「……、……」
「おいっ、何とか言えよっ! 今、謝ったら許してやる。おらっ、謝れ……。謝れって言っているのが分からねーのかよっ!」
「……、……」
新田はいきり立っているが、大伴はそれをチラッとも見ようとしない。
まるで、そよ風でも吹いているように、いつもと同じように無表情のままだ。
「こ、こいつっ!」
「……、……」
新田が、また、大伴の胸ぐらを掴んだ。
この卑怯者がっ!
弱い奴と見ると、すぐに暴力を振るおうとしやがって。
俺は、すかさず、立ち上がった。
今度は本気で握りつぶしてやろうと思って……。
「1947年7月アメリカ合衆国ニューメキシコ州ロズウェルから120キロほど離れた牧場に円盤型の飛行物体が墜落した。これがいわゆるロズウェル事件である。墜落場所が牧場であったため見物人も多く集まり数々の目撃談が残されてしまった。飛行物体の中に宇宙人が乗っていた……、などの証言をする者が少なくなかったと言う。米軍は、7月8日のプレスリリースで、墜落物体を空飛ぶ円盤と発表したが、後に気象観測用気球であると訂正し、事実関係を否定……」
「ひ、ひいっ……。や、やめろっ! やめてくれ……」
な、何だ?
大伴の奴、何を言い出したんだ?
それに、新田の奴、涙目で怯えてるじゃないか。
大伴の胸ぐらも放して、頭を抱えている……。
「もう何百回も聞いているから、私も覚えてしまったわ。どう? 生前、オカルト研究家だった飛鳥さんのUFO話は、面白かったでしょう?」
「や、やめろ……。俺のすぐ隣で、ずっとその話をされてるんだ。ね、眠れないんだよ」
「飛鳥さんは、宇宙人を見るまでは成仏なさらないから、これからもたっぷり聞かせてもらえるわ」
「ゆ、許してくれよっ……。何だか分からないけど、俺が悪かったよ」
お、オカルト研究家の飛鳥さん?
誰だ、それ……。
つ、つまり、その飛鳥さんの霊を、新田にけしかけたってことなのか?
大伴が……。
まさか、一週間、ずっとそのUFO話を聞かされていたのか?
新田は……。
俺は、立ち上がってみたけど、何もすることがなかったんで、取りあえず座ったよ。
新田も、もう最初の勢いはなく、怯えっぱなしだしな。
「いやよ……。それに、私は何も悪くないわ。新田君と同じようにね」
「お、大伴……、そんなこと言うな……。お、俺が悪かったよ。何でも言うことを聞く。だから……、お願いだから、飛鳥さんを止めてくれっ!」
「……、……」
「な、何をしたら良いんだ? 俺、何でもするよ。舐めろと言われたら、大伴の上履きだって舐める。だから……、な」
新田は、本当に上履きを舐めそうな勢いで、土下座を始めた。
あ、あの新田がだぞ……。
目に涙を浮かべ、なりふりかまわず大伴に懇願してるんだ。
だけど、大伴は、新田をチラッと見ただけだ。
そして、相変わらずぼそぼそした口調でこう言ったよ。
「何が悪かったかは、自分で考えることね」
と……。
それきり、もう、新田が何を言っても、大伴は何の反応も示さなかった。
俺だけじゃなく、近藤も、長谷川も、田中も、関口も……。
皆、呆然としたまま、いつも通りの大伴を見つめるだけだったよ。
それから、牧田が新田にいじめられなくなったそうだ。
牧田は、嬉しそうにそう俺に報告してくれた。
だけど、牧田……。
昼に弁当を持ってきて、一緒に食べようと言うのは止めろよ。
俺、大伴達と同じグループなわけじゃないしな。
長谷川もいるんだから、そっちと一緒に食べろ。
俺は、もう、早弁しちゃって、食べる物がないんだからな。
「……、……」
な、なんだ?
突然、怒声が教室に響いた。
見ると、新田が大伴の胸ぐらを掴んでいるじゃないか。
だけど、大伴はいつもの通り、無表情のままだ。
俺は、近藤と顔を見合わせたよ。
そして、すぐに二人で駆け寄ったんだ。
「新田君……、今日から私があなたをいじめてあげるわ。そう言ったんだけど、聞こえなかった?」
「こ、こいつ……。頭おかしいのか? おまえが俺をいじめるだと、笑わせるなっ!」
お、大伴が新田を……?
おいっ、気持ちは分かるけど、何を言ってるんだよ。
祖父ちゃん、止めてやってくれ。
大伴がおかしくなっちまった。
「笑っていられるのも今の内よ。今晩から、あなたは私の言葉の意味を知ることになる」
「うっ、うるせえっ!」
激怒した新田が、左手を振り上げた。
いかんっ!
新田に殴られたら、細くてちっこい大伴なんて、すぐにぶっ飛んじまう。
「待てよ……、……、新田」
「ゆ、結城? おまえには関係ないだろうがっ! て、手を放しやがれっ!」
「……、……」
「くっ、な、なんて握力だよ……。い、痛えよっ! は、放しやがれっ!」
俺は、殴りかかろうとした新田の手首を、思い切り握りしめてやったよ。
剣道で鍛えた俺の左手の握力は、80キロある。
りんごを握りつぶせるこの握力に、耐えられるか、新田?
「い、痛えよっ、放せっ……」
「おまえが先に大伴を放せ」
「くっ……。ほ、ほら、放しただろう?」
「……、……」
ようやく、新田は大伴の胸ぐらを掴むのを止めた。
だから、俺も新田の手を放してやった。
本当は、このまま握りつぶしてやりたいとさえ思ったけど……。
「何だよ、こいつらっ! 大伴はわけ分からねーし、結城はその大伴を庇うし……」
「……、……」
「さては……。そうか、おまえら二人、出来てるのか。最近、仲が良さそうだしな。ふんっ、霊感少女と剣道バカか。お似合いだぜっ!」
「……、……」
新田は、捨てゼリフを残して、俺達から離れて行った。
薄ら笑いを浮かべ、左手首をさすりながら……。
あとには、気持ちの昂ぶった俺と、心配そうに俺と大伴を見較べる近藤と、何事もなかったかのように平然としている大伴が、その場に立ちつくしていた。
周りに他のクラスメイトがいて、少しざわついていたみたいだけどな。
に、新田の野郎っ!
次は、こんなもんじゃ済まさねーからな。
覚えておけよ……。
今度、大伴や牧田に手を出したら、承知しねーぞっ!
俺は、剣道部の練習に出ないで、牧田と一緒に下校したよ。
まあ、牧田を送ってから、もう一度学校に戻って、途中から練習には参加したけどな。
牧田は、俺がどうしてそうしたのか、察しているようだった。
大伴が暴走したのだから、きっと新田は牧田に矛先を向けてくる。
卑怯な奴ってのは、大抵、そうしたもんだ。
俺は、放課後になっても気持ちが昂ぶったままだった。
ただ、この判断は冷静だったと思う。
そう……、俺は大伴とは違う。
第一に考えてやらなきゃいけないのは、牧田のことだ。
感情のままに暴走すりゃあ良いってもんじゃないんだよ……、大伴。
だけど……。
俺も大伴と同じ気持ちだったけどな。
新田が、心底憎らしかった。
大伴が暴走しなきゃ、多分、いつか俺が暴走していたことだろう。
でも、大伴?
おまえ、新田をいじめるって、本気だったのか?
何が、
「今晩から、あなたは私の言葉の意味を知ることになる」
だよ。
超わけ分からねーよ……、俺も。
数日は、このまま牧田を送ってやらなきゃいけないと思っていた。
……って言うか、いっそのこと、牧田が剣道部に入部すれば良いんじゃないかと思ったくらいだ。
だけど、牧田にそう言ったら、ソッコーで拒否されたけどな。
牧田って、絵を描くのが上手いらしいんだ。
だから、剣道なんてやってる暇があるのなら、家で絵を描いていたいってさ。
まあ、人それぞれ、楽しいことは違う。
おまえはおまえの好きなことをやれば良いさ……、牧田。
しかし、俺の思惑は外れたよ。
新田が、あの日以来学校に出てこないんだ。
もう、一週間になるかな。
村上先生によると、体調不良らしいけど……。
まさか、俺が握った手首が痛いからじゃないだろうな?
太い腕をしてるんだから、あれくらいじゃどうともなるわけがないはずだ。
それとも、あれを口実にずる休みしているだけか?
ようやく新田が登校してきたのは、大伴が暴走してからちょうど一週間目だった。
何か、新田の奴、青い顔をしていて、頬がげっそりこけたようだ。
それに、目の下にハッキリと分かるほどクマができているじゃないか。
確かに体調不良っぽいけど、突然、こんなことになるなんてな。
まあ、自業自得ってやつだろ。
ただ、万一、俺が手を握ったせいだとしたら、ちょっと後ろめたい。
だから、一応、新田に謝っておこうと思う。
いや、そんな必要はないかな?
悪いのは新田だし……。
そんな風に迷っていたら、新田が近寄って来るじゃないか。
とは言っても、俺に用があるわけじゃないらしい。
隣の置物……、大伴を悲壮な顔で見つめている。
「お、大伴……。おまえの仕業だな?」
「……、……」
「俺が何をしたって言うんだ? 突然、いじめるとか言い出して、こんなことをするって卑怯だろ。俺、おまえに何もしてないじゃないか」
「……、……」
に、新田?
何を言ってるんだ?
大伴は、平然としたままそれを聞き流している。
まあ、新田の体調不良の理由が、俺の握力によるものでないことだけはこれでハッキリしたけどな。
「おまえがその気なら、俺にも考えがあるぞっ! 大伴……、おまえをぶちのめすくらい、簡単なことなんだからなっ!」
「……、……」
「おいっ、何とか言えよっ! 今、謝ったら許してやる。おらっ、謝れ……。謝れって言っているのが分からねーのかよっ!」
「……、……」
新田はいきり立っているが、大伴はそれをチラッとも見ようとしない。
まるで、そよ風でも吹いているように、いつもと同じように無表情のままだ。
「こ、こいつっ!」
「……、……」
新田が、また、大伴の胸ぐらを掴んだ。
この卑怯者がっ!
弱い奴と見ると、すぐに暴力を振るおうとしやがって。
俺は、すかさず、立ち上がった。
今度は本気で握りつぶしてやろうと思って……。
「1947年7月アメリカ合衆国ニューメキシコ州ロズウェルから120キロほど離れた牧場に円盤型の飛行物体が墜落した。これがいわゆるロズウェル事件である。墜落場所が牧場であったため見物人も多く集まり数々の目撃談が残されてしまった。飛行物体の中に宇宙人が乗っていた……、などの証言をする者が少なくなかったと言う。米軍は、7月8日のプレスリリースで、墜落物体を空飛ぶ円盤と発表したが、後に気象観測用気球であると訂正し、事実関係を否定……」
「ひ、ひいっ……。や、やめろっ! やめてくれ……」
な、何だ?
大伴の奴、何を言い出したんだ?
それに、新田の奴、涙目で怯えてるじゃないか。
大伴の胸ぐらも放して、頭を抱えている……。
「もう何百回も聞いているから、私も覚えてしまったわ。どう? 生前、オカルト研究家だった飛鳥さんのUFO話は、面白かったでしょう?」
「や、やめろ……。俺のすぐ隣で、ずっとその話をされてるんだ。ね、眠れないんだよ」
「飛鳥さんは、宇宙人を見るまでは成仏なさらないから、これからもたっぷり聞かせてもらえるわ」
「ゆ、許してくれよっ……。何だか分からないけど、俺が悪かったよ」
お、オカルト研究家の飛鳥さん?
誰だ、それ……。
つ、つまり、その飛鳥さんの霊を、新田にけしかけたってことなのか?
大伴が……。
まさか、一週間、ずっとそのUFO話を聞かされていたのか?
新田は……。
俺は、立ち上がってみたけど、何もすることがなかったんで、取りあえず座ったよ。
新田も、もう最初の勢いはなく、怯えっぱなしだしな。
「いやよ……。それに、私は何も悪くないわ。新田君と同じようにね」
「お、大伴……、そんなこと言うな……。お、俺が悪かったよ。何でも言うことを聞く。だから……、お願いだから、飛鳥さんを止めてくれっ!」
「……、……」
「な、何をしたら良いんだ? 俺、何でもするよ。舐めろと言われたら、大伴の上履きだって舐める。だから……、な」
新田は、本当に上履きを舐めそうな勢いで、土下座を始めた。
あ、あの新田がだぞ……。
目に涙を浮かべ、なりふりかまわず大伴に懇願してるんだ。
だけど、大伴は、新田をチラッと見ただけだ。
そして、相変わらずぼそぼそした口調でこう言ったよ。
「何が悪かったかは、自分で考えることね」
と……。
それきり、もう、新田が何を言っても、大伴は何の反応も示さなかった。
俺だけじゃなく、近藤も、長谷川も、田中も、関口も……。
皆、呆然としたまま、いつも通りの大伴を見つめるだけだったよ。
それから、牧田が新田にいじめられなくなったそうだ。
牧田は、嬉しそうにそう俺に報告してくれた。
だけど、牧田……。
昼に弁当を持ってきて、一緒に食べようと言うのは止めろよ。
俺、大伴達と同じグループなわけじゃないしな。
長谷川もいるんだから、そっちと一緒に食べろ。
俺は、もう、早弁しちゃって、食べる物がないんだからな。
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