『隣の県議様』 三十一歳、バツイチ子持ち女の日照争奪戦!

てめえ

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第10話 次にすがるのは……

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 ウチに戻って来ても、そこはかとない怒りが私の心の中にはあった。
 怒りと言っても、それは誰に向けてでもなく、自分自身の考え方の甘さにである。

 長谷川氏は、私が辞去するときにこんなアドバイスをくれた。
「法律のことだから、やはりこれは法律の専門家に頼った方が良いのではないですか?」
と……。

 法律の専門家と言うことは、つまり、弁護士か。

 しかし、私は政治家と同様に弁護士も苦手だ。
 どうにも私達庶民の味方のような気がしないから……。

 テレビドラマなんかで、よく弱者の味方みたいな弁護士が出てきたりする。
 だが、現実にそんな弁護士が何処にいると言うのだろう?
 あまり良くは知らないが、お金のある人には一生懸命仕事をしてくれるのだろうが、私のような普通の人間の味方になってくれる気がしないのだ。

 そうは言っても、離婚のときにはかなり弁護士の世話になった。
 ただ、それは小百合が普段から懇意にしているからで、私のために味方になってくれたわけではない。

 それに、そもそも弁護士ってどうやって雇うのだろう?
 何処に会いに行けばいるのかすらも分からない。
 相談に乗ってもらうと、やはり相談料を払わなくてはならないのだろうか?

 ……などと、色々と疑問も湧いたが、その疑問の数々は私一人の力ではどうともならなかった。




 裕太を寝かしつけ、また物思いに耽る。
 何とか弁護士に相談できないかと思いを巡らせる。

「そうかっ!」
良いことを思いついた。
 ……と言うか、何故こんな簡単な方法を思いつかなかったのだろう?

 弁護士に相談したければ、ネットで調べれば良いではないか。
 弁護士だって商売だ。
 きっと広告やHPだって載せているはず。
 動画に利息の過払い金を取り戻すCMが出ていたし、調べれば相談に乗ってくれる弁護士くらい見つかるはずだ。

 私はすぐにパソコンを立ち上げると、「弁護士」「相談」で検索をかけてみた。
 すると、検索候補に、「弁護士」「相談」「無料」と出るではないか。

 こ、これだっ!
 無料で相談に乗ってくれるのなら、その方が良い。
 だって、弁護士が実際にどう力になってくれるのかは分からないから。
 何の力にもならないのに、相談料だけ取られたらバカバカしいし。

 私は検索で引っ掛かった項目を丁寧に見ていく。

 あ、これ、サイトに登録してあるから、私の住んでいる地域のことが出てて、すぐにでも相談できるかも……。

 ふむふむ……。
 個々の弁護士事務所でやっている無料相談から、弁護士会や法テラスってところがやっているものまで、かなりいっぱいある。

 だけど、個々の弁護士事務所に行くのはちょっと怖い。
 無理矢理有料の相談に切り替えられてしまいそうで……。

 それに較べると弁護士会や法テラスはオフィシャルな感じがする。
 初心者の私としては、出来れば公的な無料相談を選びたい。

 ただ、弁護士会ってどういうものなんだろう?
 法テラスって何?

 サイトを見ても、
「ご相談下さい」
とは書いてあっても、本当に私が抱えている悩みに乗ってくれるのかイマイチ自信が持てない。

 飲食店を紹介しているサイトなんかだと、評価や利用者の声が載っているのだが、法律相談にはそう言うのはないらしい。
 だとすると、結局、何処に行って良いのか、迷ってしまう。

 何か、微妙に不親切に感じるのは、私が弁護士を好きではないからなのだろうか?
 それとも、結構同じように感じている人は多いのだろうか?

 個々のサイトを眺めながら、私は色々と考えながら迷いに迷うのだった。




「うん、これにしよう。ここなら大丈夫でしょ」
寝ている裕太しかいないのに、私は独りで声を上げた。

 いつの間にか、日付が変わってしまっている。
 まあ、今日は土曜日だから、少しくらい遅く寝ても良いか。

 私が決めた無料の法律相談は、市役所の「市民相談室」であった。
 市役所なら、無理矢理有料の相談に変えられてしまうようなこともないと思うし、専門の所よりも一応気軽に行けるから。

 相手は理屈では絶対に私なんか敵わない。
 だったら、その理屈で押し通されないところに行くしかないと言うのが、私の結論だ。

 いくら政治嫌いな私だって、何度かは市役所に行っている。
 わずかではあるが、その経験が私に安心を与えてくれるような気がするのだ。
 まったく知らないところに乗り込んでいくよりは遥かに心強い。

 市民相談室にした理由はもう一つあった。
 それは、電話予約出来るからであった。

 月曜から金曜までしかやっていないので、有休か半休をとらなければならないが、まだ私は有休も半休もとったことがない。
 だから、一日くらいは仕事場も大目に看てくれるだろう。




「ふう……っ」
何とか、次に何をすれば良いのかが決まった。
 まあ、だからと言って、問題が解決する目処が付いた訳ではないが……。

 それでも、私は少し自分を褒めてあげたくなった。
 トラブルが発生したと言うのに、今の私は立ち向かおうとしているから……。

 これも小百合のお陰かも知れない……。
 そう思ったら、急に睡魔が襲ってくるのを感じる。

 あ、明日、小百合にも報告しなきゃ……。
 だけど、今はもう眠ろう。




 裕太ママ晴美の一言メモ
「調べ物をするのにネットは不可欠!! 消極的になっていたせいか、忘れていたわ」
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