男のオレが無理やり女にされた結果

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第9話 オレ、夜道で襲われた模様

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 オレが院内で倒れて意識を失ったため、主治医の精神科医にオーバードーズ(向精神薬などを過剰摂取すること)したと勘違いされてしまった。
 事の次第を説明しても全く相手にしてもらえず、重病人として扱われたオレは訪問介護を受けることになった。それだけでも面倒だというのに挙げ句の果てに男の介護士が来るというのだ。
 どんな男でも女の家に上がり込んだら犯すための手順を計算し始める。常日頃から女を犯すシミュレーションをしているであろう男たちにとって逃げ道がない自宅は格好の餌場だ。むしろ何もしてこない方が不自然だろう。
 もうすぐ我が家に知らない男が訪ねてくると考えただけで背筋が凍りつく思いだった。
 そうこうしている間に『ピンポ~ン』とインターホンの音が耳に飛び込んできた。


「うぎゃあああああああああああ~ッ!!!」


 恐怖で思わず絶叫してしまい、自分が在宅であることを盛大にアピールしてしまう。これで居留守は使えなくなった。
 足がすくんで動けなくなり、自室で縮こまっていると下から階段をドタドタと駆け上がる足音が響いてきた。


「大丈夫っすか⁉︎ 絹を裂くような悲鳴が外まで響き渡ってましたよ!」


 男性ホルモンをドバドバ分泌してそうな20代半ば程の若い体育会系の男が傍に駆け寄ってくる。
 如何にも性欲が強そうな風貌の野郎に力強く肩を抱かれたオレのSAN値は早くもピンチとなり、口から魂が出そうになる。


「だいぶ御乱心みたいっすね。自分も女の子と二人きりなもんでドキドキして乱心状態っす♡……おっと、失礼。まずは血圧測るっすよ!」


 血圧計を腕にセットするだけの簡易な作業にもかかわらず、わざわざオレの手を汗ばんだ手で延々と握り続ける。


「生理の方は毎月ちゃんと来てるっすか?」


 男から生理について訊かれるなんて心底不愉快だったが、仕方なくオレは問診に応じた。


「まあ、一応は……」
「ホントに? 女性の場合、ホルモンバランスの乱れによる生理不順が精神疾患の要因になっていることが多いっす。まずは規則正しい生活を送ることが治療の第一歩っすよ」


 理路整然とした正論ではあるのだが、オレの場合は環境とジェンダーが主な原因になっているため、見当違いも甚だしい指摘だった。
 女の苦労など男にとっては到底理解の及ばない異次元の領域であることを改めて思い知らされる。


「ちなみに今、彼氏っています?」


 唐突に恋人の有無を訊かれ、オレは面食らった。


「えっと……今はいないです」


 彼氏なんか未来永劫いらないと断言したかったが、そこまで言うのは憚られるため、適当な返答をした。


「じゃあさ、最後にLINE交換しましょうよ。困ったことがあれば、いつでも駆けつけるんで♡」


 早々に立ち去ってくれるのを切に願ったオレは断腸の思いで要求に応じるのだった。




ーーー




「うわぁ……また来たよ」


 LINEのトークが届くたびに鳴り響くプッシュ通知がオレをノイローゼ気味にさせていた。
 何度も何度も断っているにもかかわらず、性懲りもなくLINEでデートに誘ってくる。
 オフにしていてもバイブレーションが動作してしまうため、煩い事この上ない。
 昼夜問わず執拗に送られてくるLINEのトークを既読無視してもスマホのバイブが止まることはなかった。
 十中八九、相手の男が積極奇異型のアスペであることは間違いないだろう。
 普通の男なら多少なりとも意思疎通は可能だが、ガチのヤバイ奴とは話し合うだけ時間の無駄だ。この世で自らの行いが加害であると自覚できない男ほど恐ろしいものはない。


「困ったなぁ~、完全にストーカー化してるよ……」


 男だった頃なら先ず遭うことはなかったストーカー被害にオレは神経を擦り減らす。
 女になったオレにとって男との人間関係は常にリスクと隣り合わせの綱渡りだ。可能ならば不要な男との繋がりは断ち切りたいものだが、向こうから強引に関係を迫られては逃げるにしても相当な労力を必要とする。
 せめて一時的でも男に戻ることさえ出来れば、ストーカーも瞬時に諦めてくれるだろうが、そんな都合よくデブ神がオレを元の身体に戻してくれるはずがない。


「誰かピンチの時に颯爽と現れてオレを助けてくれるような都合の良い男いねえかなぁ。出来れば、そこそこ顔が良くて尚且つ浮気しないオレ一筋のスーパーマンみたいなヤツがいいんだけど……」


 そんな殊勝な心がけの男などリアルに存在するはずもなく、オレは再び絶望の淵で涙するのだった。


「やれやれ、相変わらず女としての人生に苦悩しているようじゃなwww」


 いつも通り神出鬼没なデブ神がオレを弄るためだけに忽然と姿を現わす。


「男に戻す気もなければ、オレを救う気もないデブの顔なんぞ見たくもねえ。とっとと失せろ」
「こらこら、もっと女らしくお淑やかな言動が出来んのか! そんなんだから貴様の周りには碌な男が寄ってこんのじゃwww」


 オレの不躾な態度に業を煮やしたデブ神はニヤリと不敵な笑みを浮かべて言った。


「お前のピンチを救ってくれる者なら身近にいるではないか」
「はあ~、誰だよ? そんな頼りになるイケメンなんかオレの身近にいねえよ」
「イケメンではないが、頼りになる友達がいるではないか」


 頼りになる友達と聞いて貴腐寺院きふじいんさんの顔がオレの脳裏に浮かんだ。


「けどさ、貴腐寺院きふじいんさんはれっきとした女の子だぜ。いくら気骨があるからって、毎度助けられてばかりいたら貴腐寺院きふじいんさんに迷惑じゃねえか」


 貴腐寺院きふじいんさんはオレなんかよりずっと強い女の子だけど、ヤバイ男相手に毎回やり合っていたら、いつかは痛い目を見るだろう。
 オレのせいで男から傷物にされる貴腐寺院きふじいんさんを見るくらいなら自分一人が犠牲になった方がよっぽどいい。


「それは本当の意味で友情と言えるんじゃろうか」
「なんだと、どういうことだ? オレと貴腐寺院きふじいんさんの友情にイチャモンつける気か!」


 怒りを露わにするオレに対して戒めるような口調でデブ神は話し始めた。


「もし貴腐寺院きふじいんさんが男だったら、お前は喜んで頼りにするはずじゃ。それをしないということは心の奥底では女であることを理由に貴腐寺院きふじいんさんから距離を置いている証拠ではないか」
「ち、違う……そんなつもりじゃ……」


 狼狽するオレにデブ神はトドメとばかりにまくし立てる。


「いや、違わない! お前は自分が女になったことで男だった頃以上に女を弱い生き物だと思っているのじゃ! 自らの弱さを棚に上げて自分が辛いのは女になったからだと勝手に決め付けて目の前の問題から逃げている貴様には貴腐寺院きふじいんさんのような自立した女が眩しくて堪らないんじゃろwww」


 己の胸中を見抜かれたような居心地の悪さを感じたオレの頰には無意識のうちに一雫の涙が流れていた。


「まあ、よいじゃろ。女に助けられてばかりでは貴様の惨めな男としてのプライドに泥を塗ることになるようじゃしな。せいぜい女らしさを磨いて良い男をモノにするがよい。尤も貴様ごときに群がる男なんぞに碌なのはいないと思うがなwww」


 気にかかる事を言うと、毎度のごとく一瞬にしてデブ神はオレの前から姿を消すのだった。




ーーー




「どうにもデブ神の言うことが気になるなぁ~」


 小腹がすいたオレは深夜のコンビニへと赴いていた。
 こんな時間に女の身で出歩くなど笑止千万だと思われるかもしれないが、空腹のままだとオレは眠れないタチなのだ。
 暴漢に襲われないように周囲を警戒しながら早歩きでコンビニへと向かう道中、曲がり角で突然何者かに突き飛ばされた。
「あッ!」と叫ぶと同時にオレは激しい目眩に襲われて気を失うのだった。




ーーー




 先端の割れ目から透明な粘液を滲ませる亀頭がゆっくりと唇をなぞる悍ましい感覚でオレは目が覚めた。


「ちょうどいい頃合いに目覚めてくれたねwww」


 目の前にいたのは毎日気が滅入るほどのLINE地獄へとオレを誘い続けた張本人であった。


「自分、未読スルーされるとキレちゃうタチなんで実力行使に出たっスwww」


 そう言うと、ストーカーはオレの手を取って無理やりペニスを握らせた。


「ほうら、熱いっしょwww」


 青黒く浮かび上がった血管を駆け巡る、ドクッ、ドクッという脈動が手のひらに伝わってくる。その不気味な感触に、オレはゾクリと背筋を寒くした。


「さあ、パクっと咥えてもらおうかwww」
「え……」


 驚きのあまり、唖然としてしまった。
 こんなグロテスクな悍ましいモンスターを口に含むと考えただけで悪寒が走る。
 興奮しているらしく、ストーカーのペニスはオレの手の中でますます大きくなっていく。脈動も強く、速くなり、心臓の鼓動に合わせて勃起したペニスがビクンビクンと跳ね上がる。


「やれやれ、こっちからブチ込んでやらなきゃダメってかwww」


 ストーカーは腰を突き出し、硬く閉じて合わせたオレの唇を貫通しようと迫る。
 先走りの液が唇を濡らす感触と、間近に見るペニスの醜さと臭気に、オレは瞼をきつく閉じて顔を顰めた。
 だが、男の力に敵うはずもなく直ぐさま巨大な肉塊が、オレの唇を割って口の中に入ってくる。
 亀頭に部分を明らかな嫌がらせで舌に擦りつけてから、ストーカーはオレの頭を抱え込んで咽喉の奥まで一気に突き上げた。


「おえッ、うぐぅ……」


 顎が外れそうなほど大きく口を開かされ、オレはどうにかストーカーの巨根を咥えたが、それでもまだ半分以上が手の中に残っている。
 手のひらよりも舌の方が何倍も感覚が鋭い。先走りの液が残していった何とも言えない異様な苦味、口内を満たす硬いペニスの感触。
 息が詰まりそうな屈辱的奉仕を強要され、オレは頭の中が真っ白になった。


「そうやって女は黙ってチンポ咥えてりゃいいんだよ。さあ、口の中で舌を使って舐めるんだ。もちろん、歯は立てるんじゃねえぞwww」


 胸の奥から激しい怒りが込み上げると同時に己の無力さを存分に思い知らされ、オレは絶望のドン底へ叩き落とされるのだった。
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