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第8話 オレ、精神科に行く模様

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 すぐ触ったり、抱きしめたりせずに、わざと時間をかけて恥ずかしい目に遭わせようとキモ社長は画策していた。
 はっきり言って、オレは男からの性的な愛撫なんて全く望んでいない。それなのにもかかわらず、唇をネチネチと指先で撫でられた。
 キモ社長のグロメンが目の前にあるだけで気が滅入りそうなのに唇を何度も何度も繰り返しなぞられるのは拷問だった。
 オレは顔を背けて抗おうとするが、今度は耳に指を這わされた。ゾクッとして、ますます怖気がふるう。
 単に唇や耳に触られただけではあるだが、その意図するところがうじうじと少しずついじって楽しもうとする変態の手管に思えた。
 ただセックスしたいのではなく、男特有の女を辱めようとする悪意を感じる。


「あ~もぉ~、我慢できないおッ!!!」


 キモ社長は服を脱ぎ捨てると脂ぎった裸体を披露して股間を硬く屹立させる。


「さあ、オジたんの股間の上に載ってアンアン喘ぐんだおwww」


 そう言うと、キモ社長はチンポをおっ勃てながら素っ裸で床に寝そべり始める。


「誰がアンタなんかとヤるもんかッ!!!」


 怒り心頭に発したオレは思わずキモ社長の屹立した股間を勢いよく踏みつけてしまった。


「はうッ!」


 キモ社長は痛がるどころか、ペニスをもっと硬く勃起させて嬉しそうに悶える。女になったオレの脚力では股間を踏みつけても男に大したダメージは与えられないらしい。
 オレは土踏まずの辺りで竿の部分を思いっきり力強く転がすように踏みつける。


「あぁ……イタ気持ち良すぎて至福の境地だお~♡」
「えぇ~⁉︎ これだけ踏んでるのに全然ダメージを与えられないなんて……」
「女からの暴力なんて男からすれば可愛いものだおwww」
「……そうなの?」


 女に暴力を振るわれたことがないから分からないが、男は誰もが潜在的にドMなのだろうか。
 女に放っておかれたりぞんざいに扱われるのが好きな男は確かにいるけれど、まさか自分のチンポを踏みつけられることに快感を覚える男がいるなんて心底ドン引きだ。
 遥か年上のオヤジを見下ろしながら股間を踏みつけにしているうちにいつの間にかオレの中で優越感にも似たドス黒い感情が湧き起こってきた。


「ハアハア、もっと踏んでほしいお~♡」
「へぇ~、どんな風に踏んでほしいのかな?」


 靴の裏で肉竿を押し倒し、カカトでグリグリと思いっきり付け根の辺りを踏みつけにしてやる。


「ひうッ、ああッ! いいお~、その調子で! あひゃ~♡」


 オレの踏みつけが絶妙だったらしく、キモ社長は男のくせに情けない声を上げて身体をひくつかせる。


「うわぁ、本当に気持ち良さそう……キモ(ボソッ」
「女の子にチンポ踏まれて喜ばない男なんかこの世にいないお~♡」


 いや、ここまで激しく責められてよがり狂う男はなかなかいないだろう。キモ社長のドMっぷりは明らかに常軌を逸していた。


「はいはい、これがいいんでしょ……」


 本気で肉棒を踏みつけ、床でもがくキモ社長の醜態を見下ろす。


「女にチンポ踏みつけられて喜んでる姿を部下が見たら社長としての面目丸つぶれだおwww」
「じゃあ、粗チン踏むのやめようか?」
「いやいや、オジたんの情けない生ゴミチンポを可愛いおみ足でもっとイジメてほしいお~ッ!!!」


 こんな変態ドMが社長の会社なんか潰れてしまえと思いながら爪先でぐりぐりと肉竿を踏む。


「あひゃあッ、うひょ~♡ もうらめえだお……」


 ドM社長の声が上ずり、オレの足の下で肉竿がビクンと跳ねた。今の責めで社長のオチンポは余計に硬度を増した。猛々しい脈動が革靴を通して足の裏に伝わってくる。
 先汁まみれの鈴口を爪先で突き、尿道口をかき回すとパクパクと苦しそうに口を開けた先端からカウパーがこぼれ出す。
 オレは少し靴を離して、亀頭と爪先の間にネッチョリと透明の意図を引かせた。


「オジさんの汚い汁のせいで靴がこんなにも汚れちゃったんですけど~」
「オジたんがちゃんと弁償するから、もっと踏んでほしいお~♡」


 おそらく会社でも女子社員にセクハラしながら今オレに踏まれているチンポをズボンの中で勃起させているに違いない。
 オレは前足に体重を乗せて、ふたたび肉棒を激しく押し倒すような愛撫を繰り出す。


「あひッ……ひッ……あひゃ~ッ!」


 そろそろ限界が迫っているのか、社長チンポはオレの足を跳ね返す勢いでビクンビクンと脈打ち始める。切羽詰まった声を上げるドMチンポが付け根から膨張し、今にも弾けそうなぐらい狂おしくのたうっていた。
 ぬるぬるの先走りを靴で肉棒に塗りつけながら、カカトではピンポイントに付け根やタマを刺激した。


「ふおおおおおおおおおおおおおおお~ッ!!!」


 唸り声を上げる社長のキモチンポから夥しい量の精液が吐き出された。
 強く踏むたびに社長のグロチンポが喘ぐように白濁を吐き出し、オレの足にとろとろとかかる。大の男を足蹴にし、屈伏させたことにオレは喜びを禁じ得なかった。
 射精を終えたドM社長は大の字でキモチンポを踏まれたまま、桃源郷にいるような至福の笑みを浮かべて喜悦に浸るのだった。




ーーー




 帰宅したオレは自室に閉じこもって激しい自己嫌悪に浸っていた。


「オレは一体何をやってるんだろうなぁ……」


 キモオヤジへの抵抗がむしろ逆に射精へと導く結果に繋がったことが今更になって嫌になる。あの時は自分もノリノリだったが、冷静に考れば只の変態以外の何物でもない。


「女の幸せって何だろうか?……」


 デブ神に与えられた課題をクリアするどころか、むしろ逆行しているようにさえ感じる現状にオレは心底絶望してしまう。
 女になっても相変わらず自分という人間が未熟であることに変わりはなかった。
 同年代のヤツらがオレを置いて先に進んでいく中、自分だけが取り残され続けるのは屈辱以外の何物でもない。


「はぁ~、精神状態が悪化してきたから明日は久々に精神科に行くか……」


 オレが男だった頃からお世話になっている精神科までは最寄りの駅から乗車して20分ほど電車に揺られた先にあった。
 院内は大変混み合うため、朝一で受付時間前には到着していないと診察が終わるのは夕方過ぎになってしまう。
 日が完全に昇る前から準備して出発すると余裕を持って電車に乗ることが出来た。ラッシュの時間帯よりも早いため車内は空いており、ゆとりを持って座れた。
 下車して徒歩5分ほどでかかりつけの精神科に到着したが、早くも10人くらいが入り口付近で列をなしている。
 ここのクリニックは発達障害や知的障害を専門的に診てくれるところで障害者手帳を取得したい患者には直ぐ診断書を書いてくれることでも有名だった。オレも障害者手帳欲しさに通院するようになり、今では精神障害者保健福祉手帳の等級が1級になるほど重度障害者として扱われている。
 ちなみにあまり大きな声では言えないが、オレの知能は知的障害レベルであるため、実は療育手帳も取得している。オレのような知的障害者でも田舎の県立高校ならば普通に入れるという事実に驚愕する人もいるかもしれないが、田舎の底辺高校には漢字の読み書きや四則演算も出来ないようなヤツがごろごろいるのだ。それ故にオレが知的障害者であることは今のところクラスメイトにはバレていない……たぶん。
 精神病院の前で朝早くから列をなすオレたちに道行く人が怪訝そうな表情を浮かべては通り過ぎていく。百鬼夜行の群れと遭遇したかのような恐怖心を露わにする通行人までいて、オレの自尊心は待ち時間が長くなる程どんどん削られていった。
 罰ゲームのような公開羞恥刑に耐えること2時間後、ようやく病院が開いて受付が始まる。
 認知症の老人や重度知的障害者などが入院しているため、院内はウンコの臭いで充満している。たまに病棟から脱走してきたパワー系の重度知的障害者が徘徊しながら病院の壁や備品を破壊していくのを目の当たりにするが、不思議と誰も騒ぐ者はいなかった。
 ふと気づくと、俯いた視線の先にオレと同年代くらいの女の子の生脚があった。顔を上げると嫌悪感をまるで隠そうともせず、目をすがめてこちらを見つめている。


「えぇ……」


 男だった頃から初対面の女子に嫌われるのは日常茶飯事であったが、女になってまで女に嫌われるとは我ながら天性の非モテであることを思い知らされる。
 最近思うのだが、人が人を嫌いになる根本的な理由など存在せず、単に不快な人間に対して嫌いな理由を後付けしているだけなのではないだろうか。
 人間も本質的には動物と変わらないため、究極的には本能に逆らうことは出来ない。知能が低ければ低いほど本能に従って行動するというのは事実であり、それは重度の知的障害者を見ていれば一目瞭然だろう。


「さっきからジロジロ見てんじゃねえぞ、ブス!」
「えぇ……」


 唐突に怒鳴りつけられて思わず萎縮してしまったが、冷静に考えると先程から怪訝そうな顔でジロジロ見ていたのは明らかに向こうの方だろう。
 被害妄想を炸裂させる統失女と遭遇してしまったオレはビクビクしながらも無視を決め込む。


「無視してんじゃねえぞッ! お前もストーカーの一味だということは分かってんだからな!」


 どうやら統失特有の追跡妄想に囚われているらしく、オレのことをストーカーの加害者だと思っているようだ。
 仕方なくオレは病院の受付にいる看護師に助けを求めようと立ち上がると――。


「お前が集団ストーカーの首謀者だということは分かってんだよ!!!」


 己の被害妄想が事実であると信じて疑わない統失女は一切の躊躇なく、オレに襲いかかってきた。
 たじろぐオレの身体は反射的に身を守ろうと臨戦態勢に入る。
 相手の身体を押し返そうとして胸元をガシッと掴む。身体は女でも心は生粋の童貞であるオレにとって女子の胸は誰の者であっても甘美な触り心地であった。
 あまりのことに思考が停止したのか、統失女は胸元から両手を離さずに揉み続けるオレを見ながら暫く硬直していた。


「いつまで触ってんだ、この変態女め~ッ!」


 ぱち~ん! 
 風船が割れるような鋭い破裂音とともに目の前に星が散った。
 鋭い痛みに視界がくらくら揺れると、そのまま目の前が真っ暗になるのだった。
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