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第1話 オレ、女になった模様

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 オレの名は童手井どうてい 拗螺瀬太こじらせた――。
 どこにでもいる普通の童貞男子だ。
 恋人いない歴=年齢のオレは性欲の捌け口を求めて、いつものようにネットでエロ動画を漁っていた。


「クソぉ~、今日も惨めにチンコをシコシコするだけの虚しい時間を過ごすのか……」


 こんな童貞のオレにもいつか普通に彼女の1人や2人できると思っていたが、現実は何とも世知辛く、相変わらずの非モテ地獄を生きていた。
 ただの非モテならまだ救いはあるが、オレは女に嫌われることに関しては天才的な才能を発揮する伝説級のスーパー非モテだった。
 女に話しかけても無視されるのは日常茶飯事であり、ただの挨拶でもまともに返してくれるのは実の母親くらいだ。
 大多数の女がオレの存在を視野に入れただけで汚らわしいゴミを見るような目付きでそそくさと離れていく。最悪の場合は「キメェんだよッ!」と罵倒を飛ばされる始末だ。
 確かにオレは知能も低いし、精神年齢は幼いし、コミュ力も金も地位もないようなキング・オブ・底辺である。
 だかしかし、だからといって世の中の女共がオレを人間扱いしなくてもいい理由にはならないはずだ。
 日に日にオレの中の女嫌いミソジニーは膨れ上がっていき、いつ爆発するか分からない次元にまで到達していた。明日明後日には電車や精神科で女をターゲットにした無差別テロを敢行するかもしれないほどオレは『無敵の人』状態に陥っていた。


「よぉ~し、こうなったらヤケだッ!!!」


 無差別テロを決意したオレはエンジンがかかったように超絶な手の動きで自分のチンポを奮い立たせた。
 シコ、シコシコシコシコシコシコ……。
 オレは背を丸めるようにして、エロ動画を見ながら激しく右手を動かし続ける。


「あぁぁ…出る、あッ出る、もう出るぅぅぅwww」


 その瞬間、オレの粗チンが灼熱を帯び、稲妻のような閃光が弾けた。


「ファッ……⁉︎」


 オレの肉棒が発熱し、深紅の光芒を放つ。


「うおぉ~ッ……!」


 またぐらを左右にこじ開けられるような激しい痛みを覚えた。
 ずるりと何かが自分の股間から這い出したような感覚。
 激痛のあまり、意識が途切れそうになる。
 痛みに耐えつつ、前を見ると、まばゆいばかりの光が溢れていた。


「うああああああああ!」


 たまらず絶叫。
 ふっ……と意識が遠ざかる。
 かすみ始めた視界の中、オレは確かに見た。
 光の球体に包まれた世にも醜い肉の塊のようなデブスが宙に浮かんでいる。
 仙人のような格好をしたデブ女は清潔感のカケラもないボロボロの歯を見せて笑うと、吹き出物だらけのグロテスクな顔を近づけて唾が飛ぶほどの大声で叱りつけてきた。


「バッカも~ん!!! 自分がモテないのを棚に上げて女に当たるとは何様のつもりじゃ!」


 そう言うと、デブ仙人は持っていた杖でオレの頭を殴りつける。


「イタッ!……何しやがる⁉︎ つか、テメエこそ突然オレのチンポから出てきやがって何様のつもりだ⁉︎」
「おっほん……ワシは天界から御主のような不届き者を懲らしめるために参った神であるぞよ。クソ童貞め、頭が高い。控えおろう!」


 デブ仙人は咳払いすると唐突に神を自称し始めた。こんな気色悪いデブが神だなんて事実だとしたら世も末だ。悪魔の間違いじゃないか?


「最近はモテない男の悪行によって人間界に住む女たちが星の数ほど被害に遭っているとの情報が天界に入ってな。いても経ってもいられず、ワープホールを使って飛んできた次第じゃ」
「何を訳の分からねえことを言ってやがる! つか、何で天界からのワープホールがオレのチンポに繋がってんだよ⁉︎」
「う、うるさい……ワシだって、そんな不浄なる男の性器から出たくはなかったわい!」


 デブ神は羞恥で顔を赤らめながらもオレの丸出しチンポに目配せして言った。デブスでも恥じらう姿だけは何となく可愛いと思えてしまうのはオレが童貞だからだろうか。


「えぇ~い、とにかく貴様が心を入れ替えて女を尊ぶようになればワシは大人しく帰るぞよ。どうじゃ、簡単じゃろ?」
「はぁ~、女を尊ぶだと? 男のチンポを満たす以外に使い道がない使い捨てオナホの分際で一丁前に男と同じ人権が与えられてること自体おかしいんだよ。さっさと女の人権を剥奪して男に生殺与奪の権を与えた方が社会も今よりは上手く回るだろwww」


 子供の頃から頭が悪くて何の取り柄もなかったオレを不当に虐げてきた女共が自分より社会的に上のポジションにいるのが何とも我慢ならなかった。
 家畜のように女を飼い慣らせて、肉便器として気軽にレイプ出来たり、男のさじ加減で女への殺人行為が合法になる国があったら今すぐにでも行きたいくらいだ。


「今の発言で貴様が救いのない非モテ野郎だということがよく分かったぞい。女を同じ人間だと認識できないほど認知が歪んでいるゴミクズ童貞に男として生きる権利はない。よって貴様が最もこの世で蔑んでいる生き物に変えてやるわいwww」


 そう言うと、デブ神の全身から光り輝く稲妻が弾け飛ぶ。
 全身に稲妻をくらったオレは痛烈な衝撃波に巻き込まれた。
 ゴロゴロゴロゴロゴロ、バシャアアァァァァァァ~ン!!!
 その時、不思議なことが起こった。
 剥き出しになっていたオレの股間から萎縮して小さくなっていた肉茎が音もなく消えたのだ。
 代わりに、その跡には、まるで女のようにぱっくりと割れ筋が現れた。
 次の瞬間、オレが最もこの世で蔑んでいる生き物へと身体が変貌を遂げていた。


「お……女になっちまった~ッ!!!」


 オレは頭をかかえて悲鳴を上げると、衝撃のあまり意識を失うのだった。




ーーー




 ジリリリ……。
 スマホのアラームに起こされ、目を開けると最初に視界に入ったのは見知った部屋の天井だった。
 オレは掌を開閉し腕を回す。身体にこれといった異常はない。
 悪い夢でも見ていたのだろうか?
 辺りを見回してもデブ神がいた痕跡は見られなかった。
 きっと悪夢にうなされていただけなのだと自分に言い聞かせるとオレは顔を洗いに洗面所へ向かった。すると、ある異変に気が付いた。
 いつもより心持ち視界が低いように感じるのだ。
 洗面所に着くと洗面台がいつもより高いような気がした。
 妙な胸騒ぎを覚えたオレは顔を上げると鏡の中に見知らぬ女がいた。胸元がほんのりと膨らんでいて女であることをほのかに感じさせるが、あまり女らしくないタイプの陰キャ喪女だった。
 表情から察するにかなり戸惑っているようだ。正直オレもかなり狼狽してて身動きが取れない。
 そして何より驚かされたのが、鏡の中の女がオマンコ丸出し状態だったことだ。
 鏡越しにいる見知らぬ女とはいえ、オマンコ丸出し状態でいられては童貞のオレに勝ち目はない。
 オレはオマンコに釘付けになりながら蛇口をひねって水流に手を伸ばした。顔を濡らして平静になろうと思ったのだ。
 すると、鏡の向こうでも同じ動作をしていた。


「ファッ⁉︎」


 なんだ、この女は⁉︎ オレと同じ動作で顔を洗おうとしやがった。
 ただの偶然だろうか?
 鏡を見つめ、オレはさらに驚いた。女も口を「ファッ」の形に開けていたのである。
 悪い予感が心に広がっていき、パニクりそうになった。
 オレはじっとしたまま、恐る恐る頬に手を伸ばした。
 女も頬に手を伸ばしている。
 不安と恐怖で鼓動が激しくなる心臓を抑えながら、今度は右手で頬をつまむ。
 やはり女もつまんでいた。
 嫌な予感が確信へと変わり、オレは思わず絶叫した。


「ぎゃあああああああああああああああ~ッ!!!」


 オレは泣き叫びながらベッドに戻ると、前代未聞の珍事に為す術もなく座り込んだ。
 女がオマンコ丸出しで足をハの字にして座っている。童貞ならば誰でもそそられる光景だが、所詮己自身だ。いつか使い捨て肉便器を何体か所有したいとは思っていたが、自分が肉便器になるなんて夢にも思っていなかった。


「ほほう、非モテ童貞のわりには可愛くなったのう」
「わぁッ⁉︎」


 どこからか声が聞こえてきて、オレはびっくりして跳び上がった。
 声のした方角を見ると、そこには下卑た表情を浮かべたデブ神がいた。


「どうじゃい、日頃から貴様が性的対象物としてしか見てない肉便器になった感想は?」
「ふざけんじゃねえぞッ! 今すぐ元に戻しやがれ~!!!」
「それは今後の貴様の行い次第じゃ。女を蔑視するような姿勢を正さぬ限り、貴様が男に戻ることは未来永劫ないじゃろうwww」


 デブ神は嘲笑するように冷酷な返事をした後、ぱっと明るくなって言った。


「そうそう、女になったからには女物の服を買わんといかんのう」
「お、おい……まさか本気で女として生活しろなんて言うんじゃないだろうな?」
「御主、頭悪いのう。さっきから、そう言っとるじゃろう」
「でも、今まで男として生きて来たんだぞ。いきなり女になったら周囲が驚くだろうが」
「心配ご無用じゃ。ワシは神ぞよ。人間の過去改変なんぞお手の物じゃwww」


 そう言われて、オレは試しに学生証の性別欄を見てみた。
 どうやらデブ神の力によってオレは冗談抜きで入学時から女ということになっているらしい。ついでにマイナンバーカードの方も見てみると、やはり性別欄は女になっていた。


「オレの人生、マジで性別だけ改変されてる……」
「だから言ったじゃろう。神に不可能はない。ほれ、お前の制服も女子用にしといたぞwww」


 学ランがかかっていたはずのハンガーにはセーラーブラウスがかかっていた。


「おいおい、勘弁してくれよ……」
「弱音なんぞ吐いとらんで今日から女として学校に通うのじゃ。そして女として生きることの大変さを学ぶことで女を尊ぶ精神を養うのじゃぞ」


 こうしてオレは女としての人生を強要され、今までに体験したことのない超絶ハードモードな生き地獄に足を踏み入れたのだった。
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