男だらけの変態異世界冒険譚

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英才教育クエスト編

79 貧民街の盗賊

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 ヒビキの父親によって遺伝子改良されてしまったナギサもヒビキのおかげで今ではすっかり元通りになった。


「それにしても驚いたなぁ。遺伝子を改良しただけで同じ人間でも全く別人になるだなんて……」
「今の時代は遺伝子検査で個人が先天的に持ちうる能力や性格、コミュニケーション能力なんかも分かるんだぜ。人生は遺伝と環境でほぼ決まる。だから自分の子供に適した環境で養育していかなければならない。ナギサの才能を伸ばすために優れた英才教育を施さなくちゃなぁ」


 ヒビキの父親から、僕の遺伝子がナギサの足を引っ張っていると聞いたせいで、今さら元の状態に戻して良かったのか不安になってきた。


「願わくば、ヒビキの優秀な遺伝子だけが発現して欲しいんだけどなぁ……」


 僕が祈るようにポツリと呟くと、ヒビキは思い出したように言った。


「うちのナギサは不意打ちとはいえ、あのゼノンを後ろから刺してKOした男だぞwww 男らしい強い男に成長できる可能性は十分にあるはずだ。それに男らしく育たなかったとしても、俺たちの可愛い息子であることに変わりはないだろ♡」


 僕はヒビキの言葉を聞いて安堵した。どうやら僕は親として大切なことを忘れていたようだ。


「うん! ナギサがどんな男に育とうが、僕たちの愛する息子であることに変わりはないもんね♡」
「ああ、その通りさ。子供の人生を親が左右するようなことは本来あってはならない。俺は自分の父親を反面教師にして、ナギサには生き方をするように教えていきたいんだ」


 いつもながら見事な正論しか言わないヒビキの話に聞き入ってしまう。


「自分らしい生き方を選択するには他の者に流されない強い男にならなければならない。型にハマった生き方をして、たった一度しかない人生を棒に振ることだけはナギサにして欲しくないんだ」


 そう言うと、ヒビキは冒険者ギルドのボードに貼ってあった依頼書を僕に手渡す。


「ミライ、このクエストにナギサを連れて行ってやって欲しい。そろそろナギサにも、この世界での生き方ってヤツを教えてやってもいい頃だろう」


 クエストの内容は貧民街で跋扈する盗賊の討伐だった。


「これは……僕とナギサだけじゃ難易度高いんじゃ?」
「物は試しさ。とりあえず最初はギルドでナギサの冒険者カードを発行してもらうんだ」


 ヒビキに言われて仕方なくナギサを連れてギルドで冒険者カードを発行してもらいに行った。


「確か初回に一度触れるだけでカードに所有者のあらゆる能力が自動的に数値化して記載されるんだよね。ナギサのステータスはどんな感じかな?」


 僕はナギサに手渡されたカードに記載された数値を恐る恐る見てみた。


=============================
ステータス
名前:ナギサ
称号:未来なきヒキニートの息子
Lv  :カス
HP  :1
MP  :0
攻撃力:1
防御力:0
知能 :2
器用さ:1
素早さ:1
体力 :1
運  :15
スキル:なし
装備:子宮
=============================


 予想は何となくしてたけど、僕に似て壊滅的なステータスだった。


「ごめんね、ナギサ。僕のダメ遺伝子のみを受け継がせちゃって……」
「気にしないで。ヒビキパパが言ってたよ。たとえ優秀な子になれなかったとしてもミライパパの遺伝子を受け継いだだけでも愛するに値するんだって……」


 僕は愛するナギサを優しく抱きしめると、お互いに手を繋いでクエストの場所へと向かっていった。




ーーー




 目的地の貧民街の中へ迷い込んでいくと早くも鋭い矢弦の音が響き、一本の矢が僕たちの足下に飛んできた。
 僕たちを取り囲むように、貧民街の廃虚からぞろぞろと人相の悪い男たちが姿を現した。20人――いや、少なく見積もっても30人はいるだろうか。ナイフやムチ、剣など、全員がなんらかの武器を身につけている。
 無精髭を生やし、すり切れて薄汚れた使い古しの鎧に身を包んだ男たちの姿は見窄らしく、その双眸だけが危険な欲望の光を浮かべてギラギラと輝いている。
 外套の中に潜ませているレイピアをいつでも抜き放てるよう柄に手をやると、僕はナギサを背中に庇いつつ一歩進み出る。


「ナギサ、早くも戦いのゴングが鳴ったみたいだよ……」
「そうらしいね、ミライパパ……」


 小声で囁き合ったあと、僕とナギサはお互いの背中を合わせ、盗賊たちの攻撃に備えた。
 僕とナギサはタイミングを計って同時に飛び退き、戦いの邪魔となる外套を脱ぎ捨てた。
 盗賊たちは外套を脱ぎ捨てた僕たちの姿に征服欲を掻き立てられて襲いかかってきた。


「いいか、なるべく無傷で捕らえるんだ。かかれ~ッ!」


 頭領の号令に合わせて、数人の盗賊たちが雄叫びをあげながら、僕たちに向けて突進してきた。
 もはや、僕とナギサは狩の獲物でしかないと思われている。
 数本のムチが同時に放たれ、貪欲に襲いかかってくるが、僕たちは俊敏な動きで何とか攻撃をかわしていく。
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