男だらけの変態異世界冒険譚

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悪魔の遺伝子編

75 悪魔の遺伝子を持つ男

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 僕は金属がこすれ合うようなカチャカチャという音で目を覚ました。


「気がついたかね?」


 白衣を着たオッサンが顔を覗き込んでくる。


「ここは?」
「わたしの研究室だ」
「研究室?」


 よく見ると室内の壁や天井は真っ白に塗られている。家具や調度品はなく、部屋の隅に白いスチール戸棚と机が置かれていて、机の横には白衣姿の別の男が立っていた。


「ミライくんが寝ている間に、検査をさせてもらった。案の定、わたしの見立て通りの残念な遺伝子だったがね。何故、わたしの優秀なが君のような者に惚れたのかさっぱり理解できんよ」


 起き上がろうとしたが、いつの間にか病院で見かける診察台のようなものに寝かされていた。四肢をひろげてベルトで拘束されているため、上半身を起こすことすらできない。


「あなたの息子というのは……まさか?」
「その通り、わたしがヒビキの父親だ」


 そう言うと、ヒビキの父親は僕の身体にかけられていた白い布をゆっくり剥ぎ取った。


「ヒビキを連れ戻すように部下の鳴滝くんに命じたんだが、どうやら失敗したらしくね。仕方なく、わたし自ら世界を渡って遠路はるばるやって来たというわけさ」
「なんで僕を捕まえて、遺伝子検査なんかするのッ⁉︎」


 両手を拘束する幅広のベルトを外そうとして腕に力を込めながら言ったが、びくともしない。


「愚問だねぇ。人間の人生はでほぼ決定される。優秀な遺伝子を持った人間が適切な環境で育てられることにより価値ある人生を謳歌できるのだ。残念な遺伝子を持った君には、残念な人生を歩む以外に道はない!」


 不敵な笑みを浮かべながらヒビキの父親は語り始める。


「遺伝子検査で判定できる内容は身体能力、精神面など多岐にわたり、海外では英才教育の一環として一般的に利用されている。現在では遺伝子研究が進み、個人が先天的に持ちうる能力だけでなく、性格や精神の傾向、後天的に発症するリスクのある疾患なども分かるようになってきた」


 まるでゴミを見るような侮蔑した態度でヒビキの父親は僕に詰め寄る。


「そして、ミライくんの遺伝子検査の結果はどれも最低レベルのゴミそのものだった。いやはや、世の中にこれほどダメな遺伝子を持った人間がいるとは驚きだよ。生まれる前の遺伝子操作によって完璧な人間に作り上げた我が息子に、貴様のようなゴミは相応しくない!」


 そう言うと、ヒビキの父親は何か思い出したように手のひらを合わせた。


「あぁ、思い出した。君とヒビキの息子の確か……ナギサと言ったかぁ。あの子の遺伝子検査の結果はヒビキの完璧な遺伝子を受け継いだだけあって、なかなかのものだった。だが、君のゴミ遺伝子が足を引っ張ってしまったせいで完璧からは程遠いものだ。どう責任取ってくれるッ⁉︎ わたしの孫が貴様のせいで完璧ではなくなってしまったんだぞ!」


 いきなり、ヒビキの父親は鞭を手に取って僕の身体に叩きつけた。肌に鞭が食い込む低く重い音が辺りに響く。


「あああ~ッ!!!」


 鞭が肌を打つたびに悲鳴をあげた。さらに鞭がしなり、無数の鞭跡が刻み込まれる。


「貴様のようなゴミに結婚や子作りを期待する者などいない! ゴミはゴミらしく安月給で性処理肉便器として底辺の世界で生きれば良いものをwww」


 あまりの痛さに耐えきれず悲痛な声をあげつづける僕を横目に、ヒビキの父親は背後にいる白衣姿の男に声をかけた。


「君、フックとワイヤーを2つずつ頼む」
「はい」


 男はワゴンから言われたものを取り出す。それは、「かえし」のない釣り針に似たもので、外科用の針にワイヤーを取りつけたものだった。


「やめて……お願い、やめてええッ!」


 僕がイヤイヤをしながら懸命に身をよじる。だが、幅広のベルトによって固定されているので逃れようがない。


「そう暴れるな。貴様のようなゴミでもとしてなら使い道がある。せいぜい、わたしを楽しませるんだなぁwww」


 ヒビキの父親は、つまんだ乳首をレロンと舐めあげる。そして、前方に引っ張り上げた僕の乳首に、横からプツリと針を刺し込んだ。


「くあッ! あああ~ッ!!!」


 鋭利な針が硬く尖った乳首を貫いていく。突き刺したところの逆側から、赤い血を絡ませた針先が顔を出す。完全に貫通していた。


「抜いて……抜いてえぇぇッ!」


 強烈な痛みにのけ反る僕の身体に、赤い血の筋が絡む。針を串刺しにされた乳首がビクビク震えていた。


「ほらほら、こっちにも♡」
「きゃうッ!」


 あっという間に、もう片方の乳首も針で串刺しにされた。ヒビキの父親が手に持ったワイヤーを上に引っ張ると、針に引っ掛けられた乳首が吊られ、思いきり引きのばされる。


「痛いッ!!! 痛ぁ~いッ!!!」


 涙をこぼして絶叫する僕を眺め、ヒビキの父親がニッコリと微笑む。


「ペットとしてなら可愛がってやらんでもないな♡」


 針を突き刺され硬く勃起した乳首を、ヒビキの父親が執拗に舐めまわす。両手に持ったワイヤーで2つの乳首を吊りあげたまま、チロチロと蠢く舌先が胸に流れる血を舐め取っていく。


「痛いッ……痛いよぉ……」


 痛々しく蹂躙された突起をしごかれつつ、僕は涙声で哀願する。しかし、ヒビキの父親はそれを無視するかのように、ワイヤーを天井に吊ってある滑車を通して結わえつけた。


「はぁ……くううッ!」


 さらにワイヤーが引っ張られ、僕はたまらず背筋をのけ反らせた。乳首を先端にして、胸が垂直方向に吊りあげられる。重力とは逆方向に引きのばされた乳首からは血飛沫が飛び散る。


「あッ……あう……やめ、やめて……」


 僕の肌のあちこちには、赤いヘビのように血が絡んでいる。


「いいことを思いついたぞ。貴様のようなゴミでも健康な身体であれば人体実験には持って来いのモルモットだ。喜べ、今からお前の肉体を殺人兵器へと改造してやる。人間だった時の記憶を消し、闘争心を本能のように刷り込むことで恐るべき史上最強の生物兵器となるのだ!」


 僕は真っ青になりながら全身で抵抗しようとしたが、なす術もなく悪の毒牙にかかるのだった。




ーーー




 都の上空はにわかにかき曇り、暴風が吹き荒れ始めていた。
 人々が続々と家の外に出てくる。


「あ、あれを!」


 誰かが叫んだ。
 王宮のちょうど真上に、黒雲の巨大な塊が腰をすえている。雲の中では、時おり雷鳴が轟き、細い稲妻が跳ねかえっていた。


「何が起こるんだ……」


 誰からともなくざわめきが起こり、人々は不安そうに天をあおぐのであった。
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