男だらけの変態異世界冒険譚

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神との闘い編

42 神の歌声

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 さも愛おしそうな仕草で、神様は汗でヌメつく頰を愛撫しながら僕の唇を奪う。神様は差し入れた舌で口腔を舐めまわし、僕の舌を強烈に吸いたてた。
 それでも、目を閉じた僕は玩弄されるがままだった。力なく投げだされた両脚が、ピクッピクッと痙攣を繰り返すのは、失神しながらも神様の口付けに感じているからだろうか。

「ン! んん……ンッ!……ンン!」

 意識がぼんやりしている僕の口から苦痛とも快感ともつかぬ声が洩れ、神様の腕の中で萎えきった身体に痙攣が走った。
 その時、ひとつの影が飛び込んできた。

「おやおや、どうやらネズミが入り込んだようだねぇ~」

 神様の手もとから僕の身体が浮き、フワリと侵入者の足下まで飛んでいった。淡い光にわずかにきらめくほど細い糸が僕の四肢へ絡みつき、その身体を吊りさげているシーンが、神様の目に映った。

「――ボクの親友に手を出すなんて許せないなぁ。ここに来たのがヒビキだったら、あんた絶対殺されちゃってるよ~♡」

 ゆっくりと振りかえったミントが静かに言った。
 ミントの腕が僕を優しく受けとめ、そっと足下へ横たえた。

「せっかく殺さずに3人とも別々のところへ飛ばしてあげたのに……。命知らずな坊やだね。でも、そういうところ嫌いじゃないよ。神である私が人間より懐が深くて良かったねぇ~、感謝するといいよ」

 穏やかな口調とは裏腹に、神様は心臓まで凍りつきそうな声が妖々と響いた。
 美しい身体からたち昇る神様のオーラが、冷たい妖気となってミントへ吹きつけられた。並みの人間ならば、これだけで心臓まで凍りついてしまうだろう。

「…………」

 爛々と光る神様の目を、ミントは黙ったまま悽愴な目つきで睨みかえした。
 ふたりの間で目に見えない力がぶつかり、火花が散る。空気が玻璃となって、張り詰めた。

「まぁ、いい――よく見れば、君もなかなか可愛いらしい♡ いかにも甘くて美味しそうな男の子だ♡」

 お楽しみを邪魔された怒りはともかく、自分の眼差しを真っ向から睨みかえすミントに神様は興味をそそられた。チロリと舌なめずりし、眼前に立つミントを吟味する。

「甘くて美味しいかどうか、試してごらんよ……生命がけでねッ!」

 そう言った瞬間、ミントの髪が美しく流れ、しなやかな肢体が疾風と化した。
 飛燕のスピードで迫るミントの身体が、長く伸びた神様の髪に捕まってしまう。
 金色の流れがさらに数条ほとばしり、高速で移動するミントの四肢にがっちり巻きついた。

「あう……ッ!」

 逃げる間もなく、身体が宙に持ちあげられ、絡みついた髪がギリギリとミントの全身を締めつけた。鋼に等しい強度の髪は凄まじい力で骨を軋ませる。衣服が裂け、肌から血が出る。

「く……うぅッ」

 首も締められ、息が苦しくなった。

「ふふふ、苦しむ顔もいいよぉ~♡ 足腰立たなくなるまで、たっぷりなぶってあげるとしよう――ヒビキくんみたいにね」

 神様は美貌をサディスティックな笑みで蕩かせた。

「なるほど……ヒビキを襲ったのは、あんただったんだね。でも、ボクにはこんなの通用しないッ!」

 ミントは締めつける髪の束をむしり取り、驚異的な跳躍で飛びさがる。
 その時、世にも美しい歌声が、ミントの鼓膜を震わせた。
 神様が奏でる歌は聞く者すべてを魅了し、精神を操る魔の歌声であった。

「く……ッ!」

 ミントはとっさに両手で耳を塞いだ。
 しかし、たとえ一瞬でも聴いた歌声の魔力に頭は痺れ、身体が重くなる。立っているのがやっとだった。

「――もう君は私の虜だ♡」

 神様がゆっくりとミントに迫っていく。
 その凄まじい形相、その美しさにミントは思わず敬服する。
 妖々と輝く光に瞳を貫かれた瞬間、ミントの全身が凍りついた。

「さあ、聴きなさい♡――神の歌声を!」

 神様の唇から、美しい旋律が囁くように奏でられた。
 その時、背後から伸びた手がミントの腕を捉え、強烈な力で羽交い締めにした。

「……そんな、バカなッ⁉︎ ――どうしてナギサくんがッ⁉︎」

 驚愕するミントの視線の先でナギサの顔が微笑んでいた。

「ミントさん、一緒に神様の下僕になろう……」

 愛らしい大きな瞳が意志の輝きを失い、虚ろに見つめる。

「ふふふ、ナギサくんは、もう私の忠実なペット――そして君もそうなる運命だ♡」

 神様の下僕となったナギサは魂を抜かれたような表情で、もがくミントの身体をがっちりと押さえつけた。小柄な肢体からは想像もできないほど、異様な力だった。

「あぅ……ああぁ……」

 神様の歌声がミントの精神を侵していく。
 まともに聴いては、いくらミントでも抗いようがなかった。
 恐怖に見開かれた瞳から意志の光が消えていった。ナギサに捉えられた肢体から力が抜け落ち、か細いうめきを洩らした顔がガクリとうなだれた。

「それでは、さっそく味見させてもらうとしようかぁ♡」

 神様の白い手がミントの顎をつかみ、うなだれた顔をグイッと引き起こした。

「いただきまぁ~す♡」

 そう囁いた神様の唇が、ミントの唇へ重ねられた。
 唇を割って差し入れた舌先で、温かく濡れた口腔をねぶりつつ、しなやかな指でミントの股間を撫でまわす。
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