男だらけの変態異世界冒険譚

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日常編

18 変態スケッチ〜前編〜

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 僕は魔王城で家政夫として働くことになった。
 正面の門扉から玄関までを、なだらかなカーブを描く路が繋いでいた。
 裏口の扉を開け、城に入った。廊下を挟んで目の前の扉は、玄関ホールを兼ねた階段室に続く。廊下のすぐ左側が、スタッフルームになっている。

「さて、お仕事やりますか」

 異世界にも四季があるらしく、今は夏がこれから始まる時期といったところだ。床をモップ掛けしているとすぐに汗が噴き出てくる。

「やあ、ミライ♡ さっそく来てくれたか」

 ゼノンがいつの間にか後ろに立っていた。

「あ、ゼノン……僕、お部屋、掃除しに行くね」

 ゼノンの部屋に行くと、窓を開け放し、シーツを取り換えた。すると、バサッと物が落ちた音がした。
 落ちたのはスケッチブックだった。挟んであったらしい紙片が何枚か、床に散らばった。

「えッ⁉︎」

 その一枚を目にした瞬間、僕は固まってしまった。
 画用紙には、椅子に座った裸の男の子が鉛筆で丁寧に描かれていた。
 とても、あの魔王ゼノンが描いたものとは思えないほど、上手で臨場感に溢れていた。
 他の用紙も拾いあげてみた。モデルは一時期ゼノンが王宮の軍を使って拉致した男の子たちだろう。
 震える手でスケッチブックを手にした僕は、ぱらぱらと捲ってみた。

「あ、これは……」

 散らばった紙片に描かれていた裸の男の子には、すべて着衣のデッサンがあった。ゼノンはそれを元に、男の子たちの裸身を想像しながら描いたようだ。

「いけない、こんなことしている場合じゃなかった」

 ゼノンが戻ってくるかもしれない。僕は急いでスケッチブックを戻そうとして頭を抱えた。
 どこにあったのか、分からない。それに散らばった画用紙がどこに挟んであったのかも今となっては知りようもなかった。

「画用紙は多分、後ろにまとめて挟んであったはず。この辺に置いとけば大丈夫だよね……」

 スケッチブックを本棚に挟み込み、部屋から出たところで、階段からあがってきたゼノンの姿が見えた。

「あ、ゼノン……お掃除、終わったよ」
「ああ、ありがとうなぁ♡」

 部屋に入ってゆくゼノンを見送り、僕は急いで階下に降りた。
 僕は再び、床のモップ掛けをする。
 ゼノンは何も言ってこない。少しほっとした。
 洗濯物を干し、今度は拭き掃除をする。雑巾をバケツの水に浸し、ぎゅっとよく絞る。

「さあ、やりますか」

 自分に気合を入れて、隅から拭き始めた。適当な広さまで水拭きして、仕上げに乾拭きをする。
 床が鏡のようにピカピカになるのが嬉しい。元々、僕は綺麗好きで几帳面な性格なのだ。
 だが床を拭いていても、さっき目にした裸の絵がちらちらと脳裏を過って、いまいち集中できない。
 そのせいか、声をかけられるまで、ゼノンが入ってきたことに気づかなかった。

「ミライ」
「あ、ゼノン、どうしたの?」

 扉のところにゼノンがいた。四つん這いになっていた僕は慌てて立ち上がった。
 ゼノンの手に、あのスケッチブックがあるのに気付き、ぎくりとした。

「ミライのことをスケッチしたいんだ。いいか?」
「え? 別に構わないけど……」
「ありがとう♡ ミライの仕事の邪魔はしないから安心して続けてくれ」

 さっき見た裸の絵が再び脳裏を過る。
 まさか……僕も……後でヌードを描かれるのかな?
 僕は再び四つん這いになり、床を雑巾で拭き始めた。
 後ろから見られていると思うと、どうも落ち着かない。
 つい、スケッチブックに描かれた自分の裸身を思い浮かべてしまう。
 いつの間にか身体が燃えるように熱くなっていた。羞しい器官が熱を帯び、むず痒くなってくる。
 僕はちらっと背後を窺った。
 立ったまま、開いたスケッチブックに筆を走らせているゼノンの姿が見えた。
 僕は大きく深呼吸すると、目の前の仕事に集中した。夢中になって手を動かす。
 気がつくと、いつの間にか、後ろにいたはずのゼノンが前にいた。
 少し離れて床に胡座をかいている。さっきと同じように、スケッチブックを開き、筆を走らせる。

「あ、いけない……」

 暑いので、シャツのボタンをすべて外していたことを忘れていた。シャツの下は何も身につけていない。

「ミライ」

 突然の呼びかけに、身体がビクンと震えた。

「な、何?……」
「少しの間、動かないでくれるか?」
「あ、うん……」
「もう少し前かがみになって。それからちょっとだけ顔をあげて。そう、それでいい」

 左手を床につき、雑巾を持つ右手は大きく斜め前に差しだされている。シャツの胸元ははだけていた。
 露わになった乳首に注がれるゼノンの熱い視線が、痛いほど感じられた。
 僕の身体が勝手に火照り始めた。みるみる乳首が尖ってくるのが分かる。股間の疼きも激しくなってきた。

「あ、あの……もういいかな?」

 声が掠れていた。汗が滲んでくる。

「もう少しだけ我慢してくれ」
「……うん」

 じっとしていても息が荒くなる。

「ありがとう、もういいぞ♡」

 ようやく動くことが許された。
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