男だらけの変態異世界冒険譚

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日常編

17 変態異世界学園〜後編〜

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 他からは見えないと思って、とんでもないなぁ……。
 ミントは小首をかしげて、キュートにウインクしてみせる。
 こんな状況で僕の気持ちが穏やかであろうはずがない。
 一瞬、欲望に負けそうなるが、強い意志の力をもって、かろうじて誘惑に打ち勝つ。
 ミントは何度挑発しても、僕がちっとも乗ってこないので、つまんないと口をへの字に曲げ、上目遣いでむくれ、スカートの裾をすすすっと元通りに戻すと、真面目に授業を聞き始めた。
 僕は溜息をついて胸を撫で下ろした。
 次の授業は、体育。
 僕が最も嫌いな科目だ。
 しかも、授業内容は水泳……。
 僕はため息をつきながら水泳道具を持ってトイレに行くと、そこで着替える。人外のモノたちと同じ更衣室で着替える勇気がなかったのだ。
 着替え終えると、僕はひとりでプールサイドへと向かった。
 すると、学校指定の旧型スクール水着を着た人外連中が、ぞろぞろやってくる。
 その中にはミントもいた。
 学校の経営者である魔王の趣味で、僕たちは股間部分にスカートのような前垂れが付いている濃紺の旧型スクール水着を着させられていた。
 その光景は、はっきり言ってカオスだ……。
 全員ふっくらとスク水の股間部分が盛り上がり、玉袋が多少はみ出ている。ゴブリンたちにいたっては完全にハミチン状態だ。
 ミントは僕の肢体を穴があくほど、遠くから舐めまわすように眺めながら手を振ってきた。

「ミライ~ッ♡」

 ミントの股間がスク水越しにニョッキリと直立不動になる。

「ミライの指をヒップにまわして、くいくいっと水着の位置を直す仕草は、鼻血が出そうなほど、すっごぉく興奮するよ~♡」
「ミント、落ち着いて……」

 ミントは腹筋に力を入れてグググッと下半身をセーブしようとするが、妙に力が入ってしまい、なかなか上手くいかないみたいだ。
 そうこうしているうちに、プールサイドにクラスメイト全員が揃った。

「じゃあまず、溺れないように準備運動からいくぞ~ッ!」

 僕たちの目の前で魔王ゼノンが教師として声を張りあげる。まさか、学校の経営だけでなく教師までやってるとは夢にも思わなかった。

「はぁ~い」

 クラスメイトたちは隣同士で間隔を取り合い、準備運動に備えている。

「ちゃんと、しっかり手足をほぐしておくんだぞ。でないと水に入って、つっちゃうからな」

 イッチ、ニッ、サン、シイ。
 ニッ、ニッ、サン、シイ。

「大きく脚をあげてぇッ、腕をあげるッ」

 教師気取りのゼノンが手本を見せる。
 ミントは準備体操中も、ずっと僕の方を見ていた。
 ミントが脚を開いたり閉じたりするたびにスクール水着の尻の部分に微妙なクレヴァスの皺がくっきりと出たり消えたりする。
 目の前で僕を見つめているゼノンの股間がムクムクッと勃起しているのに気づいた。
 ゼノンは僕の視線に気づくと、天使のような微笑みを浮かべる。
 血湧き肉躍るゼノンとミントは、そのうえ股間も踊らせながら僕に淫靡な視線を送り続けた。

「今日は平泳ぎの練習だ。みんな6列に並んで。25メートル1本から始めよう」

 ゼノンはゴーグルを頭に乗せて、白い歯にきらりと十字の透過光を輝かせて、ニカッと笑う。

「はぁ~い」

 生徒たちは、ぞろぞろ6つのコースにわかれて整列した。

「じゃあ1列目、いくぞぉッ」

 ピーッ!
 ゼノンがホイッスルを鳴らすと、1列目の6人が、一斉に飛び込んだ。
 水しぶきをあげて、ミントは人魚のようにピチピチと水面に踊る。でも、泳げない僕はそのままプールの底へと沈んでいき、自力で浮き上がってくることはなかった……。


ーーー


「ミライ、気がついたか? 痛いところはないか?」

 僕がゆっくりと目を開けて最初に見たのはヒビキの顔だった。
 そこは清潔で簡素な部屋だった。

「良かった……ミライが生きててッ! 心配し過ぎて精神的に参ったから、ボクのこと、ぎゅっとして癒してね♡」

 ミントは僕の枕もとに歩み寄り、花びらを思わせる可憐な唇でそっとキスをした。

「泳げないのすっかり忘れてたよ……。昔は水泳の授業なんて見学してたからなぁ~」

 そう言って、布団から起き上がると僕は真っ裸だった。

「ど、どうなってんの~ッ⁉︎」

 これでは布団から出るに出られず、上半身を起こしたところで硬直した。
 カーテンがシャッと開き、ゼノンが顔を覗かせる。

「目が覚めたようで良かったぜ。どうだ、異世界での学校生活は楽しいか?」

 パンツすら穿いていない僕は布団をかき集め、枕の上まで後退して言った。

「まあまあかな……元いた世界の学校よりは楽しかったよ。それに今は友達もいるからね♡」
「そうか、それを聞いて安心したぜ。学校の授業の方はどうだ? 役に立ってるか?」
「授業の方は全然理解できなかったけど、学校生活を通して自分のやりたいことが見つかればいいと今は思ってる。つくづく僕はダメダメなモラトリアム人間だなぁ……」
「気にするな。人生とは死ぬまでモラトリアムだ。そして生まれ変わってもな♡ 型にハマった人生ほど無価値なものはない。オレはそのことを教えたくて異世界に学校を作ったんだ」

 僕の頰をゼノンの人差し指がぴんっと弾く。

「オレの教えがミライの人生を豊かにするものであるならば、それほど幸せなことはない。良くも悪くも、この世界は元いた世界よりも自由だ。オレで良ければ、いつでもミライの力になろう。きっと、ミライのがこの世界にはあるから♡」

 僕はその言葉に愕然とした。
 そうだった。今の僕はもう独りじゃないんだ。
 ヒビキやミント、そしてゼノンと出会ったあの日から僕の人生はようやく本当の意味で始まりを迎えたんだ。

「ありがとう、ゼノン。なら、もう見つかったよ……♡」

 みんなを抱き寄せると、僕は喜びの涙をひたすら流した。そんな僕の背中を3人は何も言わず温かい手でポンポンと撫で続けてくれた。
 こんな風に誰かの胸の中で泣いたのは初めて。自分の親でさえ、何の取り柄もない僕のことなんか抱いてくれなかったのに……。
 ――尊い彼らとの時間がどうか永遠に続きますように。
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