男だらけの変態異世界冒険譚

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日常編

7 闇ギルド討伐クエスト〜前編〜

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 今日のクエストは人身売買を生業とする闇ギルドの討伐だ。
 僕は闇ギルド内部に潜入捜査のために捕まったフリをして奴隷倉庫の中にいた。
 僕は裸の身体をよじって、足もとから伝わる冷気を避けようとした。
 ――ギィィ……。
 僕は身体を起こした。何かがきしむ音とともに、暗闇に光が射し込んでくる。毒々しく、いかがわしい匂いを秘めた光だった。

「!……」

 予感は的中した。開かれた扉の向こうには、見るもおぞましき魔淫の光景がひろがっていた。

「ああ」
「はあぁ」

 闇ギルドにさらってこられた男の子たちだろう。
 黄金に板張りされた祭壇のような場所で彼らは闇ギルドの男たちとまぐわっていた。
 思わず僕は目をそむける。
 男の子たちには、ただ性の悦楽によがり狂う獣と化し、自ら男根に唇を寄せて、尻を振りたくり、汗みどろになりながらもさらなる性の到達点に向かって身悶え、泣きすすり、押し隠すことのない喘ぎ声を放っていた。

「あはぁん……気持ちいい……ああん! 気持ちいいよぉ……」

 上ずった声をあげながら、男根を型どった柱を抱いて尻を振り、男のものを咥えこんでいる。白い肌がうねうねと妖しく蠢き、だらしなく開かれた唇からはよだれが滴っている。

「うぅぅぅん……あううん……」

 さらに、ぴちゃぴちゃと淫らな音をたてながら男根を舐め頬ずり、自らの秘部を慰めている。
 嫌悪感と同時に、熱いものを腰奥で感じた僕は唇を嚙みしめた。

「!――」

 そむけた僕の顎が、何者かの指でつかまれた。冷たく力強い指は僕の顔を強制的に魔淫のホールへと向けさせた。

「ああなりたくなければ、仲間の居所を言え! 貴様らが我々の仕事を妨害しようと企む冒険者だと言うことは分かっているんだ」

 僕たちの作戦が敵側にバレているなんてッ⁉︎ 僕は心底驚愕した。
 闇ギルドの奴隷商人は長い爪で僕の乳首を絞るようにねじ上げる。

「あうッ。し、知らない! ほ、本当に……痛いッ!」

 奴隷商人は身体を両手で押さえてうずくまる僕の前に歩み寄った。

「馬鹿め、正直に言えば痛い目にあわずにすんだものを」

 震えている僕の手をどけさせ、そろえた指で乳首を挟む。

「ここはどうして硬くなってるんだ? 正直に言うんだぁ~」

 乳首をつままれたまま円を描くように愛撫されると、敏感な身体に快感の震えが走る。僕は息を殺し、唇を嚙んで奴隷商人の視線から顔をそむけた。

「し、知るもんか! ああッ!」

 勃起して包皮から顔を出したアソコをつねられ、僕は悲鳴をあげてのけぞる。
 奴隷商人はなおも僕のアソコをなぶりつつ、呪文を唱え始める。

「アドルカメ、ヴァルエリトフ、マレソロ、ディール、カドミール、イエサ、カルニソ、テリ……」

 すると、突如部屋の四方から奇妙な音が鳴り出した。木のイスはカタカタと足踏みをし、誰も触れてもいないのに金のグラスがテーブルから床へ次々と転げ落ちて、飲み残しの果実酒をぶちまける。開け放たれていた窓の鎧戸はバタンバタンと開閉する。
 僕は恐怖に震えながら部屋を見まわした。
 ゴゴ、グゴォ~ッ!という地を揺るがすような轟音が鳴り響いた直後、僕の身体は爆風に巻きあげられ、四肢を大きくひろげた格好で宙に固定された。

「ああッ! いやぁ~ッ!」

 奴隷商人の呪文により空中に拘束された僕の目前に、無数の悪鬼怨霊が出現する。腐りかけた屍の頭部が部屋の中を飛び交う。

「ひぃいッ、いやぁああ~ッ!」

 あまりのおぞましさに僕はたまらず失禁してしまった。黄色い液は尿道口から床へと弧を描いてほとばしる。

「きゃぁあ! ゆ、許してぇ……」

 奴隷商人は冷たく光る瞳で宙に拘束された僕の裸身を凝視する。ピンク色の舌で愛らしい唇を湿らせ、美しい顔に冷笑を浮かべていた。

「悪鬼怨霊はおまえの肉のみならず、魂をも凌駕するだろう。それでもよいのか?」
「いやぁあ~ッ!」
「答えろ。他の冒険者はどこにいる? 正直に言えば許してやってもよいぞ」
「きゃぁあ~ッ!」

 ひときわ大きな声をあげると、僕の頭がガクッとのけぞる。薄く目を見開いたまま、半ば意識を失いかけた。
 奴隷商人はチッと嫌そうに舌打ちをし、口の中で消却の呪文を唱えた。たちまち悪鬼怨霊の姿は消え去り、僕は支えを失ってドサッと床に落ちた。
 ほどなくして鉄扉が開き、ひとりの青年が中を覗き込んだ。

「敵の冒険者か?」

 青年は床の上に倒れている僕を見つけると驚いて棒立ちになった。急いで部屋に入って僕の頸動脈に指を押し当ててきた。

「……よかった、脈はある。少し意識がぼんやりしているだけだな。悪いけど、コイツは俺が尋問する。手出し無用だ」

 そう言われた奴隷商人は地面につばを吐きかけ、不満そうな顔で部屋を出ていった。
 僕は青年の部屋に案内されると、そこは寝所で天蓋付きベッドが据えつけられていた。青年は霧のように薄い天幕を割りひろげ、絹のシーツの上に僕を横たえる。部屋の隅から水の入った壺を持ってきて、布をひたして軽く絞り、脂汗が浮かぶ僕の頰を拭った。
 冷たい水の感触で僕は完全に意識が戻った。

「……き、君は誰なの?」
「安心しろ。俺の顔をよく見てごらん」

 青年の正体は変装魔法で奴隷商人の仲間に化けていたヒビキだった。

「へぇ~、ヒビキって、そんなことも出来るんだね。ありがとう、助かったよ♡」

 僕は起き上がろうとして苦痛に顔を歪める。
 ヒビキは起き上がろうともがく僕の肩をそっと押さえ、濡れた布で顎や首筋を拭いていく。

「ミライはもう少し休んでた方がいい。大丈夫、何があってもミライは俺が守るから♡」

 敏感な耳元に温かな吐息を吹きかけられ、僕は不覚にも乳首を硬くしこらせてしまった。


ーーー


 しばらく休むと、僕はムクッと起き上がった。
 お腹が空いてきた僕は片手で胃のあたりを押さえて立ち上がる。
 ふと気がつくと、僕が眠りこんでからヒビキが着せてくれたのか、素っ裸だった下半身に動物の皮でできたパンツをはいている。パンツと言っても股間の部分はウエストがV字に深く切れこんでいて、ペニスが外に飛び出す形になっている。胴衣は小さなエプロン風の前だれが、大事なところを隠すような仕組みになっている。

「ふ~ん、ここさえめくればすぐにエッチできちゃう、ってわけね♡」

 前だれをピラピラさせて、にやりと笑っていた僕はハッとしてお腹を押さえた。

「やばい……お腹が減り過ぎて死ぬかも……」

 僕はベッドの近くに置いてあった膝下まである頑丈なブーツをはくと、そろそろと歩き出す。
 とりあえず五感を研ぎ澄まして、あたりの物音に注意しながら部屋から出る。
 僕がいま立っている通路の先に鉄の扉が見えた。扉に近づき耳を押し当て、なかから何も音がしないことを確認してから取っ手をまわしてみる。

「あれ? 開いてるんだ……」

 思わず驚きの声をあげてしまい、慌てて自分の口をふさいだ。

「闇ギルドの本拠地のはずなのに、どうして敵がひとりもいないんだろ? 僕みたいなドシロウトが簡単に入れるなんて、やっぱり罠かもしれない……危険だなぁ」

 と理性はとめにかかっているが、本能はくたばりかけてる腹の虫を救おうと必死だ。

「もう我慢できないッ。ど~せ捕まるなら、たらふく食べてからにしよっと。こっちは潜入捜査を始めてから何も食べてないんだし、しょうがないよね」

 僕はそう決断し、鉄の扉を内側へ静かに押し開けた。
 部屋の中は薄暗かった。僕が入った場所は荷物置き場のようで、袋詰めの小麦や束にした野菜などが山と積まれている。じっくり見まわしてみたが、すぐ口に入れられるようなものは何もない。

「ピザ食べたいなぁ。シーフードミックスにダブルチーズとコーンをトッピングしたやつ。あ~、お腹減ったぁ」

 僕は空腹と性欲にはどうしても勝てない男だった。
 調理室をさがそうと、別の扉を開けてみる。するとそこは通路になっていた。
 食べ物をさがしてしつこく匂いを嗅いでいると、やがて右手から香ばしい照り焼きチキンの香が漂ってくるのに気づいた。

「そ~こなくっちゃね♡」

 うなずいた僕は歩き出そうとした。が、思い直して、敵に出くわした時すぐ逃げられるよう、壁に背中を向けたカニ横歩きスタイルで歩き出す。ただしスピードは超高速モードだ。
 通路のあちこちにドアがあったが、それらは無視して匂いの元へと突進する。何度か角を曲がり、ずうっと進んでいくと、やがて通路はいきどまりになった。

「変だな? 匂いは確かにこの辺からしてるんだけど……」

 周囲を見まわしてみても、ドアは愚か窓ひとつない。僕は諦めきれずに通路の壁を指先で叩き始めた。あちこち触ってみると、一カ所だけ石の表面が柔らかい。

「これは一体……」

 そっと押したとたん、足もとの石床がガクンと落ち込んだ。

「うわ……んッ」

 叫びそうになり、慌てて口をふさぐ。僕の体は3倍速で奈落の底へと落ちていく。墜落のスピードが速過ぎ、喉から内臓が全部飛び出してしまいそうだ。
 ものの数秒のことなのだが、穴が暗いのと時間の感覚が狂っているのとで、僕には2分ぐらいは墜落しているような気がした。

「あッ、たッ、……てて~ッ!」

 お尻から着地してしまい、あまりの痛さに息ができない。

「び、び、尾てい骨、う、打ったぁ……」

 息も絶え絶えに起き上がり、真っ暗な闇の中を四つん這いになって壁をさがす。ようやくぬちゃっと湿った石壁に手が触れ、すがるようにして立ち上がった。
 墜落のせいでちょっと乱れたタマと竿の位置をちゃんと直し、深呼吸をして歩き出す。

「ここはどこだろう?」

 あたりを取り巻く空気はよどみ、じっとりと湿っている。チキンの匂いは濃くなったが、さらに腐ったキャベツのような臭い匂いも漂ってくる。どんどんいくと、壁に小さなたいまつが灯っていた。たいまつを手に取って後ろの壁に振りかえった瞬間、僕はあんぐりと口を開き、その場に棒立ちになった。
 そこに地下牢があった。頑丈そうな鉄格子の向こうに美少年がひとり捕われている。ピアノの鍵盤のような防御シールドによって身体を拘束されていた。球状の小型偵察機が美少年を見張っている。

「すごいや……」

 僕はぐびりと息を呑み、目玉を両方ともめいっぱい皿にして青白く浮かび上がる美少年をじっと観察する。
 美少年はガクッと首をたれているので、顔は半分ほどしか見えないが、かなりの美貌のようだ。まぶたは閉じられ、長いまつ毛がフルフル震えている。

「あたッ!」

 僕は無意識のうちに美少年の身体に触れようと手をのばし、鉄格子にオデコをしたたかぶつけた。

「この男の子は誰だろう?……」

 小声でつぶやいた僕は、たいまつを掲げて鉄格子の前をウロウロする。

「んん……」

 気絶しているとばかり思っていた美少年がピクッと肩を震わせ、小さく身じろぎをした。
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