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345 変態エモーション〜前編〜
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近年は恋愛できないことについて悩む人が多いらしい。
はっきり言わせてもらうが、そんなことで悩むのは時間の無駄だ。
人の欲求というのはピラミッドのように積み上げられていく。これをマズローの欲求5段階説と言う。
たとえば、食べる物がないような飢餓状態では恋人なんてほしいとも思わないだろう。
恋愛なんてものは自分の命の安全と衣食住が確保された次に出る欲求なのだ。
つまり人間と言う生き物は欲求が満たされれば満たされるほど強欲になるパンドラの箱と言える。
欲に取り憑かれた人間に待っているのは自滅だけだということを僕たちは肝に銘じて己を律しなければならない。
だが、男という生き物は尋常じゃないほどに性欲が強い。
他の全てを捨ててでも性欲を優先し、身を滅ぼす男たちは数知れない。
今回はそうした性欲に翻弄される男たちの物語――。
ーーー
コ◯ナ禍による大不況で困窮した男たちがついに大規模なテロ行為を開始した。
お金がないせいで欲求不満に陥った男たちは道行く人に向かって無造作に精液をかけ始めたのだった。
あまりの事態に機動隊に出動要請が出されたが、人間性を失った彼らを取り押さえるのは至難の業だった。
ケモノと化した男たちは右腕から背中にかけてメタルプロテクターを装着し、左手には蛮刀を持っていた。
右手のメタルプロテクターから突き出た銃口が火を吹き、背中に背負ったランドセルのような箱にギッシリと詰まった弾丸を発射する。
失うモノが何もない『無敵の人』だけあって、彼らの動きはトリッキーで予測がつかない。機動隊がやみくもに撃つ弾丸を見事にかわす。
「ちくしょう、なんて動きだ。もはや人間技じゃない!」
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
男たちの撃った弾丸が、機動隊員の体を蜂の巣にした。
「くっそお!」
他の機動隊員が応戦するが、男たちは横っ飛びに逃げ、後ろの建物に穴が並ぶ。
弾丸は全てはずれ、弾切れとなった機動隊員に向かって男たちは蛮刀を振り上げて襲いかかっていく。
機動隊員が死を覚悟した瞬間、飛び込んできたリョウのパンチが男たちにクリーンヒットした。
「やれやれ、アキラとのデートを邪魔しやがって。戦争ごっこは日本以外でやってくんねえか」
素早く体勢を立て直した男たちは回し蹴りを繰り出す。
リョウはそれを右腕で受け止めると、今度は顔面に容赦なく一発食らわす。
すると、後ろから蛮刀を振りかざして、リョウに襲いかかる男がいた。
「うおッ⁉︎ やべぇ!」
蛮刀が振り降ろされようとした瞬間、男の両腕を背後からチキンウイングで絞り上げる者がいた。
「さすがのリョウでも、この数はキツイみたいだね」
「――カスケ! サンキュー、恩に着るぜぇ!」
カスケが関節技で締め上げた男の顔面にリョウはハイキックを入れる。一瞬にして男は気を失った。
男たちの無敵の人っぷりに動きが止まってしまっていた機動隊員たちの間に士気が蘇っていく。
一気に形成逆転し、奇跡のスピードで男たちを鎮圧していった。
「どうも、ご協力感謝致します」
リョウとカスケは機動隊の隊長に感謝の言葉を述べられると、ある異変に気がついた。
「いや、礼には及ばない。ところで、この辺で可愛い男の子を見かけなかったか?」
「いえ、通行人は早い段階で警官が避難させたので、この辺りにはもう一般人はいないかと」
「う~ん、何か嫌な予感がしてきたぜ……」
妙な胸騒ぎを覚えたリョウとカスケは一目散に走り去っていくのであった。
ーーー
僕は自分の身に起きた理解不能の恐怖にガタガタと肩を揺らしていた。
街中で変態テロ行為をしていた男たちに無理やり連れて来られてしまったのだ。
「僕、一体どうなるのかなぁ……」
真っ白な壁にもたれかかっていると、何もない部屋の中に見知った顔の男の子が入ってきた。
「やあ、アキラくん♡ また会えたね……」
「えぇ、童手井くん⁉︎」
ドアが開いた先にいたのは長らく音信不通になっていた童手井くんだった。
「えっと、その……元気だった? 今、大学の方は通ってるの?」
「大学なら落ちたよ。もう全てがどうでもよくなったよ……」
「そうだったんだ……。でも、高卒でもいいじゃん。僕なんか頭悪過ぎてFラン大学さえ卒業できなかったし」
「それはボクも一緒だよ。どこまでも似た者同士だよね、ボクたちって……」
そう言うと、童手井くんは切なそうに微笑んだ。
「ねえ、アキラくんは何もかも持っている人間を憎いと思ったことはない?」
「そりゃあ、毎日そう思ってるけどwww」
「それならアキラくんもボクの仲間だね♡ 今日からボクと一緒に住もうよ。よし、決定!」
状況が呑み込めずに狼狽する僕を気にする様子もなく、童手井くんは勝手に決めてしまった。
仕方なく僕はリョウがいつものように助けに来てくれるまで童手井くんとの一時を過ごすことになったのだった。
はっきり言わせてもらうが、そんなことで悩むのは時間の無駄だ。
人の欲求というのはピラミッドのように積み上げられていく。これをマズローの欲求5段階説と言う。
たとえば、食べる物がないような飢餓状態では恋人なんてほしいとも思わないだろう。
恋愛なんてものは自分の命の安全と衣食住が確保された次に出る欲求なのだ。
つまり人間と言う生き物は欲求が満たされれば満たされるほど強欲になるパンドラの箱と言える。
欲に取り憑かれた人間に待っているのは自滅だけだということを僕たちは肝に銘じて己を律しなければならない。
だが、男という生き物は尋常じゃないほどに性欲が強い。
他の全てを捨ててでも性欲を優先し、身を滅ぼす男たちは数知れない。
今回はそうした性欲に翻弄される男たちの物語――。
ーーー
コ◯ナ禍による大不況で困窮した男たちがついに大規模なテロ行為を開始した。
お金がないせいで欲求不満に陥った男たちは道行く人に向かって無造作に精液をかけ始めたのだった。
あまりの事態に機動隊に出動要請が出されたが、人間性を失った彼らを取り押さえるのは至難の業だった。
ケモノと化した男たちは右腕から背中にかけてメタルプロテクターを装着し、左手には蛮刀を持っていた。
右手のメタルプロテクターから突き出た銃口が火を吹き、背中に背負ったランドセルのような箱にギッシリと詰まった弾丸を発射する。
失うモノが何もない『無敵の人』だけあって、彼らの動きはトリッキーで予測がつかない。機動隊がやみくもに撃つ弾丸を見事にかわす。
「ちくしょう、なんて動きだ。もはや人間技じゃない!」
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
男たちの撃った弾丸が、機動隊員の体を蜂の巣にした。
「くっそお!」
他の機動隊員が応戦するが、男たちは横っ飛びに逃げ、後ろの建物に穴が並ぶ。
弾丸は全てはずれ、弾切れとなった機動隊員に向かって男たちは蛮刀を振り上げて襲いかかっていく。
機動隊員が死を覚悟した瞬間、飛び込んできたリョウのパンチが男たちにクリーンヒットした。
「やれやれ、アキラとのデートを邪魔しやがって。戦争ごっこは日本以外でやってくんねえか」
素早く体勢を立て直した男たちは回し蹴りを繰り出す。
リョウはそれを右腕で受け止めると、今度は顔面に容赦なく一発食らわす。
すると、後ろから蛮刀を振りかざして、リョウに襲いかかる男がいた。
「うおッ⁉︎ やべぇ!」
蛮刀が振り降ろされようとした瞬間、男の両腕を背後からチキンウイングで絞り上げる者がいた。
「さすがのリョウでも、この数はキツイみたいだね」
「――カスケ! サンキュー、恩に着るぜぇ!」
カスケが関節技で締め上げた男の顔面にリョウはハイキックを入れる。一瞬にして男は気を失った。
男たちの無敵の人っぷりに動きが止まってしまっていた機動隊員たちの間に士気が蘇っていく。
一気に形成逆転し、奇跡のスピードで男たちを鎮圧していった。
「どうも、ご協力感謝致します」
リョウとカスケは機動隊の隊長に感謝の言葉を述べられると、ある異変に気がついた。
「いや、礼には及ばない。ところで、この辺で可愛い男の子を見かけなかったか?」
「いえ、通行人は早い段階で警官が避難させたので、この辺りにはもう一般人はいないかと」
「う~ん、何か嫌な予感がしてきたぜ……」
妙な胸騒ぎを覚えたリョウとカスケは一目散に走り去っていくのであった。
ーーー
僕は自分の身に起きた理解不能の恐怖にガタガタと肩を揺らしていた。
街中で変態テロ行為をしていた男たちに無理やり連れて来られてしまったのだ。
「僕、一体どうなるのかなぁ……」
真っ白な壁にもたれかかっていると、何もない部屋の中に見知った顔の男の子が入ってきた。
「やあ、アキラくん♡ また会えたね……」
「えぇ、童手井くん⁉︎」
ドアが開いた先にいたのは長らく音信不通になっていた童手井くんだった。
「えっと、その……元気だった? 今、大学の方は通ってるの?」
「大学なら落ちたよ。もう全てがどうでもよくなったよ……」
「そうだったんだ……。でも、高卒でもいいじゃん。僕なんか頭悪過ぎてFラン大学さえ卒業できなかったし」
「それはボクも一緒だよ。どこまでも似た者同士だよね、ボクたちって……」
そう言うと、童手井くんは切なそうに微笑んだ。
「ねえ、アキラくんは何もかも持っている人間を憎いと思ったことはない?」
「そりゃあ、毎日そう思ってるけどwww」
「それならアキラくんもボクの仲間だね♡ 今日からボクと一緒に住もうよ。よし、決定!」
状況が呑み込めずに狼狽する僕を気にする様子もなく、童手井くんは勝手に決めてしまった。
仕方なく僕はリョウがいつものように助けに来てくれるまで童手井くんとの一時を過ごすことになったのだった。
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