男の子たちの変態的な日常

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342 変態老人

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 僕には友達と言えるような存在はいない。
 今思うと、昔から僕は孤立することが多かった。
 毎度その場限りの人間関係で終わり、親しい友人が出来ることなく、学生時代を終えた僕にとって『友達』というのは永遠の憧れだった。
 大人になるに連れて人との関わりは益々減り、最近ではリョウ以外で話した記憶がないほど人間関係が狭小化している。
 元々なかったコミュ力が更に落ちたんじゃないかと思えるほどボキャブラリーも貧困化している今日この頃。
 僕にも気の利いたジョークの1つや2つ言えたら、誰かしら友達になってくれた人がいたかもしれない。でも、つまらないジョークを言って場を凍りつかせるよりは無難に適当な相槌をしている方がマシかもしれないが……。


「僕も面白い人間になれたら良かったのになぁ……」


 そんなことを考えていると、今日も無意味に時間だけが流れていく。
 もどかしい思いに駆られながらリョウがいない時間をどう潰すか考える。


「う~ん、特に何もやることがない……。何か楽しいことはないかなぁ?」


 僕は思い切って外に散歩に出かけた。
 近所の公園では老人たちが活き活きとゲートボールに興じている。僕は歩きながら、その光景をしばらく見ていた。


「あの歳になっても元気で楽しそうに生きてるなぁ。一体何があの人たちの原動力になってるんだろ?」


 そんじょそこらの若者なんかより、よっぽど目の前の老人たちの方がキラキラして見えた。老い先短い彼らにとっては1秒1秒がかけがえのない時間なのだろう。


「老人たちからすれば、僕の悩みなんかカスみたいなもんだろうなぁ……」
「――何がカスなのかしら?」


 聞き覚えのある野太い声に後ろを振り返ると、そこには外井げい先生が立っていた。


「ま~た、しょうもないことで悩んでたんでしょ? アキラくんは昔から些細なことで悩んじゃうんだからwww」
「はい……いつも何かしら悩んでます。たぶん死ぬまでダメダメな僕は悩み続けるんだと思います……」


 落ち込む僕を励まそうと外井げい先生は優しく頭を撫でてくれた。


「可哀想に……老人を羨望の眼差しで見つめてしまうほど、今のアキラくんは人生終わっているのね……」
「はい、そうなんです。あの老人たちの方が僕より人生を謳歌してるんじゃないかって、そんな気がしてしまって……」


 僕がそう言うと、外井げい先生は老人たちの方に向かって歩いていった。


「アキラくんも一緒に来なさい。人生の大先輩たちから学ぶことも、きっとあるはずだから」
「えぇ、でも……」


 狼狽する僕を気にもかけず、外井げい先生は老人の輪にすんなり入っていく。バケモノ級のコミュ力の持ち主である外井げい先生だからこそ出来る芸当だ。


「ほほう、人生を楽しく生きるコツを知りたいってぇ? そりゃあ、セックス以外にねえだろwww」


 100歳近い御老人はその歳になっても未だにセックスしてらっしゃるそうだ。


「なるほど、そのお歳になってもアソコの方は現役でいらっしゃるわけですね♡」
「そりゃあ、そうよ! 勃たなくなった時は死ぬ時よwww」


 どうやら長生きの秘訣は性欲にあるらしい。とんだスケベジジイではあるが、快活に笑う表情を見ていたら不思議と僕も笑顔になってしまった。


「どんなに身体が思うように動かなくなってきたとしても、セックスしてる時だけは身体が浮いたように軽くなっちまうんだ。でも、絶頂を迎えた後2、3日は身体が全く言うこと利かなくなるがなぁwww」


 そう言うと、スケベジジイは僕の尻を撫でるように触ってきた。


「あ~ッ、ちょっと!」
「いいじゃねえか~、減るもんじゃねえしwww」


 僕の尻を撫でまわすスケベジジイに触発されて、他の老人たちもこちらへ群がってきた。


「ハアハア……若えエキスをワシにもくれぇwww」
「うひゃひゃ、やっぱ若えのはいいもんだなぁwww」
「うひょひょ、ワシも若返ったら若えのを娶りてえもんだwww」


 お尻だけでなく胸や股間にまで老人たちの手が這うように襲いかかる。
 どんなに気持ち悪くても老い先短いお年寄りに対して力づくで抵抗するのは気が引けた。


「どうも、すみませ~ん。俺のアキラがお世話になってまぁ~す。ちょっと通してくださいねぇwww」


 すると、丁度そこへ強力な威圧感を放ちまくったリョウが現れ、老人たちを心理的に圧倒する。瞬く間に老人たちは僕の周囲から遠ざかっていった。
 その後、僕たちは少しだけ老人たちと公園でゲートボールをして遊んだ。その間もリョウの目を盗んでは僕の尻を撫でてきたが、リョウの存在を恐れているせいか、先程よりは消極的だった。
 夕暮れ時になっても老人たちは未練がましく僕の身体をギラギラ見つめていたが、諦めて各々の家路につくのであった。


「やれやれ、スケベなジジイ共だったぜwww」
「うん、そうだね。リョウも歳を取ったら、ああなるのかなぁwww」
「俺はあんなヨボヨボにならねえよ! ゼッテェ不老不死になってアキラと一緒に永遠に終わらない日常を送るのが俺の夢なんだ♡ 今、俺はそのための研究に尽力しているところさ」


 リョウの夢を聞いて思わず笑ってしまったが、もし本当に可能であるならば、それほど理想的な未来はないだろう。


「じゃあ、その夢、絶対叶えてよね♡」
「おう、任せとけ!」


 この変態的な日常が永久に続いていくことを願って、僕は己の人生と真摯に向き合う決心をしたのであった。
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