男の子たちの変態的な日常

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319 変態カット

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 僕は生まれて初めて1000円カットに行った。その結果――。


「あぁ……もう死んでしまいたい……値段に吊られた自分が恨めしい……」


 毛先がまるで揃っておらず、目尻や耳元や後ろの首周りに数本長い毛がそのまま残っている。前髪に至っては完全に左右非対称であり、道行く人に笑われてしまうレベルだ。


「こんなノウタリンみたいな頭にされてしまった僕はどうすればいいの? 奇◯種にでもなればいいの?」


 ハサミで髪を挟まれたり、引っ張られたりと拷問のような苦痛を味わわされた挙句に壊滅的な頭にされ、メンタルまでボロクソに叩き潰された僕は行き場のない怒りと深い絶望に苛まれていた。


「どうかしたのか?……って、何があったんだ、その頭はwww」


 僕の頭を見て衝撃を受けたリョウは必死で笑いを堪えるように引き笑いをする。


「1000カットという名の地獄に落ちた結果がコレだよ……」
「なるほど、安さと引き換えに恥をかくことになったわけかwww」


 リョウは僕の悲惨な頭を撫でながら堪えるのを諦めてゲラゲラ笑う。


「ぎゃはは! 1000カットっていうのはハゲや刈り上げにするヤツだけが重宝するところだ。そもそもアキラみたいに普通の髪型にしたいヤツが行くところじゃねえよwww」


 そう言われて思い出したが、客層はオッサンばかりで皆ハゲや刈り上げばかりにされていた。僕みたいな若いのがのこのこと行っていい場所ではなかったのだろう。


「やれやれ、行ってくれれば俺が切ってやったのによ。そうすりゃ、タダでイケてる髪型にしてやったぜ」


 確かにリョウは自分の髪も散髪できるほど切るのが上手い。リョウのヘアスタイルは常に完璧に決まっており、ヘアカタログのモデルにだってなれるレベルだ。


「よし、残った髪を何とか俺が切り揃えてやる。まずはその面白いほどに揃ってない前髪からだwww」


 切った髪が服につかないように全裸にされると、さっそくリョウは所々伸びた髪の毛をカットしていく。


「それにしても、よくもまあ、ここまで見事なヘンテコヘアにされたなぁ。もしかして俺たちの知らない所で左右非対称の前髪が流行ってんのかwww」
「仮に流行ってたとしても、こんな謎すぎる前髪は御免被るよ……」


 リョウに応急措置をしてもらったおかげで左右非対称だった前髪も何とか揃った。けれど、そのせいで大幅に前髪は消滅してしまった。


「わりぃな、アキラ。あそこまで極端な左右非対称だと、どちらかに合わせないと不自然だから結局バッサリ切るしかなかったんだ」
「大丈夫、分かってるから。あんな前髪にされた時点で僕の前髪は死んでたんだよ……」


 次は耳元からモミアゲにかけてリョウはカットしていく。


「さっきはインパクトのある前髪ばかりに気を取られて気づかなかったが、モミアゲの長さと形まで左右で大幅に違うぞwww」


 そう指摘されて鏡を見たら、もはや嫌がらせなんじゃないかと思うレベルの惨状だった……。


「1000円カット恐るべしだなぁ。オシャレなヘアスタイルを維持するのは金持ちの特権で、貧乏人はハゲや刈り上げ以外に選択肢はないという厳しい現実を教えてくれるなぁwww」
「そうだね……。1000円カットで詳しい注文したら、何か舌打ちされたから、きっと僕はその報いを受けたんだよ」
「なるほど、つまりハゲや刈り上げ以外の面倒くさい注文をした者には仕返しに謎ヘアにカットするという羞恥プレイを味わわすわけだなぁwww」


 1000円カットの闇を体現したような羞恥ヘアがリョウの神業によって見る見るマシになっていく。


「うわぁ、すごい♡ さっきの奇◯種ヘアからイケてる進◯の巨人レベルにクラスチェンジしたって感じ!」
「例えがよく分からんが、喜んでくれて何よりだぜ♡」


 鏡に映る自分を見て嬉しいのあまり地獄から天国に上り詰めたような高揚感を覚えた。


「よ~し、一通り切り揃ったなぁ。次はスタイリングだなぁ」


 リョウは髪全体を少し濡らすと、ドライヤーの温かい風でブローしながら僕の髪をアレンジしていく。髪の形が整ってくると、冷たい風でさらにブローをする。


「まあ、ざっとこんなもんよ♡」
「おぉ~、僕じゃないみたいに素敵すぎる!」


 髪型が変わっただけなのに生まれ変わったような気分だ。
 見た目だけなら間違いなくリア充っぽい感じのオシャレなヘアスタイルにしてもらった僕は今なら誰よりもモテモテになれると思ってしまうほど謎の自信に満ち溢れていた。まあ、陰キャが髪型を変えたぐらいでモテるはずはないが、今だけは夢見がちになってバチは当たらないだろうwww


「伝説のスーパーリア充に大変身を遂げた僕に不可能はな~い!……はず」
「おぉ、いきなりアキラのテンションが上がったなぁ。まあ、髪型が変われば気分も変わって、それなりに人生も変わるから今は大いに喜んでくれ♡」


 僕は素っ裸であることも忘れてリア充を気取りながら鏡に映る自分の姿に酔いしれる。その光景をオカズにリョウはチンポを扱きながら、ついでに自分の伸びてきたチン毛をカットするのであった。
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