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311 変態お姫様
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僕は某少女漫画雑誌を読みながら溜息をついていた。
「あぁ~、助けてくれたイケメンにいきなりキスされそうになったところで次回に続くのか……。ホントこういうのお約束だよねぇ~」
長年、少女漫画を読んでいる僕には次の展開が手に届くように分かってしまう。
「次回辺りでヒロインの学校に助けてくれたイケメンが転校してくるんだろうなぁ。よし、次の作品を読んでみるか」
ページをめくると、ヒロインが図書館で本を探すシーンから物語が始まる。
「はいはい、どうせ同じ本を取ろうとしてイケメンと手と手が触れ合ってキュンってなるパターンでしょ」
案の定、次のページをめくるとヒロインとイケメンの手が触れ合って背景に花が咲き乱れる。
「ほら、やっぱりね。内容もありがちだし、飛ばして次の作品にしよっと」
次の作品はヒロインがブス設定であるにもかかわらず、普通に目がデッカくて可愛らしい。人付き合いが苦手なコミュ障という設定のわりにイケメンとは普通に話せるのかよwww
もう少しリアリティを追求して百貫デブ髪の毛バサバサ虫歯ド貧乏コミュ障ワキガ歯並びガタガタ不細工女をヒロインにしてイケメンに無償で愛されまくるような作品にすれば多くの読者が感情移入して楽しめること間違いなしだろう。
「そろそろ少女漫画にも革命を起こさなきゃ。もうルッキズムの時代は終わりにしてブスに花束を!」
そんな独り言を言っていると、いつものようにリョウが話しかけてきた。
「なるほど……でも、ブスの基準がイマイチ分からないから女をヒロインにするのやめて男の子にしよう♡」
「いや、それだと普通にBLじゃんwww」
「むしろBLでいいんじゃないか? 最近は一世を風靡するほどの少女漫画とかないし」
「言われてみると、昔は男女ともに人気を獲得して社会現象を巻き起こすような少女漫画もあったのに近年は全く話題にならないね……」
今は猫も杓子も某少年誌に連載された漫画の劇場版にご執心らしく、少女漫画は余計に蚊帳の外に追いやられている感がハンパない。
「どうして殆どの人は少女漫画を見なくなったんだろう? 心が揺さぶられるような名作もあるのに……」
「さっきアキラがその答えを自分で言ってたじゃないか」
「えぇ? なんか言ったっけ?」
「内容がありがちで次の展開が手に取るように分かる劣化コピーの量産型ばかりだってなぁwww」
いや、そこまでは言わなかったような……。
ただ大同小異で創意工夫もないような作品ばかりなのは事実だ。少女漫画業界にも今のラノベ業界のような閉塞感があることは認めざるを得ない。
「そもそも少女漫画は内容的にも一般大衆に受けるとは言い難いものばかりだからなぁ。少女にとって面白い漫画という枠を超えた老若男女に突き刺さる作品を出さないと。その辺に関して言えば、少年漫画は上手い具合に女性ファンを取り入れ、時代に柔軟に対応した作品作りをしていると言える」
確かにリョウが言うように近年は絵柄的にも内容的にも露骨なまでに女性読者を意識したと思われる作品が少年誌に掲載され、一昔前はたびたびネット上で論争になったが、究極的には売れるモノが大正義であり、そのことに異議を唱える人間はほぼ消滅した。商業主義の完全勝利と言えるだろう。
「う~ん、言いたいことは分かるんだけど少女漫画は変に他の層へ向けて媚びる必要はないと思うんだよ。そういった意味合いで言えば、少年漫画もだけど、それぞれの聖域は本来しっかり守られるべきというのが僕の考えなんだ」
「アキラの言いたいことも分かるが、この世を動かすのは金さ。金を出さないヤツの意見は反映されないし、売れないモノはどんどん淘汰されていくだけだ」
歩く正論製造機と命名したいくらいリョウは正論の嵐を炸裂させる。
確かにリョウの言う通り、少女漫画は少年漫画より明らかに客層が狭い。無論、有名どころの少女漫画を読んでいる男は普通にいるが、定期的に少女漫画雑誌を購読して単行本を月に何冊か買っている男は存在しても極少数だろう。
もはや今時の少女漫画は根強い固定客と文字通りの少女によって支えられていると言っても過言ではない。
「じゃあ、どうすれば少女漫画を逆境から救い出すことが出来るの?」
「そりゃあ、まずは無難に男性ファンを増やさないとなぁ」
「男にウケた少女漫画といえば、昔とある男の娘アイドル漫画がヒットしたことがあったよね?」
「あぁ、懐かしい! 確か、男の子が女装してアイドルを目指すとかいうヤツな♡ 漫画全巻集めたわwww」
オタク男性は男の娘好きが多いから、上手くすれば少女漫画でも手に取ってもらえるかもしれない。
「男の娘を主役にしてイケメンと結ばれるみたいな作品だったら男女ともにウケるんじゃない?」
「いや、BLになってるぞwww」
「ヒロインは女じゃないといけないなんて時代遅れな考えだよ。2年くらい前のプ◯キュアも言ってたでしょ? 『男の子だって、お姫様になれる!』ってさwww」
「なるほど、名言だなぁ~♡ さすがはプ◯キュアだぜwww」
そう言うと、リョウはいきなり僕を抱きしめて、お姫様抱っこする。
「わぁ、びっくりしたぁ~! いきなり何すんのwww」
「男の子だって、お姫様になれるんだろ? だったら、アキラが主役でいいだろう♡」
「えぇ~、僕みたいのが主役だったら一般的な少女は感情移入できないよwww」
「大丈夫さ、変態読者が喜んで見てくれること間違いなしだぜぇ~♡」
僕たちは少女漫画では絶対掲載できないレベルのイチャラブセックスに没頭し始めると、リアルでしか味わえない快感にキュンキュンときめくのだった。
「あぁ~、助けてくれたイケメンにいきなりキスされそうになったところで次回に続くのか……。ホントこういうのお約束だよねぇ~」
長年、少女漫画を読んでいる僕には次の展開が手に届くように分かってしまう。
「次回辺りでヒロインの学校に助けてくれたイケメンが転校してくるんだろうなぁ。よし、次の作品を読んでみるか」
ページをめくると、ヒロインが図書館で本を探すシーンから物語が始まる。
「はいはい、どうせ同じ本を取ろうとしてイケメンと手と手が触れ合ってキュンってなるパターンでしょ」
案の定、次のページをめくるとヒロインとイケメンの手が触れ合って背景に花が咲き乱れる。
「ほら、やっぱりね。内容もありがちだし、飛ばして次の作品にしよっと」
次の作品はヒロインがブス設定であるにもかかわらず、普通に目がデッカくて可愛らしい。人付き合いが苦手なコミュ障という設定のわりにイケメンとは普通に話せるのかよwww
もう少しリアリティを追求して百貫デブ髪の毛バサバサ虫歯ド貧乏コミュ障ワキガ歯並びガタガタ不細工女をヒロインにしてイケメンに無償で愛されまくるような作品にすれば多くの読者が感情移入して楽しめること間違いなしだろう。
「そろそろ少女漫画にも革命を起こさなきゃ。もうルッキズムの時代は終わりにしてブスに花束を!」
そんな独り言を言っていると、いつものようにリョウが話しかけてきた。
「なるほど……でも、ブスの基準がイマイチ分からないから女をヒロインにするのやめて男の子にしよう♡」
「いや、それだと普通にBLじゃんwww」
「むしろBLでいいんじゃないか? 最近は一世を風靡するほどの少女漫画とかないし」
「言われてみると、昔は男女ともに人気を獲得して社会現象を巻き起こすような少女漫画もあったのに近年は全く話題にならないね……」
今は猫も杓子も某少年誌に連載された漫画の劇場版にご執心らしく、少女漫画は余計に蚊帳の外に追いやられている感がハンパない。
「どうして殆どの人は少女漫画を見なくなったんだろう? 心が揺さぶられるような名作もあるのに……」
「さっきアキラがその答えを自分で言ってたじゃないか」
「えぇ? なんか言ったっけ?」
「内容がありがちで次の展開が手に取るように分かる劣化コピーの量産型ばかりだってなぁwww」
いや、そこまでは言わなかったような……。
ただ大同小異で創意工夫もないような作品ばかりなのは事実だ。少女漫画業界にも今のラノベ業界のような閉塞感があることは認めざるを得ない。
「そもそも少女漫画は内容的にも一般大衆に受けるとは言い難いものばかりだからなぁ。少女にとって面白い漫画という枠を超えた老若男女に突き刺さる作品を出さないと。その辺に関して言えば、少年漫画は上手い具合に女性ファンを取り入れ、時代に柔軟に対応した作品作りをしていると言える」
確かにリョウが言うように近年は絵柄的にも内容的にも露骨なまでに女性読者を意識したと思われる作品が少年誌に掲載され、一昔前はたびたびネット上で論争になったが、究極的には売れるモノが大正義であり、そのことに異議を唱える人間はほぼ消滅した。商業主義の完全勝利と言えるだろう。
「う~ん、言いたいことは分かるんだけど少女漫画は変に他の層へ向けて媚びる必要はないと思うんだよ。そういった意味合いで言えば、少年漫画もだけど、それぞれの聖域は本来しっかり守られるべきというのが僕の考えなんだ」
「アキラの言いたいことも分かるが、この世を動かすのは金さ。金を出さないヤツの意見は反映されないし、売れないモノはどんどん淘汰されていくだけだ」
歩く正論製造機と命名したいくらいリョウは正論の嵐を炸裂させる。
確かにリョウの言う通り、少女漫画は少年漫画より明らかに客層が狭い。無論、有名どころの少女漫画を読んでいる男は普通にいるが、定期的に少女漫画雑誌を購読して単行本を月に何冊か買っている男は存在しても極少数だろう。
もはや今時の少女漫画は根強い固定客と文字通りの少女によって支えられていると言っても過言ではない。
「じゃあ、どうすれば少女漫画を逆境から救い出すことが出来るの?」
「そりゃあ、まずは無難に男性ファンを増やさないとなぁ」
「男にウケた少女漫画といえば、昔とある男の娘アイドル漫画がヒットしたことがあったよね?」
「あぁ、懐かしい! 確か、男の子が女装してアイドルを目指すとかいうヤツな♡ 漫画全巻集めたわwww」
オタク男性は男の娘好きが多いから、上手くすれば少女漫画でも手に取ってもらえるかもしれない。
「男の娘を主役にしてイケメンと結ばれるみたいな作品だったら男女ともにウケるんじゃない?」
「いや、BLになってるぞwww」
「ヒロインは女じゃないといけないなんて時代遅れな考えだよ。2年くらい前のプ◯キュアも言ってたでしょ? 『男の子だって、お姫様になれる!』ってさwww」
「なるほど、名言だなぁ~♡ さすがはプ◯キュアだぜwww」
そう言うと、リョウはいきなり僕を抱きしめて、お姫様抱っこする。
「わぁ、びっくりしたぁ~! いきなり何すんのwww」
「男の子だって、お姫様になれるんだろ? だったら、アキラが主役でいいだろう♡」
「えぇ~、僕みたいのが主役だったら一般的な少女は感情移入できないよwww」
「大丈夫さ、変態読者が喜んで見てくれること間違いなしだぜぇ~♡」
僕たちは少女漫画では絶対掲載できないレベルのイチャラブセックスに没頭し始めると、リアルでしか味わえない快感にキュンキュンときめくのだった。
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