男の子たちの変態的な日常

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310 変態フォーエバー

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 僕は薄っぺらな綺麗事を言う人間がわりと苦手だったりする。
 綺麗事は確かにその場凌ぎの方便としては十分機能するが、綺麗事を言われた側の立場からすれば根本的な解決策を提示されることなく会話をただ打ち切られただけに過ぎない。
 例えば不細工な友達が外見がキモ過ぎるがゆえに周囲から避けられることを相談してきたら?
 おそらく大多数の人は「外見なんか関係ないよ、大事なのは中身さ」と自分でさえ微塵も思っていない綺麗事を咄嗟に言うだろう。僕だって自分よりも醜い人から、そういった相談を受けたら同じことを言うに決まっている。
 だが、そうした綺麗事を言われた不細工な友達はどう思うだろうか?


「はぁ~、でもさ……俺(私)がキモいことに変わりはないんだよ」


 正直、その通りだろうwww
 むしろ綺麗事によって臭い物に蓋をしているだけで不幸な人を余計排除しているようにさえ思えてならない。
 貧乏人に対して「世の中にはお金で買えないものがある」と説いたところで困窮した生活は変わらないだろうし、モテない独身者に対して「恋愛や結婚が人生の全てではない」と遠回しに孤独死を推奨したところで寂しさが癒えることはないだろう。
 でも、残念ながら世の中には不幸な人たち全てを救えるだけのリソースもなければ、思いやりもない。
 それが現実だと思い知った時、彼らは何を救いに生きていくのだろうか?
 僕は綺麗事に彩られた歌詞で綴られたJ-POPを聴きながら、そんなことを考えていた。
 人生を相対評価しても意味はないと言うけど、周囲の人間が持っている幸せを自分が持っていなければ他者と比べて絶望するのは当然だ。自分の人生を絶対評価できるほどの強いメンタリティを持つ人間はなかなかいないだろう。


「いや、俺は自分の人生は絶対評価するようにしてるぜ」
「えぇ、リョウ⁉︎ いたの⁉︎ つか、何で僕の心の声が聞こえてるの⁉︎」
「モノローグがダダ漏れなのはアキラの悪いクセだぞwww」


 どうやら僕は冒頭からずっと無意識に独り言を言っていたらしい。我ながらイタイタしいこと極まりない……。


「いいか、アキラ。人を救うのは千の真実よりも一つの嘘だ♡ だからホストみたいな連中でも世の中では重宝されるのさ」
「あぁ、なるほど。昔、青い亀さんが似たようなこと言ってたような気がする。でも、ホストはいらないかなぁwww」
「それに『嘘から出たまこと』っていう言葉があるように嘘から真実になることもあるんだぜ♡」


 そう言うと、リョウは僕の顎をクイっと引き寄せる。


「今だからこそ言えるが、本音を言うと初めてアキラと出会った時はこんなにも長い付き合いになるとは夢にも思ってなかったぜwww」
「そうなの⁉︎ ショック~、僕は運命の出会いだと確信して永遠の契りを交わしたのに!」


 僕がふてくされると、リョウは咄嗟に唇を奪ってきた。いきなりのことで僕は抵抗できなかった。


「愛のない家庭で育ったせいか、子供の頃の俺は夢とか希望とか永遠の愛みたいなJ-POPの歌詞にありがちなワードを微塵も信じていなかったんだ。だから、そのうちアキラも俺から自然に離れていくんだと勝手に思い込んでた時期があってな……。でも、アキラは俺の傍にずっといてくれた。綺麗事で塗り固められたJ-POPの歌詞も、あながち嘘じゃないんだなってアキラのおかげで今は思えるようになったんだ♡」


 セックス以外でリョウが僕に内面を吐露したのは初めてかもしれない。
 リョウのことを人間離れした完璧超人か何かだと思っていた僕は少しだけリョウのことが自分と同じ人間のように感じられた。


「……そうだったんだ。なんだか照れちゃうなぁ♡ 僕の存在がリョウの人生観を変えるほどのものだったとは」
「アキラと出会った時から俺の時計の針は回り始めたんだ。そして、これからもアキラが傍にいる限り、永遠に回り続けるだろうよ――」


 この世界に永遠があることを悟った僕とリョウは再び唇同士を重ねた。
 柔らかく、温かく、ただ触れ合うだけでも蕩けてしまいそうな心地よさ。
 僕たちは唇を貪るような激しいキスを続けながら、永遠の愛を実感していた。
 甘い唇を隅々まで嘗め回すように僕とリョウは舌を這わせ、さらに強く迫った。
 リョウは我慢できず、震えている僕の舌へ自分の舌を絡めていく。甘酸っぱい唾液を分かち合うように舌面を擦り付け、先端で頰の内側や上顎を舐め突いてくる。
 ピチャピチャと唾液を分かち合う艶めかしい水音を響かせ、貪るキスを続けていく。
 僕の舌をリョウへ甘えるように伸ばすと、甘い香りが口内に広がり、思わずうっとりしてしまうくらい昂ぶってしまう。
 唇を震わせ、歓喜の涙粒を浮かべながら綺麗事ではない永遠のラブを僕たちは堪能するのであった。
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