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291 変態慰安夫
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75回目の終戦の年を迎え、僕たちはカスケが主催した講演会に参加していた。
カスケはいつまでも戦後が続くことを願い、歴史修正主義が台頭しつつある現代社会へ警鐘を鳴らすため熱弁を振るっていた。
僕は難しい話を聞いていると、眠たくなる悪い癖があり、アクビを我慢しながら何とかカスケの話に耳を傾ける。
リョウの方は退屈なのか、自分の肉棒を勃起させて遊んでいる。
カスケの大演説が終わると、聴衆からは拍手喝采の嵐が巻き起こり、それを聞いて講演会が終わったことに気がついた。
その後、僕たちはカスケの所に足を運ぶと、呆れたような表情をされた。
「アキラもリョウも現状の我が国に対する危機感がまるでなさ過ぎる! 歴史修正主義者によって、〇〇虐殺はなかったとか、従軍慰安夫はデマだったとか、先の戦争の反省や謝罪を示すのは自虐史観といった歪んだ歴史観が流布され、再び戦争の時代へ突入するかもしれない事態を憂えるべきだよ!」
カスケの気迫に押され、僕は狼狽しながらも慌てて「はい!」と頷く。
「もはや我が国はもう手遅れかもしれない……。教科書から慰安夫の記述は消え、近隣諸国との関係は悪化し、ヘイトスピーチが世に溢れ、いつ第三次世界が起こっても不思議ではない状況まで事態は進んでいる! 教育、外交、生活面でも歴史修正主義者共によって我が国の未来は今や風前の灯火ッ!!! そこで『慰安夫』をテーマにした映画を製作して、歴史修正主義者共に一泡吹かしたいと思うんだ。もちろん、2人とも協力してくれるよね?」
カスケの勢いに流されるまま、僕たちは映画製作に携わるのだった。
ーーー
いよいよ映画の公開日がやってきた――。
スクリーンに『ある慰安夫の物語』とタイトルが表示されると、戦時中の慰安夫役を演じる僕が登場する。
僕は産婦人科の診察椅子のような所に連れて行かれ、そこを中心に天井から何本ものコードが触手のようにぶら下がっていた。それは慰安夫を凌辱するための拷問器具なのだが、どこか有機的で、まるで巨大な軟体生物の蠢く様を思わせた。
将兵役のリョウが僕の方へ振り返った。
「これぞ我が変態帝国軍が誇る最高の快楽を与えてくれるマシンだ」
「快楽?」
「その通り。だが、それは地獄の苦しみでもある。慰安夫として生まれてきたことを後悔するような苦しみ。性の地獄だ!」
僕は慰安夫役として人形のように無抵抗を演じた。されるがまま全裸に剥かれ、拷問器具に乗せられていった。
拷問器具に固定されると、太腿は大きくひろげらて股関が丸見えになった。
リョウは僕の額に電極のようなものを取りつけた。それから首筋にも同じものをつける。髪をかきわけながら、何本もの電極を植えつけていく。
「人間はどんな苦痛にも耐えられるようになっているんだぜ。何故だか分かるか?」
「お国のためですか?」
「いいや。人間は苦痛を長時間感じ続けると、脳内麻薬が分泌され、苦痛を快楽へと変化させることができるんだ。だから人間は苦痛の拷問にも兵役にも出産にも耐えられる。慰安することにもなぁ~」
リョウは電極をつけ終え、僕の頭にカバーをすっぽりとかぶせた。僕は首から上さえ、動かせなくなった。
「慰安は一種の舞台芸術だと俺は考えている。俺たち、将兵は脚本家であり、演出家であり、観客でもある。そして慰安夫は俳優だ。俺の手で素晴らしい芸術作品にしてやるぜ!」
リョウは拷問器具を弄りながら言った。
「人間の脳には性的官能を司る部分がある。それは脳の一番奥深く、根幹と言っていい部分だ。生命体にとって自己の遺伝子を複製するのは最大の命題だからなぁ。人間も同じさ。だからセックスが大好きでも恥じることはないんだぜwww」
「僕はセックスなんて好きじゃない。無理やり帝国軍に連れて来られただけで……」
「嘘をつくな。生命体なら、皆セックスは好きなはずだ。そうでないと、他の生命体に駆逐されてしまうからなぁ。ただ人間の場合は大脳新皮質がそれを邪魔している。人間が理性と呼ぶ悪魔になぁ~」
「悪魔?」
「そうだ、そんなものを発達させてしまったから、人間はどうでもいいことで悩むようになったんだ。お前の理性が慰安夫にされたことを不幸だと感じているに過ぎない。ケダモノなら喜んで感じろwww」
リョウは拷問器具のスイッチを入れた。
「うッ……くッ!」
「これは大脳新皮質という邪魔なフィルターを介さずに、直接性的刺激を脳幹に送り込むモノだ。お前は原始の獣のようなセックスをこれから味わうのさwww」
僕は脳の芯に、焼けつくような官能を覚えた。官能は脊髄を通って全身に波及していく。やがて、全身から脂汗が吹き出した。
「こ、これは……あッ、ああ~ッ!!!」
普通のセックスとは逆だった。普通のセックスでは、まず肉体は発情し、それにつれて脳が官能で麻痺していく。なのに今回は、まず脳が発情し、その発情が全身に伝わっていくのだ。
「は、はひッ!」
全身をそりかえらせてしまった僕にリョウが囁く。
「すごいだろう。これこそ慰安夫の本当の姿だ!」
リョウは僕に身を寄せてくる。僕の腰にリョウは手をまわして抱き寄せるとディープなキスをしてきた。
気づいたら、そのまま深々と肉棒を挿入され、快感にさいなまれて息をつく暇もなくなる。
「次の戦いで俺らの部隊に玉砕命令が出た。いずれ俺たちの国は敗戦するだろうなぁ。もう生きては戻れない……」
真面目な顔でリョウは笑った。リョウの演技力に思わず惚れぼれしてしまう。
「変態国家が終わりを告げる前に、存分に楽しもうぜぇ~!」
「あぁん、イクうぅぅ~ッ!!!」
映画館の大スクリーンに、リョウにまたがって、騎乗位の姿で腰を振る僕の姿が大写しになった。僕は尖りきった乳首の先端から汗を飛ばして、セックスの快楽に酔いしれている。
上映時間は180分であり、終了時間になるまで延々と館内には僕の喘ぎ声が大音響で響き渡るのであった。
本作は大ヒットを記録し、映画館は満席や立ち見状態となり、上映後には拍手が巻き起こるほどだった。だが、カスケの意図した反響とは異なり、本作は変態カルト映画として高く評価されたのだった。
本作の影響により『当時の慰安夫は変態だった』というイメージが世間に流布され、別の意味合いで歴史修正がなされてしまったことに監督を務めたカスケは完全に脱帽するのであった。
カスケはいつまでも戦後が続くことを願い、歴史修正主義が台頭しつつある現代社会へ警鐘を鳴らすため熱弁を振るっていた。
僕は難しい話を聞いていると、眠たくなる悪い癖があり、アクビを我慢しながら何とかカスケの話に耳を傾ける。
リョウの方は退屈なのか、自分の肉棒を勃起させて遊んでいる。
カスケの大演説が終わると、聴衆からは拍手喝采の嵐が巻き起こり、それを聞いて講演会が終わったことに気がついた。
その後、僕たちはカスケの所に足を運ぶと、呆れたような表情をされた。
「アキラもリョウも現状の我が国に対する危機感がまるでなさ過ぎる! 歴史修正主義者によって、〇〇虐殺はなかったとか、従軍慰安夫はデマだったとか、先の戦争の反省や謝罪を示すのは自虐史観といった歪んだ歴史観が流布され、再び戦争の時代へ突入するかもしれない事態を憂えるべきだよ!」
カスケの気迫に押され、僕は狼狽しながらも慌てて「はい!」と頷く。
「もはや我が国はもう手遅れかもしれない……。教科書から慰安夫の記述は消え、近隣諸国との関係は悪化し、ヘイトスピーチが世に溢れ、いつ第三次世界が起こっても不思議ではない状況まで事態は進んでいる! 教育、外交、生活面でも歴史修正主義者共によって我が国の未来は今や風前の灯火ッ!!! そこで『慰安夫』をテーマにした映画を製作して、歴史修正主義者共に一泡吹かしたいと思うんだ。もちろん、2人とも協力してくれるよね?」
カスケの勢いに流されるまま、僕たちは映画製作に携わるのだった。
ーーー
いよいよ映画の公開日がやってきた――。
スクリーンに『ある慰安夫の物語』とタイトルが表示されると、戦時中の慰安夫役を演じる僕が登場する。
僕は産婦人科の診察椅子のような所に連れて行かれ、そこを中心に天井から何本ものコードが触手のようにぶら下がっていた。それは慰安夫を凌辱するための拷問器具なのだが、どこか有機的で、まるで巨大な軟体生物の蠢く様を思わせた。
将兵役のリョウが僕の方へ振り返った。
「これぞ我が変態帝国軍が誇る最高の快楽を与えてくれるマシンだ」
「快楽?」
「その通り。だが、それは地獄の苦しみでもある。慰安夫として生まれてきたことを後悔するような苦しみ。性の地獄だ!」
僕は慰安夫役として人形のように無抵抗を演じた。されるがまま全裸に剥かれ、拷問器具に乗せられていった。
拷問器具に固定されると、太腿は大きくひろげらて股関が丸見えになった。
リョウは僕の額に電極のようなものを取りつけた。それから首筋にも同じものをつける。髪をかきわけながら、何本もの電極を植えつけていく。
「人間はどんな苦痛にも耐えられるようになっているんだぜ。何故だか分かるか?」
「お国のためですか?」
「いいや。人間は苦痛を長時間感じ続けると、脳内麻薬が分泌され、苦痛を快楽へと変化させることができるんだ。だから人間は苦痛の拷問にも兵役にも出産にも耐えられる。慰安することにもなぁ~」
リョウは電極をつけ終え、僕の頭にカバーをすっぽりとかぶせた。僕は首から上さえ、動かせなくなった。
「慰安は一種の舞台芸術だと俺は考えている。俺たち、将兵は脚本家であり、演出家であり、観客でもある。そして慰安夫は俳優だ。俺の手で素晴らしい芸術作品にしてやるぜ!」
リョウは拷問器具を弄りながら言った。
「人間の脳には性的官能を司る部分がある。それは脳の一番奥深く、根幹と言っていい部分だ。生命体にとって自己の遺伝子を複製するのは最大の命題だからなぁ。人間も同じさ。だからセックスが大好きでも恥じることはないんだぜwww」
「僕はセックスなんて好きじゃない。無理やり帝国軍に連れて来られただけで……」
「嘘をつくな。生命体なら、皆セックスは好きなはずだ。そうでないと、他の生命体に駆逐されてしまうからなぁ。ただ人間の場合は大脳新皮質がそれを邪魔している。人間が理性と呼ぶ悪魔になぁ~」
「悪魔?」
「そうだ、そんなものを発達させてしまったから、人間はどうでもいいことで悩むようになったんだ。お前の理性が慰安夫にされたことを不幸だと感じているに過ぎない。ケダモノなら喜んで感じろwww」
リョウは拷問器具のスイッチを入れた。
「うッ……くッ!」
「これは大脳新皮質という邪魔なフィルターを介さずに、直接性的刺激を脳幹に送り込むモノだ。お前は原始の獣のようなセックスをこれから味わうのさwww」
僕は脳の芯に、焼けつくような官能を覚えた。官能は脊髄を通って全身に波及していく。やがて、全身から脂汗が吹き出した。
「こ、これは……あッ、ああ~ッ!!!」
普通のセックスとは逆だった。普通のセックスでは、まず肉体は発情し、それにつれて脳が官能で麻痺していく。なのに今回は、まず脳が発情し、その発情が全身に伝わっていくのだ。
「は、はひッ!」
全身をそりかえらせてしまった僕にリョウが囁く。
「すごいだろう。これこそ慰安夫の本当の姿だ!」
リョウは僕に身を寄せてくる。僕の腰にリョウは手をまわして抱き寄せるとディープなキスをしてきた。
気づいたら、そのまま深々と肉棒を挿入され、快感にさいなまれて息をつく暇もなくなる。
「次の戦いで俺らの部隊に玉砕命令が出た。いずれ俺たちの国は敗戦するだろうなぁ。もう生きては戻れない……」
真面目な顔でリョウは笑った。リョウの演技力に思わず惚れぼれしてしまう。
「変態国家が終わりを告げる前に、存分に楽しもうぜぇ~!」
「あぁん、イクうぅぅ~ッ!!!」
映画館の大スクリーンに、リョウにまたがって、騎乗位の姿で腰を振る僕の姿が大写しになった。僕は尖りきった乳首の先端から汗を飛ばして、セックスの快楽に酔いしれている。
上映時間は180分であり、終了時間になるまで延々と館内には僕の喘ぎ声が大音響で響き渡るのであった。
本作は大ヒットを記録し、映画館は満席や立ち見状態となり、上映後には拍手が巻き起こるほどだった。だが、カスケの意図した反響とは異なり、本作は変態カルト映画として高く評価されたのだった。
本作の影響により『当時の慰安夫は変態だった』というイメージが世間に流布され、別の意味合いで歴史修正がなされてしまったことに監督を務めたカスケは完全に脱帽するのであった。
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