男の子たちの変態的な日常

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236 変態毒親〜後編〜

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 ついにオークションが始まった。
 一糸まとわぬ僕の裸体にスポットライトが浴びせられる。
 ゴミクズ親父は持っている鞭を横に払い、僕の尻を鳴らしてオークションの開始を告げる。
 誰かが「1億」と声を発した。すかさず、「2億」と誰かが言った。そうこうしているうちに、あっという間に「10億」まで跳ね上がる。
 ゴミクズ親父はオークションの興奮を煽るように鞭で僕の尻や床を叩きながらオークションを盛り上げていく。
 100億を過ぎた辺りで会場内に聞き覚えのある声の主が「300億ッ!!!」と絶叫した。


「おぉ~、一気に300億まで来ました! 他にはもういませんか~?」


 その後も値段は少しずつ上がっていったが、大きく変動することはなかった。


「それでは、3億6000万円で落札となりま~す。どうぞ、商品の方をお受け取りくださいwww」


 薄暗い会場内からスポットライトの当たったステージの方へ見慣れた男が上がってきた。


「カスケ⁉︎ なんで、ここにいるの⁉︎」


 僕を落札したのは紛うことなきスーパー金持ちのカスケだった。


「一部の裕福層にだけ秘密裏に配られる性奴隷カタログの中にアキラの顔があってね。慌ててオークションに参加してみたら、本当にアキラがいたもんだから心底驚いたよ。さっきリョウにも連絡入れといたから、そろそろ来る頃じゃないかなぁ」


 カスケはケラケラ笑っているが、僕らがいるのは空の上だ。空でも飛ばない限り、ここへ来るのは不可能だ。


「待たせたなぁ、アキラ♡ やっとこさ機内にいるゴミ共の掃除が終わったところだ。後はそこにいるゴミの親玉を打ちのめせば万事解決だぜ!」


 振り向くと、そこにはリョウの姿があった。


「おやおや、驚いたなぁ。あのアキラにこんなにも頼りになる御友達がいたとは。パパは嬉しいぞwww」


 ゴミクズ親父は小馬鹿にしたように拍手をすると、リョウの姿に見入っていた。


「なるほど、若い時のオレにそっくりだなぁ。アキラが惚れた理由も分からんでもない。どうせ日常的にアキラを調教してるんだろ? アキラは昔から生粋のMだからなぁwww」


 ゴミクズ親父の言うことにリョウは一瞬キョトンしたが、すぐに険しい形相に戻る。


「おいおい、冗談キツイぜ。オッサン、鏡見たことねえんじゃねえか? ブサイクは年取ってもブサイクなんだぜwww」


 リョウにブサイク呼ばわりされたことに眉をひそめたゴミクズ親父の顔はもっとグロテスクになった。


「アキラの実の父であるオレに向かって何という口の利き方だ! 貴様のような男にアキラをやるわけにはいかんなぁ。もう一度オレの手元でアキラを再調教して今度こそ立派な性奴隷に仕立てあげて売っぱらってやるwww」


 会場内にいる客たちが困惑する中、ステージ上で僕を巡る争いが勃発しようとしていた。


「アキラ、安心しろ。すぐにこの毒親からアキラを解放してやる!」


 リョウが低く腰を落とした構えを取った。両手の指先を揃えてピンと反らした形にしているのは、相手のスキを狙って急所を突き、一瞬で卒倒させる喧嘩殺法を体得しているからだ。
 ゴミクズ親父は自然体の半身の構えで口元に薄く笑みを浮かべている。
 ブンッ、とうなりをあげてリョウの手刀が飛んでいく。伸ばした指先の爪が胸元にかすかに触れるくらいの間合いで、ゴミクズ親父が攻撃をかわした瞬間、口から毒ガスのような息を吐く。


「おえッ、おえ~ッ!!! 吐き気を催すほど臭い息だぜ!」


 ゴミクズ親父はリョウに向かって、30年間歯を磨いていないオッサン特有の強烈な口臭を食らわし続ける。


「おいおい、さっきまでの威勢はどうしたんだぁ~? 最近の若造はオッサンの口臭にさえ耐えられんほどの根性無しなのか? ハア~、ハア~、ハア~」


 すると、ゴミクズ親父はとっさにワキガ臭のする脇でリョウの顔を挟む。
 リョウは、バンバンと地面をタップした。
 ゴミクズ親父は器用にリョウの頭を見事なヘッドロックでキメたのだ。
 リョウはキモいオッサン特有の口臭攻撃に大ダメージを受け、造作もなく頭を取られてそのままヘッドロックでKO寸前まで追い込まれる。


「口だけじゃなくて、ワキガもハンパねえ悪臭を漂わせてやがるぜ~ッ! おえ~ッ、おえ~ッ! ゲロゲロ……」


 リョウの悶絶ようは凄まじかった。発狂しそうになりながらリョウはもがき苦しむ。つまあしだち
 ゴミクズ親父はリョウの容体を無視して顔をあげた。
 カスケが軽くつま先立ちになって身構えていた。


「このキモいオッサン、ただ者じゃない……」
「おや、君もこの若造のようになりたいらしいねwww」


 ゴミクズ親父はカスケを見て嬉しそうに声を弾ませる。


「俺はまだ終わっちゃいないぜ!」


 闘志に燃えた瞳をギラつかせてリョウは力任せにヘッドロックから脱出する。


「どうやら臭いだけしか脳がないようだなぁ。それなら最初から息を止めて臭いを嗅がなければいいだけだ!」


 リョウは息を止めたまま、ゴミクズ親父の手首をつかみ、軽くねじるようにした。絶叫があがり、ゴミクズ親父はあっけなく床へ倒れた。急所へリョウが突きを食らわすとそのまま卒倒してしまう。
 リョウの言う通りで本当に悪臭以外にこれといった戦術がなかったらしい。我が父親ながら情けない幕切れだった。
 その後、軍用輸送機から降りると僕は分厚いリョウの胸板に顔を埋めた。


「大丈夫だ、アキラ♡ もう怖い毒親はいない。悪夢は終わったんだ」


 狂った毒親の元で育ったリョウだからこそ、今の僕の気持ちが痛いほど分かるのだろう。
 温かい家庭とは無縁な環境で育った僕たちは互いに身体を寄り添わせると、愛の巣へと帰っていくのであった。
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