男の子たちの変態的な日常

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176 変態ショタ化〜前編〜

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 最近肌寒くなってきた。家では早くも暖房を入れて生活している今日この頃。
 普通なら水着でプールに入れるような時期ではないが、カスケのお屋敷に行けば温泉プールがある。それ目当てに僕はアオイを連れて久しぶりにカスケの所へ遊びに来ていた。

「あははは! 面白い、面白い♡ アキラパパ、もっと押してぇ~ッ!」
「アオイったら、しょうがないなぁ~♡」
「もっと、もっと~♡ わぁ、すごく速く進む~ッ!」

 大きな指輪の中央に小さなヒップを沈め、仰向けに浮かぶ。海でよく見られる楽しみ方を、アオイはガラス張りの屋内プールでやってすっかりご満悦だった。
 太陽の光がガラス越しにプールに差し込み、水面にキラキラと反射している。

「もっと速く~ッ! うわぁ~、すごい♡」

 プカプカと水の上に浮かぶことしか出来なかったアオイだが、僕というエンジンを得たことで浮輪ボートはプールの中を縦横に進むことができた。

「えぇ~、もっと押してよ~ッ!」

 ぷうっとアオイは頰を膨らませた。あどけない顔に腰まで届きそうな長い髪が愛らしい。
 ようやく解放された僕は学生時代の頃のように100メートルのクロールを30本。インターバルを開けずに、ひたすらに泳ぎまくることにした。
 だが、100メートル泳ぎ終わったところで早くも息が切れてきた。思わず僕は途中で泳ぐのをやめてプールサイドに上がってしまった。

「アキラパパ、もう泳ぐのやめちゃうの? ボクはずっと泳いでたいぐらいだよ♡」

 そう言うと、アオイはすぐさまプールに飛び込んでいった。見事な放物線を描いて、水中にアオイの身体が沈んでいく。
 若いエネルギーを全身から漲らせたアオイは数分で100メートルを人魚のような泳ぎで30本、インターバルを開けずに泳ぎきってしまった。
 プールサイドに腰かけて休憩している僕を見ながらアオイはくすくす笑う。

「もしかしてアキラパパって、もうオジサン?」

 アオイの言葉にとてつもないショックを受けた僕は次の瞬間、目の前が真っ暗になっていた。


ーーー


 目が覚めると、僕はカスケの部屋にあるベッドの上にいた。

「アキラ……気がついたんだね! 良かったぁ~、一時はどうなることかと思ったよ」

 部屋にいたカスケが早速話しかけてきた。

「カスケ……ちょっと聞いてもいいかな?」
「どうしたんだい? もしかしてアオイくんの言ったこと、未だ気にしてる? 安心して。あの後、ちゃんと叱っておいたから♡」
「違うんだ。実は最近、僕自身も体力の衰えを感じててね。もう自分も若くないんだなって思うことが多くなってきたんだ」

 僕が弱気になっていると、カスケはこちらに近づいてきてベッドの上に座った。

「人間はいつか誰しも年をとっていくものだよ。老いに負けず、若くあろうと必死に抗ってこその人生なんじゃないかな?」
「カスケ……でも、僕は……」

 僕は思わずカスケの膝に触れて言った。

「若さを失ったら、後は死にゆくのを待つだけじゃんか! いくら老いに抗おうと必死に生きたって、いつかは醜い老人と化してしまう! 若さを失いつつある僕には残りの人生を生きるだけの気力も体力もない……。将来を担う息子のお荷物だけにはなりたくないんだ」

 そう言った僕はさらに近づき、カスケの両足の間に身体を預けて言った。

「なるほど……アキラがそこまで追い詰められていたとは知らなかったよ。――よし、ぼくにいい考えがある。ちょっと待っててね」

 カスケはデスクの上に置いてあったアタッシュケースの中から謎の液体が入った試験管を取り出した。

「ぼくの会社がスポンサーを務めている薬品会社で開発されたもので、劇的な若返りの効果があるそうなんだ。動物実験の方は成功しているようで報告書には『ニワトリがヒヨコになった』という驚くべき実験結果が得られたと記されていた。でも、残念ながら臨床試験が未だで承認申請されていない段階なんだ。何故なら劇薬には思わぬ副作用が付き物だから、治験のバイトを募集しても誰も服用したがらない」

 カスケはそこまで話すと、僕の前に注射器を差し出す。

「どうする、アキラ? どんな副作用が出ようと、それは完全にアキラの自己責任。それでも服用するかい?」

 カスケの問いに、僕は一息ついてから答えた。

「結局、人生は若いうちが花だよ。老いてからの人生なんて所詮は消化試合。それなら僕は若返って人生をやり直したい! それが叶わないなら、死を選んだっていいくらいだよ♡」

 僕は笑みを浮かべるとカスケから注射器を受け取り、左腕に突き立て薬液を注入した。
 次の瞬間、僕の全身が猛烈な熱を持ち、四肢が拡張していくような感覚を覚えた。頭をハンマーでぶん殴られたような激しい痛みが襲う。息が出来ないほど心臓が激しく動悸を打つ。

「うああああッ‼︎」

 僕は頭をかかえて悲鳴を上げると、そのまま膝をつき、喀血した。
 視界がゆがむ。頭が割れそうだ。まるで、全身がプレス機にかけられているようだ。
 僕はここで死ぬのかな……?
 そして、僕の目の前は再び真っ暗になった。
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