男の子たちの変態的な日常

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165 変態戦争

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 ドヘンタイ王国――リョウの父親が建国した国(詳しくは第109話参照)。
 この国は近年さらなる膨張を続け、いままさに最盛期を迎えようとしていた。
 その勢いは燎原の火の如し。もはや日本中が呑み込まれるのは時間の問題だった。
 なかでも恐れられているのが、リョウの父親を守る近衛騎士団であった。
 彼らは王であるリョウの父親の命のままに率先して同性愛者を襲う、飛び抜けて悪辣外道な一団だった。
 今や東京中で覇を唱えるドヘンタイ王国。その勢力は日に日に増大していた。
 それこそヘテロセクシュアルとホモセクシュアルの均衡を崩し、同性愛者を絶滅へと導きかねないほどに。
 しかし、全ての同性愛者が、座して死を待っていたわけではない。
 ドヘンタイ王国の暴虐に異を唱え、立ち上がる者たちがいた。
 その筆頭が僕たちだった。
 僕たちはドヘンタイ王国の暴虐に終止符を打たんと作戦会議をしていた。

「俺の親父は、あまりに強大な権力を持ち過ぎた。この国から多様性を奪い、同性愛者から人権を奪ってしまうほどに……。俺たちは自分の居場所を守るためにヤツらを倒さなければならない」

 皆、固唾を呑んでリョウを見つめる。

「俺は必ずやドヘンタイ王国を打ち倒す! この国に自由と多様性をもたらすためにッ!」

 僕たちの想いを昇華させるべく、リョウは声を張り上げた。
 その場にいる者は皆、魅入られたようにただリョウだけを見つめている。
 途端に、まるで鬨の声でも上げるかのように全員が、大きな声でリョウに勝利を誓う。
 その光景に、リョウは勝利を確信した。


ーーー


 リョウたちが目指すのは、ドヘンタイ王国の王都制圧――。
 その最終目的はドヘンタイ王国そのものを解体し、諸悪の根源たるリョウの父親を、この世から永久に消し去ってしまうことであった。

「って~ッ!!!」

 リョウには自身が投資して研究開発させた砲撃部隊がある。リョウの号令で、ずらりと並んだ大砲がいっせいに火を噴いた。
 耳をつんざく轟音が響く。
 しばし間を置いてから、地鳴りとともに着弾による爆炎が次々と舞い上がる。
 爆音に混じって、遥か前方からリョウの父親を守る近衛騎士団たちの悲鳴も聞こえてくる。
 迎撃態勢を取る敵軍に対して、自慢の砲撃部隊が近衛騎士団の陣形をたちまち崩していく。

「差別主義者共をブッ殺せぇ~!!! ヤツらに目にものを見してやれぇ~ッ!!!」

 リョウは大砲の上にまたがり、士気を鼓舞する。
 もちろん、これだけで終わらせるつもりはさらさらない。

「よ~し、次の砲撃準備ぃッ!!!」

 僕やカスケたちが、せわしなく弾を込める。
 大砲も火薬も非常に高価なものである。これだけの数を揃えられるのは、ひとえにカスケの財力があってこそだ。

「準備できたようだな。それじゃあ次も景気よく、ドカンといくかwww」

 爆音が空を裂き、豪炎が大地を揺らす。
 立て続けの砲撃に、リョウの父親を守る近衛騎士団の戦陣はガタガタだ。

「よ~し、こんなもんだなぁ。それじゃあ、そろそろ俺もやるとするかwww」

 すると前回新たにリョウが目覚めた超能力である股間の触手を駆使して敵軍を鎮圧しにかかる。
 砲弾に陣を切り裂かれた近衛騎士団には、それを押し返す余裕などありはしない。
 それでもリョウの父親に対する忠誠心か、はたまた恐怖心からか、近衛騎士団はなおも悪足掻きを続けた。
 リョウは山鳴りのような咆哮を上げながら前進していく。
 リョウが一歩を踏み出すごとに大地が軋み、空気が揺れる。
 悲鳴を上げながらも撤退を選ばない彼らは懸命に抵抗する。
 だが、リョウにかすり傷ひとつつけることができない。

「悪いが、貴様らのようなレイシストに情けをかけてやれるほど、こっちには余裕がなくてなぁ。俺たちの怒りを思い知れ~ッ!!!」

 そう言うのと同時に、リョウが触手を使って強力な斬撃を食らわす。
 たった一瞬の間に、何人もの近衛騎士が吹き飛んでいった。
 リョウの父親を守る近衛騎士団が、単純な力押しで崩されていく。

「さあ、このまま一気に片付けるぞぉ~ッ!!!」

 リョウは敵の本陣を鋭く見据えながら絶叫した。
 ドヘンタイ王国の反撃は、砲撃部隊とリョウによる突撃で完全に出鼻をくじかれた。
 その敗北の翌日も、敵軍は全ての戦線で反撃を開始するが、結局リョウが返り討ちにしてしまった。
 ドヘンタイ王国にはもはや、リョウたちの勢いを押しとどめる手立てはない。
 この日、ドヘンタイ王国は壊滅的打撃を被ったのである。


ーーー


「何ぃ⁉︎ 同性愛者共の反乱を未だに鎮圧できていないだとッ⁉︎」

 リョウの父親は眠たげな目を見開いて驚愕した。

「はい……反乱者たちはドヘンタイ王国のほぼ全域を掌中におさめた模様です」
「馬鹿者ッ! 軍は、近衛は何をしている⁉︎」

 リョウの父親が一喝した瞬間、頸動脈あたりから部下が血を吹き出して倒れた。

「な、何が起こったんだ? ……え? おい! 答えろ!」

 部下を怒号しながらも、リョウの父親の視線は周囲をさ迷う。
 身も凍る恐怖が、リョウの父親の動きを封じた。

「だ、……誰だ? ……や、や、やめてくれ。殺さないでくれ~ッ‼︎」

 絶命した部下の陰から、リョウの触手が現れる。
 恐怖で震え上がっているリョウの父親の目の前に、巨悪を打つ正義の触手が身構えていた。
 標的は、醜いレイシストの極み。
 そして、先端が刃物と化した触手はリョウの父親を見事に切り裂いていった。

「うぎゃあああああああああああああ~ッ!!!」

 裂けた肉体から噴き上がった血がリョウの頭上に雨のように降り注ぎ、戦いは終結したのであった。
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