男の子たちの変態的な日常

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158 変態トレイン〜前編〜

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 僕は背が低くて、コミュ障で大声を出したりできないタイプだから、通勤の電車の中で痴漢に目をつけられやすかった。
 リョウからだったら痴漢されても別に構わないけど、知らない男の人からイヤらしいことをされるのは我慢ならない。
 そのせいで僕は最近電車の中で男の人からイヤらしい目を向けられただけで、痴漢された嫌な記憶が浮かんで動けなくなってしまう。
 そのことを僕はリョウに相談した。リョウは脚を開き、腕組みをした男らしいポーズで一声叫んだ。

「許せんぞ、よくも俺のアキラを~ッ!!!」

 僕は驚いて思わず二、三歩後ずさって、リョウの顔を見上げて言った。

「僕も今まで痴漢対策として、乗る車両を変えたり通学時間をずらしたりしてるんだけど、すぐ相手にもバレちゃって……」
「しつこい痴漢野郎だなぁ! そんなゴミクズは、この俺が成敗してやるぜぇ~!」

 毎朝と言っていいほど痴漢に遭い続けていることなんて、恥ずかしくて普通なら誰にも相談できることではないが、優しくて頼りがいのあるリョウはどんな困難からも、いつだって僕を救ってくれる。
 思わず引き込まれてしまう笑顔でにっこりとリョウは微笑むと、僕の頭を優しく撫でてくれた。


ーーー


 車体が中から破裂しそうなほど、パンパンに勤め人や学生が詰め込まれるラッシュ時の電車に僕はリョウと乗っていく。

「リョウ、本当に乗るの? この格好で……」

 僕は、今日すでに何度も繰り返しているように、自分の姿をもう一度ひそかに確認して小さくため息をついた。
 長袖のTシャツとカーディガンという上半身の組み合わせは、まだいい。問題は、デニムのショートパンツに短いソックスという下半身だった。
 デニムパンツはサイズが小さめなせいでぴったりと肌に張りついており、さらに股の部分ですぐカットされているので両脚のラインが丸ごとさらけ出されてしまっている。
 すらりと伸びた脚は、短い靴下のせいでくるぶしまで肌が丸出しになっていた。
 この格好で痴漢をおびき出し、リョウが現行犯で取り押さえるという作戦だ。
 僕はもじもじとバッグを前後に持ち替えては、頰に血が上るのを懸命に抑えようとした。

「安心しろ、アキラ♡ 根本的に解決するにはこれがベストさ」
「でも、もし危ない目に遭ったりしたら……」
「大丈夫、そうさせないために俺がついてるんだ! 大船に乗ったつもりでいてくれ♡」

 自信に満ちたリョウの顔を見ていると、僕は心の底から安心できた。
 もうすでに満員になっているとしか思えないのに、後ろから押されると僕の身体はぎゅうぎゅう詰めの車内に飲み込まれていった。
 少し離れた場所で、落ち着かなげに視線をさまよわせている僕が痴漢の存在を感知したら、リョウにサインを送ってその場で取り押さえるという手はずになっている。
 ガタンガタンという振動が身体を揺らすが、周囲に揉みくちゃにされていると自分の足でバランスを取ることすらろくにできない。
 押し込まれながら乗車したため、僕はリョウと正面からくっつくような姿勢になっていた。
 僕の身体がリョウに押し当たっているのを意識すると顔から火が出そうなほど恥ずかしくなったが、ちらりとリョウの顔を見上げると、意外なほど真剣に僕の方を注視しており、エッチなことを考えている様子はなかった。
 いつもはすぐにエッチなことをしてくるくせに、と思いながらも僕はちょっとだけ胸の鼓動が高まるのを抑えきれなかった。
 そうこうしているうちに電車が駅に止まり、人の流れにまた巻き込まれる。
 気がつくと、僕はリョウと引き離され、ドアにもたれかかって後ろにお尻を突き出すような格好で動けなくなった。
 この姿勢に抵抗があった僕は周りからのひんしゅくは覚悟のうえで、やや強引に身体を動かそうとした、その時。
 ――ぐにん。

「……ひッ⁉︎」

 デニムに包まれたお尻に、いきなり大きな掌で鷲掴みにされる感触があった。
 ――もに、もにゅ……。
 それが何かの偶然ではない証拠に、そのイヤらしい手は最初に力を込めた後、お尻から離れる様子もなくやわやわと弄び始める。まったく無関係な者が見たとしても、一発で痴漢と判断されるであろう大胆な触り方だった。
 混乱のあまり、腰をくいっと後ろに曲げた誘うようなポーズを変えることも思いつかない。まるで、自分から感じさせてほしいと懇願しているようなその体勢は、無意識のうちに僕から抵抗する気力を奪い去っていた。
 僕の戸惑いをよそに、反対側にももう一つの手がぎゅっと当てられた。

「ちょっと、嘘……ッ」

 あまりにも大胆な犯行に、僕は途切れ途切れの小さな声しか出せなくなってしまった。自分の身体の恥ずかしい部分を怪しげな手に好きなように弄られるままになっても僕は声を上げることが出来ない。
 突き出したお尻の両側が、リズムを合わせてくにくに揉み込まれる。
 僕の下腹の奥でぽっと小さな火が灯るような熱を感じた。
 僕の肌を楽しむような手つきで撫で回し、あるいは指先に力を込めて皮膚に食い込ませてくるその手は、その独りよがりな行為とは裏腹に、決して僕に苦痛を与えるような動きは取らなかった。
 むしろ、デリケートなものを扱うように優しく丁寧に、僕の身体の奥にある気持ちのよくなる神経まで揉みほぐそうとしているかのように繊細に動き続けている。
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