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145 変態夏祭り〜前編〜
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今年はアオイも連れて夏祭りに行くことにした。
リョウに着付けをしてもらったアオイの姿に、着流し姿の僕は目を丸くした。
桜の刺繍がふんだんに施された着物に若草色の帯を締め、足元は白足袋に紅緒の草履。
長い髪も今は綺麗に頭の後で結われ、すっきりとうなじが見えている。
「どうかな……変じゃない?」
ポカンと見入っていた僕に、アオイが両手の裾で口元を隠しながら恥ずかしそうに尋ねてくる。
「いやはや、あんまり似合ってるんでビックリしちゃったよぉ~♡」
僕はポリポリと頰を指で掻き、胸をドキドキさせる。
顔が熱い。下手したら耳の先まで赤くなってるかもしれない。
アオイはチラッと僕の方を見ると、照れたのかポッと頰を赤らめる。
「着付けも終わったことだし、そろそろ行こうぜ!」
僕たちは地元の夏祭り会場に向かった。
祭りの中心地に近づくと浴衣姿の人もチラホラいて、僕たちの和装は違和感なく場に馴染んだ。
「わあ、すご~い♡」
アオイは宝石のような瞳をキラキラさせて、道端の少し高いところに吊るされた小さな提灯の大群を興味深そうに眺めている。
ちなみに今行われているのは地元の商業的なお祭りで、屋台の数がかなり多い。地域の商店が看板商品に特化した店を出していたり、特産品がお土産として売られている。
また、それに加え、わた飴、イカ焼き、リンゴ飴、ラムネ屋、焼きそばにお好み焼き――と、この手の食べ物屋がズラッと並んでいた。もちろん、金魚すくいやお面売り店などの飲食店以外の屋台も一通り種類が揃っている。
「わぁ~、小さな店がいっぱいある♡」
アオイは好奇心旺盛に店から店を見て回っている。
「あッ⁉︎ あれ見て! タコ焼きがあるよぉ~♡」
中でもアオイが強く興味を示したのはタコ焼き店であった。
「よし、俺が買ってやるよ」
「わぁ~い♡」
アオイはタコ焼きがよっぽど嬉しかったようだ。
僕たちより先に、アオイが子供のように早足で店に向かっていったのだが――。
「きゃん⁉︎」
慣れない草履だったためか、バランスを崩して尻もちをついてしまった。
「大丈夫かッ⁉︎」
リョウが慌てて駆け寄ると、乱れた着物の裾からアオイの生足が覗いていた。
すらりとした膝下に、形のよいツルツルの膝小僧。
足先に履いた白足袋に負けないほどの白い肌。
それはびっくりするほどの美しさで、僕は自分の息子の脚線に思わず見入ってしまった。
その後、アオイにタコ焼きを買ってあげると、僕たちは花火がよく見える穴場へと向かった。
人で賑わう屋台通りを抜けて、僕たちは人気の少ない石階段を上り出した。
その先には僕がリョウと初めて出会った場所である思い出の小さな神社(第51話参照)がある。
「わぁ~、ここ懐かしいッ!!!」
「小学生の頃、ここでDQNに絡まれていたアキラを俺が助けて、それからお互い初めてのセックスをしたんだよなぁ♡」
僕たちは拝殿まで進むと、賽銭箱に小銭を投げ入れてお祈りした。すると――。
「おぉ~、可愛い子がいるぜぇ♡ ねぇ、オレたちと遊ばな~い?」
一目でDQNだと分かる男たちが、神社の狭い境内に入ってきた。
僕は内心、チッと舌うちしたが、やっぱりか、と思わなくもない。
昔からこの辺りはやたらとDQNが群がっている危険地帯だった。
リョウは僕とアオイを庇うようにDQNたちとの間に立つ。
「……何だか昔を思い出すねぇ~」
相手は3人。昔ここで僕に絡んできたDQNも3人だった。
多少ケンカ慣れはしているようだが、リョウの敵ではないだろう。
「全員ブチのめすだけなら簡単なんだがなぁ……」
リョウは相手に大怪我をさせて警察沙汰になるのはまずいと考えているのだろう。それに愛する息子の前で暴力沙汰を起こされるのは僕だって困る。
リョウは、ふむ、と小首を傾げた。
その仕草をクソDQN共は、挑発的な余裕のジェスチャーと受け取ったようだ。
1人がリョウに不用意に近づき、着流しの襟元を掴もうとしてきた。リョウはその手首を一瞬で掴み、そのまま後ろ手にねじり上げ完全に相手の背中を取る。
だが、リョウはそのまま相手を仲間の方に突き返した。
「んなッ⁉︎ ととととッ……な、何の真似だ⁉︎」
「このまま俺たちのことはほっといて、どっかに消えてくれねえか?」
リョウの提案にDQNたちはキョトンとし、すぐにその顔を赤くする。
「ふざけてやがるのかぁ~ッ⁉︎」
「あんましイキがってると、殺すぞゴラァッ!!!」
DQNたちが一斉に殴りかかってきた。
「……やれやれ、お約束の展開か」
リョウは短く深呼吸をして意識を集中させる。
1人目。上半身だけを使った右ストレートの手首を掴んで後ろ手に捻り――トン。
2人目。腰の入りがまるでなっていない蹴りを間合いを一気に詰めて――トン。
3人目のぬるい拳と隙だらけの蹴りも続けて捌き――トン、トン。
リョウに向かってきたDQNたちが、元いた場所にたたらを踏んで戻っていく。
相手が怪我をしないように、背中や胸を掌で押して追い返したのだ。
DQNたちは鳩が豆鉄砲でも食らったような顔でリョウを振り返っていた。
リョウに着付けをしてもらったアオイの姿に、着流し姿の僕は目を丸くした。
桜の刺繍がふんだんに施された着物に若草色の帯を締め、足元は白足袋に紅緒の草履。
長い髪も今は綺麗に頭の後で結われ、すっきりとうなじが見えている。
「どうかな……変じゃない?」
ポカンと見入っていた僕に、アオイが両手の裾で口元を隠しながら恥ずかしそうに尋ねてくる。
「いやはや、あんまり似合ってるんでビックリしちゃったよぉ~♡」
僕はポリポリと頰を指で掻き、胸をドキドキさせる。
顔が熱い。下手したら耳の先まで赤くなってるかもしれない。
アオイはチラッと僕の方を見ると、照れたのかポッと頰を赤らめる。
「着付けも終わったことだし、そろそろ行こうぜ!」
僕たちは地元の夏祭り会場に向かった。
祭りの中心地に近づくと浴衣姿の人もチラホラいて、僕たちの和装は違和感なく場に馴染んだ。
「わあ、すご~い♡」
アオイは宝石のような瞳をキラキラさせて、道端の少し高いところに吊るされた小さな提灯の大群を興味深そうに眺めている。
ちなみに今行われているのは地元の商業的なお祭りで、屋台の数がかなり多い。地域の商店が看板商品に特化した店を出していたり、特産品がお土産として売られている。
また、それに加え、わた飴、イカ焼き、リンゴ飴、ラムネ屋、焼きそばにお好み焼き――と、この手の食べ物屋がズラッと並んでいた。もちろん、金魚すくいやお面売り店などの飲食店以外の屋台も一通り種類が揃っている。
「わぁ~、小さな店がいっぱいある♡」
アオイは好奇心旺盛に店から店を見て回っている。
「あッ⁉︎ あれ見て! タコ焼きがあるよぉ~♡」
中でもアオイが強く興味を示したのはタコ焼き店であった。
「よし、俺が買ってやるよ」
「わぁ~い♡」
アオイはタコ焼きがよっぽど嬉しかったようだ。
僕たちより先に、アオイが子供のように早足で店に向かっていったのだが――。
「きゃん⁉︎」
慣れない草履だったためか、バランスを崩して尻もちをついてしまった。
「大丈夫かッ⁉︎」
リョウが慌てて駆け寄ると、乱れた着物の裾からアオイの生足が覗いていた。
すらりとした膝下に、形のよいツルツルの膝小僧。
足先に履いた白足袋に負けないほどの白い肌。
それはびっくりするほどの美しさで、僕は自分の息子の脚線に思わず見入ってしまった。
その後、アオイにタコ焼きを買ってあげると、僕たちは花火がよく見える穴場へと向かった。
人で賑わう屋台通りを抜けて、僕たちは人気の少ない石階段を上り出した。
その先には僕がリョウと初めて出会った場所である思い出の小さな神社(第51話参照)がある。
「わぁ~、ここ懐かしいッ!!!」
「小学生の頃、ここでDQNに絡まれていたアキラを俺が助けて、それからお互い初めてのセックスをしたんだよなぁ♡」
僕たちは拝殿まで進むと、賽銭箱に小銭を投げ入れてお祈りした。すると――。
「おぉ~、可愛い子がいるぜぇ♡ ねぇ、オレたちと遊ばな~い?」
一目でDQNだと分かる男たちが、神社の狭い境内に入ってきた。
僕は内心、チッと舌うちしたが、やっぱりか、と思わなくもない。
昔からこの辺りはやたらとDQNが群がっている危険地帯だった。
リョウは僕とアオイを庇うようにDQNたちとの間に立つ。
「……何だか昔を思い出すねぇ~」
相手は3人。昔ここで僕に絡んできたDQNも3人だった。
多少ケンカ慣れはしているようだが、リョウの敵ではないだろう。
「全員ブチのめすだけなら簡単なんだがなぁ……」
リョウは相手に大怪我をさせて警察沙汰になるのはまずいと考えているのだろう。それに愛する息子の前で暴力沙汰を起こされるのは僕だって困る。
リョウは、ふむ、と小首を傾げた。
その仕草をクソDQN共は、挑発的な余裕のジェスチャーと受け取ったようだ。
1人がリョウに不用意に近づき、着流しの襟元を掴もうとしてきた。リョウはその手首を一瞬で掴み、そのまま後ろ手にねじり上げ完全に相手の背中を取る。
だが、リョウはそのまま相手を仲間の方に突き返した。
「んなッ⁉︎ ととととッ……な、何の真似だ⁉︎」
「このまま俺たちのことはほっといて、どっかに消えてくれねえか?」
リョウの提案にDQNたちはキョトンとし、すぐにその顔を赤くする。
「ふざけてやがるのかぁ~ッ⁉︎」
「あんましイキがってると、殺すぞゴラァッ!!!」
DQNたちが一斉に殴りかかってきた。
「……やれやれ、お約束の展開か」
リョウは短く深呼吸をして意識を集中させる。
1人目。上半身だけを使った右ストレートの手首を掴んで後ろ手に捻り――トン。
2人目。腰の入りがまるでなっていない蹴りを間合いを一気に詰めて――トン。
3人目のぬるい拳と隙だらけの蹴りも続けて捌き――トン、トン。
リョウに向かってきたDQNたちが、元いた場所にたたらを踏んで戻っていく。
相手が怪我をしないように、背中や胸を掌で押して追い返したのだ。
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