男の子たちの変態的な日常

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128 僕とリョウの愛よ、永遠に〜前編〜

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 僕たちはいよいよ卒業式を迎えることになった。
 卒業式が滞りなく終わった後、僕たちのクラスでは、級友たちが企画した全員参加の卒業パーティーが、飲食店を借りきって開かれていた。
 僕は今、パーティーの主役みたいに終始クラスメイトたちに囲まれている。それは何故かというと……。

「男なのに妊娠するとかスゲェな!」
「まるでオメガバースの世界みたいだ」

 そう、僕は男だけど妊娠してしまったのだ。
 妊娠の原因は医師によると、僕が前に出来心で性転換手術(第94話参照)を受けて女になった後、再び男に戻る手術をした時に子宮を摘出するのを忘れてしまったからだそうだ。
 どうりで男に戻った後も下半身に怠惰を感じたり、定期的に悩ましいものが下りてきたりしたわけだ。
 ――ジャンジャァジャジャ~ン♪ ジャンジャジャジャァ~ン♪
 貸切の店内に、ウエディングマーチが突然鳴り出した。
 僕は何事かと思いキョロキョロと周りを見回していると、いきなりクラスメイトたちに背中を押されて、店内の1番奥に押し出される。

「え~と……一体これは……」

 クラスメイトたちに背中を押された僕は頭に薄いベールをかぶせられた格好でリョウの隣まで連れて行かれる。
 僕はキョトンとした表情をしてリョウの顔を見た。

「アキラ、前にドヘンタイ王国に行った時に言ったろ。卒業したら結婚しようってさ♡」
「ああ……思い出した!」

 どうやらこれは僕のために、リョウとクラスメイトたちが用意してくれたサプライズイベントだったようだ。

「み、みんな……」

 自分を暖かく取り囲むリョウとクラスメイトたちに、僕は思わず涙ぐんでしまう。
 すると、貸切であるはずの店の中に来客が訪れた。
 その人物に視線を向けたリョウに一抹の不安がよぎる。

「クソオヤジッ! 何でここに来たんだ⁉︎」
「リョウ、話は聞かせてもらった! 男同士の結婚など断じて認めんッ! お前は私が決めた相手と結婚すれば良いのだ! そんなくだらないパーティーはお開きにして国へ帰るぞ」
「誰がテメエの言うことなんか聞くかッ! 俺は自分が心から愛した人と結婚するだけだ! それを止める権利はだろうがないはずだぜッ!!!」

 どうやら、このオッサンはリョウの実の父親らしい。初めて見た。

「くだらんなぁ~ッ! 男が男を好きになるのは脳の病気に違いない! すぐに治療して、私が真っ当な男に矯正してやるとしよう」

 クラスメイトたちは異様な雰囲気にざわめき出した。

「日本の女共を全て支配下に置き、ドヘンタイ王国の王となった我が息子が草食化した男共に変わって、種馬のごとく子孫をつくるのだッ!」
「生憎テメエの誇大妄想に付き合う暇はなくてな。種馬なら、自分でなればいいんじゃないか? 財力だけが取り柄のクソオヤジなら、いくらでも金目当ての女がやってくるだろうよwww」
「我が家の血統を絶やしてはならぬ。私の遺伝子を受け継いだイケメンハイスペックの我が息子を女たちは求めている。そんな選ばれし男であるお前には女たちを孕ませる義務があるのだよ♡」
「俺にそんな義務はない。残念だが、俺はアダムになる気は更々なくてなぁ。イブには草食系男子とやらで満足していただく他ないな。モテない男なんて、その辺に腐るほど大量にいるだろ? そいつらに女を宛てがってやれば、我が国の少子化は100%解決すること間違いなしだwww」

 息子のブラックジョークにリョウの父親は心の底からため息をついた。

「女をモノにできない男に価値などない。それに少子化の原因はお前のような優秀でモテる男が結婚せずに遊んでばかりいるからいかんのだ。一夫多妻制を合法化することで速攻で我が国の少子化は解決するだろう」
「そんなにハーレムを気づきたいなら勝手にやるがいいさ。俺は愛する男と一緒に未来を築くッ! たとえ実の父親であろうと立ち塞がるなら、全力で叩き潰すまでだッ!!!」
「そうか……それがお前の答えか。ならば、もう欠陥品の息子は必要ないなぁ」

 その時、リョウは絶句し、隣にいた僕も両目を大きく見開いて驚愕した。リョウの父親が右手に持って、こちらに向けているものに――。

「おいおい……何の冗談だ。それはオモチャか、それともクラッカーか何かか?」

 それは紛れもなく黒光りする拳銃。
 底なしの暗闇のように見えるその銃口は、実の息子であるリョウに向いていた。
 僕はクソオヤジの表情が完全に消えているのを見て、咄嗟に愛する恋人の前に立つ。

「もう、こんなことはやめてくださいッ! 実の息子を殺す気ですかッ⁉︎」
「男のくせに妊娠しているヤツが何を意気がっていやがるッ!」

 理性をなくしたリョウの父親が、拳銃を上に向けて引き金を引いた。
 店内に響き渡った轟音と、その直後に天井から落ちてきた照明電球の破片が、僕の問いに対する明確な答えだった。
 ずっとザワついていた店内が一瞬だけシーンと無音になり、直後に悲鳴と喧騒がその場を満たした。
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