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113 幼少期の変態思い出〜前編〜
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幼少の頃の夢を僕は見ていた。
僕は眠っていながらも、そのことに気づいた。
「アキラ、カスケ君と一緒に遊んでおいで」
親に裸のお尻をぴしゃりと叩かれ、幼い頃の僕はつんのめるようにして歩き出した。
眼の前には、ビニール製のプールに入ってはしゃぐ幼いカスケがいた。
キャアキャア言って水を掛けてくるカスケは裸だった。
空気で膨らませるタイプの四角いビニール・プールはそれなりに大きくて、中で僕たちが動きまわっても充分な広さがあった。
そこで僕はカスケと身体を触りっこしたり、水の中で転げまわったりとか、時間も忘れて楽しい時を過ごした。
ひとりっ子の僕には一緒に遊ぶ兄弟もなく、いつも家の中で1人で寂しくBL妄想に耽っていた。それが同年代の子供とこんなに楽しく遊ぶなんて、まさに当時は夢のような時間だった。
カスケのそばにいると、全身からいい匂いが漂ってくる。
生まれて初めて股間の奥底が疼くような感覚――性に目覚めた瞬間だった。
「ねえねえ、僕がカスケと結婚してあげよっか? そしたら、家でも僕たち一緒にいられるようになるよ♡」
「うん、約束だよ♡ 必ずアキラを幸せにしてみせるから……」
当時、幼い子供だった僕には結婚の意味なんて、これっぽっちも分かっていない。完全におままごと感覚だった。
その時、ちょうど夕暮れ時になった。
「アキラ、もう帰るよ」
「うん」
親が僕の手を取りプールから引っ張り上げると、ニコニコしながらカスケに優しく語りかける。
「今日はアキラと遊んでくれて、本当にありがとう。ご両親にも、お礼を言っておいてね」
カスケは「うんッ!」と元気よく返事をすると、そのまま屋敷の方へ駆けていってしまった。
なんで今さらこんな夢を……。
朝、布団の中で眼を覚ました僕は、横になったまま自分に問いかける。
そうだった。今日この屋敷に、僕が行く予定だったからだ。
ーーー
久しぶりに見るカスケの屋敷は、以前と変わらず大きくて立派に見えた。
「うわあ、懐かしい……」
僕は思わず感嘆の声を上げる。
小学校が丸々ひとつは収まりそうな敷地に建てられたその洋館は、平成の初期に建造されたもので、羽振りが良かった頃のカスケの親が金にあかせて買い上げたものらしい。部屋数は全部で20以上あり、管理が大変だとカスケがいつもこぼしていた。
この家で遊んだ幼少の頃の想い出は、今も僕の中で大切な宝物となっている。
インターホンを押すと、間髪をおかず「どうぞ~、入って♡」と返事がくる。僕とリョウは一瞬顔を見合わせると、玄関までの道のりを歩き始めた。
1分以上歩いてようやく玄関前にたどり着く。
僕がドアを開けると、カスケが現れるのを待った。
トントントン……。
軽い足音がして、廊下の奥の暗がりからすらりとカスケが姿を現す。
カスケは、花が咲いたような笑顔を僕に向ける。たちまち僕の顔が、お酢でも呑んだような真っ赤な色に染まった。
「さあ、中に入って。今日はちょっと暑かったからエアコンつけといたよ。これから夏になると、もっと暑くなるから2人とも体調には気をつけてね~♡」
旅館の番頭のような調子で、カスケが僕たちを案内する。広い玄関を上がって、僕たちは10人以上楽に入れそうな大きい食堂に足を運んだ。
「うわあ♡ このテーブル、まだ残ってたんだ」
時代物の豪華なダイニング・テーブルを前にして、僕が感嘆の溜め息を洩らす。
片側5人掛けの大きな樫材のテーブルは当時から僕のお気に入りだった。屋敷の購入と同時に北欧から取り寄せたもので、幼い頃の僕はよくその上で遊んでいた。
あの頃の思い出が鮮明に脳内で再生される。
「アキラとの大切な思い出の品だからね。捨てるわけないよ」
カスケがそう言うと、僕はハッとしてその顔を見上げてから慌てて顔を伏せる。ふと今日見た夢の中での出来事を思い出してしまったのだ。
おままごと感覚であったとはいえ、人生で僕が初めて結婚を申し込んだ相手が眼の前にいるのだ。
僕は改めてそのことを実感した。
「それで、お手伝いの人はいないの? ご挨拶しておかないと……」
照れ隠しのように、僕はそう告げた。
「もういないよ。今この家を管理してるのは、ぼくだからね」
「ああ、そうだったんだ……」
「大丈夫、安心して。アキラの身のまわりの世話は食事の準備から洗濯まで、全部ぼくがやってあげるから♡ 仕方ないから、ついでにリョウのもやってあげるよ……」
横目でチラっとリョウの方を見やったカスケは、すぐに無邪気そうな笑顔を浮かべて僕の頰に優しくキスをする。
「ぼくは親が残してくれたお金を元に、大きなことをしてみたいと思ってるんだ。成功したら、アキラをもっと広~い御屋敷に住まわせてあげるよ♡」
カスケほど頭のいい人間なら、その資金を確実に増やすことができるだろう。将来的にはカスケもリョウに負けないくらいのお金持ちになるかもしれない。
僕は眠っていながらも、そのことに気づいた。
「アキラ、カスケ君と一緒に遊んでおいで」
親に裸のお尻をぴしゃりと叩かれ、幼い頃の僕はつんのめるようにして歩き出した。
眼の前には、ビニール製のプールに入ってはしゃぐ幼いカスケがいた。
キャアキャア言って水を掛けてくるカスケは裸だった。
空気で膨らませるタイプの四角いビニール・プールはそれなりに大きくて、中で僕たちが動きまわっても充分な広さがあった。
そこで僕はカスケと身体を触りっこしたり、水の中で転げまわったりとか、時間も忘れて楽しい時を過ごした。
ひとりっ子の僕には一緒に遊ぶ兄弟もなく、いつも家の中で1人で寂しくBL妄想に耽っていた。それが同年代の子供とこんなに楽しく遊ぶなんて、まさに当時は夢のような時間だった。
カスケのそばにいると、全身からいい匂いが漂ってくる。
生まれて初めて股間の奥底が疼くような感覚――性に目覚めた瞬間だった。
「ねえねえ、僕がカスケと結婚してあげよっか? そしたら、家でも僕たち一緒にいられるようになるよ♡」
「うん、約束だよ♡ 必ずアキラを幸せにしてみせるから……」
当時、幼い子供だった僕には結婚の意味なんて、これっぽっちも分かっていない。完全におままごと感覚だった。
その時、ちょうど夕暮れ時になった。
「アキラ、もう帰るよ」
「うん」
親が僕の手を取りプールから引っ張り上げると、ニコニコしながらカスケに優しく語りかける。
「今日はアキラと遊んでくれて、本当にありがとう。ご両親にも、お礼を言っておいてね」
カスケは「うんッ!」と元気よく返事をすると、そのまま屋敷の方へ駆けていってしまった。
なんで今さらこんな夢を……。
朝、布団の中で眼を覚ました僕は、横になったまま自分に問いかける。
そうだった。今日この屋敷に、僕が行く予定だったからだ。
ーーー
久しぶりに見るカスケの屋敷は、以前と変わらず大きくて立派に見えた。
「うわあ、懐かしい……」
僕は思わず感嘆の声を上げる。
小学校が丸々ひとつは収まりそうな敷地に建てられたその洋館は、平成の初期に建造されたもので、羽振りが良かった頃のカスケの親が金にあかせて買い上げたものらしい。部屋数は全部で20以上あり、管理が大変だとカスケがいつもこぼしていた。
この家で遊んだ幼少の頃の想い出は、今も僕の中で大切な宝物となっている。
インターホンを押すと、間髪をおかず「どうぞ~、入って♡」と返事がくる。僕とリョウは一瞬顔を見合わせると、玄関までの道のりを歩き始めた。
1分以上歩いてようやく玄関前にたどり着く。
僕がドアを開けると、カスケが現れるのを待った。
トントントン……。
軽い足音がして、廊下の奥の暗がりからすらりとカスケが姿を現す。
カスケは、花が咲いたような笑顔を僕に向ける。たちまち僕の顔が、お酢でも呑んだような真っ赤な色に染まった。
「さあ、中に入って。今日はちょっと暑かったからエアコンつけといたよ。これから夏になると、もっと暑くなるから2人とも体調には気をつけてね~♡」
旅館の番頭のような調子で、カスケが僕たちを案内する。広い玄関を上がって、僕たちは10人以上楽に入れそうな大きい食堂に足を運んだ。
「うわあ♡ このテーブル、まだ残ってたんだ」
時代物の豪華なダイニング・テーブルを前にして、僕が感嘆の溜め息を洩らす。
片側5人掛けの大きな樫材のテーブルは当時から僕のお気に入りだった。屋敷の購入と同時に北欧から取り寄せたもので、幼い頃の僕はよくその上で遊んでいた。
あの頃の思い出が鮮明に脳内で再生される。
「アキラとの大切な思い出の品だからね。捨てるわけないよ」
カスケがそう言うと、僕はハッとしてその顔を見上げてから慌てて顔を伏せる。ふと今日見た夢の中での出来事を思い出してしまったのだ。
おままごと感覚であったとはいえ、人生で僕が初めて結婚を申し込んだ相手が眼の前にいるのだ。
僕は改めてそのことを実感した。
「それで、お手伝いの人はいないの? ご挨拶しておかないと……」
照れ隠しのように、僕はそう告げた。
「もういないよ。今この家を管理してるのは、ぼくだからね」
「ああ、そうだったんだ……」
「大丈夫、安心して。アキラの身のまわりの世話は食事の準備から洗濯まで、全部ぼくがやってあげるから♡ 仕方ないから、ついでにリョウのもやってあげるよ……」
横目でチラっとリョウの方を見やったカスケは、すぐに無邪気そうな笑顔を浮かべて僕の頰に優しくキスをする。
「ぼくは親が残してくれたお金を元に、大きなことをしてみたいと思ってるんだ。成功したら、アキラをもっと広~い御屋敷に住まわせてあげるよ♡」
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