男の子たちの変態的な日常

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111 変態遊園地デート〜前編〜

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 僕はひとりで電車に乗っていた。リョウと遊園地の門前で待ち合わせをしているのだ。
 待ち合わせ場所に着くと、すでにリョウが待っていた。普段は鞄を待つこともないのに、今日は珍しくバスケットをさげている。

「ごめん、待たせちゃった?」
「いや、今来たところだ。楽しみ過ぎて、昨日の夜から勃起が治まらないぜ♡」

 本日は気持ちいいくらいの快晴で、まさにデート日和だった。
 駐車場から次々と流れてくる家族連れなど、それなりの混雑を予想していたが、遊園地の中は歩きやすかった。

「なあ、アキラ。ジェットコースターに乗ろうぜ♡」
「えぇ~ッ⁉︎ ここのって、メチャクチャ怖いらしいよ」

 ふと、ほんの一瞬だけ背後に視線を感じた。
 僕は振り向くと、遊園地のマスコットの着ぐるみが通りすがっていった。

「気のせいかな……」

 気分を改め、リョウとともに遊園地のあちこちをまわった。


ーーー


「ぷッ、また思い出しちゃったよ、さっきのアキラ♡」

 オバケ屋敷で涙を浮かべるはめになった僕は、ぷくっと頰を膨らませた。

「リョウのいじわる。すんごく怖かったんだから!」

 ジェットコースターも怖かったけど、オバケ屋敷はもっと怖かった。
 正午を少し過ぎたところで、僕たちは一服できる場所を探した。

「どこか入ろっか。何食べる?」
「おいおい、アキラ。コレがあるだろ」

 リョウが得意そうにバスケットを抱え上げ、ウインクする。

「じゃあ、ここで食べよっか。2人でもゆったり座れそうだし」

 歩きっ放しだった僕たちはメリーゴーラウンドがよく見えるベンチに落ち着いた。他の客も子連れでなければカップルばかりで緊張する。僕たちもそんなカップルのうちの一組であることが、気恥ずかしいと同等に嬉しい。
 リョウは意気揚々とランチマットを敷き、バスケットの蓋を開けた。

「いっぱい食ってくれ、アキラ♡ じゃ~ん!」
「うわぁ……すごいッ!」

 その中から意外なほど上出来のカップケーキが現れる。それぞれ異なる味付けがされており、色鮮やかで見た目も可愛い。

「さすがリョウッ! 何でも出来ちゃうんだね♡」
「この俺に出来ないことなんてないさ。さあ、召し上がれ♡」

 不敵な笑みで勧められるまま、カップケーキのひとつをかじってみる。

「それじゃあ……んぐッ。んぐんぐ……美味しいッ!!!」

 日頃から洋菓子を食べ慣れている僕でも、感心するほどの美味しさだった。
 良質の茶葉を使ったらしく、なんといっても香りがよい。その香りが味をより引き立て、口の中に満足感をもたらしてくれる。

「そんなに急いで食べると喉に詰まるぞ。はい、お茶♡」

 リョウは楽しそうに水筒のお茶をカップに注ぎ、差し出してきた。

「びっくりしたよ、すごく上手だね♡ あ、リョウも食べなよ」
「喜んでもらえて良かったぜ。それじゃあ、俺もひとつだけ」

 リョウもカップケーキに唇をつける。その一連の仕草は芸術作品のように優雅で、周囲の客まで目を奪われるほど。すぐ傍のメリーゴーラウンドより注目度が高いかもしれない。
 リョウがチョコレート味のカップケーキを千切り、僕の口へと近づけてくる。

「アキラ、あ~んしてごらん♡」
「えぇッ⁉︎ それはちょっと……恥ずかしいよ♡」

 リョウのストレートな好意に不慣れな僕はどぎまぎするばかり。

「ダメだぞ、あ~んするんだ♡ さあ、早く!」
「わ、分かったよ……あ~ん♡」

 緊張気味に開いた口へと、ちょうど良い大きさのケーキが入り込む。
 リョウに食べさせてもらえるのが嬉しくて、顔が緩んでしまう。甘いチョコを味わう前から頰が落ちそうだ。
 続いてリョウは慎ましやかな唇を綻ばせ、僕に要求した。

「アキラにも食べさせて欲しいなぁ♡ ほら、あ~ん」

 爪が綺麗な人差し指を下唇に添え、「ここだぞ」とアピールしてもくる。

「え~と、どれにしようかな」

 僕はカップケーキを手頃な大きさに千切り、リョウの唇へと慎重に運んだ。
 恋人同士ならではの遊びにリョウが微笑む。

「アキラったら、ガチガチじゃないか。もっかいさせちゃおうかなぁ~♡」
「みんなが見てるんだよ。こんな目立つところで……」

 僕は戸惑い、顔を背けた拍子に遊園地のマスコットの着ぐるみと目が合った。すると着ぐるみが慌てて木陰に隠れるのだが、頭だけ隠して尻尾を隠さず。

「あの着ぐるみ、さっきも見かけたような……」

 今日みたいな蒸し暑い日に、通気性の悪そうな着ぐるみに包まれているのだから恐れ入る。大きなプラカードも重そうだ。
 ランチを済ませて一服したのち、僕たちは遊園地デートを再開した。午前中はリョウの右腕にくっついていた僕は午後になると左腕にくっついて歩く。

「次はあれに乗ろうぜ」
「フリーフォール? また絶叫系か~」

 後ろには例の着ぐるみがついてきていた。もしかすると僕たちをターゲットに、客引きのタイミングを窺っているのかも。
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