男の子たちの変態的な日常

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109 ドヘンタイ王国〜前編〜

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 ここのところ雨が続いたせいで憂鬱な気持ちになっていた僕は嫌々登校していた。しかし行く手を大きなものに遮られ、足を止める。

「……な、何これ?」

 それが何なのか知ってはいたが、あるはずもない場所に唐突に現れたため、戸惑うしかない。他の生徒たちも目を丸くして驚き、距離を取って見守っていた。
 メリーゴーラウンドから取り外してきたような馬車である。大柄だがいかにも品のありそうな白馬も目立つ。
 その中から出てきたのは何とリョウだった。
 リョウは注目されるのは当然といった様子で生徒たちの呆然とした反応を気にも留めない。

「よお、アキラ♡ 迎えに行ったんだが、どうやら先に家を出てたみたいで行き違いになっちまったんだ。ごめんな」

 僕が振り向くと、リョウの顔がぱあっと笑みを咲かせる。
 おかげで僕まで注目の的となり、一言返すだけでも緊張させられた。

「えっと……リョウ、なんで馬車で登校してきたの?」

 リョウは前のめりになって、ずいっと距離を詰めてくる。

「それはだな……実は俺は今日から――」

 しかしリョウが答えを口にしかけたタイミングで、バイクのやかましいエンジン音が割り込んでくる。400CCの大型は堂々と学校の正門をくぐり、排気音を出しきった。
 僕は呆気に取られていた。400CCの大型となったら重量は100キロを超える。にもかかわらず、華奢な手足で自在に操っている。
 男は僕のすぐ前でバイクを降り、頭からヘルメットを抜き取った。

「やあ、アキラ♡ 時代が平成から令和に変わるから新しいことがやってみたくてバイクの免許を取ったんだ。放課後になったら、ぼくの後ろに乗っていきなよ。アキラのヘルメットも用意してあるからさ」

 まさかカスケが大型バイクを乗りまわす日が来るとはホントに驚きだった。

「何、この馬車は? もしかしてリョウの私物かい? リョウの柄じゃないだろwww」
「それはこっちのセリフだ。カスケには三輪車がお似合いじゃないか~♡」

 奇異の視線を背中越しに感じた僕は2人を他所に校舎の中へと逃げ込んでいった。


ーーー


 リョウは1限目からずっと、僕と机をくっつけて離さない。

「アキラ、昼は俺と飯食おうなぁ♡」
「うん、分かったよ」
「ぴったりのお茶を用意させよう。セバスチャン!」

 リョウがぱんっと手を叩くと、どこからともなく執事姿の紳士が唐突に現れた。

「セバスチャンではなく、私めは田中と申します……」

 セバスチャン……じゃなくて田中さんは僕とリョウの机にテーブルクロスをかけ、お茶会の準備をテキパキと進める。
 ランチのメニューはサンドイッチ。

「リョウ様、本日の茶葉はキーマンをご用意しております」
「セバスチャンのブレンドをアキラにもご馳走してあげてくれ」
「畏まりました。少々お待ちください。後、私めの名前は田中であります……」

 純白のティーカップに橙色の紅茶が注がれていく。
 クラスメイトたちも呆気に取られる早業でお茶会を整え、田中さんは退室した。

「アキラ、冷めないうちにどうぞ。セバスチャンの紅茶は格別なんだぜ」
「は、はあ……じゃあその、いただきます……」

 僕もティーカップに口をつけると、今日の朝からの疑問をリョウにぶつけた。

「ねえ……今日は一体どうしちゃったの?」
「実は俺、今日からドヘンタイ王国の王様になったんだ♡」

 ドヘンタイ王国とは埼玉と東京の間にある、私立の国家だ。市町村単位でいう「市」くらいの大きさで、言語は日本語が使用されている。
 平成の終わりに政治家だったリョウの親が勢いあまって建国したというのだ。建前上は「観光地」で、日本の一部なのだが、超法規的に独立と自治を認められたらしい。

「令和元年、晴れてドヘンタイ王国の王に即位した俺は卒業したらアキラと結婚して王宮に暮らすことになる。その日が今から楽しみだぜ♡」
「……ほえ~」

 いまひとつ状況が呑み込めない僕は紅茶を味わいながら適当な相槌をうった。


ーーー


 GWに入ってすぐ僕は旅行に行くこととなった。行き先はドヘンタイ王国、すなわちリョウの家である。
 地図の上では東京と埼玉の間にあり、僕の家からはわりと近かった。
 この間の馬車で行くのかと思いきや、執事の田中さんが用意してくれた縦長の高級外車だった。
 広い作りの後部座席で、僕はリョウと一緒に座っていた。

「あと20分ほどで到着いたします。アキラ様、車酔いなどは大丈夫ですか?」
「あ、えっと……おえッ、おえッ……だ、大丈夫です……たぶん……」

 リバースしないように全身全霊頑張って耐え凌いだ。

「アキラの吐瀉物なら喜んで俺が食べちゃうんだけどなぁ~♡」
「リョウ……お願いだから……おえッ、おえッ……今だけは……話しかけないで……おえぇぇぇぇぇぇッ!」

 リバースしかけた寸前にリョウが僕の唇を塞ぎ、半ば強引に舌を入れてきた。リョウと舌の中腹を擦れあわせると、僕は事切れたように喉の奥底から溢れ出すモノを存分に解放した。
 リョウは「うま~い♡」と言いながら僕の全てを受け入れてくれたwww
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