男の子たちの変態的な日常

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81 ド変態猫耳ボンデージ〜前編〜

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「将来? まだ自分探ししてたのか、アキラ」

 僕は自分の進路についてリョウに相談していた。

「だって自分じゃ決められないし……」
「そんなの進学してから考えればいいだろ?」
「う~ん、でも……」

 進学したところで人生にこれといった目的がない僕は少しばかり焦りを感じていた。そんな僕の気持ちを読み取ったかのようにリョウは口を開いた。

「アキラもカスケと一緒だな。自分の立ち位置が分からないことに不安を覚えているわけか。けどな、人生なんて結局なるようにしかならない。不安になったところでしょうがないんだよ」
「でも、僕はリョウやカスケと違って何の取り柄もないから……。どうしても不安に思う時があるんだ」
「俺でも力になれることがあれば言ってくれ。いつだって俺はアキラのそばにいるからな♡」
「リョウ……ありがとう♡」

 クラブで僕とリョウが話していると、マスターが話しかけてきた。

「何なら、うちのクラブでずっと働いてもらっても構わないよ♡」
「ホントですかッ⁉︎」
「ああ、ホントだとも。さっそくアキラくんはバイトから正社員に格上げだ」

 僕は嬉しさのあまり舞い上がってしまった。まさか、こんなにも早く就職先が見つかるだなんて夢にも思わなかった。

「じゃあ、格上げした以上ちゃんとした正社員の服装に着替えてもらわないとね♡」
「正社員の服装?」

 マスターは「こっちこっち」と、キッチンの奥――階段下のデッドスペースを利用した物置のようなところへ連れていく。

「これに着替えてもらうから~♡」

 なんだかイヤラシイ笑みを浮かべながらマスターは扉の鍵を開けた。

「こッ、これは……⁉︎」

 薄暗くて狭い階段下の空間に「それ」は座っていた。両手を鎖で吊るされ、囚人のようにだらりと座っている。
 一瞬、人間が監禁されているのかと思って、ぞっとしたが、どうやら違うようだ。
 ブラックレザーのツナギみたいなものを、わざわざ、鎖で繋いでるようなディスプレイにしているのだった。まったく悪趣味としかいいようがないのだが、マスターは「いいでしょ? いいでしょ?」などと嬉々として自分の「秘蔵のモノ」を自慢している。
 一見ライダースーツのような「それ」の表面には、なんの用途に使うのか不明のリベットや金具が埋め込まれていた。腕や腰や太腿など、いたるところにベルトがあり、着た者を、ぎちぎちに縛るような構造になっている。まさに、「特異な趣味を持つ人」のためだけに作られた究極のボンデージスーツだった。

「こッ、これを着ろと???」
「そうだよ~♡」

 ううッ……やだなぁ。

「ほら、うちで正社員になりたいんだろ? だったら早く着なきゃ~♡」

 揺れ動く心にクギを刺されて僕は仕方なく「人間の尊厳」を捨てることにした。
 ベストやカッターシャツ、スラックスを脱ぎ、おぞましい革の感触に耐えつつ、そのスーツを身につける。

「う~ん、小物はどれがいいかなあ……よし、コレだ♡」

 と言いつつ、「変態的なモノ」がギッチリ詰まったダンボール箱の中から、マスターは猫耳を取り出した。
 有無を言わさずそれを僕にかぶせ、肘まである手袋をはめ、ブーツをはかせる。腕、胸、太腿にある内蔵コルセットのベルトをマスターが締める。
 あっという間に、「ド変態猫耳ボンデージ野郎」が出来上がった。
 どっから見ても立派な変質者だ。同級生が見たらなんと言うだろうか。いや、誰に見られたって唖然とされるんじゃないか。言いわけ不可能……鏡を見たら失神してしまうかもしれない。

「んん~、思わず嫉妬しちゃうくらい似合ってるよ、アキラくん♡ 君はボンデージスーツを着るために生まれてきたんじゃないかと思わずにはいられんね」

 うっとりと、僕の勇姿を見つめながらマスターが言う。
 僕はもうヤケクソだったので「あはははははは……」とくぐもった声で笑った。

「よし、アキラくん。その格好でさっそく仕事をしてもらえるかな?」

 僕はスキンに覆われた拳をぎりぎりと握りしめ、ひと言だけ呟いた。

「了解……」

 マスターはすぐに所定の位置に戻っていった。
 まいったな……。
 レザー独特の匂いと感触――。
 ベルトとコルセットでギチギチに締められていて結構キツイ。僕は思わず床の上にぺたんと座り込んでしまった。

「アキラ……すごい格好だな」

 いつの間にか、リョウが目の前にいた。

「辛そうな顔してるようだが、大丈夫か?」
「ちょっとだけ苦しいかな……。でも、正社員になるためならこれくらい我慢するよ」

 僕は潤んだ目でリョウを見上げながら言った。
 ぷつっと、リョウの中で何かが切れた。

「俺はもう我慢できないぜぇぇッ!!!」

 素早くベルトをゆるめ、ズボンを脱ぎ捨てる。トランクスを降ろし、床の上に膝をつく。
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