22 / 25
22.【最終話】道程、高木聡
しおりを挟む
童貞……高村…じゃない、高木聡。
入れる前に我慢はできない。終わった後に謝罪は出来る。
――ごめんね、先っぽだけでいっちゃって。
俺が素直に謝罪すると、牧くんは笑った。
「俺も先にいってたから…。気にしないで 」
いや、気にするっ!っていうか気に病む!!
情けない、実に情けない…。
まぁ怪我の巧妙で、薄い壁の寮であんあん言わせなくて済んだ。そして今度はちゃんとホテルで…、という約束を取り付けた!わーい、わーい!
しかし喜んでばかりはいられない。
俺はまもなく関西に転勤してしまうのだ。いきなり遠距離、週末婚になってしまうのだ…。嫌だ、嫌すぎるー!
牧くんは週末会えるよ、というが…。毎週来てくれる?いや俺も行くけどさ。けど週末婚はやっぱり寂しすぎて、俺は転職も脳裏を過ぎった。転職するなら三十歳まで、なーんて誰かが言っていたような気もする…。
その日も、俺は心ここにあらずで外回りをしていた。「ハローワーク」の看板を見つけて、吸い寄せられそうになったが業務中だからなんとか耐えて、会社に戻った。
会社に戻ると、玄関ロビーで事務のパートさんが待っていた。外回りから戻った俺の顔を見て、少しイライラした顔をする。
え、何?!
「高木くん、電話したのに何で出ないの?!とにかく、ミーティングルームに集まって!急いで!」
そのままでいいから!と促されて、俺は小走りでミーティングルームへ向かう。
ミーティングルームには、営業二課の面々と久世次長、牧くんまで顔を揃えていた。あと、俺が名前を知らない人も数人いる。
え、何だ?!
俺が入室すると、全員が拍手をした。
え?本当に、なに?!俺のお別れ会からの、俺と牧くんの結婚発表?!まだ誰にも言ってないけど…。嫁が先走っちゃった?!
事態が飲み込めない俺に、部長は拍手を一旦止めるように手で合図をしてから咳払いした。
「子豚の花ちゃんの運営会社である”CHAOFAN”から、親会社”もえみ”と友好的TOBを実施し、合併する意向だと連絡がありました。そして、M&Aアドバイザリー業務を当行が引き受けます。先方の要望もあって、今後は高木くんに担当してもらう事になりました 」
「え、俺?!でも俺は…!」
関西に転勤するはずじゃあ、と俺が言おうとすると、部長は少し慌てて咳払いした。
「ちょうど、新田くんが関西支社に転勤になったから、まあ、そういうことだ 」
つまり、大っきい仕事をとった俺が本社に残る事に決まったって事?!まさかの、下剋上からの別居回避―!
新田も「高木くん!おめでとう」と言った。なんだか申し訳ない気もしたが、それを察したのか新田は少し笑った。
「社長ご夫妻は、長らく合併について話し合っていたものの人事面で折り合いが付かずに二の足を踏んでいたそうです。でも、高木くんの説得で、これからの厳しい時代を生き抜いていくために考えを改められました。高木くん、悔しいけどこの仕事は高木くんが担当するべきだわ。私も関西に行って、高木くんみたいにお客様にアドバイス出来るような営業担当に...いえ、高木くん以上にもっと成長したいと思います!」
新田はそう言い終わると、もう俺を上目遣いで見たりはしなかった。同僚として、握手で称えてくれた。
新田の話が終わると、部長は久世次長を見た。久世次長はにやりと笑う。
「今後、M&Aについては専門の我々、ファイナンス部とチームで動くから。担当はこのメンツだ。よろしく。」
久世次長は牧くん達を指さした。
え?!別居回避したうえに、牧くんと一緒に仕事できるの!?
俺は素直に喜んだのだが。
「こっちのメイン担当は牧にする。高木くんは、年下上司に虐められるのが好きだからちょうど良いだろ?牧は見た目によらず、仕事は鬼だぞ。覚悟しておけ 」
まじで?!そんなの、昼の顔と夜の顔のギャップに萌えちゃうんじゃないの?!俺の身体、持つ…?!いろんな意味で!
牧くんを見ると、目が合った。仕事の鬼、何て嘘のように優しく微笑んでいる。
「担当になりました、牧です。高木くん、よろしくお願いします。早速ですが、準備してもらいたい資料があるのでこの後直ぐ、打ち合わせ良いですか?」
牧くんはなかば強引に俺を別のミーティングルームに連れていった。入室して直ぐに鍵をかける。
牧くんは俺に抱きついてキスした。
「良かった… 」
…ああ、また同じ気持ちだった。
俺たちは抱き合ってもう一度キスした。
そして胸を弄ろうと手を伸ばすと…。牧くんに手を押さえられてしまった。
「じゃ、高木くん、用意してもらいたい資料あるから。はい、メモとって 」
牧くんは上司らしくテキパキと指示を出していく。それに今後のスケジュールも。えげつないタスク量で、手帳がどんどん埋まる…。
「牧くん、マジで鬼なの?!」
「え?!全然優しくしてるのに?」
このスケジュールの半分は牧くんの優しさで出来ていたらしい。
俺はダイエットの結果、希望通り優しくてかわいいお嫁さんをゲットしたのだ!
俺は牧くんと一緒に埋めたスケジュールを眺めながら、これからの新婚生活に思いを馳せた。
ーーーーーーーーーーー
本編一旦終わりですが
その後の二人の話が
あと三話ほど続きます
ーーーーーーーーーーー
入れる前に我慢はできない。終わった後に謝罪は出来る。
――ごめんね、先っぽだけでいっちゃって。
俺が素直に謝罪すると、牧くんは笑った。
「俺も先にいってたから…。気にしないで 」
いや、気にするっ!っていうか気に病む!!
情けない、実に情けない…。
まぁ怪我の巧妙で、薄い壁の寮であんあん言わせなくて済んだ。そして今度はちゃんとホテルで…、という約束を取り付けた!わーい、わーい!
しかし喜んでばかりはいられない。
俺はまもなく関西に転勤してしまうのだ。いきなり遠距離、週末婚になってしまうのだ…。嫌だ、嫌すぎるー!
牧くんは週末会えるよ、というが…。毎週来てくれる?いや俺も行くけどさ。けど週末婚はやっぱり寂しすぎて、俺は転職も脳裏を過ぎった。転職するなら三十歳まで、なーんて誰かが言っていたような気もする…。
その日も、俺は心ここにあらずで外回りをしていた。「ハローワーク」の看板を見つけて、吸い寄せられそうになったが業務中だからなんとか耐えて、会社に戻った。
会社に戻ると、玄関ロビーで事務のパートさんが待っていた。外回りから戻った俺の顔を見て、少しイライラした顔をする。
え、何?!
「高木くん、電話したのに何で出ないの?!とにかく、ミーティングルームに集まって!急いで!」
そのままでいいから!と促されて、俺は小走りでミーティングルームへ向かう。
ミーティングルームには、営業二課の面々と久世次長、牧くんまで顔を揃えていた。あと、俺が名前を知らない人も数人いる。
え、何だ?!
俺が入室すると、全員が拍手をした。
え?本当に、なに?!俺のお別れ会からの、俺と牧くんの結婚発表?!まだ誰にも言ってないけど…。嫁が先走っちゃった?!
事態が飲み込めない俺に、部長は拍手を一旦止めるように手で合図をしてから咳払いした。
「子豚の花ちゃんの運営会社である”CHAOFAN”から、親会社”もえみ”と友好的TOBを実施し、合併する意向だと連絡がありました。そして、M&Aアドバイザリー業務を当行が引き受けます。先方の要望もあって、今後は高木くんに担当してもらう事になりました 」
「え、俺?!でも俺は…!」
関西に転勤するはずじゃあ、と俺が言おうとすると、部長は少し慌てて咳払いした。
「ちょうど、新田くんが関西支社に転勤になったから、まあ、そういうことだ 」
つまり、大っきい仕事をとった俺が本社に残る事に決まったって事?!まさかの、下剋上からの別居回避―!
新田も「高木くん!おめでとう」と言った。なんだか申し訳ない気もしたが、それを察したのか新田は少し笑った。
「社長ご夫妻は、長らく合併について話し合っていたものの人事面で折り合いが付かずに二の足を踏んでいたそうです。でも、高木くんの説得で、これからの厳しい時代を生き抜いていくために考えを改められました。高木くん、悔しいけどこの仕事は高木くんが担当するべきだわ。私も関西に行って、高木くんみたいにお客様にアドバイス出来るような営業担当に...いえ、高木くん以上にもっと成長したいと思います!」
新田はそう言い終わると、もう俺を上目遣いで見たりはしなかった。同僚として、握手で称えてくれた。
新田の話が終わると、部長は久世次長を見た。久世次長はにやりと笑う。
「今後、M&Aについては専門の我々、ファイナンス部とチームで動くから。担当はこのメンツだ。よろしく。」
久世次長は牧くん達を指さした。
え?!別居回避したうえに、牧くんと一緒に仕事できるの!?
俺は素直に喜んだのだが。
「こっちのメイン担当は牧にする。高木くんは、年下上司に虐められるのが好きだからちょうど良いだろ?牧は見た目によらず、仕事は鬼だぞ。覚悟しておけ 」
まじで?!そんなの、昼の顔と夜の顔のギャップに萌えちゃうんじゃないの?!俺の身体、持つ…?!いろんな意味で!
牧くんを見ると、目が合った。仕事の鬼、何て嘘のように優しく微笑んでいる。
「担当になりました、牧です。高木くん、よろしくお願いします。早速ですが、準備してもらいたい資料があるのでこの後直ぐ、打ち合わせ良いですか?」
牧くんはなかば強引に俺を別のミーティングルームに連れていった。入室して直ぐに鍵をかける。
牧くんは俺に抱きついてキスした。
「良かった… 」
…ああ、また同じ気持ちだった。
俺たちは抱き合ってもう一度キスした。
そして胸を弄ろうと手を伸ばすと…。牧くんに手を押さえられてしまった。
「じゃ、高木くん、用意してもらいたい資料あるから。はい、メモとって 」
牧くんは上司らしくテキパキと指示を出していく。それに今後のスケジュールも。えげつないタスク量で、手帳がどんどん埋まる…。
「牧くん、マジで鬼なの?!」
「え?!全然優しくしてるのに?」
このスケジュールの半分は牧くんの優しさで出来ていたらしい。
俺はダイエットの結果、希望通り優しくてかわいいお嫁さんをゲットしたのだ!
俺は牧くんと一緒に埋めたスケジュールを眺めながら、これからの新婚生活に思いを馳せた。
ーーーーーーーーーーー
本編一旦終わりですが
その後の二人の話が
あと三話ほど続きます
ーーーーーーーーーーー
72
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。


【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる