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18.同じ気持ち
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トイレで冷静さを取り戻した俺は部屋に戻った。牧くんも察したらしく、めちゃくちゃ気まずい雰囲気になってしまった。
「あの…ごめん… 」
「いえ、その…こちらこそ… 」
俺たちはどちらからともなく謝って沈黙した。折角楽しかったのに…。
牧くんは、ハッとしたように出口の扉の方へ行き、ルームサービスが届く扉を開けた。
手に、分厚いトーストにアイスクリームや生クリーム、蜂蜜がトッピングされた厚切りトーストのデザートとワインの瓶を持って戻ってきた。
「これ、女子会プランの特典なんだって 」
「うわー…!太りそう 」
「確かに!」
俺達はワイン片手に激甘トーストを食べた。牧くんも珍しく甘いものを食べている。二人とも自然と笑顔になていた。
「牧さん、甘いもの好きじゃないよね?これは大丈夫?」
「うん。高木くんと食べると美味しい 」
それは単純に、デブと食べると美味しいってことなのだろうか…。牧くんの頬は少し赤くなっており、ワインのせいなのか発言のせいなのか、実に紛らわしい…。俺は牧くんにキスしたくなってしまった。どうしようもなくその衝動に駆られ、ワインを一気飲みして必死に誤魔化した。
「食べてすぐ寝る計画だから…高木くん、そろそろ寝よっか?」
「そうですね。あー、暴飲暴食して寝るって幸せだ 」
俺が思わず本音を口にすると、牧くんは笑った…。
寝る前、牧くんは歯を磨くため洗面所へ行った。俺はその隙にベットに潜り込む。
もう、眠ってしまおう。だってあんな、溶けそうな笑顔をされてしまって……。早く寝ないと俺は、何をしでかすかわからない。
牧くんは歯を磨き終えて戻ると、ベットに入ってくる。俺の隣に横になると、横向きに背を向けて眠る俺の背をツンと突いて「高木くん寝ちゃった?」と問いかけた。
「確かに…幸せだね、これ… 」
ああ…、……牧くんも、俺と同じ気持ちだった…!
俺が少し体を起こして牧くんを見ると、牧くんは微笑んだ。
…好きだ…!
気がついたら、牧くんに覆い被さってキスしていた。
ファーストキスはミント味…。俺、今後歯磨きのたびに勃起してしまうんじゃないか…という予感がした。
牧くんは驚いた顔のまま固まっている。そりゃそうだ…。俺は秘技、酔っ払ったフリを発動させるしかなかった。そのまま、ゴロンと横になって眠ったふりをした。下半身が大人しくなることを祈りながら…。
祈り虚しく深夜、俺はまた、トイレでフィニッシュを迎えた。
何とか「酔っていた」と言うことで、キスの事は誤魔化せた。あれからも痩せている牧くんと一緒に生活するダイエットは風呂と寝室以外、ゆる~く続いている。
いつも通りの生活を送っているから…誤魔化せているはずだ。たぶん。
俺はこのまま、あと半年ばかりの独身寮生活を牧くんとダイエットの名目で一緒に楽しく過ごそうと考えていたのだが。
それはなんの前触れもなくやってきた。
総務部の長谷川さんから昼休み、近くのカフェに呼び出されたのだ。
「この間、退寮勧告書渡したじゃない?あの後住むところ探してたりする?」
「いや、まだだけど。」
「あー!よかった!ひょっとしてさ、マンションとか契約してたらどうしようかと思っちゃった!まだ探さないで、絶対!」
「えっ、なんで?」
「ここだけの話なんだけど、高木くん関西に転勤かもしれない。向こうで一人欠員が出て。高木くん独身だし、ちょうど退寮だしで、候補に上がってるって人事から聞いて…。」
「関西?!」
「まだ決まりじゃないよ?ただ、家探しは様子見しないと、損することになっちゃうかもしれないから、言っておいた方がいいかなって。」
俺は呆然とした。
独身寮を出ても、モンスターが沢山出るスポットの近くに住んで牧くんを誘き出そうと思っていたのに。関西なんか守備範囲外だろうが!牧くんはそんな遠くまで来てくれないだろう。愛の力でもない限りは。
「でもさ、関西は関西で基幹店舗だし、転勤だと三十超えても借り上げで全額補助だから、条件的にはいいよ?この機会に結婚して嫁を帯同させちゃうとかね。きっかけとしては丁度いいんじゃない?まぁでも、今時、女も働いてるか?」
ちょっと考えが古いかなぁ、と長谷川さんは笑った。俺を慰めるつもりなのかもしれない。全然、慰めにはなっていないけど。
俺は昼休憩を終えて自分の席に戻った。何となく、机の周りの書類を片付けてしまい、綺麗になったデスクの上を見てまた落ち込んだ。
「あの…ごめん… 」
「いえ、その…こちらこそ… 」
俺たちはどちらからともなく謝って沈黙した。折角楽しかったのに…。
牧くんは、ハッとしたように出口の扉の方へ行き、ルームサービスが届く扉を開けた。
手に、分厚いトーストにアイスクリームや生クリーム、蜂蜜がトッピングされた厚切りトーストのデザートとワインの瓶を持って戻ってきた。
「これ、女子会プランの特典なんだって 」
「うわー…!太りそう 」
「確かに!」
俺達はワイン片手に激甘トーストを食べた。牧くんも珍しく甘いものを食べている。二人とも自然と笑顔になていた。
「牧さん、甘いもの好きじゃないよね?これは大丈夫?」
「うん。高木くんと食べると美味しい 」
それは単純に、デブと食べると美味しいってことなのだろうか…。牧くんの頬は少し赤くなっており、ワインのせいなのか発言のせいなのか、実に紛らわしい…。俺は牧くんにキスしたくなってしまった。どうしようもなくその衝動に駆られ、ワインを一気飲みして必死に誤魔化した。
「食べてすぐ寝る計画だから…高木くん、そろそろ寝よっか?」
「そうですね。あー、暴飲暴食して寝るって幸せだ 」
俺が思わず本音を口にすると、牧くんは笑った…。
寝る前、牧くんは歯を磨くため洗面所へ行った。俺はその隙にベットに潜り込む。
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「確かに…幸せだね、これ… 」
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…好きだ…!
気がついたら、牧くんに覆い被さってキスしていた。
ファーストキスはミント味…。俺、今後歯磨きのたびに勃起してしまうんじゃないか…という予感がした。
牧くんは驚いた顔のまま固まっている。そりゃそうだ…。俺は秘技、酔っ払ったフリを発動させるしかなかった。そのまま、ゴロンと横になって眠ったふりをした。下半身が大人しくなることを祈りながら…。
祈り虚しく深夜、俺はまた、トイレでフィニッシュを迎えた。
何とか「酔っていた」と言うことで、キスの事は誤魔化せた。あれからも痩せている牧くんと一緒に生活するダイエットは風呂と寝室以外、ゆる~く続いている。
いつも通りの生活を送っているから…誤魔化せているはずだ。たぶん。
俺はこのまま、あと半年ばかりの独身寮生活を牧くんとダイエットの名目で一緒に楽しく過ごそうと考えていたのだが。
それはなんの前触れもなくやってきた。
総務部の長谷川さんから昼休み、近くのカフェに呼び出されたのだ。
「この間、退寮勧告書渡したじゃない?あの後住むところ探してたりする?」
「いや、まだだけど。」
「あー!よかった!ひょっとしてさ、マンションとか契約してたらどうしようかと思っちゃった!まだ探さないで、絶対!」
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「ここだけの話なんだけど、高木くん関西に転勤かもしれない。向こうで一人欠員が出て。高木くん独身だし、ちょうど退寮だしで、候補に上がってるって人事から聞いて…。」
「関西?!」
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