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6.サトシと結婚
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空腹に飲むビールは沁みた。
胃がかぁーっとなって、すぐ、食欲が湧く。でも、牧くんはそうでは無いらしい。同じくビールを美味しそうに飲んだのだが、ツマミはあまり食べない…。
「今日は飲みたい気分!」
らしい。どうやら飲んだら食べたくなるのはデブだからで、全員そうじゃ無いんだとこの時初めて知った。
「今日忙しくてみんなピリピリしてて…。でも高木くんが肉まん持ってきてくれて、上の人も皆んな機嫌良くなってさ。食べるって大事だね。本当に、ありがとう 」
牧くんは俺を見て微笑んだ。
将来の嫁の危機を救えたのなら、匂いだけ嗅がされて何も食べれなかったとしても俺は本望だ。自然と笑顔になった。
牧くんは酒のせいか、顔が赤い。牧くんと入った居酒屋はおしゃれな創作料理居酒屋だ。照明がオレンジ色だからかもしれないが、白い肌に赤みがさすのを見て、昨日の風呂の光景を思い出してしまい俺は慌てた。いかんいかん!
俺は別の話題を絞り出した。
「牧さんがあんまり食べないのは昔からですか?」
「あー。小さい頃、虫歯になったって言ったっけ?小さいから麻酔が良くないって言われて麻酔かけずに虫歯治療させられたんだ。それがめちゃくちゃ激痛で…。その後から食べるのが怖いってなって偏食になっちゃって。固いものとか甘いもの、歯に引っかかりそうなものとかが嫌で嫌で… 」
「そ、そうなんですか…。でも、最初は甘いものが好きで、それで虫歯になったんだったら、辛かったですね 」
「うーん。それが最近知ったんだけど、甘いものは虫歯菌の餌なだけで、虫歯になるのは虫歯菌に感染したことが原因なんだって!」
「へえー?」
「俺、上に姉ちゃんが二人いて、待望の男の子だったから親にめちゃくちゃ可愛がられて…。多分親にキスとかされてたんだと思う 」
なるほど、それで俺は虫歯があまりないんだな。昔から太っててふてぶてしかったからなぁー俺は…。
俺はともかく、牧くんにはチューしちゃうだろう!だってちっちゃい牧くんきっと可愛かったはずだ…。俺が今、ちゅーしちゃいたいくらいだから、間違いない。
俺はその気持ちが止まらなかった。つい「ちっちゃい牧主任、見てみたかったなぁ~ 」と口にしていた。
すると牧くんからは意外な返事が返ってきた。
「じゃ、見てみる?」
ふえー?!動揺する俺を他所に、牧くんはスマートフォンを操作して直ぐに「良いって!」と、微笑んだ。
牧くんが向かったのは、俺たちの最寄駅から何駅か離れた所にあるタワーマンションの一室。
「高木くんほら~!可愛いでしょ!」
いや、そんなことする俺の嫁…牧くんが超可愛いんだが!牧くんは赤子を抱っこして、頬擦りしている。かわいい。可愛らしい。しかし…。
「ちょっと!篤人やめて!虫歯菌がうつる!」
牧くんから赤子を取り上げたその女性は、牧くんのお姉さんだ。お姉さんはごしごしと赤子の頬を拭いた。
「あんたみたいに虫歯になったら大変なんだから、やめてよねー!!」
「だからキスしたりはしてないじゃん…!」
赤子を取り上げられて、不貞腐れて頬をふくらませる俺の嫁も実に可愛らしい。
牧くんは自分の小さい頃に似ていると言われる赤子…甥っ子を俺に見せるために、お姉さんの家を訪れたのだ。でもそれは口実で、甥っ子に会いたかっただけなのかも。牧くんは甥っ子の名前を呼びながら沢山写真を撮っている。
牧くんは俺の嫁になったら選択的子なし夫婦になる訳だから、甥っ子を愛でられるのは良かった。俺もお姉さんと甥っ子くんには好かれておきたいところ…!
酔っ払って夜二十二時過ぎに来訪した減点をプラスに変えるべく俺は先程、駅で買ったシュークリームと牧くんが好きな黄色の電子兎のぬいぐるみを差し出した。
「ありがとう!気を使わせてごめんなさいね。しかもこれ…!知ってる?篤人のせいでウチ、アンパンマンがいないんだよ?幼児の家なのにあり得ないよね!」
お姉さんは苦笑いした。可愛いからまぁ良いんだけど~、といいながら最後に聞き捨てならないことを言った。
「もう、篤人の”好き”は凄くて。小さい頃はあのゲームの主人公のサトシと結婚しようとしてたんだから!」
サトシと結婚?!
それ俺じゃん!!俺、高木聡―――!!
何これ、運命?!
運命の番きたーー!
「いや、あの時は結婚の意味をよく分かってなくて…!今は思ってないよ!流石に!」
とかなんとか牧くんは言っていたが、そんな事、俺の頭には入ってこなかった。
俺は空前絶後のハイテンションで寮に帰った。
もう、牧くんが嫁にしか見えない。「おやすみ」と言われたが眠れるはずもなく、ギリギリの精神力で嫁のお布団に入り込む事をなんとか回避した。
胃がかぁーっとなって、すぐ、食欲が湧く。でも、牧くんはそうでは無いらしい。同じくビールを美味しそうに飲んだのだが、ツマミはあまり食べない…。
「今日は飲みたい気分!」
らしい。どうやら飲んだら食べたくなるのはデブだからで、全員そうじゃ無いんだとこの時初めて知った。
「今日忙しくてみんなピリピリしてて…。でも高木くんが肉まん持ってきてくれて、上の人も皆んな機嫌良くなってさ。食べるって大事だね。本当に、ありがとう 」
牧くんは俺を見て微笑んだ。
将来の嫁の危機を救えたのなら、匂いだけ嗅がされて何も食べれなかったとしても俺は本望だ。自然と笑顔になった。
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「そ、そうなんですか…。でも、最初は甘いものが好きで、それで虫歯になったんだったら、辛かったですね 」
「うーん。それが最近知ったんだけど、甘いものは虫歯菌の餌なだけで、虫歯になるのは虫歯菌に感染したことが原因なんだって!」
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俺はともかく、牧くんにはチューしちゃうだろう!だってちっちゃい牧くんきっと可愛かったはずだ…。俺が今、ちゅーしちゃいたいくらいだから、間違いない。
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すると牧くんからは意外な返事が返ってきた。
「じゃ、見てみる?」
ふえー?!動揺する俺を他所に、牧くんはスマートフォンを操作して直ぐに「良いって!」と、微笑んだ。
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「高木くんほら~!可愛いでしょ!」
いや、そんなことする俺の嫁…牧くんが超可愛いんだが!牧くんは赤子を抱っこして、頬擦りしている。かわいい。可愛らしい。しかし…。
「ちょっと!篤人やめて!虫歯菌がうつる!」
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「あんたみたいに虫歯になったら大変なんだから、やめてよねー!!」
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牧くんは俺の嫁になったら選択的子なし夫婦になる訳だから、甥っ子を愛でられるのは良かった。俺もお姉さんと甥っ子くんには好かれておきたいところ…!
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