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四章 ソロ活動編
41.嵌められた?
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夕方、事務所から実家に帰ると、以前『あなたのファンがゴミを捨てている!』と怒っていたおばさんがマンションの前で待ち構えていた。
「ちょっと!本当にいい加減にして?今度ゴミがあったら、警察に連絡するから!」
「え…っ?!す、すみません…!」
ゴミを捨てていたのは、神谷プロデューサーのはず。神谷プロデューサーはストーカー認定され接近禁止になっているから、その問題も解決したと思っていたのだが…。
俺は謝り倒して、ゴミを拾うことにした。
ゴミは、飲み物のペットボトル、甘いお菓子の袋…。おじさんというより、ひょっとして、若い人かもしれない…。
ゴミを拾っていると、後方から話し声と共にカメラのシャッター音がした。音のした方へ振り向くと、スマートフォンで写真を撮っていた女の子数人と目が合う。
「あ、あの…!」
女の子達は、やば!といって逃げ出した。ってことは彼女達がゴミの犯人…?!
俺は女の子を追いかけて、進路方向へ回り込んだ。
「ねえ、ゴミ捨ててたの君たち?ここ普通のマンションだからゴミは捨てないで!」
いや、ゴミもそうなんだけど、そこじゃない感…。そう思ったのは女の子達も同じだったようで、顔を見合わせた後、ぷっと吹き出した。
「ちょっと、笑っちゃダメ!こいつが、マコトを誘惑して響が悲しんでるんだから!」
「でも本当に『美少年』だったね…!」
マコト…、美少年…?ひょっとして、あの週刊誌記事のこと?!
「あの、君たち一体…?」
「私たちはYBI警察!」
YBI警察?何だそれは…。
「警察がゴミ捨てちゃだめだろ~!」
「あなたが悪いのよ、マコトは響のものだからもう近づかないで!」
女の子は捨て台詞と共に走り去った。
マコト、響、YBI警察…。えーと、つまり、あの週刊誌を見たマコトのファンが俺をつけていたということか?どうやらマンションにゴミを捨てていた犯人はあの女の子達だったようだ。ゴミ捨てといて、なんで警察なんだよ…。
呆然としていると、タイミングよく、マコトから着信が入った。
「圭吾君、言い忘れたんだけど、REPLAYの動画サイトにカウントダウン動画アップしない?今、スケジュールいっぱいで配信は難しいだろうから、繋ぎで。事務所に聞いてみてよ」
「うん。わかった…」
「どーした。元気ないね?」
マコトはさすがトップアイドル、色々と察しがいい。そう、俺は落ち込んでいた。
「俺、もう実家に住めない!」
「ええ?じゃあうちに来る?」
そんな事したら、炎上必至…!
俺はとりあえず、最低限の荷物を持って実家を出た。
俺がいると、実家の家族に迷惑をかけてしまうと思い、とりあえずもう一度事務所に戻った。帰ろうとしていたマネージャー達に事情を話すと、近くのビジネスホテルを取ってくれた。
「YBI警察って、一部のYBIの過激なファンのことで、メンバーに女が近寄らないよう見張ってるとか、嫌がらせして別れさせるとか言われてるね。YBIってもともと地下アイドルで、ファンとの距離が近すぎるっていうか…」
そう、阿部マネージャーが教えてくれた。それで俺、つけられて特定されてたんだ…。怖すぎる。
「俺、写真も撮られたんだ。それってネタバラシに影響する…?」
「圭吾君だってことまでは分かってないと思うから、大丈夫だと思うけど。しばらく実家には帰らない方がいいね。ちょっと、マンスリーマンション探してみるから」
阿部マネージャーはビジネスホテルに俺を送り届けると帰って行った。
「つ、疲れた…」
ホテルに着くと、ぐったりしてやる気が起きない。タイムリープの歌詞の修正をしなければならないし、ベースボーカルも練習しなければ…。
でも俺は昨日もらった蓮の新曲をもう一度聴いた。
木村陽菜もこれを聴いて、歌詞を考えている…?そう思うと胸がきゅっと締め付けられる。
俺が詞をつけたい…誰にも渡したくない。そんな欲求が抑えられなくなった。やらなければいけないことを全部後回しにして歌詞の参考に、蓮の主演ドラマを見返した。
「…はっ!」
動画サイトでドラマをみていると、気づけば深夜。しかし、スマートフォンのブルーライトの影響か眠いからなのか、何だか興奮してもやもやする!誰かに、この気持ちを伝えたい……!
「今回いったん『別れよう』ってなったのは最終回への伏線じゃないですか?しかも最終回、クリスマス直前だよ…?絶対クリスマスイヴに再会あるよね?」
『あるある。あるから童貞ははやく寝ろ』
『ちゃんとくっつく。安心して寝ろ』
『嫉妬?見苦しいw』
嫉妬、そうかもしれない…。
俺はビジネスホテルの部屋でこっそり配信を始めた。とにかく誰かに聞いて欲しかったのだ。
だってクリスマスに再会して、クリスマスに新曲リリースして、それで二人仲良く新生RELAYを発表とかあったら俺…!
『REPLAY久しぶりー。あれから主題歌の話どうなった?』
『今日も歌ってー!』
「それが今日、ちょっと外から配信してて…」
『自宅警備員だから関係ないと思ってた』
「自宅警備員、首になって今、ビジネスホテルで壁薄くて…」
『おもしろw』
実家の両親に出て行くと告げると安堵された。両隣が両親と兄の部屋とは言え、夜歌ったりして気が気じゃなかったらしい。YBI警察が出動しなくてもいずれ出て行くことになっていただろう。
『それで元気なかったんだ。テンションちょっと低かった』
『え、かわいそー』
『がんばれ!』
励まされて少し元気が出た。しかも、複数投げ銭が入る。
「あっ、なっちさんギフトありがとう!『これで夜食食え』、うん。たべる。みーちゃんさんもありがとう…それから…」
俺はあっと一瞬止まった。画面上に表示されたのは…。
「抹茶さん、ギフトありがとう!えーと、『最悪、うちにくれば?付き合おう♡』って…。あ、『最悪』ね?そうならないように頑張ります!」
抹茶はマコトの裏垢だ。…聞いてたんだ。しかも何だ、付き合おうって…。
俺が動揺すると配信中にもかかわらず、スマートフォンにメッセージが届いた。メッセージはマコトからで、『けっこう本気なのにかわされた』とかいてある。
本気って、本気…?!
キャプチャーが反応してアバターが赤くなる。すると、今度は最高額の投げ銭でコメントが更新された。
「抹茶さん…『推しを裏切らない一途なREPLAYが好きだよ』……。ありがとう。そうなんだ…俺、推しは裏切れないタイプだから、ごめん、付き合えない」
マコトには感謝してるし今は頼りきってるけど、やっぱり俺は、蓮のことが好きだから…。
やや神妙に答えると、またスマートフォンにマコトからメッセージが送られてきた。
『キャプチャとったから、ネタバラシの時使っちゃお♡』
「へ…?!」
最初からそのつもりで?ま…まさか、俺またマコトに嵌められた…?!
さっきの『推しを裏切れない』はギリギリ大丈夫なコメントだと思うけど…。もし蓮が俺を好きじゃなかった場合、きっと大怪我はする…。俺はいつものバイバイをして配信を終わらせながら、今回のアーカイブは消しておこうと心に決めた。
「ちょっと!本当にいい加減にして?今度ゴミがあったら、警察に連絡するから!」
「え…っ?!す、すみません…!」
ゴミを捨てていたのは、神谷プロデューサーのはず。神谷プロデューサーはストーカー認定され接近禁止になっているから、その問題も解決したと思っていたのだが…。
俺は謝り倒して、ゴミを拾うことにした。
ゴミは、飲み物のペットボトル、甘いお菓子の袋…。おじさんというより、ひょっとして、若い人かもしれない…。
ゴミを拾っていると、後方から話し声と共にカメラのシャッター音がした。音のした方へ振り向くと、スマートフォンで写真を撮っていた女の子数人と目が合う。
「あ、あの…!」
女の子達は、やば!といって逃げ出した。ってことは彼女達がゴミの犯人…?!
俺は女の子を追いかけて、進路方向へ回り込んだ。
「ねえ、ゴミ捨ててたの君たち?ここ普通のマンションだからゴミは捨てないで!」
いや、ゴミもそうなんだけど、そこじゃない感…。そう思ったのは女の子達も同じだったようで、顔を見合わせた後、ぷっと吹き出した。
「ちょっと、笑っちゃダメ!こいつが、マコトを誘惑して響が悲しんでるんだから!」
「でも本当に『美少年』だったね…!」
マコト…、美少年…?ひょっとして、あの週刊誌記事のこと?!
「あの、君たち一体…?」
「私たちはYBI警察!」
YBI警察?何だそれは…。
「警察がゴミ捨てちゃだめだろ~!」
「あなたが悪いのよ、マコトは響のものだからもう近づかないで!」
女の子は捨て台詞と共に走り去った。
マコト、響、YBI警察…。えーと、つまり、あの週刊誌を見たマコトのファンが俺をつけていたということか?どうやらマンションにゴミを捨てていた犯人はあの女の子達だったようだ。ゴミ捨てといて、なんで警察なんだよ…。
呆然としていると、タイミングよく、マコトから着信が入った。
「圭吾君、言い忘れたんだけど、REPLAYの動画サイトにカウントダウン動画アップしない?今、スケジュールいっぱいで配信は難しいだろうから、繋ぎで。事務所に聞いてみてよ」
「うん。わかった…」
「どーした。元気ないね?」
マコトはさすがトップアイドル、色々と察しがいい。そう、俺は落ち込んでいた。
「俺、もう実家に住めない!」
「ええ?じゃあうちに来る?」
そんな事したら、炎上必至…!
俺はとりあえず、最低限の荷物を持って実家を出た。
俺がいると、実家の家族に迷惑をかけてしまうと思い、とりあえずもう一度事務所に戻った。帰ろうとしていたマネージャー達に事情を話すと、近くのビジネスホテルを取ってくれた。
「YBI警察って、一部のYBIの過激なファンのことで、メンバーに女が近寄らないよう見張ってるとか、嫌がらせして別れさせるとか言われてるね。YBIってもともと地下アイドルで、ファンとの距離が近すぎるっていうか…」
そう、阿部マネージャーが教えてくれた。それで俺、つけられて特定されてたんだ…。怖すぎる。
「俺、写真も撮られたんだ。それってネタバラシに影響する…?」
「圭吾君だってことまでは分かってないと思うから、大丈夫だと思うけど。しばらく実家には帰らない方がいいね。ちょっと、マンスリーマンション探してみるから」
阿部マネージャーはビジネスホテルに俺を送り届けると帰って行った。
「つ、疲れた…」
ホテルに着くと、ぐったりしてやる気が起きない。タイムリープの歌詞の修正をしなければならないし、ベースボーカルも練習しなければ…。
でも俺は昨日もらった蓮の新曲をもう一度聴いた。
木村陽菜もこれを聴いて、歌詞を考えている…?そう思うと胸がきゅっと締め付けられる。
俺が詞をつけたい…誰にも渡したくない。そんな欲求が抑えられなくなった。やらなければいけないことを全部後回しにして歌詞の参考に、蓮の主演ドラマを見返した。
「…はっ!」
動画サイトでドラマをみていると、気づけば深夜。しかし、スマートフォンのブルーライトの影響か眠いからなのか、何だか興奮してもやもやする!誰かに、この気持ちを伝えたい……!
「今回いったん『別れよう』ってなったのは最終回への伏線じゃないですか?しかも最終回、クリスマス直前だよ…?絶対クリスマスイヴに再会あるよね?」
『あるある。あるから童貞ははやく寝ろ』
『ちゃんとくっつく。安心して寝ろ』
『嫉妬?見苦しいw』
嫉妬、そうかもしれない…。
俺はビジネスホテルの部屋でこっそり配信を始めた。とにかく誰かに聞いて欲しかったのだ。
だってクリスマスに再会して、クリスマスに新曲リリースして、それで二人仲良く新生RELAYを発表とかあったら俺…!
『REPLAY久しぶりー。あれから主題歌の話どうなった?』
『今日も歌ってー!』
「それが今日、ちょっと外から配信してて…」
『自宅警備員だから関係ないと思ってた』
「自宅警備員、首になって今、ビジネスホテルで壁薄くて…」
『おもしろw』
実家の両親に出て行くと告げると安堵された。両隣が両親と兄の部屋とは言え、夜歌ったりして気が気じゃなかったらしい。YBI警察が出動しなくてもいずれ出て行くことになっていただろう。
『それで元気なかったんだ。テンションちょっと低かった』
『え、かわいそー』
『がんばれ!』
励まされて少し元気が出た。しかも、複数投げ銭が入る。
「あっ、なっちさんギフトありがとう!『これで夜食食え』、うん。たべる。みーちゃんさんもありがとう…それから…」
俺はあっと一瞬止まった。画面上に表示されたのは…。
「抹茶さん、ギフトありがとう!えーと、『最悪、うちにくれば?付き合おう♡』って…。あ、『最悪』ね?そうならないように頑張ります!」
抹茶はマコトの裏垢だ。…聞いてたんだ。しかも何だ、付き合おうって…。
俺が動揺すると配信中にもかかわらず、スマートフォンにメッセージが届いた。メッセージはマコトからで、『けっこう本気なのにかわされた』とかいてある。
本気って、本気…?!
キャプチャーが反応してアバターが赤くなる。すると、今度は最高額の投げ銭でコメントが更新された。
「抹茶さん…『推しを裏切らない一途なREPLAYが好きだよ』……。ありがとう。そうなんだ…俺、推しは裏切れないタイプだから、ごめん、付き合えない」
マコトには感謝してるし今は頼りきってるけど、やっぱり俺は、蓮のことが好きだから…。
やや神妙に答えると、またスマートフォンにマコトからメッセージが送られてきた。
『キャプチャとったから、ネタバラシの時使っちゃお♡』
「へ…?!」
最初からそのつもりで?ま…まさか、俺またマコトに嵌められた…?!
さっきの『推しを裏切れない』はギリギリ大丈夫なコメントだと思うけど…。もし蓮が俺を好きじゃなかった場合、きっと大怪我はする…。俺はいつものバイバイをして配信を終わらせながら、今回のアーカイブは消しておこうと心に決めた。
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