振られて捨てられたはずがなぜか成功して周りの評価が爆上がりした件~失恋ソングを配信しただけでけして復讐ではありません!~

あさ田ぱん

文字の大きさ
上 下
33 / 50
三章 ソロ活動編

33.タイムリープ

しおりを挟む
****

   昨夜の泥酔が響き、昼過ぎに起きてぼんやりしていたら、マコトから電話が来て「まさか何もせずに夜また寝るなんてことないよね?」と脅された。マコトってなんであんな怖いんだ?マコトを利用してやる…!と思っていた、あの日の俺に巻き戻ったら別の人を探そうと説得する!
 例えマコトに脅されなくても、配信を頑張ろうとは思っていた。昨日は木村陽菜がRELAYに入ったら自分の努力の行き場がない気がして蓮に八つ当たりしてしまったけど、人気をつけて木村陽菜のポジションを奪うしか今の俺がRELAYに 戻る方法はないんだから。

 俺はいつもの通りSNSで告知を投稿してから配信を始めた。

「えーと、ちょっと長くなったので今回はこの辺で。次回、実は一巻であった伏線について、最終章へのつながりを考察したいと思ってます!えーと、じゃあ歌います。『約束♪』」
『また急に歌きたw』
『wwwwwwww』

 前回原作者本人から反応を貰えたので、俺はまた『悪役令息皇帝になる』の考察を配信している。現在の同接数はなんと二百人超え…!これは明らかに俺の告知投稿を『悪役令息皇帝になる』原作者、御所浦えむさんがリプライしたからに他ならない。俺は歌う前、緊張を誤魔化すように大きく息を吸い込んだ。

 歌い終えて、ばいばーいと手を振ると、一つのコメントが画面上に固定された。お金を払ってコメントすると画面の一番上の目立つところに一定時間表示される『投げ銭』を行なったユーザーがいるようだ。投げ銭を貰ったら、配信中にお礼を言うのがルールだから俺は慌ててユーザー名を呼んだ。

「あっ、『えむ』さんギフトありがとうございます!えーと、『新曲はメルリのイメージでお願いしたいです』?」
『えむ、って、まさか御所浦えむ本人?』
『ちょ、ギフト最高額じゃんww』
『本垢だよこれ!』
『えっ、すごwwwww』
「えーーーーーーー?!」

 リプライしてくれた上に、ギフト付きで新曲のオファーまでしてくれるとか…。正直俺のどの辺りに期待してくれてるのかよく分からないから戸惑った。一体、どこまで本気なのだろうか……?


「まさか原作者が降臨するとはね~。これは新曲作るしかないね。それが原作者のお眼鏡にかなったら、主題歌もあるかもよ…?」
「いやまさか、そんな…」
「圭吾君さ、先生の投稿に反応してないじゃん!いいねくらいしなよ!あり得ない!」
   あり得ないとはいいつうも、マコトはいつになく弾んだ声でビデオ通話越しに微笑んだ。アーカイブ動画の再生数も登録者数も伸びてご満悦の様子…。先日酔って呼び出した時に、あんなキレ方をした人と同一人物とは思えない。
「圭吾君、いっつも同じ歌しか歌わないけど、ストックとかある?」
「……」
「無いんだね?じゃ、頑張って作って。あと分かってると思うけど、彼女いないアピールも忘れないでよ?」
「……」
「返事は?」
「はいっ!」
   マコトを怒らせると怖いので、とりあえず俺は元気に返事をした。でも、彼女いないアピールってどうやるんだろ…?普段の俺を見てもらえれば、絶対いないって分かるんだけどなぁ。

 マコトとのビデオ通話を切って、何か飲もうとキッチンへ行くと、隣接しているダイニングテーブルを囲み父と母、それに兄が食事をしていた。

「圭吾~、さっき『アナザーズマート』のサイトウさんって人から電話あったわよ?折り返し欲しいって」
   母は俺に、電話番号を書いたメモを手渡そうとした。しかし、隣に座っていた兄がそれを取りあげてしまう。
「『アナザーズマート』って、圭吾が資料取り寄せてたコンビニ?夜八時過ぎにかけてくる会社なんて碌なもんじゃないからやめとけ!」
   絶対ブラック企業だよ!という兄の言葉に、母もそうね、と頷く。でも父は無言のままだった。いい歳した大人の自宅警備員を二人も抱える父の胸中は窺い知れない。

 スマートフォンへの着信を無視したから自宅に掛けられたんだ。俺は仕方なく、兄からメモを返してもらい、電話をかけた。



 翌日…。
 俺は都会のオフィスビルでコーヒーを飲んでいた。

「いやー、ご足労いただいてすみません!」
「いえ…こちらこ何度もご連絡いただいたのに電話に出ず、すみませんでした」

 なんだか、周りの視線が痛い。あんまりカジュアルだとまずいと思い、ジャケットを羽織ってきたけど、コンビニ本社とか、かっちりスーツの人達の中だとまだ浮いてる?!

「実は、上村さんが希望してた駅に隣接する土地が確保できそうでして。新しいコンビニオーナーを探してるんです」
「え、あの駅に…?!」
   コンビニ本社の、俺の担当営業であるおじさんは笑顔で頷いた。
 俺たちの思い出のコンビニが復活するかも知れない…それは凄く嬉しいニュースだ。以前の俺だったらきっと、すぐに飛びついていたと思う。

「あの、凄く嬉しいです。でも、俺が今日来たのは、ちゃんとお断りしなければと思ったからでして…」
「あ、やはり借り入れがネックでしたか…?」
「いえ、違います。やっぱり今の仕事をもう少し頑張ろうと思い直しまして。せっかくお話しを頂いたのにすみません…」
「そうですか…。そんな気もしたんですが…。いやーでも、上村さんみたいなイケメンの素顔が見れて眼福でした。こちらこそわざわざ来て頂いて、ありがとうございます」

 担当営業さんや、その他社員の人にも見送られて、俺はコンビニ本社のオフィスを出た。やっぱりきちんと断って、挨拶できてよかった…!

 ーーこうやって巻き戻って、一個ずつ後悔を無くして行けばいいのかな…?
 
 じゃあ俺、やっぱり絶対、RELAYに戻らないと…!

 
 駅までの道を歩きながら、蓮からのDMの事を考えた。昨日はケンカしてしまったけど、DMはすごく嬉しかったから、どうしてもお礼は言いたい。ネタバラシを考えたら返信しない方がいいのかもしれないと迷ったけど、『感想ありがとうございます。すごく嬉しいです』と、当たり障りなく、お礼だけを返信した。

 電車に乗り実家の最寄駅へ着くと、以前コンビニがあった場所を見に行った。もう直ぐ、ここにもまたコンビニが出来る。それまでに俺は、巻き戻れるだろうか…?

 すっかり寒くなったので自動販売機で缶コーヒーを買い、実家への道を歩き始めると、スマートフォンの通知音が鳴った。SNSの通知だ。

 ひょっとして…。期待に胸を膨らませながら通知を開くと、DMの返信が来ていた。蓮だ…!

『俺も新曲聞きたいです』

「蓮……!」

 
 蓮、待っててよ。絶対、RELAYに戻るよ、俺…!

 俺はまた、採譜アプリを立ち上げた。

 



『♪タイムリープ

階段を踏み外したように転げ落ちた
誰のせいでもない僕のせい
君に愛想をつかされた僕のせい
長い階段を一緒に駆け上がってる
そのつもりだったけど
君は一歩も二歩も先を行き
難解な未来へ飛び出していった

階段を踏み外したら転げ落ちて
たぶんきっとタイムリープする
タイムリープしたらあの日の過ちを全部やり直して
言えなかった”好き”を伝えられる
そのときは僕の手を取ってよ 
言えなかった”好き”を伝えるから』
しおりを挟む
感想などいただけたら嬉しいです!↓マコトくんが所属するYBIの連載を開始しましたYour Best idol
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

処理中です...