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二章 RELAY~ソロ活動編
28.方向性
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「蓮君が出演するならRELAYのマネージャーも来るはずだから圭吾君とのコラボ動画の許可をもらおうと思ってたんだけど…、やっぱやめた。初めは事務所抜きでやろ!」
「いやいや、それは流石にまずいよ…!」
「でもさぁ、よく考えてよ圭吾君。今RELAYのマネージャーは蓮君で大忙し。どうせ今何言っても、面倒くさがって碌な対応してくれないよ?むしろ勝手にネタバラシされたら嫌だし…」
確かに、圭吾案件は迷惑フォルダに入ってしまうマネージャーのことだ。マコトとのコラボも神谷プロデューサーに丸投げされたら嫌だし…。
「でも顔出したらすぐバレるよ…?」
「うん。だから初めはVTuberでやろう。人気出て注目が集まったところでネタバラシする」
「で、でも、人気出るかなぁ…?」
「出るようにやるんでしょ」
マコトにぴしゃりと言われて閉口した…。マコトは強気だ。その自信は一体どこから…?
「それに、圭吾君は彼女におわせ事件で女の子の心象がよくない。まずはVTuberでイメージを変えよう」
「そ、そんなに俺、評判良くないの…?」
「うん。だからVの配信でさ、逆に『彼女いない』ってことを匂わせておこう。そうすればネタバラシした後にRELAYファンが合流する」
なるほど、それが本当に上手くいったら鮮やかだ。
「何ならBL営業してもいいよ?」
「BL営業?」
「メンバーといちゃつくんだよ。結構女の子に受けるアイドルの常套手段」
「…へ、へえ…?」
むしろ俺も蓮といちゃつけるものならいちゃつきたい。それが出来たら、配信なんかやらないんだよ!と、いうわけにもいかず、何となく笑って誤魔化した。
「圭吾君はどんな配信にしたいとか、希望はある?」
「この間デモを作ったから、それを歌いたい」
「わかった。じゃあそのデータ送っておいて。あと、圭吾君のキャラクター外注しようと思うんだけど、好きなキャラとかいる?」
キャラクターか…。好きなキャラクターはあるけど…。
「『悪役令息皇帝になる』ってアニメの悪役令嬢、メルリが好きなんだ。蓮も俺もハマってて。それはRELAYファンにも知られてるんだけど」
「あー、そのアニメ知ってる。緑の髪の子?」
良かった、通じて…!あ、でも俺男なのに、女の子のキャラを言ってしまった…!
「圭吾君の写真も見せてこんな感じで、って作ってもらうから大丈夫。一旦出来たらまた連絡する。圭吾君は配信で話す内容考えておいて」
マコトはざっくり打ち合わせた内容をスマートフォンにメモすると立ち上がった。動こうとしない俺に、笑顔を向ける。
「もう流石に、蓮君たちは居ないと思うよ。この後仕事だって言ってたし」
「そう…」
…ほっとしたような、がったりしたような。でも来る時とは違う、新たな気持ちで部屋を出た。
****
RELAYをクビになった後、収入が途絶えて不安になった俺は実家に戻っていた。いわゆる、ヒキニート、自宅警備員ってやつをしている。
自宅警備員の俺の部屋には、困ったことにテレビチューナーがなかった。蓮のドラマを見るためだけに、TVチューナーを増設する工事を行い、今日の初回放送を迎えた。
ドラマはよくある青春群像劇で、主演は演技も上手いと評価が高い女優、木村陽菜。今まで非公開だったが、木村陽菜は音大の同級生で元RELAYのベーシストだったらしい…。
ドラマ初回は、高校の同級生だった二人が久しぶりに仕事で再開し…という、恋の予感を感じさせる展開だった。なんだか、ドラマなのに現実の二人に重なるような設定で、狙いすぎじゃないか?!
このまま、回が進んだら抱き合ったりキスシーンを見せられるのかもしれない。そう考えると胸が締め付けられるのに、久しぶりに見る蓮が眩しすぎて、画面から目が離せなかった。
「高校の時に親の転勤で別れた二人が、職場で再開するなんて奇跡そうそう無いと思うんだけど。あれかなー、やっぱちょっと出てきたSNSが伏線になってるのかなぁ…?そうすると、ほら、仕事で使うって言うあの資料がつながって助けられて二人が接近する流れなんじゃぁ…」
うっかりオタク気質が出てドラマのあらすじを捲し立ててた俺を、マコトは笑った。
「圭吾君、めちゃくちゃドラマ見てるじゃん!出てる俺より詳しいよ?」
「えっ…じゃあ、今のあってる?!」
「あはは、そんなの言えないけど…!てゆーか、圭吾君って、蓮君のこと大好きだよね?」
「ふぁっ?!」
マコトにズバリ言い当てられて、また変な声が出てしまった。マコトは電話口で大笑いしている。
「Vで何やろうか迷ってたんだけど…、今ので決めた!蓮君のドラマの実況やろうよ。考察入りで!」
「そ、そんなの需要ある…?!」
「あるある。初回放送もタイムライン大盛り上がりだったよ?圭吾君、SNSやらないんだっけ?」
「う、うん…」
「これからはやってもらうから。じゃ、来週、ドラマの時間に合わせて配信しよー!この後、キャラクターのデザイン送っておくから見て返信して?」
それじゃ、と言ってマコトは電話を切ってしまった。実況なんて、全然自信がない。俺は話が下手で、ラジオ番組だっていつも蓮と他のメンバーが話してた…。
いや…RELAY再開のために、俺は変わるって決めたんだ、やるしかない…!
来週に備えて、もう一度蓮のドラマを再生した。ただ蓮が見たいだけじゃない、あくまで実況のため……!やましい目でなんか見てない…、たぶん。
「いやいや、それは流石にまずいよ…!」
「でもさぁ、よく考えてよ圭吾君。今RELAYのマネージャーは蓮君で大忙し。どうせ今何言っても、面倒くさがって碌な対応してくれないよ?むしろ勝手にネタバラシされたら嫌だし…」
確かに、圭吾案件は迷惑フォルダに入ってしまうマネージャーのことだ。マコトとのコラボも神谷プロデューサーに丸投げされたら嫌だし…。
「でも顔出したらすぐバレるよ…?」
「うん。だから初めはVTuberでやろう。人気出て注目が集まったところでネタバラシする」
「で、でも、人気出るかなぁ…?」
「出るようにやるんでしょ」
マコトにぴしゃりと言われて閉口した…。マコトは強気だ。その自信は一体どこから…?
「それに、圭吾君は彼女におわせ事件で女の子の心象がよくない。まずはVTuberでイメージを変えよう」
「そ、そんなに俺、評判良くないの…?」
「うん。だからVの配信でさ、逆に『彼女いない』ってことを匂わせておこう。そうすればネタバラシした後にRELAYファンが合流する」
なるほど、それが本当に上手くいったら鮮やかだ。
「何ならBL営業してもいいよ?」
「BL営業?」
「メンバーといちゃつくんだよ。結構女の子に受けるアイドルの常套手段」
「…へ、へえ…?」
むしろ俺も蓮といちゃつけるものならいちゃつきたい。それが出来たら、配信なんかやらないんだよ!と、いうわけにもいかず、何となく笑って誤魔化した。
「圭吾君はどんな配信にしたいとか、希望はある?」
「この間デモを作ったから、それを歌いたい」
「わかった。じゃあそのデータ送っておいて。あと、圭吾君のキャラクター外注しようと思うんだけど、好きなキャラとかいる?」
キャラクターか…。好きなキャラクターはあるけど…。
「『悪役令息皇帝になる』ってアニメの悪役令嬢、メルリが好きなんだ。蓮も俺もハマってて。それはRELAYファンにも知られてるんだけど」
「あー、そのアニメ知ってる。緑の髪の子?」
良かった、通じて…!あ、でも俺男なのに、女の子のキャラを言ってしまった…!
「圭吾君の写真も見せてこんな感じで、って作ってもらうから大丈夫。一旦出来たらまた連絡する。圭吾君は配信で話す内容考えておいて」
マコトはざっくり打ち合わせた内容をスマートフォンにメモすると立ち上がった。動こうとしない俺に、笑顔を向ける。
「もう流石に、蓮君たちは居ないと思うよ。この後仕事だって言ってたし」
「そう…」
…ほっとしたような、がったりしたような。でも来る時とは違う、新たな気持ちで部屋を出た。
****
RELAYをクビになった後、収入が途絶えて不安になった俺は実家に戻っていた。いわゆる、ヒキニート、自宅警備員ってやつをしている。
自宅警備員の俺の部屋には、困ったことにテレビチューナーがなかった。蓮のドラマを見るためだけに、TVチューナーを増設する工事を行い、今日の初回放送を迎えた。
ドラマはよくある青春群像劇で、主演は演技も上手いと評価が高い女優、木村陽菜。今まで非公開だったが、木村陽菜は音大の同級生で元RELAYのベーシストだったらしい…。
ドラマ初回は、高校の同級生だった二人が久しぶりに仕事で再開し…という、恋の予感を感じさせる展開だった。なんだか、ドラマなのに現実の二人に重なるような設定で、狙いすぎじゃないか?!
このまま、回が進んだら抱き合ったりキスシーンを見せられるのかもしれない。そう考えると胸が締め付けられるのに、久しぶりに見る蓮が眩しすぎて、画面から目が離せなかった。
「高校の時に親の転勤で別れた二人が、職場で再開するなんて奇跡そうそう無いと思うんだけど。あれかなー、やっぱちょっと出てきたSNSが伏線になってるのかなぁ…?そうすると、ほら、仕事で使うって言うあの資料がつながって助けられて二人が接近する流れなんじゃぁ…」
うっかりオタク気質が出てドラマのあらすじを捲し立ててた俺を、マコトは笑った。
「圭吾君、めちゃくちゃドラマ見てるじゃん!出てる俺より詳しいよ?」
「えっ…じゃあ、今のあってる?!」
「あはは、そんなの言えないけど…!てゆーか、圭吾君って、蓮君のこと大好きだよね?」
「ふぁっ?!」
マコトにズバリ言い当てられて、また変な声が出てしまった。マコトは電話口で大笑いしている。
「Vで何やろうか迷ってたんだけど…、今ので決めた!蓮君のドラマの実況やろうよ。考察入りで!」
「そ、そんなの需要ある…?!」
「あるある。初回放送もタイムライン大盛り上がりだったよ?圭吾君、SNSやらないんだっけ?」
「う、うん…」
「これからはやってもらうから。じゃ、来週、ドラマの時間に合わせて配信しよー!この後、キャラクターのデザイン送っておくから見て返信して?」
それじゃ、と言ってマコトは電話を切ってしまった。実況なんて、全然自信がない。俺は話が下手で、ラジオ番組だっていつも蓮と他のメンバーが話してた…。
いや…RELAY再開のために、俺は変わるって決めたんだ、やるしかない…!
来週に備えて、もう一度蓮のドラマを再生した。ただ蓮が見たいだけじゃない、あくまで実況のため……!やましい目でなんか見てない…、たぶん。
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