振られて捨てられたはずがなぜか成功して周りの評価が爆上がりした件~失恋ソングを配信しただけでけして復讐ではありません!~

あさ田ぱん

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二章 RELAY~ソロ活動編

23.解散後の身の振り方

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 そして蓮と話せないまま…RELAYは活動休止という名の事実上の解散となった。


 RELAYの看板がなくなった俺はあっという間に仕事が無くなってしまい、途方に暮れていたのだが、そんな俺に連絡してきたのは意外な人物だった。


「圭吾、元気だった?」
「ええ~と…」
 俺は明らかに元気がなかったが、繁華街の喫茶店に俺を呼び出した人物、RELAYのドラム・藤崎はそれはどうでもいいことのようだった。

「圭吾ってさ、全然仕事ないらしいじゃん?今、何やってんだよ?」
「えっと……、前からやってみたかった仕事の説明会いってみたり…」
   
    そう、俺は蓮との思い出のコンビニ復活計画を発動させるつもりで、先日コンビニオーナー説明会にいったのだ!しかし…。
 初期投資費用が少ないと言われるコンビニエンスストアに狙いを定めて説明会に参加したのだが、世の中そんなに甘い話はないらしい。コンビニに並べる商品は自分で購入しなければならず、その額は数千万に及ぶとか、土地建物も賃料を払うとか、後から難しいことを色々言われ、結局断念したのだ。
 美咲も独立してエステ店を始めたって言ってたけど…商売って難しいのにちゃんとやれているんだろうか?俺はちょっとだけ美咲を尊敬したし、自分の不甲斐なさに落ち込んだ。

「何の説明会だよ?!こえーな!」

   その時、タイミング悪く俺のスマートフォンが震えた。先日の、コンビニの担当営業からだ…。藤崎は電話に出ない俺を、訝しんだが、俺はスマートフォンをカバンにしまって誤魔化した。
 断ったはずなのに、しつこいなぁ~…。

 俺がカバンにスマートフォンをしまうと、藤崎はまた、コーヒーをかき混ぜながら話を再開した。

「この間、蓮にたまたま会ったんだよ。その時、圭吾の話になってさ」
「え?!」
 蓮と俺の話をした、と言われて希望と期待が膨らみ俺は思わず、身を乗り出してしまった。そんな俺の逸る気持ちを他所に、藤崎は自分のペースを崩す様子がない。

「Your Best idol…YBIってアイドルグループのマコトって知ってる?蓮と今度ドラマに出るらしいんだけど」
「この間、制作発表会見してたのを見たから、顔くらいは」
「俺最近、YBIと仕事したんだよ。お前ってSNSとか無いからマコトに連絡先聞かれて、思わず教えちゃったんだ。その話を蓮にしたら『信じられねー』って怒られてさ」
 蓮の言うことはもっともだ。俺に断りもなく…立派な情報漏洩だろう。
 蓮とした話というのは、そんなことだったのかと、俺は少しがっかりした。
「圭吾に言っておいた方がいいって、蓮がいうからさ…。まあ、今人気の男性アイドルグループで、レギュラー番組、CM多数抱えてるらしいから、そんな変なことにはならないと思うんだけど。連絡あった?」
「ええ~と、明日会おう、ってなってる。」
「明日?!マジかよ!?」
 藤崎はコーヒーをまたズズズとすすると、コーヒーカップを静かに置いた。
「圭吾~!お前ガード緩すぎ!薬と犯罪には気を付けろよ、マジで!」
 勝手に携帯番号を教えておいてどの口が言うんだろうか?でもいきなり会うのはやっぱり軽率だったかもと、少し後悔した。
 しかし、電話口のYBIのマコトは「仕事の事で相談がある」と切羽詰まっていたのだ。マコトの今の仕事といえば、蓮とのドラマ。ひょっとして蓮と何かトラブルにでもなっているのかもしれないと心配になって、明日会うことになったのだが…。
 藤崎が「薬」なんていうから、怖くなってしまったじゃないか…。




 YBIのマコトと待ち合わせたのは、クラブのVIPルームではなく、オシャレな美容室だった。夜に呼び出されてビクビクしていたのが、バカみたいに明るくて雰囲気のいい店だった。

 その美容室は閉店後だと言うのに、ほぼ全員くらいスタッフらしき人達が大勢残っていた。そのオシャレな美男美女の中にいても、YBIのマコトという人物は流石アイドルと言うだけあって、一際輝いていた。冴えない普段着姿の俺を見ても動じることなく、マコトは俺を笑顔で出迎えた。
 
「俺ね、圭吾くんのことずっともったいないな、って思ってて」
   俺は首を傾げた。この人と、知り合った記憶がないのだ。俺が不思議に思ったのを察したらしいマコトはぷっと吹き出した。
「大阪のラジオ局主催のライブで一緒になって、挨拶もしたよね…?」
 あ、あの時の…?!あの時は美咲の事で色々あって、いつも以上に上の空だったんだよな…。

「全然覚えてないんだ…?なんか圭吾くんらしいや。その時から考えてたんだけど、俺に圭吾くんをプロデュースさせてほしいんだけど」
「プロデュース…?」
「うん。俺、他人をプロデュースするのちょっと自信があって。今日はとりあえず髪型だけ…!大丈夫、ここのスタッフの腕は俺が保証する!」

  つまり、髪を切らせてほしいと言うこと…?それを『プロデュース』なんて、大袈裟じゃないか?今まで髪は蓮に任せていたけど、連絡が途絶えてからはほったらかしで伸び放題の酷い有様になっていた。そろそろ髪は切らなきゃなと思っていたし、一般人になるには髪色も明るすぎるから、髪を切ってくれるというのは有難い申し出だった。

「落ち着いた感じにして貰えるなら…」
「分かった!任せて!」

   俺がスタイリングチェアに座ると、マコトは美容師らしき男性に色々と指示を出した。マコト自身は、ちょっと高そうなカメラを構えている。写真のシャッター音はしないから、動画をとっているのかも…。

 髪を切るためにメガネを外すと、俺はほぼ何も見えない。だからちょっと油断していた。出来上がった髪型を見て驚愕…!

「短っ…!」
「いや、これでもちょっと長いくらいだよ!これねえ、ハーフアップバングって言うの、知ってる?」
「全然…。なにそれ?」
「前髪を目と目の幅だけ立ち上げて横に流すスタイルだよ。韓流アイドルがやってすごい流行ったんだけど。やっぱり似合う!」
「韓流アイドル…?」
 俺はただただポカン、とした。それより、全体的に髪が短いし、おでこ全開…!こんなにさっぱりしたの、いつぶりだろう。もう全然思い出せない。俺はかなり狼狽えた。

「あと、服も着替えちゃお!圭吾くんは蓮くんみたいなミュージシャンぽくない格好の方がいいと思う。オーバーサイズで今っぽくしよう」
   戸惑う俺の服を剥ぎ取り、マコトは用意していたらしい服を俺に着せた。
「いいね!めちゃくちゃいいよ、圭吾くん!想像以上だ!この動画、アップしていい?」

 興奮しているマコトに若干引きながらも、「マネージャーに確認しないと…」と何とか一言だけ搾り出した。
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