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二章 RELAY~ソロ活動編
20.前乗り
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RELAYの活動は順調に進んでいったと思う。評判が評判を呼んで次第に大きなハコで演奏するようになって、音楽関係者の目に止まり、インディーズを経て大学在学中にメジャーデビュー。メジャーデビュー後も順調だった。ドラマやアニメ、CMとのタイアップがあって曲はヒット…。
蓮は作詞作曲、ボーカルギターで更にイケメン。俳優デビューの噂も出るほどだった。他のメンバーも基本、音大出身で演奏は上手い。だからファンの間では度々、あの問題が議論されていた。
「圭吾ってベース弾きながら歌えないんだって。蓮は度々歌わせようとしたらしいんだけど、出来なかったらしいよ」
「ベースも下手だよね?でもってコーラスも出来ないとか」
「編曲『RELAY』ってなってるけど、圭吾ほぼ入ってないらしい。あいつなにやってんのマジで」
「ビジュもパッとしないし、圭吾RELAYにいる?」
「………」
「だって、草ぁー!きゃはは!」
美咲は俺の背中にクリームを塗りながら笑っている。いや、笑い転げている。
「ネットの書き込みなんて、良いこと書からないもんだっていうじゃん」
「そんな事ないよ。蓮は評判良いんだから!」
そーですか…。俺は不貞腐れて施術台に頭を埋めた。
蓮の元カノ美咲は大学卒業後、バイトしていたエステ会社に就職した。気心知れてるから、俺はそのまま通って施術してもらっている。
「この間、『何言ってる、圭吾はRELAYのビジュ担当だぞ』って書き込んだら『本人乙』って燃えたのよ。だから『本人じゃねえ、彼女だわ』ってレスしといたから」
なんだそれ…。ネットって訳わかんないやり取りするなぁ。全然ついていけない…。美咲は何がおかしいか知らないが、まだ笑っている。
「ていうか圭吾!あんた一体どんな女と付き合ってんの?まだこの跡消えてないじゃん!」
「え?!」
「背中の噛み跡、痣になっちゃってる!」
それは、この間のライブ終わりに久しぶりに蓮とエッチした時の跡だ。最近、高校生の時みたいに盛って無いからか…ライブ終わりにしかしえっちをしなくなった。でもこの間はライブも最高に盛り上がったから興奮してたんだと思う。久しぶりに激しいのをした。俺も夢中すぎてそんな所噛まれてたなんて、全く気が付いていなかった。
「圭吾のこの噛み跡が嘘みたいに消える施術があるんだけどね、ここでは出来ないの。私、独立することにしたから、そっちでやってあげる」
「え、でもこの間、十回分の回数券買って…」
「だから二回は無料にしてあげるって!圭吾くんいちお、芸能人なんだから、こんなキスマ知らない人に晒すわけにはいかないでしょ?!」
「う。うん…」
「来月オープンだから、圭吾くん『RELAY』でお花出してよ」
「それは、マネージャーに…」
「じゃ、このキスマの歯形を鑑定して圭吾の彼女突き止めるから」
「そんな、無理だよ!」
ていうかそんな事出来るはずないと思うけど…。歯形から蓮ってバレたらファンは怒るよ。要らないはずの圭吾が蓮となんてさ…。
その日は花を出さない代わりに、十回分のチケットを買わされてその日は帰宅した。いつの間にか、二回無料がなかったことになっていた…。
****
「ねえねえ、ここにサインして?」
「え?!」
突然阿部マネージャーから謎の書類にサインを求められて俺は身構えた。その書類は『乙』だの『甲』だの書いてあって訳がわからないし、書類にサインをさせられて事態が好転した事がないのだから仕方がない。
「な、な、な、なに?!なんで?」
「最近インターネットの掲示板に有る事無い事書き込まれて、圭吾が炎上してるから、開示請求するのよ。これ同意書!」
炎上って、俺がRELAYで何も役に立っていないと言う、美咲が言ってたアレか?別に放っておけば良いのに…。
「蓮が圭吾はセンシティブだから、って」
「へー?」
「絶対違うよね?ていうかセンシティブ知らないでしょ?蓮って圭ちゃんのこと何だと思ってるんだろ…?」
阿部マネージャーは相当面倒だったらしく、俺がサインをするとさっさと行ってしまった。蓮が俺のことどう思ってるかなんて俺が一番知りたい…。
明後日、ラジオ局主催のフェスが大阪で開かれる。明日は移動日で、その前に都内のスタジオで簡単な打ち合わせ兼リハーサルをすることになっていた。そのためにスタジオに来たのだが、俺だけ集合時間を早く言われていたらしい。あっという間にサインをしたので、リハーサルが始まるまでの間、手持ち無沙汰になってしまった。
練習しようかな、と思ったらポケットの中のスマートフォンが音を立てて震えた。メッセージアプリの通知音だ。
「『自分だけ彼女できてずるい。私にもIT社長を紹介して』…?」
俺の彼女…?そんなのいないよ?超イケメンの男のセフレならいるけど。て言うか誰だ…?スマートフォンの機種を変えたら、連絡先が消えてしまったのだ。わからなくても不自由がないからそのままにしていた。
「えーと、『IT社長の知り合いはいません』っと…」
とりあえずよくわからないので、丁寧に返信した。嘘はついていないから、大丈夫だろう。
「何やってんの…?」
「え…?」
低い声にドキリとして振り向いたら、不機嫌そうなイケメンが背後にいた。い、いつの間に!?
「蓮?!」
「友達登録してない奴に返信するって、ヤバくない?」
信じられない、詐欺だったらどうするんだと蓮は俺を非難する。
「でも知ってる人っぽかったから…」
「それって、そのメッセージ内容が本当だってこと?」
「内容?」
それは俺の彼女と、IT社長、どっちのこと?俺が首を傾げると、蓮はため息をついて俺に背を向けた。
何だか空気が重い…。
その空気が変わらないまま、俺たちはリハーサルを終えた。
「明日は18:00に品川に集合してください。圭吾、聞いてる?」
「うん…」
阿部マネージャーの質問に上の空で答えながら、俺はスマホに入れたスケジュールを見ていた。今日の夜から明日の18:00までは何もスケジュールが入っていない。それだったら明日朝早く出掛ければあそこに行けるかもしれない。俺、行ったことないんだよなー。
「いきたいなー、UFJ」
「銀行に用事?」
「……」
阿部マネージャーに冷たく突っ込まれ、俺は赤面した。
違う、銀行に用事はない!『ユニバーサルスタジオ』だから真ん中がSだった!は、恥ずかしい~!
でもコレってよくある間違いだよな…。メンバーはみんな、さっきの重い空気のまま下を向いている。
耐えられなくなって俺は、帰る準備を始めた。「お疲れ様でした」と、挨拶して席を立つ。
部屋を出たところで、蓮が追いかけてきた。
「圭吾、行くぞ」
「え?どこに?」
「銀行」
「へ?!」
俺たちはそのまま、新幹線に飛び乗った。
蓮は作詞作曲、ボーカルギターで更にイケメン。俳優デビューの噂も出るほどだった。他のメンバーも基本、音大出身で演奏は上手い。だからファンの間では度々、あの問題が議論されていた。
「圭吾ってベース弾きながら歌えないんだって。蓮は度々歌わせようとしたらしいんだけど、出来なかったらしいよ」
「ベースも下手だよね?でもってコーラスも出来ないとか」
「編曲『RELAY』ってなってるけど、圭吾ほぼ入ってないらしい。あいつなにやってんのマジで」
「ビジュもパッとしないし、圭吾RELAYにいる?」
「………」
「だって、草ぁー!きゃはは!」
美咲は俺の背中にクリームを塗りながら笑っている。いや、笑い転げている。
「ネットの書き込みなんて、良いこと書からないもんだっていうじゃん」
「そんな事ないよ。蓮は評判良いんだから!」
そーですか…。俺は不貞腐れて施術台に頭を埋めた。
蓮の元カノ美咲は大学卒業後、バイトしていたエステ会社に就職した。気心知れてるから、俺はそのまま通って施術してもらっている。
「この間、『何言ってる、圭吾はRELAYのビジュ担当だぞ』って書き込んだら『本人乙』って燃えたのよ。だから『本人じゃねえ、彼女だわ』ってレスしといたから」
なんだそれ…。ネットって訳わかんないやり取りするなぁ。全然ついていけない…。美咲は何がおかしいか知らないが、まだ笑っている。
「ていうか圭吾!あんた一体どんな女と付き合ってんの?まだこの跡消えてないじゃん!」
「え?!」
「背中の噛み跡、痣になっちゃってる!」
それは、この間のライブ終わりに久しぶりに蓮とエッチした時の跡だ。最近、高校生の時みたいに盛って無いからか…ライブ終わりにしかしえっちをしなくなった。でもこの間はライブも最高に盛り上がったから興奮してたんだと思う。久しぶりに激しいのをした。俺も夢中すぎてそんな所噛まれてたなんて、全く気が付いていなかった。
「圭吾のこの噛み跡が嘘みたいに消える施術があるんだけどね、ここでは出来ないの。私、独立することにしたから、そっちでやってあげる」
「え、でもこの間、十回分の回数券買って…」
「だから二回は無料にしてあげるって!圭吾くんいちお、芸能人なんだから、こんなキスマ知らない人に晒すわけにはいかないでしょ?!」
「う。うん…」
「来月オープンだから、圭吾くん『RELAY』でお花出してよ」
「それは、マネージャーに…」
「じゃ、このキスマの歯形を鑑定して圭吾の彼女突き止めるから」
「そんな、無理だよ!」
ていうかそんな事出来るはずないと思うけど…。歯形から蓮ってバレたらファンは怒るよ。要らないはずの圭吾が蓮となんてさ…。
その日は花を出さない代わりに、十回分のチケットを買わされてその日は帰宅した。いつの間にか、二回無料がなかったことになっていた…。
****
「ねえねえ、ここにサインして?」
「え?!」
突然阿部マネージャーから謎の書類にサインを求められて俺は身構えた。その書類は『乙』だの『甲』だの書いてあって訳がわからないし、書類にサインをさせられて事態が好転した事がないのだから仕方がない。
「な、な、な、なに?!なんで?」
「最近インターネットの掲示板に有る事無い事書き込まれて、圭吾が炎上してるから、開示請求するのよ。これ同意書!」
炎上って、俺がRELAYで何も役に立っていないと言う、美咲が言ってたアレか?別に放っておけば良いのに…。
「蓮が圭吾はセンシティブだから、って」
「へー?」
「絶対違うよね?ていうかセンシティブ知らないでしょ?蓮って圭ちゃんのこと何だと思ってるんだろ…?」
阿部マネージャーは相当面倒だったらしく、俺がサインをするとさっさと行ってしまった。蓮が俺のことどう思ってるかなんて俺が一番知りたい…。
明後日、ラジオ局主催のフェスが大阪で開かれる。明日は移動日で、その前に都内のスタジオで簡単な打ち合わせ兼リハーサルをすることになっていた。そのためにスタジオに来たのだが、俺だけ集合時間を早く言われていたらしい。あっという間にサインをしたので、リハーサルが始まるまでの間、手持ち無沙汰になってしまった。
練習しようかな、と思ったらポケットの中のスマートフォンが音を立てて震えた。メッセージアプリの通知音だ。
「『自分だけ彼女できてずるい。私にもIT社長を紹介して』…?」
俺の彼女…?そんなのいないよ?超イケメンの男のセフレならいるけど。て言うか誰だ…?スマートフォンの機種を変えたら、連絡先が消えてしまったのだ。わからなくても不自由がないからそのままにしていた。
「えーと、『IT社長の知り合いはいません』っと…」
とりあえずよくわからないので、丁寧に返信した。嘘はついていないから、大丈夫だろう。
「何やってんの…?」
「え…?」
低い声にドキリとして振り向いたら、不機嫌そうなイケメンが背後にいた。い、いつの間に!?
「蓮?!」
「友達登録してない奴に返信するって、ヤバくない?」
信じられない、詐欺だったらどうするんだと蓮は俺を非難する。
「でも知ってる人っぽかったから…」
「それって、そのメッセージ内容が本当だってこと?」
「内容?」
それは俺の彼女と、IT社長、どっちのこと?俺が首を傾げると、蓮はため息をついて俺に背を向けた。
何だか空気が重い…。
その空気が変わらないまま、俺たちはリハーサルを終えた。
「明日は18:00に品川に集合してください。圭吾、聞いてる?」
「うん…」
阿部マネージャーの質問に上の空で答えながら、俺はスマホに入れたスケジュールを見ていた。今日の夜から明日の18:00までは何もスケジュールが入っていない。それだったら明日朝早く出掛ければあそこに行けるかもしれない。俺、行ったことないんだよなー。
「いきたいなー、UFJ」
「銀行に用事?」
「……」
阿部マネージャーに冷たく突っ込まれ、俺は赤面した。
違う、銀行に用事はない!『ユニバーサルスタジオ』だから真ん中がSだった!は、恥ずかしい~!
でもコレってよくある間違いだよな…。メンバーはみんな、さっきの重い空気のまま下を向いている。
耐えられなくなって俺は、帰る準備を始めた。「お疲れ様でした」と、挨拶して席を立つ。
部屋を出たところで、蓮が追いかけてきた。
「圭吾、行くぞ」
「え?どこに?」
「銀行」
「へ?!」
俺たちはそのまま、新幹線に飛び乗った。
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