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二章 RELAY~ソロ活動編
19.RELAY結成!
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大学に進学してまもなく、蓮は同じ大学の同級生達と新しいバンドを組んだ。みんな音大のロックポップスコースを選択するくらいだから、プロ志望らしい。
その頃俺はもう、蓮から一緒にバンドをやろうと誘われたことはすっかり忘れていた。蓮の家に行くとギターの練習なんか忘れてえっちなことばっかりしていたからだ。
「圭吾くん、こっちこっち!」
ゴールデンウイークも終わり、大学生活にも慣れた六月下旬。大学のキャンパスで俺を呼び止めたのは、美咲だった。なんと美咲と俺は同じ大学に通っていた。
「圭吾くん、これ私のバイト先のエステのサンプルなんだけど、ほしい?」
「いや、いらな…」
「ほしいでしょ?!ここにサインして!」
「え、や…」
「大丈夫、あやしくない、あやしくない♡」
あやしくないって、本当に……?
最後はバイト先でノルマがあるとほぼ泣き落しで強引にサインさせられてしまった。思えばそれが間違いの始まりだった。
「ふぁぁぁぁ!!」
うっかりサインしたのはエステの体験コース申し込みだった。俺は美咲のバイト先のエステで、お姉さんたちにありとあらゆる施術を試されてしまい……蓮のおかげで童貞の俺は阿鼻叫喚!
「今は男も清潔感が重要だし、圭吾くんみたいな子は絶対、肌磨くべき!アイドルデビューも夢じゃないと思うよ?!このコース今だけお得で、分割払いなら月々、お小遣いから支払えるよ?」
アイドル云々は営業トークだろうけど、俺は蓮に抱かれる側だから『清潔感』は確かに大事だと思った。そんなこんなでついうっかり、分割での申し込み契約にサインしてしまったのだ。
月二万円の十回払い。俺は支払いのため、アルバイトを始めた。アルバイト先は…、前からバイトするならここしかないと考えていた、駅前のコンビニ。
「圭吾じゃん!久しぶりー!ここで働いてるの?」
「因幡さん…!そう、今週から働いてるんだ」
蓮が買い物にくるはずだから、趣味と実益をかねて始めたアルバイトだったがなんと一番初めに遭遇したのは因幡だった。因幡は大学生になってメガネをやめ、すっかりおしゃれになっている。
「ね、バイト何時まで?一緒に帰らない?今日遅くなっちゃって暗くて怖いからさ…」
「いいけど…」
久しぶりに因幡を家まで送るまでの間、因幡は蓮の現在について探りを入れてきた。そっか。真の目的はそれだな…?
しかし俺の方が断然情報が少ない。逆に、因幡から蓮が新しいバンドで今度大学で催されるライブに出演するという情報を貰った。一年生からそのライブに出演出来るというのはなかなか凄い事らしい。
「新しいバンドのベースがすっごい可愛い子なんだって。それが蓮の新しい彼女っていう噂なの」
「へ、へ~…」
しかも、とんでもない爆弾付き!
ずっと、『俺たち付き合ってる?』って聞けないまま身体の関係を続けてきた……、そうこうしているうちに、蓮にはまた彼女が出来てしまったようだ。
俺は倒れそうになりながら、何とか因幡を送り届け家まで帰った。
でも相変わらず、蓮はおはようからおやすみまでメッセージをくれるし、駅で会えば一緒に学校に行く。
因幡と遭遇した翌日もたまたま、駅で会ったので一緒に学校に向かった。
「昨日、因幡のこと家まで送った?」
「え…?あ~、コンビニで会ったんだ。それで…」
「ふーーん……」
自分の元カノが、俺と会うのは気分がよくないんだろう。蓮は目を細めて不機嫌そうに俺を睨んだ。
「バイトも始めたって聞いた。バイトするなら、俺と同じ所にすればいいのに…。何で何にも言わないわけ?」
「何でって…」
コンビニなら蓮に会えると思ってはじめたなんて、彼女持ちの男にセフレがそんなこと言ってもきっと、嫌な顔されるだけじゃないか?だから俺は押し黙った。
蓮の大学は俺の大学より手前の駅にある。俺が黙っている間に、蓮は電車を降りて行ってしまった。ーーなんか、因幡が絡むと俺たちは雰囲気が悪くなる気がする…。それってまだ蓮が因幡に気があるってこと?
電車を降りた蓮からは『今日家にきて』というメッセージが来た。
バイトが終わったら行くと返信したら、バイトが終わる時間に蓮がコンビニまで迎えにきた。蓮はお菓子や飲み物を手に取って俺のレジの列に並ぶ。
蓮の持ってきた商品のバーコードをピッとスキャンして会計をしてから袋に入れた商品を手渡す。知り合い相手だとちょっと恥ずかしいけど、蓮が相手だと嬉しさが勝つ。
「ありがとうございます」
「圭吾って、いつもそんな接客してんの?そんなコンビニ店員いないよ?もっとそっけなくして?」
蓮向けの接客だったが、不評だった。ちょっと愛想が良すぎて不気味だった…?
蓮の家に行っても、珍しく蓮はえっちなことをしなかった。蓮は少し真剣な顔で俺を見つめる。
「圭吾、ベースやらない?」
「ベース?」
「そう、ベース。実はバンドでベースやってた奴が辞めちゃって、困ってるんだ。今度、学内のライブに出る予定もあって」
「え…?」
蓮の彼女って噂の、かわいいベースが辞めた?!俺は思わず頬が緩んだ。
「良かった~!」
「良かった、って何?圭吾が『バンドに入りたいと思っててポジションが空いて良かった』ってこと?」
俺が思わず口走った言葉に蓮は食いついてきた。誤解だ、と言おうとしたけど説明と言い訳が難しい。しかも蓮は目を輝かせている!
「俺も圭吾とずっとバンドやりたいって思ってた。俺、圭吾の曲のファンだから」
俺の曲ってあの、アニメの二次創作の鼻歌のこと?あんなの覚えててくれたんだ…?
俺は戸惑った。でも、蓮と同じバンドメンバーになれば、もっと一緒に居られるし、また新しい可愛い子が入って蓮に彼女ができることも防げるかもしれない…。
この時の俺は蓮にキラキラとした瞳で見つめられ、下心もあいまって自分がベースに向いているかという冷静な判断が出来なかった。エステの分割契約にサインをした時の数倍、冷静さを欠いていた。
「やってみる」
そう言ったことを、後々後悔することになるとは、この時は夢にも思っていなかった。
ベースはギターより少し大きくて、弦は四本。ギターより弦が少ないから、ギターより簡単なんじゃないかと思ったが、難しくない代わりに正確性が求められる。そう考えるとむしろ難しいのかも知れない…。
「ライブは夏休み明け、前期が終了する9月末だから二ヶ月後」
「二ヶ月…?!」
早速、蓮と練習を始めた。その日からえっちを断ち、練習に継ぐ練習がスタートした。
ベースは蓮に借りて一緒に練習していたが、家で自主練習しないと間に合わないと悟った俺は親に前借りして自分でベースとアンプを購入した。エステにベースにアンプ…。借金に加えて練習漬けの日々に俺は消耗した。家にいる間はほぼ練習。バイトもあるし、睡眠時間を削ってやるしかなかった。
一ヶ月で何とか一曲弾けるようになったが、ライブでは二曲やるらしい。しかもただ弾けるだけじゃダメ。音を安定させないと…!
蓮の大学で他のメンバーと顔合わせと練習が行われた。当然、みんな音大生。俺以外はみんな上手い。他の二人の顔を見れば俺に呆れているのは明らかだった。
蓮を呼び出した二人が、蓮に抗議しているのを俺はこっそり隠れて聞いてしまった。
「陽菜ちゃんの代わりが務まるとは思えないけど…」
「そうだよ、なんか鈍臭いし。陽菜ちゃんはさ…」
「大丈夫だよ、圭吾以上のやつはいない」
二人は蓮の熱意に負けて押し黙った。
蓮、その自信は一体どこからきた…?
そこまで言われたら、やるしか無いじゃないか…!
ライブが近づいて来ると、メンバーからのダメ出しも増えていった。俺は取り敢えず言われた事をメモして持って帰って練習する日々。泣きそうだった。
しかもライブ前に運悪く、『悪役令息、皇帝になる 劇場版』が公開された。俺の好きなキャラのメルリが活躍する回で、すごく楽しみにしていたのに行けなかった。蓮も練習に付き合ってくれたけど、本当に練習だけ。癒しも何にもない。
俺はたった二ヶ月なのに、病みそうだった。
ついに迎えたライブ当日。ライブは蓮の大学のイベントステージで行われ、同じく大学内のバンドが五組くらい出演するらしい。会場の観客席もたぶん同じ大学の学生達で賑わっている。
俺はとんでもないアウェー感に襲われていた。
しかも連日の深夜までの自主練習で、満身創痍。早く終わらせて解放されたかった。俺は心に決めていた。これが終わったら、辞めるって言おうと。だってやればやるほど演奏の難しさを実感する…!蓮の期待に答えるほどの自信がなかった。
順番が来てステージの上に立った俺は、ベースの太い弦を思いっきり弾いた。ステージ上に響く低音は、身体の芯を痺れさせる。会場の歓声と共に曲の進行に合わせてリズムをコントロールすると、ギターとボーカルを支えている実感生まれた。
俺の演奏で蓮が歌っている。その高揚感…!
蓮はステージ上から見ても、一際輝いていた。その蓮が、俺の音で歌っている!
もっと一緒に、演奏したい。俺の演奏に合わせてギターを弾いて歌ってほしい。
そしてそれを、一番近くで見ていたい。
蓮がどう感じたかは分からなかったが、演奏が終わると興奮した蓮が俺に抱きついてきた。
「圭吾!めちゃくちゃ良かった!やっぱ圭吾は才能ある!!」
蓮は今までにないくらい、目が霞むくらいに俺に微笑みかけた。ああ、そうだった。俺は蓮に微笑まれると、ノーと言えない病を患ってる。あれだけ辞めると決めていたのに、それを簡単に覆した。
俺たちはライブの後、蓮の家に帰って激しく抱き合った。その日のえっちはすごかった。禁欲と、ライブの興奮でアドレナリンが大放出され、過去一番の回数を記録……。あと、エステの効果もちょっとあったと思う。俺は美咲に少しだけ感謝した。
それ以降、ライブが跳ねると蓮に抱かれるのが暗黙のルールになった。
初ライブ終了後、俺は蓮のバンドに正式に加入することになった。バンド名はまだ仮、の状態だったが、俺の加入に合わせて改めて「RELAY」に決まった。
その頃俺はもう、蓮から一緒にバンドをやろうと誘われたことはすっかり忘れていた。蓮の家に行くとギターの練習なんか忘れてえっちなことばっかりしていたからだ。
「圭吾くん、こっちこっち!」
ゴールデンウイークも終わり、大学生活にも慣れた六月下旬。大学のキャンパスで俺を呼び止めたのは、美咲だった。なんと美咲と俺は同じ大学に通っていた。
「圭吾くん、これ私のバイト先のエステのサンプルなんだけど、ほしい?」
「いや、いらな…」
「ほしいでしょ?!ここにサインして!」
「え、や…」
「大丈夫、あやしくない、あやしくない♡」
あやしくないって、本当に……?
最後はバイト先でノルマがあるとほぼ泣き落しで強引にサインさせられてしまった。思えばそれが間違いの始まりだった。
「ふぁぁぁぁ!!」
うっかりサインしたのはエステの体験コース申し込みだった。俺は美咲のバイト先のエステで、お姉さんたちにありとあらゆる施術を試されてしまい……蓮のおかげで童貞の俺は阿鼻叫喚!
「今は男も清潔感が重要だし、圭吾くんみたいな子は絶対、肌磨くべき!アイドルデビューも夢じゃないと思うよ?!このコース今だけお得で、分割払いなら月々、お小遣いから支払えるよ?」
アイドル云々は営業トークだろうけど、俺は蓮に抱かれる側だから『清潔感』は確かに大事だと思った。そんなこんなでついうっかり、分割での申し込み契約にサインしてしまったのだ。
月二万円の十回払い。俺は支払いのため、アルバイトを始めた。アルバイト先は…、前からバイトするならここしかないと考えていた、駅前のコンビニ。
「圭吾じゃん!久しぶりー!ここで働いてるの?」
「因幡さん…!そう、今週から働いてるんだ」
蓮が買い物にくるはずだから、趣味と実益をかねて始めたアルバイトだったがなんと一番初めに遭遇したのは因幡だった。因幡は大学生になってメガネをやめ、すっかりおしゃれになっている。
「ね、バイト何時まで?一緒に帰らない?今日遅くなっちゃって暗くて怖いからさ…」
「いいけど…」
久しぶりに因幡を家まで送るまでの間、因幡は蓮の現在について探りを入れてきた。そっか。真の目的はそれだな…?
しかし俺の方が断然情報が少ない。逆に、因幡から蓮が新しいバンドで今度大学で催されるライブに出演するという情報を貰った。一年生からそのライブに出演出来るというのはなかなか凄い事らしい。
「新しいバンドのベースがすっごい可愛い子なんだって。それが蓮の新しい彼女っていう噂なの」
「へ、へ~…」
しかも、とんでもない爆弾付き!
ずっと、『俺たち付き合ってる?』って聞けないまま身体の関係を続けてきた……、そうこうしているうちに、蓮にはまた彼女が出来てしまったようだ。
俺は倒れそうになりながら、何とか因幡を送り届け家まで帰った。
でも相変わらず、蓮はおはようからおやすみまでメッセージをくれるし、駅で会えば一緒に学校に行く。
因幡と遭遇した翌日もたまたま、駅で会ったので一緒に学校に向かった。
「昨日、因幡のこと家まで送った?」
「え…?あ~、コンビニで会ったんだ。それで…」
「ふーーん……」
自分の元カノが、俺と会うのは気分がよくないんだろう。蓮は目を細めて不機嫌そうに俺を睨んだ。
「バイトも始めたって聞いた。バイトするなら、俺と同じ所にすればいいのに…。何で何にも言わないわけ?」
「何でって…」
コンビニなら蓮に会えると思ってはじめたなんて、彼女持ちの男にセフレがそんなこと言ってもきっと、嫌な顔されるだけじゃないか?だから俺は押し黙った。
蓮の大学は俺の大学より手前の駅にある。俺が黙っている間に、蓮は電車を降りて行ってしまった。ーーなんか、因幡が絡むと俺たちは雰囲気が悪くなる気がする…。それってまだ蓮が因幡に気があるってこと?
電車を降りた蓮からは『今日家にきて』というメッセージが来た。
バイトが終わったら行くと返信したら、バイトが終わる時間に蓮がコンビニまで迎えにきた。蓮はお菓子や飲み物を手に取って俺のレジの列に並ぶ。
蓮の持ってきた商品のバーコードをピッとスキャンして会計をしてから袋に入れた商品を手渡す。知り合い相手だとちょっと恥ずかしいけど、蓮が相手だと嬉しさが勝つ。
「ありがとうございます」
「圭吾って、いつもそんな接客してんの?そんなコンビニ店員いないよ?もっとそっけなくして?」
蓮向けの接客だったが、不評だった。ちょっと愛想が良すぎて不気味だった…?
蓮の家に行っても、珍しく蓮はえっちなことをしなかった。蓮は少し真剣な顔で俺を見つめる。
「圭吾、ベースやらない?」
「ベース?」
「そう、ベース。実はバンドでベースやってた奴が辞めちゃって、困ってるんだ。今度、学内のライブに出る予定もあって」
「え…?」
蓮の彼女って噂の、かわいいベースが辞めた?!俺は思わず頬が緩んだ。
「良かった~!」
「良かった、って何?圭吾が『バンドに入りたいと思っててポジションが空いて良かった』ってこと?」
俺が思わず口走った言葉に蓮は食いついてきた。誤解だ、と言おうとしたけど説明と言い訳が難しい。しかも蓮は目を輝かせている!
「俺も圭吾とずっとバンドやりたいって思ってた。俺、圭吾の曲のファンだから」
俺の曲ってあの、アニメの二次創作の鼻歌のこと?あんなの覚えててくれたんだ…?
俺は戸惑った。でも、蓮と同じバンドメンバーになれば、もっと一緒に居られるし、また新しい可愛い子が入って蓮に彼女ができることも防げるかもしれない…。
この時の俺は蓮にキラキラとした瞳で見つめられ、下心もあいまって自分がベースに向いているかという冷静な判断が出来なかった。エステの分割契約にサインをした時の数倍、冷静さを欠いていた。
「やってみる」
そう言ったことを、後々後悔することになるとは、この時は夢にも思っていなかった。
ベースはギターより少し大きくて、弦は四本。ギターより弦が少ないから、ギターより簡単なんじゃないかと思ったが、難しくない代わりに正確性が求められる。そう考えるとむしろ難しいのかも知れない…。
「ライブは夏休み明け、前期が終了する9月末だから二ヶ月後」
「二ヶ月…?!」
早速、蓮と練習を始めた。その日からえっちを断ち、練習に継ぐ練習がスタートした。
ベースは蓮に借りて一緒に練習していたが、家で自主練習しないと間に合わないと悟った俺は親に前借りして自分でベースとアンプを購入した。エステにベースにアンプ…。借金に加えて練習漬けの日々に俺は消耗した。家にいる間はほぼ練習。バイトもあるし、睡眠時間を削ってやるしかなかった。
一ヶ月で何とか一曲弾けるようになったが、ライブでは二曲やるらしい。しかもただ弾けるだけじゃダメ。音を安定させないと…!
蓮の大学で他のメンバーと顔合わせと練習が行われた。当然、みんな音大生。俺以外はみんな上手い。他の二人の顔を見れば俺に呆れているのは明らかだった。
蓮を呼び出した二人が、蓮に抗議しているのを俺はこっそり隠れて聞いてしまった。
「陽菜ちゃんの代わりが務まるとは思えないけど…」
「そうだよ、なんか鈍臭いし。陽菜ちゃんはさ…」
「大丈夫だよ、圭吾以上のやつはいない」
二人は蓮の熱意に負けて押し黙った。
蓮、その自信は一体どこからきた…?
そこまで言われたら、やるしか無いじゃないか…!
ライブが近づいて来ると、メンバーからのダメ出しも増えていった。俺は取り敢えず言われた事をメモして持って帰って練習する日々。泣きそうだった。
しかもライブ前に運悪く、『悪役令息、皇帝になる 劇場版』が公開された。俺の好きなキャラのメルリが活躍する回で、すごく楽しみにしていたのに行けなかった。蓮も練習に付き合ってくれたけど、本当に練習だけ。癒しも何にもない。
俺はたった二ヶ月なのに、病みそうだった。
ついに迎えたライブ当日。ライブは蓮の大学のイベントステージで行われ、同じく大学内のバンドが五組くらい出演するらしい。会場の観客席もたぶん同じ大学の学生達で賑わっている。
俺はとんでもないアウェー感に襲われていた。
しかも連日の深夜までの自主練習で、満身創痍。早く終わらせて解放されたかった。俺は心に決めていた。これが終わったら、辞めるって言おうと。だってやればやるほど演奏の難しさを実感する…!蓮の期待に答えるほどの自信がなかった。
順番が来てステージの上に立った俺は、ベースの太い弦を思いっきり弾いた。ステージ上に響く低音は、身体の芯を痺れさせる。会場の歓声と共に曲の進行に合わせてリズムをコントロールすると、ギターとボーカルを支えている実感生まれた。
俺の演奏で蓮が歌っている。その高揚感…!
蓮はステージ上から見ても、一際輝いていた。その蓮が、俺の音で歌っている!
もっと一緒に、演奏したい。俺の演奏に合わせてギターを弾いて歌ってほしい。
そしてそれを、一番近くで見ていたい。
蓮がどう感じたかは分からなかったが、演奏が終わると興奮した蓮が俺に抱きついてきた。
「圭吾!めちゃくちゃ良かった!やっぱ圭吾は才能ある!!」
蓮は今までにないくらい、目が霞むくらいに俺に微笑みかけた。ああ、そうだった。俺は蓮に微笑まれると、ノーと言えない病を患ってる。あれだけ辞めると決めていたのに、それを簡単に覆した。
俺たちはライブの後、蓮の家に帰って激しく抱き合った。その日のえっちはすごかった。禁欲と、ライブの興奮でアドレナリンが大放出され、過去一番の回数を記録……。あと、エステの効果もちょっとあったと思う。俺は美咲に少しだけ感謝した。
それ以降、ライブが跳ねると蓮に抱かれるのが暗黙のルールになった。
初ライブ終了後、俺は蓮のバンドに正式に加入することになった。バンド名はまだ仮、の状態だったが、俺の加入に合わせて改めて「RELAY」に決まった。
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感想などいただけたら嬉しいです!↓マコトくんが所属するYBIの連載を開始しましたYour Best idol
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