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9.その結婚、ちょっと待った!
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結婚式当日、俺はルシアンが用意した衣装を着た。純白に金の刺繍が施されたテールコート、レース飾りがふんだんについたシャツにトラウザーズ。あまりの美しい衣装に、袖を通すことを躊躇った。
特にレースは素晴らしかった。着付けを担当してくれた召使も、その美しさを褒め称えた。
「本当に美しいレースだわ。ルシアン閣下の情熱の賜物ですわね!まさかご自分で、レースを作ってしまうなんて…!」
そうなのだ。王都とは違い、レース編みを出来るものがこの領に居らず…。ついにルシアン自ら、心眼の力でレース編みを解読、無料でその技術を教えて広めたのだ。レースは高級品のため、内職として領内で瞬く間に広がった。今はデュラク領の隠れた名産品である。
ルシアンの言う心眼なんて信じてなかったけど、本当なのかなぁ…?だとすると、ちょっと恥ずかしい。だって、今日は、その…。
「ジルベール様!そろそろ参りましょう!」
召使に声をかけられ、俺は教会の入り口へと向かった。扉の手前で、白い花のブーケを手渡される。
いよいよだ……。
教会の鐘の音と共に、扉が開いた。教会の中も外も、俺たちを祝う市民が大勢詰めかけて、花びらと拍手を雨のように降らせる。
身廊の先には……愛しい人。二年間ずっと待ち続けた、新郎姿のルシアン…。
本当は走って抱きつきたかったが、俺は一歩一歩、厳粛に歩を進めた。
あと、少し…。
その時、ルシアンの顔が一瞬曇り、口を開いて何か言おうとした。
ルシアンの声が俺に届く前に、何者かが背後から雪崩れ込んで来て俺にぶつかった。しかも、三度!
「「「その結婚ちょっと待った!!!!」」」
俺にぶつかった人たちはそう叫びながら、ルシアンの方へ走っていってしまった。俺はぶつかられた勢いで、その場に倒れ込む。
何とか起き上がって、その後ろ姿を確認すると、三人はよく見知った人物だった。
「アナスタシア様と、エリック殿下?!それにルドヴィック国王陛下!」
三人は俺のことを完全に無視して、ルシアンの元に駆け寄った。三人の中で一番早く辿り着いたアナスタシアは、ルシアンに縋りつく。
「ルシアン殿下!私はわかっておりました!これは初めから殿下の筋書きだったのでしょう?ルシアン殿下が王都を去り、ルドヴィック国王陛下とエリック殿下体制になった王都は不況に喘いでおります。対してデュラク領はルシアン殿下の力で見事、賑わいを取り戻している。そうして実力を示し、王太子…いえ、フランクール国王に即位する筋書きなのでしょう?!」
アナスタシアは目に涙を浮かべて「信じておりました。」と言った。
「ルシアン殿下、ですからもう罰で男と結婚する必要などありません!城へ戻って今すぐ私たちの結婚式をあげましょう!殿下のお帰りを皆、待っております!」
断罪当日は全然、ルシアンを信じているようには見えなかったアナスタシアだが…実は信じていたのだろうか?それともアナスタシアは変わり身の術の使い手だったりする…?
そんなアナスタシアを追いかけてきたらしいエリックは、アナスタシアの腕を掴んでルシアンから離そうとした。
「おいアナスタシア!お前は私と結婚すると言っただろうっ?!」
しかしアナスタシアはエリックの腕を振り払う。
「離してください。私は幼いころから『王太子』の妻として教育を受けておりますので。」
「な……っ!」
アナスタシアの冷たい物言いを聞いたエリックは、言葉を詰まらせてしまった。
「アナスタシアの言う通りだ!エリックに王太子は荷が重かった!ルシアン、戻ってこい!」
一番最後に到着したルドヴィック国王陛下も、エリックを無視してルシアンに猫撫で声で擦り寄った。それを見たエリックは肩を震わせながら叫ぶ。
「父上まで何です!?だいたい国庫の金が底をついたのは父上の無駄遣いが原因ではありませんかっ!」
「お前が上手くやりくりをせず、おかしな事業に次々と投資したからだろう!お前に任せたのが全ての間違いだったんだ!」
エリックとルドヴィックはお互い、お前のせいだと口汚く罵り合っている。その様子をちらりとだけ見るとアナスタシアはルシアンの腕に絡んで再び訴えた。
「ルシアン殿下!殿下はこの、無能な癖に殿下の執政に難癖をつけるこの者たちを黙らせるため、いわれなき罪を被りわざと断罪され…こちらで機会をうかがっておられたのでしょう?!」
アナスタシアが『この者たち』と指さしたのは、エリックとルドヴィック国王だった。エリックはともかく…国王陛下の呼び方、無礼すぎやしないだろうか…?!
「「おい、アナスタシア!あんまりじゃないか!」」
「これでも優しく言っております!」
アナスタシアとエリック、ルドヴィックの三人はついに、ルシアンの前で口論を始めてしまった。
エリック、ルドヴィックはともかく…アナスタシアの言い分には信憑性があった。金庫番の俺…財布の紐を絞める人間がいなくなり資金繰りが逼迫したところでルシアンがデュラク領を復興させれば、否が応でもルシアンへの期待は高まる。……ルシアンの本当の目的は、俺との結婚ではなく王政を奪取することにあったのだろうか……?だから二年間も、結婚しなかった?
俺は『そうだ』と言われるのが怖くて、ルシアンの表情を確認できなかった。
「アナスタシア、エリック、父上……。三人ともすまない。」
喧嘩を始めたアナスタシアとエリック、ルドヴィックに、ルシアンは静かに声を掛けた。
「そんな…謝らないでください!私は、分かっておりました!さあ、帰りましょう!」
「違うんだ。」
ルシアンはアナスタシアの言葉を制止するように、少し強い口調で言った。そして、腕に絡んで縋りついたアナスタシアを引き離す。
「アナスタシア…。本来ならエリックの謀などに乗らず、シモン公爵家に正式に婚約解消を申し入れ、謝罪するべきだった。私がお前を巻き込んでいらぬ苦労をさせてしまった。本当にすまない。」
ルシアンの真摯な謝罪にアナスタシアは「そんな…」と言った後、押し黙った。重い沈黙が流れる。
「私はずっと、ジルベールに恋していた。一度諦めかけたものの…、諦められなかった。俺はジルベールを愛している。王太子や国王なんかより、愛する者と暮らす道を選びたかったのだ。……すまない。」
ルシアンはアナスタシアに頭を下げた後、エリックとルドヴィックの方を向く。
「そういう訳だから、エリック、アナスタシアを頼む。父上……、もちろんフランクールのために、私に出来ることがあれば尽力いたします。」
ルシアンはそれだけ言うと、俺の方にゆっくり歩いて来た。
正装の、美しいルシアンにしばし見惚れ、ぼんやりとその姿を見ていた。
「ジルベール、愛している。初めから素直に求婚すれば良かったのに、正攻法で口説く勇気がなかったからこんな騒ぎになってしまった。私はそんな、情けない男だが…。」
「ルシアン閣下は情けないというより、思わせぶりで…振り回されました。これからはちゃんと、言葉にして欲しい。」
ルシアンは頷いて微笑むと、俺の手を引いて、身廊を歩いて行く。途中、アナスタシア達がへたり込んでいたが、俺たちは三人を素通りして祭壇へと向かった。
俺たちが素通りしたのを見たアナスタシアは立ち上がり、ルシアンに向かって金切声を上げる。
「ルシアン殿下!お待ちください!そんな身分も低く、可愛くもない男となんてっ!御子はどうするつもりです?!」
ルシアンはアナスタシアを振り返ると、ふふ、と笑った。
「婚約者の弟の甘言にすぐ靡くお前には分からないかもしれないが、騙されて職を失い二年も文句を言わずにほぼ無給で働き詰め…そんなドジで可愛らしい男だぞ、ジルベールは。ジルベールは淡白そうな顔をしているが恥ずかしがるとすぐ顔が赤くなって色白の頬がピンク色になる、そこがいやらしいくて実にかわいらしいのだが、恥ずかしがるジルベールを俺の膝に乗せると、男のくせにつるんとした少し小さい尻がこう…俺の膝にすっぽり収まり、つい私の息子がわがままを言うと『殿下のご長男は躾がなっていませんね』と私を叱るのだがそれがまた愛らしくもっと厳しい指導をお願いしたくな… 」
「ル…、ルシアン閣下っ!!最後完全にいやらしい内容にすり変わっております!」
「は…っ、すまない!ただお前が可愛いという説明をしようとすると、つい!」
三人は何か言いたげに口をぱくぱくさせていたが、俺たちは今度こそ三人を無視して祭壇の前までやって来た。
祭壇前の司祭は、用意していた二つの指輪を差し出す。それはルシアンが作った、赤い指輪…。俺たちの運命の赤い糸だ。指輪を受け取って、お互いの指に順番に嵌める。
「ジルベール、生涯お前を愛すると誓う。」
「ルシアン…俺も…、ルシアンを生涯、愛すると誓います。」
俺たちは抱き合って、誓いの口づけをした。今度は呪いではなく、歓喜の中で愛を誓うことができた。
「ああ……長かった!ようやく、契約を履行できる!」
「契約…って…!あっ、あれは、でも…!」
契約の内容を思い出して俺が赤くなり、首を振ると、ルシアンは少し怖い顔をした。
「ジル、お前……隙あれば契約違反を犯すつもりだな!?あー、危ないっ!やはり黒魔術をかけておいて正解だった!じらされること二年以上…。お前のその清純な正装姿にいたずらしていやらしい下着を着せたり脱がせたり濡らしたり破いて無理矢理中を覗いたりすることだけを励みに日々我慢してきたというのに!絶対に、逃がさない!」
ルシアンはそう言うと、花びらと歓声の中、俺を抱きかかえて、歩き出した。
特にレースは素晴らしかった。着付けを担当してくれた召使も、その美しさを褒め称えた。
「本当に美しいレースだわ。ルシアン閣下の情熱の賜物ですわね!まさかご自分で、レースを作ってしまうなんて…!」
そうなのだ。王都とは違い、レース編みを出来るものがこの領に居らず…。ついにルシアン自ら、心眼の力でレース編みを解読、無料でその技術を教えて広めたのだ。レースは高級品のため、内職として領内で瞬く間に広がった。今はデュラク領の隠れた名産品である。
ルシアンの言う心眼なんて信じてなかったけど、本当なのかなぁ…?だとすると、ちょっと恥ずかしい。だって、今日は、その…。
「ジルベール様!そろそろ参りましょう!」
召使に声をかけられ、俺は教会の入り口へと向かった。扉の手前で、白い花のブーケを手渡される。
いよいよだ……。
教会の鐘の音と共に、扉が開いた。教会の中も外も、俺たちを祝う市民が大勢詰めかけて、花びらと拍手を雨のように降らせる。
身廊の先には……愛しい人。二年間ずっと待ち続けた、新郎姿のルシアン…。
本当は走って抱きつきたかったが、俺は一歩一歩、厳粛に歩を進めた。
あと、少し…。
その時、ルシアンの顔が一瞬曇り、口を開いて何か言おうとした。
ルシアンの声が俺に届く前に、何者かが背後から雪崩れ込んで来て俺にぶつかった。しかも、三度!
「「「その結婚ちょっと待った!!!!」」」
俺にぶつかった人たちはそう叫びながら、ルシアンの方へ走っていってしまった。俺はぶつかられた勢いで、その場に倒れ込む。
何とか起き上がって、その後ろ姿を確認すると、三人はよく見知った人物だった。
「アナスタシア様と、エリック殿下?!それにルドヴィック国王陛下!」
三人は俺のことを完全に無視して、ルシアンの元に駆け寄った。三人の中で一番早く辿り着いたアナスタシアは、ルシアンに縋りつく。
「ルシアン殿下!私はわかっておりました!これは初めから殿下の筋書きだったのでしょう?ルシアン殿下が王都を去り、ルドヴィック国王陛下とエリック殿下体制になった王都は不況に喘いでおります。対してデュラク領はルシアン殿下の力で見事、賑わいを取り戻している。そうして実力を示し、王太子…いえ、フランクール国王に即位する筋書きなのでしょう?!」
アナスタシアは目に涙を浮かべて「信じておりました。」と言った。
「ルシアン殿下、ですからもう罰で男と結婚する必要などありません!城へ戻って今すぐ私たちの結婚式をあげましょう!殿下のお帰りを皆、待っております!」
断罪当日は全然、ルシアンを信じているようには見えなかったアナスタシアだが…実は信じていたのだろうか?それともアナスタシアは変わり身の術の使い手だったりする…?
そんなアナスタシアを追いかけてきたらしいエリックは、アナスタシアの腕を掴んでルシアンから離そうとした。
「おいアナスタシア!お前は私と結婚すると言っただろうっ?!」
しかしアナスタシアはエリックの腕を振り払う。
「離してください。私は幼いころから『王太子』の妻として教育を受けておりますので。」
「な……っ!」
アナスタシアの冷たい物言いを聞いたエリックは、言葉を詰まらせてしまった。
「アナスタシアの言う通りだ!エリックに王太子は荷が重かった!ルシアン、戻ってこい!」
一番最後に到着したルドヴィック国王陛下も、エリックを無視してルシアンに猫撫で声で擦り寄った。それを見たエリックは肩を震わせながら叫ぶ。
「父上まで何です!?だいたい国庫の金が底をついたのは父上の無駄遣いが原因ではありませんかっ!」
「お前が上手くやりくりをせず、おかしな事業に次々と投資したからだろう!お前に任せたのが全ての間違いだったんだ!」
エリックとルドヴィックはお互い、お前のせいだと口汚く罵り合っている。その様子をちらりとだけ見るとアナスタシアはルシアンの腕に絡んで再び訴えた。
「ルシアン殿下!殿下はこの、無能な癖に殿下の執政に難癖をつけるこの者たちを黙らせるため、いわれなき罪を被りわざと断罪され…こちらで機会をうかがっておられたのでしょう?!」
アナスタシアが『この者たち』と指さしたのは、エリックとルドヴィック国王だった。エリックはともかく…国王陛下の呼び方、無礼すぎやしないだろうか…?!
「「おい、アナスタシア!あんまりじゃないか!」」
「これでも優しく言っております!」
アナスタシアとエリック、ルドヴィックの三人はついに、ルシアンの前で口論を始めてしまった。
エリック、ルドヴィックはともかく…アナスタシアの言い分には信憑性があった。金庫番の俺…財布の紐を絞める人間がいなくなり資金繰りが逼迫したところでルシアンがデュラク領を復興させれば、否が応でもルシアンへの期待は高まる。……ルシアンの本当の目的は、俺との結婚ではなく王政を奪取することにあったのだろうか……?だから二年間も、結婚しなかった?
俺は『そうだ』と言われるのが怖くて、ルシアンの表情を確認できなかった。
「アナスタシア、エリック、父上……。三人ともすまない。」
喧嘩を始めたアナスタシアとエリック、ルドヴィックに、ルシアンは静かに声を掛けた。
「そんな…謝らないでください!私は、分かっておりました!さあ、帰りましょう!」
「違うんだ。」
ルシアンはアナスタシアの言葉を制止するように、少し強い口調で言った。そして、腕に絡んで縋りついたアナスタシアを引き離す。
「アナスタシア…。本来ならエリックの謀などに乗らず、シモン公爵家に正式に婚約解消を申し入れ、謝罪するべきだった。私がお前を巻き込んでいらぬ苦労をさせてしまった。本当にすまない。」
ルシアンの真摯な謝罪にアナスタシアは「そんな…」と言った後、押し黙った。重い沈黙が流れる。
「私はずっと、ジルベールに恋していた。一度諦めかけたものの…、諦められなかった。俺はジルベールを愛している。王太子や国王なんかより、愛する者と暮らす道を選びたかったのだ。……すまない。」
ルシアンはアナスタシアに頭を下げた後、エリックとルドヴィックの方を向く。
「そういう訳だから、エリック、アナスタシアを頼む。父上……、もちろんフランクールのために、私に出来ることがあれば尽力いたします。」
ルシアンはそれだけ言うと、俺の方にゆっくり歩いて来た。
正装の、美しいルシアンにしばし見惚れ、ぼんやりとその姿を見ていた。
「ジルベール、愛している。初めから素直に求婚すれば良かったのに、正攻法で口説く勇気がなかったからこんな騒ぎになってしまった。私はそんな、情けない男だが…。」
「ルシアン閣下は情けないというより、思わせぶりで…振り回されました。これからはちゃんと、言葉にして欲しい。」
ルシアンは頷いて微笑むと、俺の手を引いて、身廊を歩いて行く。途中、アナスタシア達がへたり込んでいたが、俺たちは三人を素通りして祭壇へと向かった。
俺たちが素通りしたのを見たアナスタシアは立ち上がり、ルシアンに向かって金切声を上げる。
「ルシアン殿下!お待ちください!そんな身分も低く、可愛くもない男となんてっ!御子はどうするつもりです?!」
ルシアンはアナスタシアを振り返ると、ふふ、と笑った。
「婚約者の弟の甘言にすぐ靡くお前には分からないかもしれないが、騙されて職を失い二年も文句を言わずにほぼ無給で働き詰め…そんなドジで可愛らしい男だぞ、ジルベールは。ジルベールは淡白そうな顔をしているが恥ずかしがるとすぐ顔が赤くなって色白の頬がピンク色になる、そこがいやらしいくて実にかわいらしいのだが、恥ずかしがるジルベールを俺の膝に乗せると、男のくせにつるんとした少し小さい尻がこう…俺の膝にすっぽり収まり、つい私の息子がわがままを言うと『殿下のご長男は躾がなっていませんね』と私を叱るのだがそれがまた愛らしくもっと厳しい指導をお願いしたくな… 」
「ル…、ルシアン閣下っ!!最後完全にいやらしい内容にすり変わっております!」
「は…っ、すまない!ただお前が可愛いという説明をしようとすると、つい!」
三人は何か言いたげに口をぱくぱくさせていたが、俺たちは今度こそ三人を無視して祭壇の前までやって来た。
祭壇前の司祭は、用意していた二つの指輪を差し出す。それはルシアンが作った、赤い指輪…。俺たちの運命の赤い糸だ。指輪を受け取って、お互いの指に順番に嵌める。
「ジルベール、生涯お前を愛すると誓う。」
「ルシアン…俺も…、ルシアンを生涯、愛すると誓います。」
俺たちは抱き合って、誓いの口づけをした。今度は呪いではなく、歓喜の中で愛を誓うことができた。
「ああ……長かった!ようやく、契約を履行できる!」
「契約…って…!あっ、あれは、でも…!」
契約の内容を思い出して俺が赤くなり、首を振ると、ルシアンは少し怖い顔をした。
「ジル、お前……隙あれば契約違反を犯すつもりだな!?あー、危ないっ!やはり黒魔術をかけておいて正解だった!じらされること二年以上…。お前のその清純な正装姿にいたずらしていやらしい下着を着せたり脱がせたり濡らしたり破いて無理矢理中を覗いたりすることだけを励みに日々我慢してきたというのに!絶対に、逃がさない!」
ルシアンはそう言うと、花びらと歓声の中、俺を抱きかかえて、歩き出した。
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