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四章
51.罪の告白
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ナタは全ての罪を告白した。
全てはジャメル・ベルの指示だった、と。ジャメルことメアリーが俺宛に書いた直筆の手紙にも、「自分が犯人である」と記されていたこともあってその証言は認められた。
ナタは、国境付近にある強制労働所への送致処分が決まった。
ナタが出発する前に、俺はナタに面会する事が出来た。ナタは長い髪を短く刈り上げ、シンプルな麻のシャツを着ていたが、その美しさは健在。手首を前に縛られた状態のナタと、俺は対面した。
「俺を笑いに来たのかよ?アルノー殿下。」
「そんな…。ただ、一言伝えたかったんだ。俺宛の、メアリーからの手紙の事で…。」
「”メアリー”ねぇ…全く。あいつが老婆と入れ替わるって言い出した時にもっと止めるんだった!修道女に金を握らせ男まで用意して、入れ替わったんだぜ?初めてあの化粧姿を見た時は笑いを堪えるのに必死だった。面識があったはずのイリエスに至っては全く気づく素振りもなく!ははっ!」
ナタは、今にも泣き出しそうな顔で笑う。強がっている。そんな顔…。
「俺宛の手紙に、犯人は自分だと書いてあった。ナタの事に一言も触れなかったのは、きっとメアリーなりの優しさだと思う。どうしても、それを言っておきたくて。」
「…そうだよ。お前に言われなくてもわかっている。ジャメルはそういう男だ。だから俺はずっとジャメルに従ってきた。これも、あいつの計画通りだ。全て…。」
ナタは美しい金色の瞳から、涙を溢した。
「愛していたんだね。ジャメルを…。」
「そんな綺麗なものじゃない。あいつは奴隷になりかけた俺を、珍しい見た目だからってだけで助けて…育ててくれた。占星術を教わって…。」
ナタは溢れる涙でそれ以上言葉を紡げそうに無い。俺はナタの首に、鎖付きの小瓶をかけた。首に掛けても邪魔にならない大きさの、本当に小さい瓶。
「ナタ…。これを持っていてもらえませんか?」
「これは?」
「メアリーの遺骨です。罪人のものは捨てられる決まりだから、メアリーだった分だけ…少ししか持ち出せませんでした。ナタ、貴方にお願いしたい。無事、刑期を終えたらメアリーを連れて行って欲しいのです。メアリーが行きたがっていた土地へ…。」
ナタは涙を流して嗚咽を漏らした。
俺はナタの手にメアリーの遺骨を握らせ、そしてナタの手をそっと握る。
「ジャメルが貴方を思ったように、私も貴方のために祈ります。貴方が心から罪を悔やみ、刑期を無事、終える事を…。」
「やっぱり馬鹿だな、アルノー殿下は。」
ナタは目を伏せてつぶやき、そのまま兵士に促されると、城をあとにした。
メアリーが死んだ後、陛下からメアリーの手紙を受け取り、それを読んでまた涙が止まらなくなった。俺が、陛下に相談してメアリーを捕まえていたら…。何かもっと結果は違っていたはずだ…。
陛下を騙したことも、おれは正直に話をした。陛下は多分、怒ってはいたと思うけれど、何も言わずに俺を抱きしめてくれた。
しかしやはり、陛下を騙した事は懲罰対象だ。下手をしたら王女達だって危なかったのだから。謹慎を言い渡されて部屋に閉じ籠もっていたのだが、謹慎期間の終了日に、ナタが強制労働所に立つ事になり、今日ナタを見送ることができた。それはたぶん、陛下の配慮だと思う。メアリーの遺骨を頼むと、それも陛下は手配してくれた。妃達の命を奪った相手なのに…。
陛下の広い心に感謝している。
俺もナタも救われた…。
全てはジャメル・ベルの指示だった、と。ジャメルことメアリーが俺宛に書いた直筆の手紙にも、「自分が犯人である」と記されていたこともあってその証言は認められた。
ナタは、国境付近にある強制労働所への送致処分が決まった。
ナタが出発する前に、俺はナタに面会する事が出来た。ナタは長い髪を短く刈り上げ、シンプルな麻のシャツを着ていたが、その美しさは健在。手首を前に縛られた状態のナタと、俺は対面した。
「俺を笑いに来たのかよ?アルノー殿下。」
「そんな…。ただ、一言伝えたかったんだ。俺宛の、メアリーからの手紙の事で…。」
「”メアリー”ねぇ…全く。あいつが老婆と入れ替わるって言い出した時にもっと止めるんだった!修道女に金を握らせ男まで用意して、入れ替わったんだぜ?初めてあの化粧姿を見た時は笑いを堪えるのに必死だった。面識があったはずのイリエスに至っては全く気づく素振りもなく!ははっ!」
ナタは、今にも泣き出しそうな顔で笑う。強がっている。そんな顔…。
「俺宛の手紙に、犯人は自分だと書いてあった。ナタの事に一言も触れなかったのは、きっとメアリーなりの優しさだと思う。どうしても、それを言っておきたくて。」
「…そうだよ。お前に言われなくてもわかっている。ジャメルはそういう男だ。だから俺はずっとジャメルに従ってきた。これも、あいつの計画通りだ。全て…。」
ナタは美しい金色の瞳から、涙を溢した。
「愛していたんだね。ジャメルを…。」
「そんな綺麗なものじゃない。あいつは奴隷になりかけた俺を、珍しい見た目だからってだけで助けて…育ててくれた。占星術を教わって…。」
ナタは溢れる涙でそれ以上言葉を紡げそうに無い。俺はナタの首に、鎖付きの小瓶をかけた。首に掛けても邪魔にならない大きさの、本当に小さい瓶。
「ナタ…。これを持っていてもらえませんか?」
「これは?」
「メアリーの遺骨です。罪人のものは捨てられる決まりだから、メアリーだった分だけ…少ししか持ち出せませんでした。ナタ、貴方にお願いしたい。無事、刑期を終えたらメアリーを連れて行って欲しいのです。メアリーが行きたがっていた土地へ…。」
ナタは涙を流して嗚咽を漏らした。
俺はナタの手にメアリーの遺骨を握らせ、そしてナタの手をそっと握る。
「ジャメルが貴方を思ったように、私も貴方のために祈ります。貴方が心から罪を悔やみ、刑期を無事、終える事を…。」
「やっぱり馬鹿だな、アルノー殿下は。」
ナタは目を伏せてつぶやき、そのまま兵士に促されると、城をあとにした。
メアリーが死んだ後、陛下からメアリーの手紙を受け取り、それを読んでまた涙が止まらなくなった。俺が、陛下に相談してメアリーを捕まえていたら…。何かもっと結果は違っていたはずだ…。
陛下を騙したことも、おれは正直に話をした。陛下は多分、怒ってはいたと思うけれど、何も言わずに俺を抱きしめてくれた。
しかしやはり、陛下を騙した事は懲罰対象だ。下手をしたら王女達だって危なかったのだから。謹慎を言い渡されて部屋に閉じ籠もっていたのだが、謹慎期間の終了日に、ナタが強制労働所に立つ事になり、今日ナタを見送ることができた。それはたぶん、陛下の配慮だと思う。メアリーの遺骨を頼むと、それも陛下は手配してくれた。妃達の命を奪った相手なのに…。
陛下の広い心に感謝している。
俺もナタも救われた…。
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