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四章
43.花嫁、一計を案じる
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その後、ナタの後を付けた陛下の手の者たちが、ナタの塒を突き止めたと聞かされた。それは人の多い繁華街に、隠れるようにひっそりと存在しているらしい。ナタは確かに建物の中に入って行ったが誰かと接触したりはしなかったようだ。
ただ滞在しただけ…?そんなことあるのだろうか…。
何も解決しないまま、ナタが後宮に来る日を迎えた。
その日は夏の始まりにしてはひんやりとすこし冷たい日だった。緊張して体温が下がっているのか、どちらなのか判断がつかない。
陛下は朝食後、珍しく俺の部屋にやってきた。
「今日、ナタが後宮に来る時刻に合わせて、騎士団を塒に向かわせ、中を検める。」
「今日…?」
「ナタには私が対応する。アルノーはここにいてくれ。」
「…。」
今日は一緒に来い、潔白を証明する、とはおっしゃらないのですね…?そう言おうとしてやめた。
「先日のようなことにはならない。ナタがやって来たら直ぐに拘束するつもりだ。」
「…まだ本人は認めておりませんが…。どのような罪で?」
「余罪は多い。徐々に引き出せばよい。」
「そんなことをしたら、ナタを操っている者が逃げてしまうのではないですか…?」
「いや、悠長なことを言っていられなくなった…。塒の…家の持ち主が分かった。サミー・ボルドという商人だったのだが…。教会に預けられたはずの女児を捜索する中で、先日捕らえた人物だ。」
「捕らえた?」
「どうやら奴隷商人をしていたようだ…。サミー・ボルドを問い詰めているが、教会との関わりが見つからない。信心深いことなど全くない男だからな。しかし…ナタとの繋がりはあった。」
奴隷商人?そんなものはもう、禁止されて久しい…。そんな恐ろしい男と関係があるなんて、どういうことだ…。
「教会から攫った女児を売り買いしていた男の家に出入りしているのだ…。当然ナタの関与も疑われる。ナタが教会の司祭と、サミー・ボルドを仲介していた可能性もある。ナタは、星占いが好きな王妃が呼び寄せ、後宮に出入りしていたのだが…。王妃の告解を担当していたジャメル・ベル司祭から紹介されたとすると、全てが繋がるのだ。」
「しかし…塒に出入りしていただけで、それを認めさせるのは難しいのではないでしょうか…?司祭は見つからないのですか?ジャメル・ベル司祭は…?」
「司祭については手がかりがない。それに関しても、ナタを問い詰めれば、あるいは…。」
「…。」
うまく行くのだろうか…?それで…。俺は最悪の事態を想定した。もう誰にも死んでほしくない、と泣くリリアーノの顔が脳裏をよぎる。
――俺は一計を案じた。
俺はナタが来る時間、身を隠した。
メアリーに頼んで、陛下に「アルノー様がいない」と伝えてもらうと、陛下は直前に話したナタの塒に俺が向かったと誤解したようだ。いや、俺はそう、誘導したのだ。陛下を後宮から遠ざけるために。
陛下は俺を探すために、城を…後宮を出て行った。
陛下の気持ちを利用した。
きっと、以前俺を迎えに来てくれた時のように…陛下は俺を助けに向かってくれるだろうと…。それは一種の賭けのようなものだった…。教会でナタと陛下のキスを見たばかりで、信じきれていなかったから。
でも陛下が向かってくれたと知って、不謹慎だけど、嬉しかった。…陛下、ありがとうございます。そして、申し訳ありません…。
そうまでしても、俺にはやらなければならないことがあった。これは、俺がどうしてもやらなければいけないことだ…。
ナタを拘束するはずの兵士にも、城には来ないことになったと嘘をついた。
俺は予めメアリーに用意して貰ったものを持ち、メアリーだけを伴って、ナタと陛下が落ち合う予定だった鏡の間へと向かった。
ただ滞在しただけ…?そんなことあるのだろうか…。
何も解決しないまま、ナタが後宮に来る日を迎えた。
その日は夏の始まりにしてはひんやりとすこし冷たい日だった。緊張して体温が下がっているのか、どちらなのか判断がつかない。
陛下は朝食後、珍しく俺の部屋にやってきた。
「今日、ナタが後宮に来る時刻に合わせて、騎士団を塒に向かわせ、中を検める。」
「今日…?」
「ナタには私が対応する。アルノーはここにいてくれ。」
「…。」
今日は一緒に来い、潔白を証明する、とはおっしゃらないのですね…?そう言おうとしてやめた。
「先日のようなことにはならない。ナタがやって来たら直ぐに拘束するつもりだ。」
「…まだ本人は認めておりませんが…。どのような罪で?」
「余罪は多い。徐々に引き出せばよい。」
「そんなことをしたら、ナタを操っている者が逃げてしまうのではないですか…?」
「いや、悠長なことを言っていられなくなった…。塒の…家の持ち主が分かった。サミー・ボルドという商人だったのだが…。教会に預けられたはずの女児を捜索する中で、先日捕らえた人物だ。」
「捕らえた?」
「どうやら奴隷商人をしていたようだ…。サミー・ボルドを問い詰めているが、教会との関わりが見つからない。信心深いことなど全くない男だからな。しかし…ナタとの繋がりはあった。」
奴隷商人?そんなものはもう、禁止されて久しい…。そんな恐ろしい男と関係があるなんて、どういうことだ…。
「教会から攫った女児を売り買いしていた男の家に出入りしているのだ…。当然ナタの関与も疑われる。ナタが教会の司祭と、サミー・ボルドを仲介していた可能性もある。ナタは、星占いが好きな王妃が呼び寄せ、後宮に出入りしていたのだが…。王妃の告解を担当していたジャメル・ベル司祭から紹介されたとすると、全てが繋がるのだ。」
「しかし…塒に出入りしていただけで、それを認めさせるのは難しいのではないでしょうか…?司祭は見つからないのですか?ジャメル・ベル司祭は…?」
「司祭については手がかりがない。それに関しても、ナタを問い詰めれば、あるいは…。」
「…。」
うまく行くのだろうか…?それで…。俺は最悪の事態を想定した。もう誰にも死んでほしくない、と泣くリリアーノの顔が脳裏をよぎる。
――俺は一計を案じた。
俺はナタが来る時間、身を隠した。
メアリーに頼んで、陛下に「アルノー様がいない」と伝えてもらうと、陛下は直前に話したナタの塒に俺が向かったと誤解したようだ。いや、俺はそう、誘導したのだ。陛下を後宮から遠ざけるために。
陛下は俺を探すために、城を…後宮を出て行った。
陛下の気持ちを利用した。
きっと、以前俺を迎えに来てくれた時のように…陛下は俺を助けに向かってくれるだろうと…。それは一種の賭けのようなものだった…。教会でナタと陛下のキスを見たばかりで、信じきれていなかったから。
でも陛下が向かってくれたと知って、不謹慎だけど、嬉しかった。…陛下、ありがとうございます。そして、申し訳ありません…。
そうまでしても、俺にはやらなければならないことがあった。これは、俺がどうしてもやらなければいけないことだ…。
ナタを拘束するはずの兵士にも、城には来ないことになったと嘘をついた。
俺は予めメアリーに用意して貰ったものを持ち、メアリーだけを伴って、ナタと陛下が落ち合う予定だった鏡の間へと向かった。
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