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二章

14.ドキドキ!里帰り!

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 全員が集まる食事の席に、ナタは顔を出さない。どうやら姦しい子どもが好きではないようだ。俺はそれに少し安堵していた。ナタが陛下と談笑する所を見せられたら、ダメージが大き過ぎる。

 鬼のいぬ間に…いやナタのいぬ間にとばかりに…夕食の席で、俺は陛下と子供達に「俺のいた孤児院に行ってみないか?」と提案した。後宮の予算が逼迫しているから清貧生活を体験させる事でやんわり贅沢を辞めさせるのが目的だ!そして孤児院では神父が勉強を教えているので、一緒に勉強もさせれば一石二鳥と考えた。思い切って一泊二日で、と。
 案外、子供達が喜んだので陛下も「護衛をきちんとつけるなら」という条件で許可してくれた。

 よかった!

 俺は久しぶりの里帰りにウキウキしながら準備に取り掛かった。
 
「全く…アルノー様と来たら…。後宮の官吏達がなんと噂しているかご存知なのですか?」
「え、何?」
 どうせ碌な噂ではないだろうが、俺は念のため何の噂かメアリーに尋ねた。
「アルノー様は里帰りした後、ここには戻らず孤児院に留まり、そのままナタが後添えに収まるのでは無いかと!」
「ええー?!そうなの?!」
「そうなの!?ではありませんよ!全く!あなたがいないなんて、陛下がナタのところにお渡りになる絶好の機会を与えてしまって…。バカですね。本当に!」
「バカ?!」
 馬鹿だとはっきりメアリーに言われてしまい俺は傷ついた。確かに馬鹿かも知れないが、俺がいてもいなくても陛下がナタのところにお渡りになることを止める事など出来ない。むしろいない時にしてくれた方が無駄に傷付かなくて済むからいいんじゃないか?

 俺の考えを見透かしたメアリーは「ああ、おいたわしや…」と哀れみの目で俺を見つめた。

 いよいよ孤児院に出発する当日。孤児院訪問のため、王女達も俺も庶民の服を着た。王女たちは金髪に碧眼...陛下譲りの美少女だから服を変えても王族感が拭えない。
 メアリーは俺と王女を交互に見た後「お似合いですね。」と嫌味を言った。すみませんね、地味な顔で...! しかしメアリーの嫌味でさえも、その日は楽しかった。

 移動のための馬車も家紋入りの豪華なものではなく、お忍び用の印のない馬車を使う。車寄せから馬車に乗り込んで、王女達は歓声を上げた。

 いつもとは違う、質素な服を着た陛下が先に乗っていたのだ。

 王女達は次々と乗り込んで陛下を囲んだ。最後に馬車に乗った俺を見た陛下は、王女達に「鳩が豆鉄砲喰らった顔、というのは今のアルノーの顔だぞ。」と言って微笑んだ。

 陛下の笑顔は、やはり少しシャーロットに似ている。俺はそれに感動して…どきりとした。親子の繋がりに感動しただけで、決して初めて見た陛下の笑顔にドキドキしたわけではないんだからな!?それに、いつもいるメアリーが今日は不在で、俺一人…だから緊張もしていて…あくまでそういう理由だ。

 メアリーは「孤児院はアルノー様の庭ですから」と言ってついて来なかった。またあいつ、上手いこと言って逃げやがった!てゆーか孤児院と教会がそんなに嫌か?!今日は朝食も孤児院で食べる予定にしていたので、俺は少し不安になった。
 みんないい子達だから、仲良くできる…よな?!
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