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一章
18.言えなかった言葉
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アナベルは暫くギルフォードに見惚れていた。
ギルフォードはそんなアナベルに、困ったように語りかける。
「アナベルの父上や兄上達はみな、紳士だったのだろうが、それ以外の男は決して品行方正ではないのだ。私を含めて…。だからもっと警戒してくれ」
「え…?」
「アナベルには次から次へと男が寄ってくる。中には、邪な思いを抱いている者もいる」
「先程のことですか?あれは、商人だからでしょう。それに私は男ですので、いざとなったら戦えます 」
アナベルは父の元で剣の稽古もして来たという矜持を持っている。だからそんな心配は不要だと言いたかったのだが…。
「先日も、賊に襲われて、ディボルに助けられたのだろう?ディボルがいなかったら危なかったと聞いた 」
「それは後宮で帯剣が許されていないからで…。でも、もう護衛をつけていただきましたし、大丈夫です」
「それだけじゃない。私の気持ちもある」
ギルフォードは少し、困ったように笑う。
「アナベルは、騎士団に現れる妖精の話を知っているか?」
「いいえ?」
「その妖精は名前を『アナベル』と言うんだ。」
「え……?」
「妖精は、銀の髪に白い肌、深い緑色の美しい瞳を持っている。妖精は週に一回、騎士団の詰め所にやって来て手紙を受け取ると、頬を染めて帰って行く。甘い桃が好物で、騎士団の詰め所の林にある桃を、美味しそうに頬張る」
ギルフォードはそこまで言って、どう言おうか考えるような仕草で、腕を組んだ。
「アナベル、その話を騎士団の連中から聞いた時の私の気持ちがお前に分かるか?それに、その……私に送った『お守り』と同じものを他の男が持っているのを見た時の、私の気持ちを……」
「……ご迷惑でしたか?」
ギルフォードが、辛そうに言うので、アナベルは悲しくなってしまった。
「いや。私は、そんなお前を他の誰にも見せたくないんだ。私の手紙を受け取って頬を染めるお前を……」
ギルフォードは口元を押さえて、続きを言うのを辞めてしまった。その後、髪をかきあげてからアナベルに近づく。
「アナベル」
ギルフォードは胸ポケットから、金色の鎖に青い貴石がついたペンダントを取り出して、そっと、アナベルの首に掛けた。
アナベルはそれを見た途端、涙を溢した。
ずっと、欲しかった、ギルフォードの瞳の色の宝石。
(嬉しい……!)
ギルフォードはアナベルを引き寄せて、自分の外套の中に閉じ込めて、隠した。
そのまま外套の中で見つめあって、口づけた。
****
すっかり陽が落ちた頃、アナベルはギルフォードに後宮まで送ってもらった。
「あの、ありがとうございました」
アナベルは愛おしくて、ペンダントを手でそっと撫でた。
その仕草を見たギルフォードも優しく微笑む。
陽はもう落ちて、人の気配もない後宮の裏手は闇に包まれている。ギルフォードとアナベルは、闇にかくれて、また口づけた。
そして一緒に「おやすみなさい」を言って別れた。
でも本当は……アナベルは「そばにいて」と言いたかった。
ギルフォードはそんなアナベルに、困ったように語りかける。
「アナベルの父上や兄上達はみな、紳士だったのだろうが、それ以外の男は決して品行方正ではないのだ。私を含めて…。だからもっと警戒してくれ」
「え…?」
「アナベルには次から次へと男が寄ってくる。中には、邪な思いを抱いている者もいる」
「先程のことですか?あれは、商人だからでしょう。それに私は男ですので、いざとなったら戦えます 」
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「先日も、賊に襲われて、ディボルに助けられたのだろう?ディボルがいなかったら危なかったと聞いた 」
「それは後宮で帯剣が許されていないからで…。でも、もう護衛をつけていただきましたし、大丈夫です」
「それだけじゃない。私の気持ちもある」
ギルフォードは少し、困ったように笑う。
「アナベルは、騎士団に現れる妖精の話を知っているか?」
「いいえ?」
「その妖精は名前を『アナベル』と言うんだ。」
「え……?」
「妖精は、銀の髪に白い肌、深い緑色の美しい瞳を持っている。妖精は週に一回、騎士団の詰め所にやって来て手紙を受け取ると、頬を染めて帰って行く。甘い桃が好物で、騎士団の詰め所の林にある桃を、美味しそうに頬張る」
ギルフォードはそこまで言って、どう言おうか考えるような仕草で、腕を組んだ。
「アナベル、その話を騎士団の連中から聞いた時の私の気持ちがお前に分かるか?それに、その……私に送った『お守り』と同じものを他の男が持っているのを見た時の、私の気持ちを……」
「……ご迷惑でしたか?」
ギルフォードが、辛そうに言うので、アナベルは悲しくなってしまった。
「いや。私は、そんなお前を他の誰にも見せたくないんだ。私の手紙を受け取って頬を染めるお前を……」
ギルフォードは口元を押さえて、続きを言うのを辞めてしまった。その後、髪をかきあげてからアナベルに近づく。
「アナベル」
ギルフォードは胸ポケットから、金色の鎖に青い貴石がついたペンダントを取り出して、そっと、アナベルの首に掛けた。
アナベルはそれを見た途端、涙を溢した。
ずっと、欲しかった、ギルフォードの瞳の色の宝石。
(嬉しい……!)
ギルフォードはアナベルを引き寄せて、自分の外套の中に閉じ込めて、隠した。
そのまま外套の中で見つめあって、口づけた。
****
すっかり陽が落ちた頃、アナベルはギルフォードに後宮まで送ってもらった。
「あの、ありがとうございました」
アナベルは愛おしくて、ペンダントを手でそっと撫でた。
その仕草を見たギルフォードも優しく微笑む。
陽はもう落ちて、人の気配もない後宮の裏手は闇に包まれている。ギルフォードとアナベルは、闇にかくれて、また口づけた。
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でも本当は……アナベルは「そばにいて」と言いたかった。
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