前世を思い出したら愛したはずの旦那様を忘れてしまいました

あさ田ぱん

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三章

36.お風呂であわあわ ※

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「フェリシテ殿下っ!」
「レオナード!ち、違うんだ!聞いてくれよ…!誤解なんだ…!」
「こんな現場を押さえられて、どう言い逃れするつもりなんです?言ってください。聞きますから」
 レオナードは瘴気問題で騎士団に詰めているはずが…。なぜか娼館にいて俺を睨みつけ、俺の言い訳を待っている。
 俺は知ってる。このパターン、何言ってもだいたい信じてもらえないし許してもらえないんだよなあ…。前世の俺なら『じゃもう終わりにしよっか』と、投げ出すところではある。

「本当に誤解なんだ。ちょっと引っかかることがあって…。えーと、あのお姉さんの子供がどことなくレオナードに似ている気がしたんだ」
「私……?」
 俺は頷いて、レオナードに近付いた。レオナードも、俺に歩み寄る。
 手を伸ばすと、レオナードは俺の腰を掴んで抱き寄せた。俺はレオナードの背中に腕を回す。

「フェリシテは記憶を失う前から、彼女と子供を調べていたみたいだ」
「なぜ、そんなことを?」
「え…、…分からないのかよ?」
 レオナードは俺の顔を覗き込んだ。本気で分からないのか、言わせたいのか、どっち?俺はちょっと照れて、目を伏せる。
「レオナードの子供かもしれないって思って…。し、嫉妬…みたいな?」
 驚いた顔で、レオナードは目を見開いたあと、すぐに目を細める。怒ってるのか…?
 レオナードの表情はよくわからない。聞こうとしたら、抱き上げられてしまった。
「れ、レオナード?!」
「何もなかったか、確認します」
 レオナードは俺を抱き上げて、風呂場に連れて行った。ベッドじゃなくて?
 脱衣所で服を脱ぐ暇もなく、湯気が立つ浴場に連れ込まれる。入ってすぐ、バスタブに手をつくように言われて下履きを脱がされた。

「な、何もしてないってば…」
 レオナードは尻臀を掴んで左右に拡げ、指で尻のあわいを弄る。
「…今日はなにもなかったようですね」
「今日、なかったよ…!」
  俺が後ろを振り向くと、レオナードへまだ険しい顔のまま、俺に口付けた。
「不安にさせないでください…。どうにかなりそうでした」
「…ご、ごめん」
  レオナードは湯気で少し湿った俺の尻を撫であげた。ここで、する気だ…。
 おれはハッとした。ここは、なんとお風呂である。ついでに黒魔術の契約紋をを調べる絶好のチャンス到来…っ!

「汗かいてるから、お詫びに背中、流してあげる…」
「そんな事で誤魔化されませんよ?」
 誤魔化しではない!ちょっと身体を見せてもらうだけ。いつも襲われる側の俺はレオナードの背中は特に確認が難しい。『お背中を流す』は絶好のチャンスだ!これはレオナードの為にも必要なこと…。だ、断じてお風呂プレイソープ嬢ごっこではない!!

 レオナードと正面で向かい合う体勢になり、上着のボタンを外していく。途中でじれったくなったらしいレオナードは自分でボタンを外してブラウスごと脱いでしまった。
 怒ってた割に、ノリノリじゃないか…?
 身体を洗う為に置いてあった麻布に石鹸を擦り付けて泡を立てた。レオナードの背後に周り、泡を背中に優しく置く。
 手で背中を撫でながら契約紋がないか確認して、驚いた。背中、深い剣で切られたような傷がある。これは、契約紋じゃない…。思わず手が止まった俺に気が付いたレオナードは俺の腕を引いて、正面に抱き込んだ。

「背中に性感帯はありません」
「うそだ…!背中は性感帯だぞ!」
「へえ…?」
 向かい合っていた俺を回転させて背中向きにさせ、膝の上に座らせる。乱暴に上着をはぎ取られ、背中から抱きしめられた。そして、レオナードの胸と俺の背中の間に泡を入れられる。
「ひゃ…ッ」
 手でぬるぬると泡を塗られ、背中を撫でていた手は下にも降りて行く。いつもの魔法をかけられるころには、どこもかしこもぬるぬるに…。
「ここは泡をぬっていないのに湿っていますね」
 そう、俺の中心もすでにぬるぬるだった…。だってごそごそとレオナードが動くたび、泡でぬるぬるの背中にレオナードの固い乳首がこすれるのだ。
「あ、ああ…♡擦っちゃだめ…♡」
「本当に背中が気持ちいいんですね…。じゃあ今日はこのまましましょう」
 レオナードは俺を持ち上げて腰を浮かせると、後孔に陰茎の先端をあてる。
「このまま、腰を落として?」
「ん……」
 言われるがまま、ゆっくり腰を落としていく。中と背中を両方とも擦られて、身体が弓形に反ってしまう。
「や…ぁ!ああン…♡」
「自分で、いい所にあてて感じてるの、いやらしい…」
「そ、そんな、こと…っない……♡!」
 恥ずかしくて逃げようともがいたら、腕を掴まれた。座ったまま、レオナードは腰を突き上げるように動く。
「ちょっ…、だめ!ふ、深っ♡あ、あぁっ♡♡」
 背面から座ったまま入れられて、背中が反る、この体位…。ほらあの翼を広げた女神を模った高級車のエンブレムみたいに見えることからネーミングされたこの体位……!

「ロールスロイス…ッ♡♡♡」
「ロー?!」
 レオナードの背中を見て契約紋を探すはずが、いつの間にかあわあわ背中乳首ツンプレイからの伝説の体位ロールスロイス決めちゃってる♡!
「や…ッ♡動いちゃだめっ♡♡♡」
「ダメな顔をしてから言ってください!」
「そうだけど…あ♡♡イク、ああああッ♡」
「奥がいいんでしたね?すごい、痙攣してる…」
「だめっ、止まって♡いってる、いってるからぁ…っ♡」
   
 伝説の体位、ロールスロイス…。すご…♡まさか、異世界で生まれ変わって体験するなんて…!あぁーーっ♡!
 
 
****

 目が覚めたら、馬車の中だった。俺は初めてのロールスロイスで気を失っていたらしい。やっぱり高級車ってすごいよ。高いし頑丈だし燃費もスゴくて痒いところに手が届く仕様…っていうか良いところにアレが届いちゃって何回もイッちゃった~!
 目覚めてすぐだというのに、レオナードにがっちり抱きしめられながら尋問が始まった。

「どういうことか、殿下の口からお伺いしてもよろしいですか?」
「昨日会った彼女の子供が、どこかレオナードに似ている気がして…。それを確かめに来たんだ。だからその、嫉妬したというか…」
「……ありえません。私の心も身体も貴方のものだ」
 そんな歯の浮くような、愛重めのセリフを真顔で言われて、俺の中のフェリシテが『きゅん♡』となったのが分かった。

「えええ…と、で、その娼婦、ミーナが言うには以前にもフェリシテは一度彼女を尋ねていたらしい。彼女が、アリエス様の子を産んだという噂を確かめに来たと…」
「アリエス兄上の?」
「うん…。噂は本当で、アリエス様から養育費を受け取っていたと。アリエス様が無くなったあとは義父さまから…。フェリシテは金の動きで気付いた様です。その辺りを調べていただければ…」
 金の管理は任せっきりだった、とレオナードは悔しそうに唇を噛んだ。
「それにしても父上がなぜ、そのことを…?」
「義父さまも、娼館の常連だったそうで…」
 レオナードは俺の話に眉を顰めて、俺から視線を逸らした。レオナードは愛重めの一途系男子だから、そう言ったことには嫌悪感があるらしい。

「ただその噂がどこかで捻じれて…、義母さま、ディオンヌ様は私が娼館に通っていると思っていらした。それで、ミーナに口裏を合わせるように言ったそうです。私に何等かのやましいことがあれば、子供のことはともかくレオナード様を諦めると思ったのでしょう」
「なんてことだ。私も、フェリシテが娼館に通っていると聞いていた。市井の噂を捻じ曲げて伝えるなんて……。そんなことを出来るのは父上以外いない」
 寝耳に水だったらしいレオナードは、額に手をあてて深いため息をついた。

「義父様は私より実の息子、アリエス様を庇われたのでしょう」
「いや、兄上のことが知れれば、自分の立場が危ういからだ。あの人は婿養子だから…」
 なるほど、それでディオンヌ様があんなにめちゃくちゃなのに、止める人がいないのか。レオナードは嫡男至上主義のディオンヌに虐げられていたと聞く。
「父は母の子、兄が成人して『辺境伯』を継ぐまでのつなぎでしかなかった。だから娼館の女に逃げていたのでしょう。そして、その父に愛されない母は…」
「だからって、子供に何してもいいってことはない」
 俺がきっぱりと言い切るとレオナードは目を細めて俺を見た。ん…?今の答え駄目だった?家族のことって、自分は悪く行ってもいいけど、他人には言われるのは抵抗あったりするからな…。
 俺がなんて声を掛けるか迷っていると、レオナードは手の甲で俺の頬を撫でた。
「私は殿下よりも、母の言う『噂』を信じてしまっていました…。それで、殿下につらく当たったこともあった。…こんな、私のところに嫁いでしまって、後悔していますか?」
「全然?」
 俺は間髪入れずに答えた。前世の『鷹見一生』の…親と不仲だった記憶がある、今の俺には分かる。例えどんな目に合ったとしても俺より母親を信じるのは仕方がないことだ。
「子供ってさ親には愛されたい生き物だって…記憶を失くして思い出したんだ」
 俺はレオナードの首に腕を回して、ぎゅっと抱きついた。

「…やっぱり私を、あの暗い部屋から連れ出してくれたのはフェリシテ殿下だ。殿下と初めて会った日…殿下は私を外に連れ出しました。その時初めて光を浴びて、私は生まれた」
「お、大袈裟……!でもさ、それなら記憶を失くしてるフェリシテと生まれたばかりのレオナードで、一緒に生き直そう?一緒に、楽しく生きて……わ…!」

 急にレオナードが俺を抱きしめるから、最後まで言えなかった。俺はレオナードの震える背中を抱きしめ返した。
 今度こそ、愛する人と幸せな家庭を作って俺は正しく生きていくんだ。
 大丈夫。出来るよ、レオナードが側にいてくれるなら。絶対…。
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